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マダニのシスタチン

国内特許コード P08A014105
掲載日 2008年11月27日
出願番号 特願2006-091517
公開番号 特開2007-259804
登録番号 特許第4783901号
出願日 平成18年3月29日(2006.3.29)
公開日 平成19年10月11日(2007.10.11)
登録日 平成23年7月22日(2011.7.22)
発明者
  • 藤崎 幸蔵
  • 玄 学南
  • 周 金林
  • 寥 敏
出願人
  • 国立大学法人帯広畜産大学
発明の名称 マダニのシスタチン
発明の概要

【課題】マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用な新規ポリペプチド及びポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】前記ポリペプチドは、新規のシスタチンである。前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを含むベクターは、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。また、前記ポリペプチドに対する阻害剤又は前記ポリペプチドに対する抗体も、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


地球上に棲息する約500属15,000種を越える吸血性節足動物の中で、マダニはわずか19属約750種(5%)の弱小グループであるが、ヒト以外の動物では第1位、ヒトでは蚊に次いで第2位に重要な感染症媒介節足動物である。経済的被害からもマダニとマダニ媒介性疾病による世界の損害額は、畜産領域だけでも毎年140億米ドル以上(非特許文献1)にのぼり、その対策は世界各国で畜産振興上の最も重要な課題のひとつとなっている。マダニ防除の中心は化学療法剤などの薬剤利用に深く依存している。DTTが開発された1950年以降、シナプス後膜作用型のニコチン系、ネオニコチノイド系、神経伝達物質分解酵素型の有機燐系、カーバメート系、クロルジメフォルム、神経繊維膜作用型の塩素系、ピレスロイド系などの化合物が殺ダニ剤としてマダニ防除に使用されてきた。しかしながら、マダニは、薬剤の連続使用によるいわゆる薬剤耐性をいずれの薬剤に対しても獲得し、殺ダニ効果が減少あるいは消失したものも少なくない。さらに、薬剤の使用には常に人あるいは動物への副作用を考えなくてはならず、同時に、食と環境の安全性を脅かす薬物残留問題があり、消費者から敬遠される傾向にある。そのうえ、経済動物である家畜では、薬剤の使用には有効性や適用範囲に加えて、膨大な開発コストの面からも限界が生じつつある。



感染症媒介者(ベクター)としてのマダニは、マラリアベクターの蚊と比べて、ウイルス、リケッチア、細菌、原虫、寄生虫などほぼすべての種類の病原体の伝播に関与する他に比肩しうるもののない優れた疾病媒介能を有する。ヒトではマラリアが世界的に猛威を振るっていることはよく知られているが、動物(家畜・愛玩動物)ではマラリアに類似した感染症としてマダニが媒介するバベシアやタイレリアなどの原虫によるピロプラズマ症がある。本症は畜産・獣医学領域で最も被害の大きい寄生虫感染症であり、近年ではヒトでのバベシア症が世界各国で報告され、新興人獣共通感染症のひとつにあげられている。



感染症予防の最大の武器はワクチンであるが、寄生虫ワクチン(多大な資金と精力的なワクチン開発が行われているマラリアに対しても)の開発は困難を極めている。進化した生活環を有する寄生虫では、動物・ヒトの獲得防御免疫に関する主要な寄生虫由来の抗原や免疫誘導機構など、不明な点が多くあるためであるが、とりわけ重大なのは、寄生虫は高度に発達した免疫回避機構により宿主の免疫監視から逃れるシステムを発達させており、防御免疫の獲得が困難なことにある。このようなことからタイレリアやバベシアなどのピロプラズマ原虫についても例外ではなく、ピロプラズマ症の発症をもたらす宿主体内ステージに焦点をあてた研究開発からはワクチンを生まれていない。



一方、マダニの頻回寄生に対して宿主が抵抗性を獲得する現象を応用した獲得免疫によるマダニ防除法が以前から試みられている(非特許文献2)。また、宿主への接触が全くないマダニタンパク質がマダニ感染に対する防御抗原となることも明らかにされ、実際にワクチン抗原(Tick GARD)(非特許文献3)として一部のマダニとマダニ媒介性病原体[例えば1宿主性のマダニ(Boophilus microplus)とその媒介するウシバベシア原虫]に対して野外応用されているものの、これらの効果は限定的であり、他のワクチン抗原との併用による効果増大の必要性が指摘されるなど、多くのマダニとマダニ媒介性病原体に対するワクチンは依然として開発途上にあり、病原体側のマダニ媒介性病原体の防除対策もマダニと同様に薬剤に深く依存しているのが実情である。このように21世紀におけるマダニとマダニ媒介性病原体による人及び家畜生産の被害を既存の薬剤使用によって防ぐことは、非常に難しい状況にある。



シスタチンは、パパイン・ファミリーのシステイン・プロテアーゼに対して阻害活性を有するインヒビター群である。1960年代に鶏の卵白から初めて報告された後、現在、分布は、原虫、線虫、昆虫、植物、ほ乳類まで様々な生物で広く存在が知られている。マダニシスタチンとしては、ヒメダニの1つであるオルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata)由来のシスタチン、あるいは、ヒトのライム病のベクターであるマダニ属のイクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus)とイクソデス・スカピュラーリス(Ixodes scapularis)由来のシスタチン[NCBI (National Center for Biotechnology Information)、BLASTP (Protein-protein Basic Local Alignment Search Tool) サーチ, Accession No. AY521024、AJ547803、AF483724]の塩基配列及びアミノ酸配列がそれぞれ決定されている(非特許文献4)。また、米国のヒト、イヌ、ネコのエールリヒア症の病原体(Ehrlichia chaffeensisやEhrlichia ewingii)のベクターであるキララマダニ属の1種のアンブリオンマ アメリカナム(Amblyomma americanum)では、シスタチンのRNA干渉法による機能の解明が試みられている(非特許文献5)。しかしながら、マダニのシスタチンの全塩基配列の単離や特性解明に関しては、いずれのマダニにおいても実証されるに至っていない。




【非特許文献1】ベテリナリー・パラシトロジー(Veterinary Parasitology), (オランダ国),1997年, 71巻, 77-97頁

【非特許文献2】「ナショナルインスティチュート・オブ・アニマルヘルス・クオータリー(トウキョウ)(National Institute of Animal Health Quarterly、Tokyo),1978年,18巻,27-38頁

【非特許文献3】「プラシトロジー・トゥデー(Parasitology Today)」,(オランダ国),1999年,15巻,258-262頁

【非特許文献4】「ザ・ジャーナル・オブ・イクスペリメンタル・バイオロジー(The Journal of Experimental Biology)」,(英国),2002年,205巻,2843-2864頁

【非特許文献5】「バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ」(Biochemical Biophysical Research Communications),(オランダ国),2005年,334巻,1336-1342頁

産業上の利用分野


本発明は、マダニのシスタチン、それをコードする核酸分子及びそれらの利用に関する。



より詳細には、本発明は、マダニの生存に不可欠な吸血、及びこれによってマダニ体内に侵入する動物・ヒトの病原体に関わるタンパク質、それをコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用に関する。ここで、動物・ヒトの病原体とは、世界的に甚大な被害をもたらすピロプラズマ症の病原体であるタイレリア又はバベシア原虫をはじめとする人獣共通細菌・ウイルスを意味する。具体的には、本発明は、宿主動物からの血液成分の摂取(すなわち吸血)と消化、ならびに吸血にともなってマダニ個体へ侵入した病原体に対して、中腸上皮や体内移行経路にあたる器官・組織で発現するシスタチンをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを保持する組換え体細胞、組換えペプチドタンパク質、及び合成ペプチドに関する。本発明により、マダニの吸血の予防と阻止、ピロプラズマ症をはじめとする人及び動物の感染症の予防及び治療を目的とした化合物の合成、あるいはそれら病原体による感染症の治療薬の開発に応用することができる。

特許請求の範囲 【請求項1】
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列における19番~131番のアミノ酸からなる配列、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列における19番~131番のアミノ酸からなる配列を含み、しかも、シスタチン活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列における19番~131番のアミノ酸からなる配列、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、シスタチン活性を示すポリペプチド;又は
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列における19番~131番のアミノ酸からなる配列、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、しかも、シスタチン活性を有するポリペプチド。

【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。

【請求項4】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体。

【請求項5】
請求項4に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1に記載のポリペプチドを製造する方法。

【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチド若しくはその断片であって、投与対象に投与した場合に免疫を誘導することができる前記断片、請求項2に記載のポリヌクレオチド、又は請求項3に記載のベクターを有効成分として含む、医薬。

【請求項7】
抗原虫剤である、請求項6に記載の医薬。

【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチド若しくはその断片であって、投与対象に投与した場合に免疫を誘導することができる前記断片、請求項2に記載のポリヌクレオチド、又は請求項3に記載のベクターと、薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。

【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドに対する抗体又はその抗原結合断片。

【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、及び前記ポリペプチドのシスタチン活性を分析する工程を含む、前記ポリペプチドのシスタチン活性を修飾する物質のスクリーニング方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 薬品
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
画像

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出願権利状態 権利存続中
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