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3次元繊維強化複合材ラグの製造方法

国内特許コード P08A014140
掲載日 2008年12月19日
出願番号 特願2002-259769
公開番号 特開2004-099648
登録番号 特許第4069202号
出願日 平成14年9月5日(2002.9.5)
公開日 平成16年4月2日(2004.4.2)
登録日 平成20年1月25日(2008.1.25)
発明者
  • 伊藤 真
  • 小野原 薫
  • 安居 義治
  • 堀 藤夫
出願人
  • 防衛装備庁長官
発明の名称 3次元繊維強化複合材ラグの製造方法
発明の概要 【課題】繊維体積含有率が均一で部材の強度が向上し、容易に製造することができるようにした3次元繊維強化複合材ラグを提供する。
【解決手段】2次元配列糸層を形成する経糸51、緯糸52およびバイアス糸53,54は、予め定める複数の応力分担領域にわたり、主たる発生応力に抗する方向に張架される。互いに異なる配向パターンA1~F2を有する複数の2次元配列糸層を必要強度に応じ、かつ各応力分担領域における繊維配向率Vf が相互に均等になるように選択的に積重し、垂直糸62によって各2次元配列糸層を結合して3次元織物が形成され、この3次元織物にマトリックス61を充填して一体化させて3次元繊維強化複合材ラグが形成される。
【選択図】   図1
従来技術、競合技術の概要


基材であるマトリックス相と、強化材として繊維を用いる分散相とから成る繊維強化複合材料は、航空機を始め、各種の分野で構造用部材として用いられている。特に、航空機の翼胴結合に用いられるラグジョイントなどと呼ばれる繊維強化複合材ラグは、ボルトの軸部またはピンが挿通する面圧部に集中的に大きな力が作用するため、一般構造用部材よりも高い機械的強度特性が要求され、この機械的強度特性の改善に大きな影響を与える1つの要因として、強化繊維の組織構成が重要視されている。



図30は、第1の従来技術の3次元繊維強化複合材ラグ1の繊維配向状態を簡略化して示す一部の正面図であり、この従来技術は特公平7-81225号公報に示されている。ラップラウンドフィッティグ用の3次元繊維強化複合材ラグ(以下、単に「複合材ラグ」と略記する場合がある)1は、図30の紙面に平行な仮想一平面上で複合材ラグ1の長手方向Xに平行に張架される経糸2と、長手方向Xに垂直な幅方向Yに平行に張架される緯糸3と、長手方向Xに関して±45°でそれぞれ交差する各バイアス方向B1,B2に張架されるバイアス糸4,5と、前記仮想一平面に垂直な厚み方向Zに交互に折返した状態で挿入される垂直糸とによって3次元織物を形成し、この3次元織物とマトリックスとを一体化させた複合材である。このような3次元織物は、図30に示されるように垂直に立設された複数のピン12を有する3次元織物製作治具6の各ピン12に経糸2、緯糸3および各バイアス糸4,5を巻掛け、最後にピン12を垂直糸と交換して織りあげられる。



複合材ラグ1の長手方向Xの一端部の端末部10には、複合材ラグ1を厚み方向Zに挿通する金属製のブッシング9が嵌着され、このブッシング9の周囲には、前記経糸2が同心円上に巻掛けられるとともに、緯糸3が放射状に張架される。なお、複合材ラグ1は図30では長手方向X一方側のみ示してあり、他方側も一方側と同様の構成を備える。以下の図においても同様である。



このような複合材ラグ1のブッシング9にはボルトまたはピンが挿通され、このボルトまたはピンを介して複合材ラグ1に長手方向Xに引張荷重Faが作用すると、図31(a)に示されるように複合材ラグ1に応力が発生する。すなわち、端末部10でブッシング9の周囲に巻掛けられ、中間部11で長手方向Xに延びる経糸2によって、中間部11および端末部10から中間部11にわたって長手方向Xに引張応力S1,S2が生じるとともに、端末部10で周方向に引張応力S3が生じる。また経糸2が引張られることによって、端末部10には放射状に圧縮応力P1が作用する。



また前記ボルトを介して複合材ラグ1に長手方向Xに圧縮荷重Fbが作用すると、図31(b)に示されるように複合材ラグ1に応力が発生する。すなわち、中間部11に、ブッシング9を中心として放射状に圧縮応力P2が生じるとともに、長手方向Xに圧縮応力P3が生じる。



このような第1の従来技術では、端末部10でブッシング9の周囲に同心円上に張架され、かつ中間部11で長手方向Xに張架される経糸2によって、引張力Faに抗する大きな強度を達成し得るが、端末部10では経糸2が同心円状に張架されるので、端末部10のブッシング9周縁部での繊維体積含有率Vf が局所的に高くなり、そのために複合材ラグ1全体の繊維体積含有率Vf を高くすることが困難となり、部材全体として比強度も高くできない。



また中間部11では、3次元織物製作治具6のピン12が長手方向Xおよび幅方向Yに平行な格子状配列でよいのに比べて端末部10では、経糸2および緯糸3を巻掛けるためのピン12を円弧状ないしは放射状に配列しなければならないため、中間部11とは異なるピン配列を必要とし、3次元織物製作治具6の製造に手間がかかり、3次元織物製作治具6の製造コストも高価になってしまう。また3次元織物製作治具6の汎用性も低くなる。このような位置によって繊維体積含有率Vf が異なる複合材ラグ1に対して、繊維体積含有率Vf の均一な複合材ラグを次に示す。



図32は、第2の従来技術の複合材ラグ29の繊維配向状態を簡略化して示す一部の正面図である。複合材ラグ29は、予め強化繊維に合成樹脂を含浸させて半硬化状態にした形成材料であるプリプレグ43~46を積重させて形成される2次元繊維複合材である。プリプレグ43は、図33(1)に示され、バイアス方向B1に複数のバイアス糸32が一様に張架され、プリプレグ44は、図33(2)に示され、バイアス方向B2に複数のバイアス糸33が一様に張架され、プリプレグ45は、図33(3)に示され、長手方向Xに複数の経糸30が一様に張架され、プリプレグ46は、図33(4)に示され、複数の緯糸31が幅方向Yに一様に張架される。このような各プリプレグ43~46は、長手方向に一様に張架された強化繊維に合成樹脂を含浸させた帯状のプリプレグテープを切って幅方向に並べて形成される。たとえばプリプレグ44の場合には、強化繊維が所定領域全面にわたってバイアス方向B2に一様に張架されるように複数のプリプレグテープを幅方向に並べて形成される。他のプリプレグ43,45,46の場合も同様である。このような各プリプレグの積重順序の一例を参照符で最上層から示すと、43/44/45/46/46/45/44/43となり、この状態は図34に示される。このように積重した後、加熱硬化させ、透孔47を形成し、ブッシング36が嵌着されて複合材ラグ29は形成される。このような複合材ラグ29では図28に示される複合材ラグ1と異なり、部材全体で繊維体積含有率Vf が均一となる。



複合材ラグ29に引張荷重Faが作用すると、複合材ラグ29には図35(a)に示されるように応力が発生する。すなわち中間部35には長手方向Xに引張応力S4が発生し、端末部34にはブッシング36を中心としてバイアス方向B1,B2および幅方向Yに引張応力S5,S6,S7が発生するとともに、これらの引張応力S5,S6に交差する方向に圧縮応力P3,P4,P5が発生する。また、複合材ラグ29に圧縮荷重Fbが作用すると、図35(b)に示されるように、中間部35で長手方向Xに圧縮応力P6が生じ、ブッシング36を中心として放射状に圧縮応力P7が発生する。



このような複合材ラグ29では、引張荷重Faが作用したとき、経糸30が多い場合には、端末部34に図32の参照符41で示されるように剪断破壊が生じ、また経糸30が少ない場合には、ブッシング36の幅方向Y両側で参照符42で示されるように、引張破壊が生じる。前記剪断破壊を防止するためには、端末部34の長手方向Xの長さL1を大きくして引張荷重Faをうけもつ面積を大きくすればよいが、複合材ラグ29が大形化してしまう。また前記引張破壊を防止するためには、複合材ラグ29のブッシング36の幅方向Y両側の幅L2,L3を大きくして経糸30を多くすればよいが、この場合も複合材ラグ29が大形化してしまう。しかも前記剪断破壊および引張破壊は、破壊モードが脆性的であるため、機械要素として扱いにくく、適用部位が制限されるという問題がある。



図36は、第3の従来技術の複合材ラグ13の一部を示す斜視図である。この複合材ラグ13は、厚み方向Zに挿通する金属製のブッシング21が嵌着される面圧部22と、面圧部22の幅方向Y両側に連なり、長手方向Xに延びる一対の軸力部23,24と、面圧部22および各軸力部23,24の長手方向Xの一端部に連なる端末部25とに応力分担領域が分割され、図37(a)~図37(m)に示される各プリプレグ13a~13mが選択的に積重されて形成される2次元繊維複合材である。各プリプレグ13a~13mは図37に示されるように、各応力分担領域が組合せられ、それぞれのプリプレグ13a~13mに経糸14、緯糸15またはバイアス糸16,17のうちのいずれか1つが一様に平行に張架される。複合材ラグ13は、厚み方向Zに上下対称であるので、プリプレグ13a~13mの積重の組合せの一例を最上層から中央まで、各プリプレグの参照符を省略し、アルファベットのみで順に示すと、h/i/h/i/k/j/(a+b)/(a+c)/(a+e+m)/(d+f)となり、中央から最下層までは上記の組合せの逆となる。このように各プリプレグ13a~13mを積重させた後、加熱硬化させ、面圧部22に透孔を形成してブッシング21を嵌着させて複合材ラグ13は形成される。



このようにして形成された複合材ラグ13の面圧部22には、経糸14、緯糸15およびバイアス糸16,17の総繊維が占める繊維体積含有量に対して、バイアス糸16,17は80%、経糸14は10%、緯糸15は10%含有され、軸力部23,24には、前記繊維体積含有量に対して、経糸14は50%、緯糸15は10%、バイアス糸16,17は40%含有され、端末部25には、前記繊維体積含有量に対して、経糸14は20%、緯糸15は20%、バイアス糸16,17は60%含有される。



このような複合材ラグ13に引張荷重Faが作用すると、図38(a)に示されるように、面圧部22に引張応力S11が発生するとともに、面圧部22から端末部25にわたってブッシング21を中心として圧縮応力P9が長手方向Xに発生するとともに、バイアス方向B1,B2に圧縮応力P10,P11が発生する。また端末部25内には、幅方向Yに引張応力S12が発生するとともに、バイアス方向B1,B2に引張応力S13,S14が発生し、端末部25から各軸力部23,24にわたって引張応力S15,S16が発生するとともに、軸力部23,24内で引張応力S17,S18が発生する。



またブッシング21を介して複合材ラグ13に圧縮荷重Fbが作用すると、面圧部22内に圧縮応力P11が発生するとともに面圧部22から軸力部23にわたってバイアス方向B1に圧縮応力P12が発生し、面圧部22から軸力部24にわたってバイアス方向B2に圧縮応力P14が発生し、各軸力部23,24内に圧縮応力P15,P16が発生する。



このような複合材ラグ13では、各応力分担領域22~25内の繊維体積含有率Vf が相互に均一で、かつ図32に示される複合材ラグ29に比べて端末部25で経糸14が選択的に少なく、軸力部23,24で経糸14が選択的に多く含有されるので、複合材ラグ13の構成が大形化することなく剪断破壊および引張破壊に抗することができる。

産業上の利用分野


本発明は、航空機、宇宙機、自動車、船舶、建築物および製造加工装置などの構造用部材として好適に実施することができる3次元繊維強化複合材ラグの製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
仮想一平面上で、長手方向に平行に張架される経糸と、長手方向に垂直な幅方向に平行に張架される緯糸と、長手方向または幅方向に関して交差するバイアス方向に平行に張架されるバイアス糸とを、前記仮想一平面に垂直な厚み方向に挿入される垂直糸によって結合して3次元織物が形成され、この3次元織物にマトリックスを充填して一体化させた3次元繊維強化複合材ラグの製造方法において、
前記仮想一平面上で経糸、緯糸およびバイアス糸のいずれかを、予め定める複数の応力分担領域毎に、各応力分担領域に隣接する他の応力分担領域にわたって主たる発生応力に抗する方向に張架して、相互に異なる配向パターンを有する複数の2次元配列糸層が形成され、各2次元配列糸層は、各応力分担領域の前記発生応力に抗する必要強度に応じ、かつ各応力分担領域の繊維体積含有率が相互に均等になるように選択的に積重して3次元織物を形成し、この3次元織物にマトリックスを充填して加熱加圧して硬化させる方法であって、
前記予め定める複数の応力分担領域は、厚み方向に貫通する透孔を形成してブッシングが嵌着される面圧部と、面圧部の幅方向両側に連なり、長手方向に延びる一対の軸力部と、面圧部および各軸力部の長手方向一端部に連なる端末部と、各軸力部間で、各軸力部に幅方向に連なりかつ面圧部の長手方向他端部に連なって長手方向に延びる中間部とに分割されることを特徴とする3次元繊維強化複合材ラグの製造方法。

【請求項2】
面圧部は、経糸、緯糸、バイアス糸および垂直糸の総繊維が占める繊維体積含有量に対して、少なくとも70%のバイアス糸を含有することを特徴とする請求項記載の3次元繊維強化複合材ラグの製造方法。

【請求項3】
軸力部は、経糸、緯糸、バイアス糸および垂直糸の総繊維が占める繊維体積量に対して、45~70%の経糸と、30~55%のバイアス糸とを含有することを特徴とする請求項1または2記載の3次元繊維強化複合材ラグの製造方法。

【請求項4】
端末部は、経糸、緯糸、バイアス糸および垂直糸の総繊維が占める繊維体積含有量に対して、50~80%のバイアス糸と、20~50%の経糸および緯糸とを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の3次元繊維強化複合材ラグの製造方法。

【請求項5】
中間部は、経糸、緯糸、バイアス糸および垂直糸の総繊維が占める繊維体積含有量に対して、少なくとも70%のバイアス糸を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の3次元繊維強化複合材ラグの製造方法。
国際特許分類(IPC)
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