TOP > 国内特許検索 > 量子位相シフトゲート装置

量子位相シフトゲート装置 コモンズ

国内特許コード P08A014231
整理番号 BE062P05
掲載日 2009年2月20日
出願番号 特願2007-115699
公開番号 特開2008-275673
登録番号 特許第5234890号
出願日 平成19年4月25日(2007.4.25)
公開日 平成20年11月13日(2008.11.13)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発明者
  • 小島 邦裕
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 量子位相シフトゲート装置 コモンズ
発明の概要

【課題】 偏光状態が未知であるような、互いに異なる光経路上を進行する制御光子及び標的光子に対する量子位相シフトゲート操作を可能にする量子位相シフトゲート装置を提供する。
【解決手段】 量子位相シフトゲート装置において、原子系12が励起準位の場合に対しては位相をπだけ変えて光子を反射し、基底準位gの場合に対しては光子を透過する原子-共振器系と、前記透過した光子を反射する手段と、原子系の基底準位gと第一励起準位e1間で回転操作を行うためのレーザーパルス生成装置と、光子のX偏光成分とY偏光成分を分離または合体させる偏光ビームスプリッター6,7と、光を全反射する反射鏡14,15とを備え、レーザーパルスを共振器軸方向から照射して、制御光子と標的光子を互いに異なる入出力部から処理する。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


光や物質の量子力学的な状態を利用する量子情報技術は、安全性の高い暗号通信や、秘匿性の高い認証など、高度なセキュリティ技術を提供することができると期待されている。例えば、量子暗号通信では、量子力学的な2自由度を用いて表現される情報(以後、量子情報)を単一光子に乗せて伝送することで、通信路上での盗聴者の存在を確実に検知することができ、安全な秘密鍵の配布が可能になる。



ここでいう量子情報とは、以下のように説明される。
例えば、|0>、|1>という量子力学的な2自由度を用いることにする。古典的な情報(古典ビット)との違いは、量子情報では|0>と|1>という2通りの状態だけでなく、それらの間の重ね合わせ、a|0>+b|1>という状態まで表現できる点である。ここで、aとbは、|a|2 +|b|2 =1を満たす複素数である。これは、0、1という2通りの値しか表現できない古典的なビットと比較して、量子ビットと呼ばれている。



なお、量子ビットの情報処理には、量子位相シフトゲートなどの量子状態に対する条件付制御が不可欠である。量子位相シフトゲートとは、2つの量子ビット(制御ビットと標的ビット)からなる状態のうち、状態|1>|1>の場合についてだけ、その位相をπだけ変えて、状態exp[-iπ]|1>|1>に変換するゲートである。その他の状態、|1>|0>, |0>|0>, |0>|1>は、このゲートによって何ら変化を受けない。



光子を量子位相シフトゲートの入力量子ビットとして用いる場合は、主として、光子の偏光モードに量子情報が符号化される。例えば、水平偏光|H>と垂直偏光|V>という2自由度を、量子情報を表現するための基底として用いることができる。このことから、その他の直線偏光や円偏光も|H>と|V>の重ね合わせとして表現できるため、光子の偏光状態によって1量子ビットを完全に記述できる。



単一原子は、単一光子レベルの光に対して敏感に反応し、光子数に応じて、劇的にその光応答を変えることから、近年、光子に対する量子位相シフトゲートの実現に向けて、原子を用いた装置の研究が、実験と理論の両面で盛んに行われている。原子系と光子とを効率的に相互作用させるために、原子系の周りを共焦点型共振器で覆った、原子-共振器系が原子を用いた装置の主要部分である。共振器を構成しているミラーから入射する光に対する、原子-共振器系の光応答は、共振器の緩和率:κ、共振器を構成する左側(M1)と右側(M2)のミラーの透過率の比:(M1の透過率)/(M2の透過率)、原子系と共振器単一モードとの結合定数:λ、共振器単一モード場以外のすべてのモード場との結合による原子系の緩和率:γによって、特徴づけることができる。特に、量子位相シフトゲートのために原子-共振器系を用いるには、緩和率κと結合定数λとが緩和率γよりもずっと大きいことが必要条件である。その理由は、共振器単一モード場を介さない原子系の緩和は、光子を勝手な方向に放出してしまい、光子損失となるからである。



実験では、Turchettとその共同研究者たちが、原子を用いた装置による量子位相シフトゲートの提案とその原理検証を行った(下記非特許文献1)。
この実験において、原子-共振器系は、(共振器軸長と共振器モード断面積が各々、56μmと35μmである)共焦点型共振器の共振器軸に対して垂直方向から、共振器内に向けて、セシウム原子ビームを入射し、共振器内平均原子数を約1.0 にすることによって実現した。共振器の左側の球面ミラー(M1)の透過率が右側の球面ミラー(M2)のものよりもずっと小さく、実際の透過率の比は、(M2の透過率)/(M1の透過率)=約3×102 であった。このようにミラーの透過率が互いに極端に異なる共振器のことを「片側共振器」と呼び、反対に、互いにほぼ同じである共振器を「両側共振器」とここでは呼ぶことにする。共振器のガウシアンモードが、セシウム原子の(6S1/2 、F=4、m=4)→(6P3/2 、F′=5、m′=5)遷移と強く結合しており、その結合定数λはλ=20MHzであった。共振器緩和率κと緩和率γは、各々、75MHzと2.5MHzであった。また、原子が共振器を通過する時間は、T0 =224nsであった。



彼らの提案する量子位相シフトゲートは、標的ビットに相当する微弱プローブ光と制御ビットに相当する微弱ポンプ光とを共振器軸方向から入射し、ポンプ光の右回り偏光成分と原子との相互作用によって、プローブ光の右回り偏光成分の位相を変調させる方法である。また、相互作用後、ポンプ光とプローブ光を分離できるように、これらの光は互いに中心周波数が異なっており、セシウム原子の遷移周波数からポンプ光の中心周波数は20MHz、プローブ光は30MHz離れた周波数になっていた。



この原理検証のために、ポンプ光とプローブ光とを共振器の左側のミラー(M1)から入射し、共振器内の平均光子数が1になるまでポンプ光の平均光子数を増加させたときのプローブ光の位相シフトを、共振器の透過側〔右側の球面ミラー(M2)の側〕に置かれたヘテロダイン検出器で測定した。結果として、13~16度の位相変化を観測した。
しかしながら、彼らの提案とその実験では、量子位相シフトゲートに必要な、位相シフトをπにすると同時に、共振器を反射することによる光子損失をゼロにする方法までは検討されなかった。北大の研究グループは、これらの方法について検討し、原子を用いた装置の提案とその理論解析を行った(下記特許文献1及び非特許文献2)。



この提案における原子-共振器系は、Turchetteらのものとよく似ている。異なる点は、制御ビットに相当するポンプ光子(制御光子)と標的ビットに相当するプローブ光子(標的光子)の中心周波数が、互いに同じで、かつ共振器のガウシアンモードの中心周波数と同じである点と、透過率の高い右側の球面ミラー(M2)側から光子を入射し、反射した光子をゲートの出力とする点である。ただし、この提案では、ポンプとプローブを分離するために、原子-共振器系を二つ必要とし、これらをマッハツェンダー型干渉計内の二つの光経路の各々に置く必要がある。その理論解析は、光子の波束幅を適切に選ぶことによって、位相をπ変化させることができ、かつ、ゲート操作における光子の損失がTurchetteらの提案と比べてずっと小さくできることを示した。さらに、この解析によりわかったことは、制御光子と標的光子の右回り円偏光成分は、共振器内原子を介して、互いに非線形相互作用するため、これらの光子は時間的及び空間的に互いに量子的な相関を持つことである。そのため、ゲートから出力されたこれらの光子の波形は、偏光が互いに同じ場合と互いに違う場合とで異なる。



偏光状態に依存したこのような波形変化は、量子位相シフトゲートを量子制御NOTゲートとして用いる場合に問題となる。量子制御NOTゲートとは、制御量子ビットが1の場合だけ、標的量子ビットの値を反転させるゲートである。量子位相シフトゲートを量子制御NOTゲートとして用いる場合には、入力標的量子ビットの符号化基底を基底{1/√2(|0>+|1>)、1 /√2(|0>-|1>)}にとり、量子位相シフトゲートからの出力標的量子ビットの符号化基底を基底{|0>、|1>}にユニタリ変換する必要がある。したがって、偏光状態に量子ビット情報を符号化する場合、量子位相ゲートからの出力制御(標的)光子の波束波形は光子の偏光状態によらず同じであることが要求される。この要求が満たされないと、出力標的量子ビットに対する符号化基底の変換に失敗する。したがって、北大のグループの提案は、量子制御NOTゲートへの応用にとって最適ではない。



その要求を満たし、量子制御NOTゲートへの応用に最適な、原子を用いた新しい方法が提案されている(下記非特許文献3)。Turchetteらと北大のグループが用いた、片側共振器による原子-共振器系は、弱結合領域(κ>λ)であったが、この提案では、強結合領域(λ>κ)の系を用いる。図14に原子系のエネルギー準位を示す。原子系の第一励起準位e1及び第二励起準位e2間が共振器の単一モード(Turchetteらの実験におけるガウシアンモードに相当する)と強く結合していて、基底準位gと第一励起準位e1間は結合していない。入射光子の中心周波数は、共振器の単一モードと同じである。この原子-共振器系の光応答は次のようになっている。原子系が基底状態gになっているときは、透過率の高い右側の球面(図15の5)ミラー側から入射した光子は、位相をπだけ変えて反射するが、第一励起準位状態e1になっているときは、位相は変化しないで反射する。したがって、レーザーパルスを用いて、基底準位gと第一励起準位e1の間で回転操作を行えば、入射光子の位相をπと0との間で自由に変えることができる。ここで、回転操作とは、基底準位の状態を|g>、第一励起準位の状態を|e1>、回転演算子をR(θ)と表すとき、基底状態に対しては、R(θ)|g>=Cos(θ/2)|g>+Sin(θ/2)|e1>となり、第一励起状態に対しては、R(θ)|e1>=-Sin(θ/2)|g>+Cos(θ/2)|e1>となる操作である。



図15に、この共焦点型片側共振器を用いた量子位相シフトゲート装置を示す。量子ビットの情報は、光子の偏光状態に符号化される。符号化基底は、{|0>、|1>}とし、X偏光状態|X>を量子ビット固有状態|1>に、Y偏光状態|Y>を量子ビット固有状態|0>に対応させる。X偏光状態とY偏光状態は互いに直交している。制御光子Cと標的光子Tは、同一光経路上を偏光ビームスプリッター2に向かって進行する。これがこの量子位相シフトゲートの入出力部である。偏光ビームスプリッター2は、X偏光成分を透過し、Y偏光成分を反射する。反射鏡1は、光を全反射する。このとき、この装置の1光子入力に対する応答をユニタリ演算子で表すと次のように表すことができる。Uj =Exp[-i π|g><g||X>j <X|] 、ただし、制御光子の偏光状態に作用するとき、j=Cと表し、標的光子に作用するときは、j=Tと表す。この演算子は、原子系が基底状態の場合だけ、光子のX偏光成分の位相をπ変化させて入出力部に返す応答を表している。なお、図15において、3は原子系、4,5は2枚の球面ミラーである。



この演算子と回転演算子R(θ)を用いて、量子位相シフトゲートのための操作は、UQPG (|g>+|e1>)/√2|Ψ>C |Φ>T と表すことができる。ただし、UQPG =UC R(-π/2)UT R(π/2)UC であり、|Ψ>C |Φ>T は各々、制御光子と標的光子の偏光状態である。演算子UQPG は、量子位相ゲートの演算Exp[-iπ|X>C <X||X>T <X|]と等価である。この量子位相シフトゲート装置は、制御(標的)光子の波束幅を共振器緩和時間1/κよりも十分大きく選ぶことによって、出力波形は入力のものと比べてほとんど変化しなくできる。また、この提案における光子の損失は、北大のグループの提案と比べて遜色がない。したがって、量子制御NOTゲートとして用いるのに最適な提案といえる。



一方、量子位相シフトゲートを量子制御NOTゲートとして用いる場合の重要な応用の一つに、ベル状態測定がある(下記非特許文献4)。ベル状態とは、2つの量子ビットによって、(1/√2)(|1>|1>±|0>|0>)及び(1/√2)(|1>|0>±|0>|1>)と表される。また、2つの量子ビットの合成系の状態は、これらの状態を用いて完全に記述することができる。そして、ベル状態測定とは、これらの4つの状態のうちのどれかに、入力状態を射影し、どの状態へ射影されたかを判定する測定である。



この測定の実現は、長距離間で量子相関を共有するための量子中継システムの構築にとって不可欠である。このシステムは、二組の2光子ベル状態を用意し、個々のベル状態から1光子を取り出してきて、それら2つの光子に対してベル状態測定を行うと、残った光子の間に量子相関をつくることができる。これらの残った光子が互いにある程度遠く離れていれば、空間的に離れた二つのノードの間で、量子相関を共有したことになる。したがって、このシステムを複数用意すれば、量子相関の共有を長距離化することができる。

【特許文献1】特開2004-020970号公報

【非特許文献1】Q.A.Turchette,C.J.Hood,W.Lange,H.Mabuchi,and H.J.Kimble,Phys.Rev.Lett.75,4710(1995).

【非特許文献2】K.Kojima,H.F.Hofmann,S.Takeuchi,K.Sasaki,Phys.Rev.A 70,013810(2004)

【非特許文献3】L.-M.Duan,and H.J.Kimble,Phys.Rev.Lett.92,127902(2004).

【非特許文献4】M.A.Nielsen,and I.L.Chuang,Quantum Computation and Quantum Information,Cambridge,p.25(2000).

産業上の利用分野


本発明は、光子の偏光状態を測定する装置に係り、特に、量子位相シフトゲート装置及びその応用としてのベル状態測定に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
(a)原子系(12)と、該原子系(12)を中心として対向する位置に配置される一対のミラー(10,11)とからなり、原子系が励起準位の場合に対しては位相をπだけ変えて光子を反射し、基底準位の場合に対しては光子を透過する原子-共振器系と、
(b)前記原子系(12)を中心として対向する位置に配置される一対の偏光フィルター(8,9)及び偏光方向を切り替える偏光方向切り替えスイッチ(13)からなり、前記共振器を透過した光子を反射する装置と、
(c)前記原子系(12)を中心として対向する位置に配置される一対の偏光ビームスプリッター(6,7)及び一対の反射鏡(14,15)からなり、制御(標的)光子波束を分波及び合波する装置と、
(d)前記原子系(12)を中心として対向する位置に配置される、前記原子系(12)の状態を制御するための一対のレーザーパルス生成装置(42,43)とを備え、
(e)前記レーザーパルス生成装置(42,43)からのレーザーパルスを前記共振器軸方向から照射して、制御光子と標的光子を互いに異なる入出力部から処理するようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項2】
(a)原子系(12r)と、該原子系(12r)を中心として対向する位置に配置される一対の球面ミラー(10r,11r)とからなり、前記原子系(12r)が第一励起準位e1の場合に対しては基底準位の場合と比べて、位相をπだけ変えて光子を反射する原子-共振器系と、
(b)前記原子系(12r)を中心として対向する位置に配置される、前記原子系(12r)の基底準位gと第一励起準位e1との間で回転操作を行うための一対のレーザーパルス生成装置(42r,43r)と、
(c)前記原子系(12r)を中心として対向する位置に配置され、光子のX偏光成分とY偏光成分を分離または合体させる一対の偏光ビームスプリッター(6r,7r)と、
(d)標的光子X偏光成分の光経路を制御光子X偏光成分の光経路に変換し、また、その逆変換をする手段と、
(e)前記原子系(12r)を中心として対向する位置に配置される一対の偏光フィルター(8r,9r)及び偏光方向を切り替える偏光方向切り替えスイッチ(13r)からなり、前記共振器を透過した光を全反射する反射鏡(14r,15r)とを備え、
(f)前記レーザーパルス生成装置(42r,43r)からのレーザーパルスを前記共振器軸方向から照射して、制御光子と標的光子を互いに異なる入出力部から処理するようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項3】
請求項1記載の量子位相シフトゲート装置において、前記原子-共振器系は、前記ミラーが透過率の等しいミラーで構成された両側共振器を用い、前記ミラーの一方の入出力場を制御光子の入出力部とし、前記ミラーの他方を標的光子の入出力部として用いることを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項4】
請求項1記載の量子位相シフトゲート装置において、前記量子位相シフトゲートの動作は、前記原子系の状態を(|g>+|e1>)/√2とすることにより、入射光子の透過成分及び反射成分の間に量子もつれあい状態(|g>|透過成分>-|e1>|反射成分>)/√2を生成し、透過した光子を反射する前記装置によって、この状態をもつれ合っていない状態(|g>-|e1>)|反射成分>/√2に変換するようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項5】
請求項1又は2記載の量子位相シフトゲート装置において、前記原子-共振器系は、前記レーザーパルスを前記共振器軸方向から入射することにより前記原子系の状態を直接制御するために、基底準位gと第一励起準位e1の間の遷移周波数がある一つの共振器モードの吸収スペクトラム幅内になるように、前記原子系と前記共振器軸長を選び、そして、前記共振器単一モードと前記準位間の結合(結合定数λ1)が弱結合領域になるように、前記共振器を構成する前記ミラーの透過率を選ぶことにより、前記結合定数λ1を前記共振器単一モードの緩和率κ′よりも小さくするようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項6】
請求項1又は2記載の量子位相シフトゲート装置において、前記制御光子と前記標的光子の偏光状態が互いに同じか否かを判定するための偏光パリティ量子非破壊測定装置と、量子位相シフトゲート装置とアダマール変換ゲートとアダマール逆変換ゲートとにより構成された量子制御NOTゲートと、前記標的光子の偏光状態がX偏光の場合にY偏光に変換する手段とを備えるベル状態測定装置を構成し、入力2光子偏光状態を4つのベル状態のうちの一つの状態に射影し、どの状態に射影されたかを光子の状態を破壊することなく判定するようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項7】
請求項記載の量子位相シフトゲート装置において、前記ベル状態測定装置の全体の動作は、前記量子制御NOTゲートにより、前記制御光子と前記標的光子からなる合成系の偏光状態の基底を、前記4つのベル状態から4つの偏光固有状態{|X>|X>、|X>|Y>、|Y>|X>、|Y>|Y>}へ1対1で基底変換して、次に、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置による射影測定により、偏光固有状態{|X>|X>、|X>|Y>}を基底とする状態あるいは偏光固有状態{|X>|Y>、|Y>|X>}を基底とする状態に射影し、前記標的光子の偏光状態がX偏光の場合にY偏光に変換する前記手段により、前記偏光固有状態{|X>|X>、|X>|Y>}を基底とする状態は{|X>|Y>、|X>|X>}を基底とする状態へ、前記偏光固有状態{|X>|Y>、|Y>|X>}を基底とする状態は{|X>|Y>、|Y>|Y>}を基底とする状態へ変換し、次に、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置による射影測定により、前記4つの偏光固有状態のうち一つの偏光固有状態に射影することにより、最終的に観測者が知る偏光固有状態から、前記4つのベル状態のうちどのベル状態に射影されたのかを前記観測者が知るようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項8】
請求項記載の量子位相シフトゲート装置において、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置は、前記量子制御NOTゲートと補助光子の偏光状態を測定するための手段とを備え、前記補助光子の偏光状態を測定することによって、互いに異なる光経路上を進行する制御光子と標的光子の偏光状態が互いに同じか否かを、前記制御光子と前記標的光子の状態を破壊することなく判定するようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項9】
請求項記載の量子位相シフトゲート装置において、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置の全体の動作は、前記補助光子をアダマール変換した後、前記補助光子と前記制御光子とを請求項1または請求項2に記載の量子位相シフトゲート装置の標的側入力部と制御側入力部とから各々入力し、続いて、出力された補助光子と標的光子を前記量子位相シフトゲート装置の標的側入力部と制御側入力部とから各々入力し、出力された補助光子をアダマール逆変換した後、前記補助光子の偏光状態を測定し、その結果、前記補助光子の偏光状態の測定結果が初期偏光状態と同じである場合は、前記制御光子と前記標的光子の偏光状態は互いに同じであり、前記測定結果が初期偏光状態と異なる場合は前記制御光子と前記標的光子の偏光状態は互いに異なるようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項10】
請求項1又は2記載の量子位相シフトゲート装置において、前記制御及び前記標的光子の中心周波数は、前記第一励起準位e1及び第二励起準位e2間の遷移周波数と同じとし、その周波数スペクトラム幅は、前記第一励起準位e1及び第二励起準位e2間の吸収スペクトラムの半値幅と同じか狭いようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項11】
請求項1又は2記載の量子位相シフトゲート装置において、前記制御光子及び前記標的光子の光子波束の縦モード(進行方向)の波形は、関数exp[-Γ|x|] で90%以上の近似ができる波束を用い、Γは、前記第一励起準位e1及び第二励起準位e2間と共振器単一モードとの結合が弱結合領域の場合はこれらの準位間の(共振器軸方向から検出された)吸収スペクトラムの半値幅の半分以下で、強結合領域の場合は前記第一励起準位e1及び第二励起準位e2間と共鳴する共振器単一モードの緩和率以下であるようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項12】
請求項1記載の量子位相シフトゲート装置において、前記透過した光子を反射する装置の構成要素である前記偏光フィルターは、光を全反射するための前記反射鏡と、X偏光を透過しY偏光を反射するための前記偏光ビームスプリッターと、直線偏光と円偏光とを相互に変換するためのλ/4波長板と、偏光の0度回転あるいは90度回転を選択して行うための動的偏光回転子とからなり、該動的偏光回転子を用いて、偏光の0度回転と90度回転を任意に行うことにより、前記Y偏光成分は常に透過し、前記X偏光成分は反射と透過の選択を任意に行えるようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項13】
請求項2記載の量子位相シフトゲート装置において、前記標的光子のX偏光成分の光経路を前記制御光子のX偏光成分の光経路に変換し、また、その逆変換をする手段は、前記標的光子のX偏光成分だけをY偏光に変換し、逆に、前記標的光子のY偏光成分だけをX偏光に変換する動的偏光回転子と、制御光子であるか標的光子であるかによらずX偏光成分をY偏光に変換し、逆にそれらのY偏光成分をX偏光に変換する静的偏光回転子とからなるようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。

【請求項14】
請求項記載の量子位相シフトゲート装置において、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置の構成要素の一つである進行方向切り替え手段は、動的偏光回転子と、偏光ビームスプリッターと、反射鏡と、静的偏光回転子とを含み、前記動的偏光回転子は、入射光の偏光を90度回転または0度回転させることを選択的に行える回転子であり、前記偏光ビームスプリッターは、X偏光を反射し、Y偏光を透過するものと、X偏光を透過し、Y偏光を反射するものと両方が用いられ、前記反射鏡は光を全反射し、前記静的偏光回転子は、入射光の偏光を45度回転させるようにして、前記偏光パリティ量子非破壊測定装置の補助光子検出器が反応したときだけ、入射光の偏光を90度回転するように前記動的偏光回転子を設定することにより、前記補助光子検出器が反応しないときは前記制御光子及び前記標的光子を請求項1または請求項2記載の量子位相シフトゲートの入出力部に送り返すようにしたことを特徴とする量子位相シフトゲート装置。
産業区分
  • 光学装置
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2007115699thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO/SORST 量子情報システムアーキテクチャ 領域
ライセンスをご希望の方、特許の内容に興味を持たれた方は、問合せボタンを押してください。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close