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多発性嚢胞腎モデル小型魚類及びその利用 コモンズ

国内特許コード P08P005944
整理番号 NU-0177
掲載日 2009年2月20日
出願番号 特願2007-198207
公開番号 特開2009-028017
登録番号 特許第5219185号
出願日 平成19年7月30日(2007.7.30)
公開日 平成21年2月12日(2009.2.12)
登録日 平成25年3月15日(2013.3.15)
発明者
  • 橋本 寿史
  • 若松 佑子
  • 望月 俊雄
  • 宮本 兼玄
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
発明の名称 多発性嚢胞腎モデル小型魚類及びその利用 コモンズ
発明の概要

【課題】ヒトADPKDに有効な薬剤検討等に適切なモデル魚類を提供する。
【解決手段】ドミナントネガティブ効果を発現可能にPKD2遺伝子の変異遺伝子が導入されて得られる遺伝子組換え小型魚類を多発性嚢胞腎モデル小型魚類として用いる。このモデル小型魚類は、その表現型において、胎生致死でなく、成魚後多発性嚢胞腎を発症するとともにその魚令に伴い嚢胞は増加して、ヒトADPKDの同様の疾患の発症、進展経緯を示すことができる。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


ヒトにおける多発性嚢胞腎疾患(Polycystic Kidney Disease,PKD)には、常染色体劣性多発性嚢胞腎疾患(Autosomal Ressive Polycystic Kidney Disease, ARPKD)と常染色体優性多発性嚢胞腎疾患(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease, ARPKD)とがあるが、なかでもADPKDは、ありふれた遺伝子疾患の一つであり、わが国においては10万人~20万人程度の罹患が推測されている。ADPKDは全身性疾患であり、腎臓における嚢胞のほか、肝臓、膵臓、脾臓等にも嚢胞が生じることがあるほか、頭蓋骨内出血などの既往を高い頻度で有し、その半数以上において高血圧症を合併する。ADPKDにおける最も顕著な特徴である腎臓嚢胞の形成は、腎臓の肥大化および腎臓の濃縮能力の低下を引き起こす。ADPKD患者におけるこれらの症状は年齢とともに進行するが、有効な治療方法がないために、最終的に腎不全となり腎臓透析及び腎臓移植を要するようになる場合もある。



ヒトADPKDの遺伝学的発症機序として、遺伝子機能の喪失(loss-of-function)、中でもtwo-hit説が提唱されている。父母より変異型と野生型のPKD遺伝子を引き継いで出生後、成長の過程で何らかの原因により野生型PKD 遺伝子に体細胞変異が生じるために、PKD遺伝子の機能が喪失し嚢胞を形成し発症すると考えられている(非特許文献1)。



ヒトADPKDの原因遺伝子としては、PKD1遺伝子とPKD2遺伝子が特定されている。ヒトの16番染色体上の16p13.3に位置されるPKD1遺伝子及びヒト4番染色体の4q21-23に位置されるPKD2遺伝子とされており、これらはそれぞれタンパク質ポリシスチン1(PC1)とポリシスチン2(PC2)をコードしている(非特許文献1)。また、マウスの多発性嚢胞腎モデルからも原因遺伝子がクローニングされている(非特許文献2)。



PKD1はヒト16番染色体16p13.3に位置し、mRNAの大きさは約14kbpで、46個のエクソンよりなる巨大な遺伝子である。その遺伝子産物であるポリシスチン1(polycystin-1)は4320個のアミノ酸からなり、そのN末端は細胞外に、C末端は細胞内に存在し、11個の膜貫通ドメインをもつ膜貫通蛋白である。細胞外からのシグナルを細胞内に伝えるセンサーの役割を果たすと考えられている。Pkd1ノックアウトマウスはヘテロ接合体では表現型に乏しく、ホモ接合体で多発性嚢胞腎及び胎性致死をきたす(非特許文献3)。



PKD2はヒト4番染色体4q21-23に位置し、5.4kbpのmRNAをもち、15個のエクソンよりなる遺伝子である。遺伝子産物であるポリシスチン2(polycystin-2)は968個のアミノ酸から成り、N末端、C末端ともに細胞内に存在し、その間に6個の膜貫通ドメインをもつ膜貫通蛋白であり、その機能はCa2+イオンチャンネルと考えられている(非特許文献1)。Pkd2ノックアウトマウスはPkd1ノックアウトマウスと同様、ヘテロ接合体では特異的な表現型に乏しく、ホモ接合体で多発性嚢胞腎を形成し、胎性致死となる(非特許文献4)。Pkd1ノックアウトマウスとの相違点として、Pkd2ノックアウトマウスのホモ接合体では内臓逆位が起こる(非特許文献5)。



ポリシスチン1及びポリシスチン2は、ともに尿細管上皮細胞の管腔側に存在する線毛(primary cilium)に局在し、細胞内のそれぞれのC末端で相互作用がある。ポリシスチン1が尿細管内の尿の流速を傾きとして捉え、共役するポリシスチン2に伝え、Ca2+チャンネルとしてポリシスチン2が機能する。細胞外から細胞内へのCa2+流入は、細胞内の小胞体にあるポリシスチン2からの大量のCa2+放出を引き起こす。この細胞内のCa2+濃度の変化が、引き続いて分化、増殖、アポトーシスなどに関与するさまざまな遺伝子の発現を制御し、尿細管上皮の分化、増殖をコントロールすると推測されている。ポリシスチン1及びポリシスチン2のいずれの変異でも、センサーとしての線毛機能は破綻し、適切な尿細管径の維持ができず嚢胞を生じさせる(非特許文献6、7)。



生じた嚢胞は、いくつかの増殖機転により増大していくが、その一つとして、cAMPが関与することが報告されている。cAMPは正常尿細管細胞の増殖を抑制するが、ADPKD患者から得られた尿細管細胞では、逆にcAMPが増殖を促進する。ポリシスチン1の発現低下によりcAMPの作用が細胞増殖抑制から細胞増殖促進へと変化したと考えられている(非特許文献8)。バゾプレッシン、プロスタグランディンE2、セクレチン、VIP(vasoactive intestinal polypeptide)などのホルモンはcAMPを増加させ、嚢胞を増大させる可能性がある。自然発症嚢胞腎ラット(ヒト常染色体劣性多発性嚢胞腎遺伝子異常を持つ)ならびにPkd2遺伝子操作マウスにcAMPを抑制するバゾプレッシンV2レセプター阻害薬であるOPC31260を投与したところ、腎cAMP含有量が減少し、嚢胞形成も著明に減少したとの報告がある(非特許文献9、10)。これらのことより、嚢胞形成におけるcAMPの関与が有力視され、その抑制を目的としたバゾプレッシンV2レセプター阻害薬の臨床治験が世界で始まりつつある。



一方、現在多発性嚢胞腎モデル動物として複数のノックアウトマウスが作成されているが(非特許文献11)、遺伝子組換えマウスの維持・繁殖には多大な手間と費用が必要である。既に説明したように、通常のノックアウトマウスでは胎性致死となるため薬剤投与研究には適さない。また、胎性致死を回避させたPkd1コンディショナルノックアウトマウスも報告されている(非特許文献12)。さらに、Nishioらが作製したPkd1ノックアウトキメラマウスではヒトADPKDに類似した多発性嚢胞腎が認められ、病態解析モデルとして有用なことが報告されている(非特許文献13)。



また、近年、小型魚類を用いて薬物スクリーニングを行う試みが成果をあげつつある。メダカ(Oryzias latipes)は、日本産のモデル動物である。染色体は48本あり、ゲノムサイズが800Mbpと小さく、ヒトゲノムの4分の1の大きさである。飼育が比較的容易で、世代交代時間が2~3ヵ月であり、毎日産卵するといった遺伝学研究に適した利点をもつ。さらに、ゼブラフィッシュにおいては、腎嚢胞形成突然変異体も多数発見され(非特許文献14、15)、メダカにおいては、多発性嚢胞腎を発症する突然変異メダカが報告されている(非特許文献16)。さらに、メダカについて、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子ノックダウンも報告されている(非特許文献17、18)。

【非特許文献1】N Engl J Med 2004; 350: 151-164

【非特許文献2】J Formos Med Assoc. 2003 Jun;102(6):367-74.

【非特許文献3】J. Hum Mol Gene 2001; 10: 2385-2396

【非特許文献4】Nat Genet 2000; 24: 75-78.

【非特許文献5】Curr Biol 2002; 12: 938-943.

【非特許文献6】Bioessays 2004; 26: 844-856.

【非特許文献8】Kidney Int 2000; 57: 1460-1471.

【非特許文献9】Nat Med 2004; 10: 363-364.

【非特許文献10】Nat Med 2003; 9: 1323-1326.

【非特許文献11】Am J Physiol Renal Physiol 2003; 285: F1034-F1049.

【非特許文献12】J Am Soc Nephrol 2004; 15: 3035-3043.

【非特許文献13】J Clin Invest 2005; 115: 910-918.

【非特許文献14】Development 1998; 125: 4655-4667.

【非特許文献15】Genes & Dev 2001; 15: 3217-3229.

【非特許文献16】Kidney Int 2005; 68: 23-34

【非特許文献17】J Am Soc Nephrol. 2006;17(10):2706-18

【非特許文献18】Development. 2007 Apr;134(8):1605-15

産業上の利用分野


本発明は、多発性嚢胞腎疾患のモデル魚類及びその利用に関し、詳しくは多発性嚢胞腎疾患のモデル成魚類及び当該モデル魚類の多発性嚢胞腎疾患の発症及び進展等の予防、治療又は症状の改善への利用に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
多発性嚢胞腎モデル小型魚類であって、
前記小型魚類は、ゼブラフィッシュ、メダカ、金魚、ドジョウ、トラフグ及びニジマスからなる群から選択され、
ドミナントネガティブ効果を発現可能に前記小型魚類と同種魚類由来のPKD2遺伝子がコードするタンパク質のC末端側の欠損を生じさせる欠失変異を有する外来性の変異遺伝子を保持する、モデル小型魚類

【請求項2】
メダカである、請求項に記載のモデル小型魚類。

【請求項3】
前記欠失変異はメダカPKD2遺伝子のエクソン12~15の少なくとも一部を欠損させる変異である、請求項2に記載のモデル小型魚類。

【請求項4】
嚢胞腎の形成又は進展に関連する外部因子のスクリーニング方法であって、
請求項1~3のいずれかに記載の多発性嚢胞腎モデル小型魚類にスクリーニング対象である外部因子を付与する工程と、
前記外部因子を付与した前記メダカにおける腎嚢胞の形成及び/又は進展に対する促進作用又は抑制作用を評価する工程と、
を備える、スクリーニング方法。

【請求項5】
前記外部因子は、化合物又は化合物以外の環境因子である、請求項4に記載のスクリーニング方法。

【請求項6】
前記評価工程は、前記腎嚢胞の形成又は進展を抑制する作用を評価する工程である、請求項4又は5に記載のスクリーニング方法。

【請求項7】
前記外部因子付与工程は、前記多発性嚢胞腎モデル小型魚類の発生途中において前記外部因子を付与する工程である、請求項4~6のいずれかに記載のスクリーニング方法。

【請求項8】
前記外部因子付与工程は、前記外部因子を含有するガスを前記多発性嚢胞腎モデル小型魚類に供給する工程である、請求項4~7のいずれかに記載のスクリーニング方法。
産業区分
  • 畜産
  • 薬品
  • 微生物工業
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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