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ルテニウム錯体を触媒とするアルコール化合物の製造方法 実績あり

国内特許コード P000000616
整理番号 E027P23
掲載日 2003年10月21日
出願番号 特願平09-359654
公開番号 特開平11-189600
登録番号 特許第4004123号
出願日 平成9年12月26日(1997.12.26)
公開日 平成11年7月13日(1999.7.13)
登録日 平成19年8月31日(2007.8.31)
発明者
  • 碇屋 隆雄
  • 池平 秀行
  • 村田 邦彦
  • 清藤 信夫
  • 大岡 浩仁
  • 橋口 昌平
  • 大熊 毅
  • 野依 良治
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
  • 住友化学株式会社
  • JFEスチール株式会社
  • 関東化学株式会社
  • 高砂香料工業株式会社
  • 日本曹達株式会社
  • 武田薬品工業株式会社
発明の名称 ルテニウム錯体を触媒とするアルコール化合物の製造方法 実績あり
発明の概要 【課題】 高収率で選択性良く光学活性アルコール化合物等を製造する。
【解決手段】 カルボニル化合物の水素還元触媒用の、単座または二座のホスフィン配位子とともに単座または二座アミン配位子をもつ一般式1の新規光学活性ルテニウム錯体、およびこれを用いたカルボニル化合物の水素還元による光学活性ないしアキラルなアルコール化合物の製造方法。
RuXY(PR)n(NR)m (1)
(X、Yは同じでも異なってもよく、水素、ハロゲンやカルボキシル基又は他のアニオン基、R、R、Rは同じでも異なってもよく、置換基を有してもよい炭化水素基であり、RとRが一緒に置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよく、nは0~4の整数、R、R、Rは同じでも異なってもよく、水素又は置換基を有してもよい炭化水素基、mは0~4の整数である。)
従来技術、競合技術の概要


これまで、遷移金属錯体は、様々な均一系或いは不均系触媒反応の有効な触媒としての実績を有しているが、カルボニル化合物の高効率かつ高選択的な水素化ないし還元反応のための触媒は開発されていない。
均一系触媒を使用してカルボニル化合物類の水素化により対応するアルコール類を製造する方法はこれまでによく知られている。例えば(1)Comprehensive Organometallic Chemistry, Vol.4,931頁(1982)、Eds.G.Wilkinson, F.G.A.Stone and E.W.Abel に記載されたルテニウム錯体を用いるた方法や、(2)Inorg.Nucl.Chem.Letters, Vol. 12,865頁(1976);J.Organomet.Chem., Vol. 129,239頁(1977);Chem. Letters,261頁(1982)およびTetrahedron Letters, Vol. 35,4963頁(1994)に記載されたロジウム錯体を用いる方法、(3)J.Am.Chem.Soc., Vol.115,3318頁(1993)に記載されたイリジウム錯体を用いる方法等が知られている。



しかしながらこれらの従来の方法は、触媒として用いる金属が比較的高価なロジウム、イリジウム、パラジウム、白金などのいわゆる貴金属錯体触媒であり、しかも水素化活性が低く比較的高温あるいは高い水素圧を必要とするため実用には必ずしも適さないという問題点があった。
一方、光学活性アルコールの取得に着目した場合、1)パン酵母などの酵素を用いる方法や、2)金属錯体触媒を用いてカルボニル化合物を不斉水素化する方法などが知られている。とくに後者の方法においては、これまでにも多くの不斉触媒反応の例が報告されている。例えば、(1)Asymmetric Catalysis in Organic Synthesis,56-82頁(1994)Ed.R.Noyori に詳細に記載されている光学活性ルテニウム触媒による官能基を有するカルボニル化合物の不斉水素化方法や、(2)Chem.Rev.,Vol.92,1051-1069頁(1992)に記載されているルテニウム、ロジウム、イリジウムの不斉錯体触媒による水素移動型還元反応による方法、(3)油化学822-831頁(1980)およびAdvances in Catalysis,Vol.32,215頁(1983)Ed.Y.Izumiに記載されている酒石酸を修飾したニッケル触媒を用いて不斉水素化する方法、(4)Asymmetric Synthesis,Vol. 5,Chap. 4(1985)Ed.J.D.Morrison およびJ.Organomet,Chem, Vol.346,413-424頁(1988)に記載されている不斉ヒドロシリル化による方法、(5)J.Chem.Soc.,Perkin Trans, 1,2039-2044頁(1985)およびJ.Am.Chem.Soc., Vol.109,5551-5553頁(1987)に記載されている不斉配位子の存在下にボラン還元する方法、(6)J.Am.Chem.Soc., Vol.117,2675-2676頁(1995)に記載されているホスフィンおよびジアミン不斉配位子の存在下に不斉水素化する方法などが知られている。



しかしながら、酵素を用いる方法は比較的高い光学純度のアルコール類を得ることができるものの反応基質の種類に制約があり、しかも得られるアルコール類の絶対配置も特定のものに限られるという欠点がある。また、遷移金属の不斉水素化触媒による従来の方法の場合には、分子内に官能基を含む、例えばケト酸のような基質に対しては高い選択性で光学活性アルコール類は製造できるものの、官能基を持たない単純構造のカルボニル化合物の水素化においては反応速度に難点があった。さらに、前記(6)文献記載の方法は、選択性および活性の点で優れているものの、ルテニウムホスフィン錯体、ジアミン、及び塩基の3成分を混合して用いており、操作が煩雑であるという難点があった。



このため、従来より、アルコール化合物を製造するための、一般性が高く、しかも高活性、かつ、高選択的な触媒と、これを用いてアルコール化合物、アラルキル及び光学活性アルコール化合物を製造するための方法が求められていた。

産業上の利用分野


この出願の発明は、新規ルテニウム錯体を触媒とするアルコール化合物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、医薬、農薬、あるいは多くの汎用化学品の合成中間体等としてのアルコール化合物、そしてまた、アキラル及び光学活性アルコール化合物を製造するのに有用な高効率触媒である新規ルテニウム錯体を触媒とするアルコール化合物、アキラル及び光学活性アルコール化合物の製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(1)
【化1】


(式中X、Yは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基または他のアニオン基を示し、R,R,Rは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、RとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、nは1から4の整数であり、R,R,Rは、水素原子または、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、mは1から4の整数である。PRおよびNRは、共に光学活性基である。)で表わされるルテニウム錯体と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項2】
一般式(2)
【化2】


(式中、X,Yは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基または他のアニオン基を示し、R,R,Rは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、RとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、nは1から4の整数であり、R,R,R,R10は、水素原子または、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Zは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、mは1から4の整数である。PRおよび次式の基
【化3】


は、共に光学活性基である。)で表わされるルテニウム錯体と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項3】
一般式(3)
【化4】


(式中、X,Yは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基または他のアニオン基を示し、R,R,R,Rは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、RとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、またRとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、Wは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、nは1から4の整数を示し、R,R,Rは、水素原子または、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、mは、1から4の整数である。PR-W-PRおよびNRは、共に光学活性基である。)で表わされるルテニウム錯体と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項4】
一般式(4)
【化5】


(式中、X,Yは、同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基または他のアニオン基を示し、R,R,R,Rは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、RとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、またRとRが一緒になってアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭素鎖環を形成してもよいことを示し、Wは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基であり、nは1から4の整数を示し、R,R,R,R10は、水素原子または、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、Zは、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基から選ばれる置換基を有してもよい炭化水素基を示し、mは1から4の整数である。PR-W-PRと次式の基
【化6】


は、共に光学活性基である。)で表わされるルテニウム錯体と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項5】
前記ルテニウム錯体および、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩からなる二成分触媒系を用いて、当該ルテニウム錯体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする請求項1記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項6】
前記ルテニウム錯体および、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩からなる二成分触媒系を用いて、当該ルテニウム錯体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする請求項2記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項7】
前記ルテニウム錯体および、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩からなる二成分触媒系を用いて、当該ルテニウム錯体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする請求項3記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項8】
前記ルテニウム錯体および、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩からなる二成分触媒系を用いて、当該ルテニウム錯体と、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩または四級アンモニウム塩と、原料のカルボニル化合物とを溶媒中に添加して溶解させた後、水素あるいは水素を供与する化合物の存在下にカルボニル化合物を還元して光学活性アルコール化合物を製造することを特徴とする請求項4記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項9】
PR-W-PRで表される光学活性基が、BINAP:2,2′-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-1,1′-ビナフチル、BINAPのナフチル環がアルキル基およびアリール基から選ばれる置換基を有するBINAP誘導体、BINAPのリン原子上の1個のベンゼン環に1ないし5個のアルキル基を有するBINAP誘導体、またはフッ素置換基を有するBINAP誘導体であることを特徴とする請求項3または4記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項10】
次式
【化7】


で表される光学活性基が、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘプタンジアミン、2,3-ジメチルブタンジアミン、1-メチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジフェニルエチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-イソプロピル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-ベンジル-2,2-ジ(p-メトキシフェニル)エチレンジアミン、1-メチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、1-イソブチル-2,2-ジナフチルエチレンジアミン、または1-イソプロピル-2,2-ジナフチルエチレンジアミンであることを特徴とする請求項2または4記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。

【請求項11】
PR-W-PRで表される光学活性基が、BINAPまたはTol-BINAPであり、次式
【化8】


で表される光学活性基が、1,2-ジフェニルエチレンジアミンであり、XおよびYが塩素原子または水素原子であることを特徴とする請求項4記載の光学活性アルコール化合物の製造方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
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出願権利状態 登録
ライセンス状況 通常実施権[S00-02]
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 野依分子触媒プロジェクト 領域
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