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蛍光増強素子、蛍光素子、及び蛍光増強方法

国内特許コード P09A014439
整理番号 1100
掲載日 2009年5月8日
出願番号 特願2005-332603
公開番号 特開2007-139540
登録番号 特許第4825974号
出願日 平成17年11月17日(2005.11.17)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
登録日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明者
  • 川崎 三津夫
出願人
  • 国立大学法人京都大学
発明の名称 蛍光増強素子、蛍光素子、及び蛍光増強方法
発明の概要

【課題】蛍光物質の蛍光強度を著しく増強させる蛍光増強素子を提供する。
【解決手段】約100~800nmの波長以下の断面粒径と数十nmの厚みを有する平板状金属粒子(特に銀粒子)を基本素子として、これを基板上にアイランド膜として密に配列した表面上に単層もしく多層に蛍光物質を担持させる。金属粒子表面と蛍光物質との距離を調節するために、金属粒子表面にスペーサを備える構成としても良い。本発明の蛍光増強素子によれば、従来の蛍光増強素子では数%程度しか上昇しなかった発光効率を50%程度にまで向上させることができ、また比較的強い発光性を有する色素分散層の発光をさらに強く増強することができる。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


分析対象分子を励起させ、その励起分子から発せられる蛍光を分析することによって分析対象分子の定性及び定量分析を行う蛍光分析法は、高感度分析法の一つであり、微量分析において重要な役割を果たしている。



励起物質から発せられる蛍光は、その蛍光物質自身の特徴をよく反映するだけでなく蛍光物質周囲の環境からも影響を受けやすいため、蛍光物質を標識剤(バイオセンサ)として体内組織やDNAの鑑定に用いることも行われており、生医化学を含め、広範な分野において利用されている。



また、電界効果で励起される蛍光物質は、薄型の表示デバイスの一つとして著しい発展を続けている有機EL素子に応用されている。



このように幅広く利用されている蛍光であるが、蛍光強度は物質によって異なる。通常では蛍光強度が微弱な物質の蛍光を観測できるようになれば、その応用範囲は更に拡大することが期待される。そのため、物質の蛍光を増強することを目的とした研究が盛んに行われてきた。



蛍光増強法として従来からよく知られているのは、金属コロイドや金属アイランド膜の近傍に蛍光分子を存在させることにより、その分子から発せられる蛍光が増強される現象を利用したものである(例えば、特許文献1参照)。



しかし、上記の金属コロイドや金属アイランド膜を利用した蛍光増強法は蛍光増強に有効であるものの、以下に説明する通り、増強に限界があった。



この種の金属ナノ粒子よる蛍光増強作用の原因には二種類の因子がある。第一の因子は、入射光により金属ナノ粒子中に表面プラズモンが励起されたときに生ずる粒子近傍の電場の増強である。近傍の分子はこの増強電場の下でより効率的に励起されるため、実効的に入射光の吸収率(分子の励起効率)が増加し、これに比例して発光強度も強くなる。この増強電場の強さやそれが及ぶ範囲(距離)は金属ナノ粒子のサイズや形状にも大きく依存する。
より重要な第二の因子は、発光の量子収率そのものを増加させる作用であり、その定性的な解釈は次のとおりである。すなわち、励起分子の発光双極子が隣接する金属の表面プラズモン的な自由電子の振動モードを励起し(これにより励起分子のエネルギーが金属に移動したことになる)、金属粒子中に発光性の誘起双極子を与える。系の正味の発光確率は全双極子モーメントの二乗に比例するため、誘起双極子の大きさが元の励起分子の双極子よりも大きくなれば発光効率(量子収率)の増加が期待できる。
しかしながら金属中には同時に様々な自由電子の励起モードが存在し、そのほとんどはジュール熱として急速に失われてしまうため、総じて発光効率は高々数%以下に止まらざるをえなかった。換言すると、もともとの量子収率が比較的高い分子の発光は、上記の増強効果が期待できる荒れた金属表面の近くであっても逆に強く消光されてしまう。それゆえ正味の増強が起こるのは、量子収率が著しく低い分子に限られてきた。



そのため、特許文献1に記載されている蛍光増強装置を含め、従来の各種の蛍光増強法によって正味に得られる蛍光の増強はそれほど大きなものとはならず、発光効率(量子効率)はせいぜい数%にとどまっていたのである。



この問題をより定量的な観点から理解するうえでの重要な不等式が非特許文献1に提示されている。任意の形状を有した金属微粒子内の自由電子の集団的な振動エネルギーが光として放射される速度をΓr、ジュール熱として失われる速度をΓnrとすると、該振動の発光効率はφ=Γr/(Γr+Γnr)で与えられるが、この場合、次式(1)が成り立つというものである。
【数式1】


ここで、Vは粒子の体積、λは光の波長、εは金属の複素誘電率で、Imは複素数の虚部を表す。これを例えば銀にあてはめ、可視部の中心波長(~600 nm)付近で計算すると次式(2)となる。
【数式2】




上記式(2)の意味するところは明瞭である。例えば粒径が約20nmの典型的な銀ナノ粒子については、Γr≦~0.02×Γnrとなり、これはφ≦~0.02を意味する。すなわち、一般的な銀ナノ粒子を蛍光の増強剤として用いても大きな効果を期待できないことが原理的にも明らかである。一方、粒径が約100nm以上の粒子については、上記式(2)による制限は大きく緩和される。しかしこれはあくまでも不等式であって、発光効率φを大きくするための必要条件として粒子体積をできるだけ大きくすることが有利であることを示す一方で、実際にどのような粒子サイズや形態が十分大きな発光効率φの実現を可能にするかについては何も示唆していない。例えば粒径が約500nmの真球状の銀粒子の場合、上記不等式(2)はΓr≦~200×Γnとなり、Γr=0.99、Γnr=0.01のような(つまりφ~1となる)望ましい状況を許容するが、このような銀粒子は実際にはほとんど蛍光を増強する作用を持たないことを本願発明者はすでに確認している。




【特許文献1】特表2005-524084号公報([0045],図1)

【非特許文献1】ジョエル・ガーステン(Joel Gersten)、他1名、「スペクトロスコピック・プロパティーズ・オブ・モレキュールズ・インターアクティング・ウィズ・スモール・ダイエレクトリック・パーティクルズ(Spectroscopic properties of molecules interacting with small dielectric particles)」、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジクス(The Journal of Chemical Physics)、1981,75,1139

産業上の利用分野


本発明は、蛍光物質より発せられる蛍光の強度を増強することができる光学素子及び該光学素子を利用した蛍光増強方法に関する。
なお、本発明においていう「蛍光物質」は、所定の励起光を照射することにより、または電界効果を利用して励起することにより蛍光を発する物質の総称である。また、「蛍光」には「燐光」をはじめとする各種の発光を含むものとする。

特許請求の範囲 【請求項1】
素子表面に担持した蛍光物質の発光を増強する光学素子であって、
互いに独立して形成された、断面粒径が100~800nm、厚みが30~50nmの平板状金属粒子が所定の基板上に多数設けられて成り、
前記平板状金属粒子の表面に、その上に蛍光物質を担持するスペーサを有し、
該スペーサの厚みが10nm以下である
ことを特徴とする蛍光増強素子。

【請求項2】
前記平板状金属粒子が銀から成ることを特徴とする請求項1に記載の蛍光増強素子。

【請求項3】
蛍光物質の発光を増強させる蛍光素子であって、
基板と、
該基板上において互いに独立して形成された、断面粒径が100~800nm、厚みが30~50nmの多数の平板状金属粒子と、
該平板状金属粒子の表面に薄膜状に担持された蛍光物質と、
該蛍光物質上に設けられ、厚みが100nm以下であって内部に前記蛍光物質と同一種類の蛍光物質を分散保持している保持媒体と、
から成ることを特徴とする蛍光素子。

【請求項4】
前記平板状金属粒子が銀から成ることを特徴とする請求項に記載の蛍光素子。

【請求項5】
前記平板状金属粒子の表面にスペーサを備えており、薄膜状に担持される蛍光物質が該スペーサ上に担持されることを特徴とする請求項3又は4に記載の蛍光素子。

【請求項6】
前記スペーサの厚みが10nm以下であることを特徴とする請求項に記載の蛍光素子。

【請求項7】
互いに独立して形成された、断面粒径が100~800nm、厚みが30~50nmの平板状金属粒子が所定の基板上に多数設けられて成る蛍光増強素子において該平板状金属粒子の表面から10nm以下の距離だけ離れた位置に蛍光物質を担持させ、所定の励起光を照射することにより増強された発光を得ることを特徴とする蛍光増強方法。

【請求項8】
互いに独立して形成された、断面粒径が100~800nm、厚みが30~50nmの平板状金属粒子が所定の基板上に多数設けられて成る蛍光増強素子の表面又は該平板状金属粒子の表面から定の距離だけ離れた位置に薄膜状に蛍光物質を担持させるとともに、該蛍光物質上に設けられ、厚みが100nm以下である保持媒体の内部に前記蛍光物質と同一種類の蛍光物質を分散保持させて成る蛍光素子に対して所定の励起光を照射することにより増強された発光を得ることを特徴とする蛍光増強方法。

【請求項9】
前記蛍光増強素子の表面又は前記平板状金属粒子の表面から定の距離だけ離れた位置に薄膜状にドナー及びアクセプタの役割を担う二種類の異なる蛍光物質を混合担持させることを特徴とする請求項7又は8に記載の蛍光増強方法。

【請求項10】
前記ドナーの役割を担う蛍光物質を前記アクセプタの役割を担う蛍光物質よりも多量に担持させることを特徴とする請求項に記載の蛍光増強方法。

【請求項11】
互いに独立して形成された、断面粒径が100~800nm、厚みが30~50nmの平板状金属粒子が所定の基板上に多数設けられて成る蛍光増強素子において、該平板状金属粒子の表面から2nm以下だけ離れた位置に薄膜状に蛍光物質を担持させるとともに、該蛍光物質上に設けられ、厚みが1000nm以上である保持媒体の内部に前記蛍光物質と同一種類の蛍光物質を分散保持させて成る蛍光素子に対してパルスレーザを照射することにより蛍光物質からレーザ発光を生じさせる蛍光増強方法。
産業区分
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2005332603thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
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