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ストレス評価装置、ストレス評価システムおよびストレス評価プログラム コモンズ 新技術説明会

国内特許コード P09A014592
掲載日 2009年8月28日
出願番号 特願2007-234725
公開番号 特開2009-066017
登録番号 特許第5046286号
出願日 平成19年9月10日(2007.9.10)
公開日 平成21年4月2日(2009.4.2)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発明者
  • 山口 亨
  • 藤本 泰成
出願人
  • 公立大学法人首都大学東京
発明の名称 ストレス評価装置、ストレス評価システムおよびストレス評価プログラム コモンズ 新技術説明会
発明の概要

【課題】ユーザの心身の状態を精度良く診断すること。
【解決手段】脈波(W0)を測定する脈波測定手段(C3)と、アトラクタ(A)を構成するアトラクタ構成手段(C5)と、選択ベクトル(X)を選択するデータベクトル選択手段(C6A)と、近傍ベクトル(X,X)を検出する近傍ベクトル検出手段(C6B)と、接線のベクトル(T,T,T)を演算する接線ベクトル演算手段(C6C)と、平行度(tpm)を演算する平行度演算手段(C6D)と、距離(d)を演算する距離演算手段(C6F1)と、複数の平行度(tpm)と、複数の距離(d)とに基づいてストレス評価値(E)を演算するストレス評価値演算手段(C6)と、ストレス評価値(E)と基準ストレス評価値とを比較することにより、ユーザの心身の状態を診断する診断手段(C8)とを備えたストレス評価装置(U)。
【選択図】図2

従来技術、競合技術の概要


従来より、製品やシステム等に対するユーザの使い心地、例えば、使い易さや分かり易さ等を定量化して評価することが行われている。製品等に対するユーザの使い心地を定量化する方法としては、例えば、アンケート等による自己申告を解析する方法が知られている。しかしながら、アンケート等による自己申告では、質問内容や、ユーザの恣意的な感情や、製品使用後にアンケート等に回答することによる記憶の整理等が影響して正確な情報を獲得することが困難であるという問題があった。また、例えば、製品等の連続使用による慣れについて評価する場合、アンケート等による自己申告では、定量化するための正確な情報を獲得すること自体が困難であるという問題があった。



また、ユーザの使い心地を定量化する方法としては、製品等の使用時におけるユーザの生体情報、例えば、製品等の使用時におけるユーザの心理状態やストレス等を解析する方法が知られている。なお、ユーザの生体情報は、アンケート等による自己申告に比べ、リアルタイムにモニタリングでき、ユーザの感情や記憶等にも左右されないため、正確な情報を獲得し易いという特徴がある。
ユーザの生体情報を獲得する方法としては、例えば、Functional MRI(Magnetic Resonance Imaging)による脳神経活動の画像解析、ユーザの顔の温度を測定する方法、心拍数に伴う指尖の血液の容積変動である指尖容積脈波、いわゆる脈波を測定する方法等がある。特に、脈波を測定する方法は、例示した他の方法に比べて、大がかりな装置を使用しなくても実現でき、コストを低減できるため、生体の健康状態や心理状態を解析する方法として広く用いられている。



前記脈波を測定することにより、ユーザの心理状態やストレス等を解析する技術として、例えば、以下の従来技術(J01),(J02)が公知である。
(J01)特許文献1(特開2004-223258号公報)記載の技術
特許文献1には、発光部の光源から人体の特定部位(指尖、耳たぶ等)に特定波長の光を照射した後、照射部位を透過した光の光量信号であるPPG(PhotoPlethysmoGraphy)信号のピーク間隔(Peak to Peak Interval)の変位に基づいて、被験者のストレス程度、すなわち、安定度を評価する安定度評価装置についての技術が記載されている。
(J02)非特許文献1記載の技術
非特許文献1には、脈波についてカオス解析を行うことにより、動脈硬化を正確に把握したり、ストレスや疲労など心身の状態を鋭敏にとらえたりする脈波カオス健康度評価システムについて記載されている。



(カオス解析について)
ここで、カオスとは、あるシステム(系)が所定の規則に従って変化することで、複雑で不規則かつ不安定に振る舞う事象をいう。また、カオス解析とは、自然界の事象からカオス性を抽出し、その変動を生み出す規則を解析するものである。前記カオス解析は、複雑な現象をシンプルな規則で表現できる場合も多いため、状態の把握や予測等に利用され、物理学、工学、経済学、社会学、生命科学等のさまざまな分野で応用されている。
ここで、初期状態が与えられればその後の状態が予測できるという決定論的な規則を有するシステム、例えば、力学系のシステムについては、その構造を、全ての状態変数を軸とする座標空間、いわゆる、状態空間(相空間)の関数として表現でき、その運動を、前記関数による前記状態空間上の軌道(トラジェクトリ)が描く幾何学的構造、いわゆる、アトラクタとして表現できる。よって、前記アトラクタを解析する等により、前記システムのカオス解析を行うことができる。



(アトラクタの構成について)
しかしながら、実際にカオス解析をする段階では、解析対象となるシステムの構造が不明な場合や、前記状態変数の個数が不明な場合もあるため、全ての状態変数により表現された前記アトラクタを構成することは困難である。よって、この場合、1個の状態変数から複数個の状態変数を復元するターケンスの埋め込み定理に基づいて、アトラクタが構成される。具体的には、まず、解析対象のシステムにおける時間経過による位置等の状態変化の情報、いわゆる、時系列データを測定する。次に、時間をt,τとし、時間tでサンプリングされた前記時系列データをx(t)とした場合、前記時系列データx(t)から時間τずつ遅れたタイミングで開始されるn組の時系列データを作製する。すなわち、n組の時系列データx(t),x(t-τ),x(t-2τ),…,x(t-(n-1)τ)を作製する。そして、前記n組の時系列データx(t),x(t-τ),x(t-2τ),…,x(t-(n-1)τ)を状態変数とするn次元状態空間に、各時系列データの値をプロットすることにより前記アトラクタが構成される。



すなわち、x(t),x(t-τ),x(t-2τ),…,x(t-(n-1)τ)を各軸とするn次元状態空間について、t=0,1,2,…の場合のx(t),x(t-τ),x(t-2τ),…,x(t-(n-1)τ)の各値の集合を、それぞれ点X(0),X(1),X(2),…として描画する処理を繰り返す。まず、t=0の場合の点X(0)=(x(0),x(0-τ),x(0-2τ),…,x(0-(n-1)τ))を描画する。次に、t=1の場合の点X(1)=(x(1),x(1-τ),x(1-2τ),…,x(1-(n-1)τ))を描画し、描画された2点X(0),X(1)を結ぶ線を描画する。そして、t=2以降の場合についても同様の処理を繰り返す。このとき、前記各点X(0),X(1),X(2),…がデータベクトル、前記各点X(0),X(1),X(2),…を結んでいった線が軌道(トラジェクトリ)、前記軌道の幾何学的構造が構成されたアトラクタ、τが埋め込み遅れ時間、nが埋め込み次数としてそれぞれ定義されている。
なお、前記ターケンスの埋め込み定理については、例えば、特許文献2(特開2002-73587号公報)、非特許文献2等に記載されており、公知である。



(アトラクタの解析方法について)
さらに、前記ターケンスの埋め込み定理により構成されたアトラクタを解析する技術として、例えば、以下の従来技術(J03)が公知である。
(J03)特許文献3(特許第3785703号明細書)記載の技術
特許文献3には、対象となるシステムによって予め設定された次元(埋め込み次数n)と遅れ(埋め込み遅れ時間τ)とに基づいて、前記システムで測定された時系列データをn次元状態空間に埋め込む処理、すなわち、アトラクタを構成する処理を実行する埋め込み処理部(22)が記載されている。また、特許文献3では、埋め込まれた時系列データのデータベクトル(Xi)がランダムに選択されるデータベクトル選択部(23)と、選択された前記データベクトル(Xi)近傍の空間内で前記データベクトル(Xi)とは異なる軌道上、すなわち、前記近傍空間内では異なる線分上に存在する近傍ベクトル(Xj)を検出する近傍ベクトル検出部(24)とが記載されている。



また、特許文献3には、前記各データベクトル(Xi,Xj)を通過する各軌道の接線方向(Ti,Tj)を演算する接線方向演算部(25)と、前記接線方向(Ti,Tj)の平行度を演算する(評価する)平行度評価部(26)とが記載されている。なお、特許文献3では、前記平行度は、前記接線方向(Ti,Tj)が平行に近いほど0に近い値となる。また、特許文献3では、あるデータベクトルの平行度の評価がされた後、別のデータベクトルに対して平行度の評価を行う処理をN回繰り返している。そして、前記標本数分(N個分)の平行度の平均値を算出し、前記平均値に基づいて決定論的な規則を有するシステムであるか否かを判定する技術が記載されている。



(従来の脈波のカオス解析について)
なお、前記従来技術(J02)には、脈波におけるカオス解析について具体的に開示されていないが、前記従来技術(J03)と同様の技術、いわゆる、軌道平行測度法(TPM:Trajectory Parallel Measure)が利用されていると考えられる。前記軌道平行測度法を利用した脈波のカオス解析については、例えば、以下の従来技術(J04)が公知である。
(J04)非特許文献3,4記載の技術
非特許文献3,4には、前記脈波の変曲点をより明確にするために、測定された前記脈波の2次微分波、いわゆる、加速度脈波を計測する技術が記載されている。また、非特許文献3,4には、前記加速度脈波を時系列データとしてアトラクタを構成し、前記アトラクタにおける前記データベクトルの平行度の平均値等を算出すると共に、従来公知のリカレンスプロット法(非特許文献3等参照)により、前記加速度脈波の定常性の評価値を算出し、前記平均値と、前記評価値とに基づいて、ユーザの健康状態(血流年齢、疾患等)を診断する技術が記載されている。




【特許文献1】特開2004-223258号公報(「0001」~「0008」)

【特許文献2】特開2002-73587号公報(「0021」,「0022」)

【特許文献3】特許第3785703号明細書(「0011」~「0015」、図1~図7)

【非特許文献1】“指先からストレス計測 大屋町の医師らが製品化”、「online」、2003年3月8日、神戸新聞、「2007年5月30日検索」、インターネット<URL:http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/030308ke99580.html>

【非特許文献2】“株式会社CCI カオス複雑系事業部 アトラクタ構成”、「online」、2005年、株式会社CCI、「2007年6月14日検索」、インターネット<URL:http://chaos.cci-web.co.jp/chaos/attractors.html>

【非特許文献3】馬庭芳朗、天田実志、他3名、「医療におけるカオスと複雑系」、日本知能情報ファジィ学会誌「知能と情報」、2003年12月、第15巻、第6号、p.635-642

【非特許文献4】天田実志、馬庭芳朗、他3名、“Salus APG -健康とカオスの新しいアイテム-”、「online」、2003年1月、「2007年5月30日検索」、インターネット<URL:http://www7.ocn.ne.jp/~maniwa/apg.pdf>

産業上の利用分野


本発明は、ユーザの心拍に伴う波動である脈波についてカオス解析を行うことにより、ユーザの心身の状態を診断するストレス評価装置、ストレス評価システムおよびストレス評価プログラムに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ユーザの心拍に伴う波動である脈波を測定する脈波測定手段と、
前記脈波に基づいて、予め設定された遅れ時間および次数に基づいて構成される状態空間の関数を演算することにより、前記状態空間上に描かれた前記関数の軌道の幾何学的構造であるアトラクタを構成するアトラクタ構成手段と、
前記軌道上の点であるデータベクトルについて、複数の前記データベクトルのうちの1つの選択ベクトルを選択するデータベクトル選択手段と、
前記状態空間の部分空間である前記選択ベクトルの近傍空間内において、前記選択ベクトルの近傍の点であり且つ前記選択ベクトルとは異なる軌道上の点である近傍ベクトルを検出する近傍ベクトル検出手段と、
前記選択ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルと、前記近傍ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルとを演算する接線ベクトル演算手段と、
前記各接線のベクトルどうしの平行度を演算する平行度演算手段と、
前記選択ベクトルと、前記近傍ベクトルとの差分ベクトルの長さである距離を演算する距離演算手段と、
複数の前記選択ベクトルにおいて演算された複数の前記平行度と、複数の前記距離とに基づいて、ストレスを評価するためのストレス評価値を演算するストレス評価値演算手段と、
前記ストレス評価値と、予め記憶された基準となるストレス評価値である基準ストレス評価値とを比較することにより、ユーザの心身の状態を診断する診断手段と、
を備えたことを特徴とするストレス評価装置。

【請求項2】
前記脈波の2次微分波である加速度脈波を演算する加速度脈波演算手段と、
前記加速度脈波に基づいて、前記状態空間の関数を演算することにより、前記アトラクタを構成する前記アトラクタ構成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の前記ストレス評価装置。

【請求項3】
前記複数の選択ベクトルに対応する前記複数の平行度から、予め設定された閾値よりも平行に近い平行度の累積度数を計数し、計数された前記平行度の累積度数が、前記複数の平行度の総数に占める割合である平行度累積度数率を演算する平行度累積度数率演算手段と、
前記アトラクタのサイズとして構成された全ての前記データベクトル間の差分ベクトルの長さのうちの最長の長さである最長距離に対する、前記複数の選択ベクトルに対応する前記複数の距離の平均値の割合である距離率を演算する距離率演算手段と、
前記平行度累積度数率と前記距離率とに基づいて、前記ストレス評価値を演算する前記ストレス評価値演算手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前記ストレス評価装置。

【請求項4】
ユーザの心拍に伴う波動である脈波を測定する脈波測定手段と、
前記脈波に基づいて、予め設定された遅れ時間および次数に基づいて構成される状態空間の関数を演算することにより、前記状態空間上に描かれた前記関数の軌道の幾何学的構造であるアトラクタを構成するアトラクタ構成手段と、
前記軌道上の点であるデータベクトルについて、複数の前記データベクトルのうちの1つの選択ベクトルを選択するデータベクトル選択手段と、
前記状態空間の部分空間である前記選択ベクトルの近傍空間内において、前記選択ベクトルの近傍の点であり且つ前記選択ベクトルとは異なる軌道上の点である近傍ベクトルを検出する近傍ベクトル検出手段と、
前記選択ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルと、前記近傍ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルとを演算する接線ベクトル演算手段と、
前記選択ベクトルと、前記近傍ベクトルとの差分ベクトルの長さである距離を演算する距離演算手段と、
複数の前記選択ベクトルにおいて演算された複数の前記平行度と、複数の前記距離とに基づいて、ストレスを評価するためのストレス評価値を演算するストレス評価値演算手段と、
前記ストレス評価値と、予め記憶された基準となるストレス評価値である基準ストレス評価値とを比較することにより、ユーザの心身の状態を診断する診断手段と、
を備えたことを特徴とするストレス評価システム。

【請求項5】
コンピュータを、
ユーザの心拍に伴う波動である脈波を測定する脈波測定手段、
前記脈波に基づいて、予め設定された遅れ時間および次数に基づいて構成される状態空間の関数を演算することにより、前記状態空間上に描かれた前記関数の軌道の幾何学的構造であるアトラクタを構成するアトラクタ構成手段、
前記軌道上の点であるデータベクトルについて、複数の前記データベクトルのうちの1つの選択ベクトルを選択するデータベクトル選択手段、
前記状態空間の部分空間である前記選択ベクトル近傍の近傍空間内において、前記選択ベクトルの近傍の点であり且つ前記選択ベクトルとは異なる軌道上の点である近傍ベクトルを検出する近傍ベクトル検出手段、
前記選択ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルと、前記近傍ベクトルを通過する軌道の接線のベクトルとを演算する接線ベクトル演算手段、
前記各接線のベクトルどうしの平行度を演算する平行度演算手段、
前記選択ベクトルと、前記近傍ベクトルとの差分ベクトルの長さである距離を演算する距離演算手段、
複数の前記選択ベクトルにおいて演算された複数の前記平行度と、複数の前記距離とに基づいて、ストレスを評価するためのストレス評価値を演算するストレス評価値演算手段、
前記ストレス評価値と、予め記憶された基準となるストレス評価値である基準ストレス評価値とを比較することにより、ユーザの心身の状態を診断する診断手段、
として機能させるためのストレス評価プログラム。
産業区分
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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