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キャピラリーとキャピラリーへの触媒固定化方法、並びにマイクロリアクターとこれを用いた固相-液相-気相反応方法 コモンズ

国内特許コード P09P006340
整理番号 E076P109
掲載日 2009年10月1日
出願番号 特願2008-061923
公開番号 特開2009-214056
登録番号 特許第4978864号
出願日 平成20年3月11日(2008.3.11)
公開日 平成21年9月24日(2009.9.24)
登録日 平成24年4月27日(2012.4.27)
発明者
  • 小林 修
  • ナイウェイ ワン
  • 上野 雅晴
  • 松本 努
  • 宮村 浩之
出願人
  • 独立行政法人科学技術振興機構
発明の名称 キャピラリーとキャピラリーへの触媒固定化方法、並びにマイクロリアクターとこれを用いた固相-液相-気相反応方法 コモンズ
発明の概要

【課題】キャピラリー及びキャピラリーへの触媒固定化方法とマイクロリアクター、並びにこのマイクロリアクターを用いた固相-液相-気相反応方法を提供する。
【解決手段】マイクロリアクター1は、キャピラリー2と、キャピラリー2へ液相となる基質を溶解した溶液を供給する反応溶液供給部10と、キャピラリー2へ気相となる気体を供給する気体供給部20と、キャピラリー2における反応生成物を回収する回収部30と、を備え、キャピラリー2は管本体3を有し、管本体の内壁3aに被覆された高分子被膜4と高分子被膜4に固相となる金属触媒を内包した高分子カルセランド担持型触媒5が担持され、キャピラリー2の一端を反応溶液供給部10及び気体供給部20へ接続し、他端30を回収部へ接続し、基質6を溶解した溶液7及び基質6と反応する気体22をキャピラリー2へ所定の流量で連続的に流す。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


従来、金触媒を用いる酸化反応として、例えばアルコールの酸素酸化反応の例が、非特許文献1に、ミリサイズのフロー型リアクターを用いた1級ベンジルアルコール誘導体の酸化反応が報告されている。これは、アルミナ担持型ルテニウム触媒または酸化チタンナノチューブ担持型ルテニウム触媒を、一辺が2mmから5mmの正方形,長さ10cmのミリリアクターに充填することにより、ベンジルアルコールが高い選択性で対応するアルデヒドに変換され、それぞれの触媒系で、300または450h-1と高い触媒回転数(TOF)を実現している。
しかしながら、この場合、反応収率が75%程度と低いため、満足できる水準とはならない。



ここで、気相(酸素ガス),液相(基質溶液)及び固相(触媒)から成る多相系反応において、各相間の接触面積を大きくすることにより収率が改善されるので、例えば激しく撹拌したり、酸素ガスを細かい泡として吹き込む等の工夫が試みられてきた。さらに、通常の反応容器(以下、適宜、フラスコ反応と呼ぶ。)による酸化反応では、系内に水素ガス,溶媒蒸気,高活性な金属触媒が共存するために、発火や爆発が生ずる可能性がある。



一方、近年、マイクロリアクターを用いる有機合成が急速に発展しつつある。マイクロリアクターは、ガラス等の不活性材料に、その大きさが数~数百μmのマイクロ流路(以下、適宜、マイクロチャンネルと呼ぶ。)を有する微小反応器の総称である。マイクロリアクターの反応器は小さいので、厳密な温度コントロールを容易に行うことができる。
従って、マイクロリアクターを用いる合成反応では、単位面積あたりの表面積が大きいので、
(1)温度制御が効率よく行われる、
(2)界面での反応が効率よく発生する、
(3)高速且つ効率的な混合が行われる、
等の利点を有している。



発熱の大きい反応では効率的な断熱が可能となり、反応の制御が容易になると共に、燃焼や爆発の危険性がある反応においても、マイクロリアクターを用いることによって安全性が向上する。例えば、非特許文献2によれば、マイクロリアクターを用いる水素ガスと酸素ガスの触媒反応において、フラスコ型リアクターでは爆発が生じる条件下であっても、管径が消炎距離より小さいことから爆発を伴うことなく反応が進行する例が報告されている。



このように、マイクロリアクターによる合成反応は、通常の反応容器による合成反応よりも反応時間が速く、取り扱う薬液も微少量で済むためにコストが低く、新規な化合物や薬品のために開発用反応器として注目されている。



非特許文献3には、マイクロチャンネル内の微小空間に由来する大きな比界面積を活用した、効率的な気-液-固の三相から成る水素添加反応が報告されている。これにより、マイクロチャンネルの内壁に高分子カルセランド型パラジウム触媒を固定化した触媒担持型リアクターを用い、液相である基質溶液をチャンネル内壁に沿って流し、気相である水素ガスをチャンネル中心部に流すことによって、各相の効率的な接触が実現された結果、アルケンやアルキン類の還元,ベンジル基の脱保護,ニトロ基の還元等の反応が短時間で且つ高収率で進行することが見出された。



このような水素添加反応に対して、例えばアルコールの酸素酸化反応は、高い触媒活性を得ることが困難であり、マイクロリアクターを用いた報告例は非常に少ない。例えば、非特許文献4においては、銀をチャンネル内にコーティングしたマイクロリアクターを用いて、図9に示すように、プレノール(3-メチル-ブテン-1-オール)の気相中酸化反応(400℃)を行うことにより、転換率60~70%で目的のアルデヒド体(3-メチル-2-ブテノール)が得られた。



非特許文献5においては、均一系の酸素酸化反応で高い活性を示すTPAPを活性アルミナに担持し、これをマイクロチャンネルリアクターの経路内に充填することで、図10に示すように、ベンジルアルコールの酸化反応を行うことにより、NMOを用いた液-固の二相系反応ではベンズアルデヒドへの100%の転換率が得られたが、酸素を用いた気-液-固の三相系反応では、ベンズアルデヒドへの転換率は30~40%であった。さらに、反応時間の経過による触媒の失活が観測されており、基質一般性に関してもベンジルアルコール以外の反応性は報告されていない。この場合、触媒をチャンネル内にコーティングまたは充填することによって、三相系の反応が行われているが、気相反応のために使用される基質が限定されてしまい、触媒活性が十分ではなく原料が残存してしまう。従って、基質適用範囲が広くマイクロフロー系に適した高活性な触媒が要求されている。



これに対して、非特許文献6においては、平均1nmの金ナノクラスターを形成する高分子カルセランド型金触媒(PIAu)は、室温下で種々のアルコールの酸化反応を触媒で促進し、無溶媒下160℃の条件で、TOFが20000h-1に到達することが確認されている。この場合、反応後のクラスターの凝集はみられず、10回の繰返し再使用実験において触媒活性の低下を伴うことなく反応収率99%以上を維持していることが確認されている。従って、PIAuをマイクロリアクターに担持することにより、効率的な三相系酸素酸化反応が期待されるが、これまでに、金担持型マイクロリアクターを用いたアルコールの酸化反応の報告はない。



なお、非特許文献7において、内部に海綿体状多孔質の金触媒が担持されたマイクロリアクターを用いて、図11に示すように、D-グルコースをD-グルコン酸に転化する酸化反応が報告されている。しかしながら、原料の送液方法として電気浸透流方式が採用されているため、適用可能な基質が制限されてしまうおそれがある。




【非特許文献1】D. V. Bavykin, A. A. Lapkin, S. T. Kolaczkowski, P. K. Plucinski, Appl. Catal. A, 2005, 288, 175.

【非特許文献2】M. T. Janicke, H. Kestenbaum, U. Hagendorf, F. Schuth, M. Fichtner, K. Schubert, J. Catal., 2000, 191, 282.

【非特許文献3】J. Kobayashi, Y. Mori, K. Okamoto, R. Akiyama, M. Ueno, T. Kitamori, S. Kobayashi, Science, 2004, 304, 1305.

【非特許文献4】E. Cao, A. Gavriilidis, W. B. Motherwell, Chem. Eng. Sci.. 2004, 59, 4803.

【非特許文献5】E. Cao, W. B. Motherwell, A. Gavriilidis, Chem. Eng.Technol., 2006, 29, 1372.

【非特許文献6】H. Miyamura, R. Matsubara, Y. Miyazaki, S. Kobayashi, Amgew. Chem. Int. Ed., 2007, 46, 4151.

【非特許文献7】M. Haruta, T. Kobayashi, H. Sano, N. Yamada, Chem. Lett., 1987, 405.

産業上の利用分野


本発明は、キャピラリーとこのキャピラリーへの触媒固定化方法に係り、詳しくは、内壁に高分子被膜が形成されこの高分子被膜に金属触媒が内包された高分子カルセランド担持型触媒を担持したキャピラリーと、このキャピラリーを用いて触媒を固定化する方法に関するものである。
さらに本発明は、上記キャピラリーを用いたマイクロリアクターと、このマイクロリアクターによる固相-液相-気相反応方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
管本体とこの管本体の内壁に被覆された高分子被膜とこの高分子被膜に担持される触媒と、を備え、
上記触媒は、金属触媒を内包した高分子カルセランド担持型触媒からなる、キャピラリー。

【請求項2】
前記管本体がガラスからなり、前記高分子被膜がポリシロキサンからなる、請求項1に記載のキャピラリー。

【請求項3】
前記金属触媒が、金、パラジウム、白金、ルテニウム、タングステン、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、レニウム、クロム、モリブデン、銀、ロジウムの何れか一つ又はこれらの金属触媒の二つ以上を含む、請求項1に記載のキャピラリー。

【請求項4】
前記高分子カルセランド担持型触媒が、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)触媒からなる、請求項1に記載のキャピラリー。

【請求項5】
管本体の内壁に高分子被膜を備えたキャピラリーへの触媒の固定化方法であって、
上記高分子被膜の表面を高分子カルセランド担持型触媒と結合する基で修飾する第1の工程と、
マイクロカプセル化した高分子カルセランド型触媒を調製する第2の工程と、
上記マイクロカプセル化した高分子カルセランド型触媒をキャピラリー内に送液して加熱架橋によりキャピラリー内壁に固定化する第3の工程と、
を含む、キャピラリーへの触媒固定化方法。

【請求項6】
前記高分子被膜がポリシロキサンであり、前記第1工程において、水素化リチウムアルミニウムのエーテル溶液を送液ポンプによりキャピラリー内に送液する、請求項5に記載のキャピラリーの触媒固定化方法。

【請求項7】
前記第2の工程において、エポキシ基と基質鎖を架橋部位として有するポリスチレン基盤のコポリマーと水素化ホウ素ナトリウムのTHF溶液に対してクロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)触媒を添加した後、貧溶媒となるシクロヘキサンを滴下してマイクロカプセル化金触媒を調製する、請求項5又は6に記載のキャピラリーの触媒固定化方法。

【請求項8】
キャピラリーと、
上記キャピラリーへ液相となる基質を溶解した溶液を供給する反応溶液供給部と、
上記キャピラリーへ気相となる気体を供給する気体供給部と、
上記キャピラリーにおける反応生成物を回収する回収部と、を備え、
上記キャピラリーは管本体を有し、該管本体の内壁に被覆された高分子被膜とこの高分子被膜に固相となる金属触媒を内包した高分子カルセランド担持型触媒が担持され、
上記キャピラリーは一端が上記反応溶液供給部及び気体供給部へ接続され、他端が上記回収部へ接続され、
上記基質を溶解した溶液及び基質と反応する気体を、上記キャピラリーへ所定の流量で連続的に流す、マイクロリアクター。

【請求項9】
さらに制御部を有し、該制御部は、前記反応溶液供給部及び前記気体供給部を、前記キャピラリーの流路へ所定の流量で連続的に流すように制御する、請求項8に記載のマイクロリアクター。

【請求項10】
前記管本体がガラスからなり、前記高分子被膜はポリシロキサンからなり、前記高分子カルセランド担持型触媒が、金、パラジウム、白金、ルテニウム、タングステン、コバルト、銅、鉄、ニッケル、マンガン、レニウム、クロム、モリブデン、銀、ロジウムの何れか一つ又はこれらの金属触媒の二つ以上を含む、請求項8に記載のマイクロリアクター。

【請求項11】
マイクロリアクターを用いて固相-液相-気相の間で被酸化物質を反応させる方法であって、
キャピラリーの流路の内壁に高分子被膜を形成し、
金属触媒を内包した固相のカルセランド担持型触媒を上記高分子被膜に担持し、
上記キャピラリーの流路に液相となる被酸化物質を溶解した溶液及び気相となるガスを流し、
上記溶液と上記ガスとの反応を上記カルセランド担持型触媒によって促進させることを特徴とする、マイクロリアクターを用いた固相-液相-気相反応方法。

【請求項12】
前記気相が酸素ガスである、請求項11に記載のマイクロリアクターを用いた固相-液相-気相反応方法。
産業区分
  • その他無機化学
  • 処理操作
  • 有機化合物
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2008061923thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) ERATO 小林高機能性反応場プロジェクト 領域
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