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IgA抗体の選択的産生からIgA及びIgG両抗体産生への切換えを可能にする抗原薬物ビークルとこれを用いる経鼻・粘膜ワクチン 実績あり 外国出願あり

国内特許コード P09S000244
整理番号 TUK20080017
掲載日 2009年12月4日
出願番号 特願2007-529555
登録番号 特許第5028627号
出願日 平成18年8月4日(2006.8.4)
登録日 平成24年7月6日(2012.7.6)
国際出願番号 2006JP315515
国際公開番号 WO2007018152
国際出願日 平成18年8月4日(2006.8.4)
国際公開日 平成19年2月15日(2007.2.15)
優先権データ
  • 特願2005-227504 (2005.8.5) JP
発明者
  • 木戸 博
  • 水野 大
出願人
  • 国立大学法人徳島大学
発明の名称 IgA抗体の選択的産生からIgA及びIgG両抗体産生への切換えを可能にする抗原薬物ビークルとこれを用いる経鼻・粘膜ワクチン 実績あり 外国出願あり
発明の概要
安全かつ有効な経鼻・不活化・粘膜ワクチンの実用化、従来の不活化ワクチン・トキソイド・アレルゲン等にIgAとIgG両抗体の産生能を付与する技術、アレルギーの予防と治療手段等の確立を課題として、経鼻、経粘膜及び経皮投与を可能にする抗原薬物ビークル(ADビークル)、これを用いる粘膜免疫と体液性免疫とを同時に誘導する不活化ワクチンおよびその製造技術、IgA抗体の選択的産生の誘導からIgA及びIgG両抗体産生の誘導への切換えを可能にするADビークル、これを用いる経鼻ワクチン、粘膜ワクチン、アレルギーの治療剤・予防剤等を提供する。
従来技術、競合技術の概要 従来の不活化ワクチンやトキソイド等には次の欠点が知られている:
(1)自然感染ルートでの乏しい感染防御:ワクチン接種ルートが皮下、筋肉内等であるのに対し、細菌やウイルス等の自然感染ルートは、例えば鼻腔、気管、腸管等の粘膜であり、上記接種ルートとは異なる。自然感染の実態に即した接種ルートによる感染防御、特に粘膜経由のワクチン投与よる粘膜での感染防御の実現が望まれる。
(2)低い粘膜免疫性:ワクチン被接種者においては、主に免疫グロブリンG(以下「IgG」又は「IgG抗体」と略記する)が血中に産生され、体液性免疫が誘導される。しかし、粘膜免疫を担う分泌型免疫グロブリンA(以下「IgA」又は「IgA抗体」と略記する)は、ほとんど産生されず、粘膜免疫の成立は期待できない。尚、IgA抗体の必要性と有効性は次の通りである:IgA抗体は、飛沫や空気による鼻腔、気管等の呼吸器への感染、また、経口による腸管への感染の門戸である粘膜での感染防御、即ち、粘膜免疫を担っており、臨床免疫上、極めて重要な役割を演じている。更に、IgG抗体が、抗原に対する特異性が高く、感染防御スペクトルが狭隘で、抗原変異した病原体の感染防御にはほとんど無効であるのに対し、分泌型IgA抗体は、交差免疫性、即ち、交差中和活性があるので、それだけ感染防御スペクトルの幅が広く、変異抗原に対する感染をも防御する。
(3)追加接種の必要性と重なる費用:初回免疫の1回接種だけでは産生されるIgG抗体が低く、確実な効果が期待できないため、その後のIgG抗体保有状況に基づき、更に1回以上の追加接種、いわゆるブースター接種により血中IgG抗体価を高める必要がある。そのため、経費や労力を繰り返し要する上に、ブースター接種の機会に恵まれた高齢者、成人及び学童では効果が認められるが、その機会を逸し易い低年齢、特に2歳以下の乳幼児では効果なしのケースが散見される。

以上につき換言すれば、従来の不活化ワクチンやトキソイド等は、被接種者において主に血中IgG抗体の産生を誘導し、体液性免疫を高める作用効果をもたらし、その有効性は確認されている。しかし、IgA抗体産生ないしは粘膜免疫の誘導能が低いため、自然感染を防御するに十分な機能と効果には限界がある。かかる現状から、従来ワクチンの欠点を解消するため、現在までに多種多様な側面から多くの試みがなされている。例えば、ワクチン抗原の質的又は量的改良、不活化ワクチンに代わる生ワクチンの試作、新しい接種ルートや粘膜ワクチン等の開発、体液性免疫の高進とその持続をもたらすアジュバントのスクリーニング、粘膜免疫アジュバントの開発に特定した試行等々。しかし、未だ安全かつ有効な粘膜ワクチンの開発は達成されていない。

以下、粘膜ワクチンの開発につき、説明する:
(1)ワクチン抗原の増量:皮下又は筋肉内接種するワクチン抗原を増量し、粘膜に分泌されるIgG及びIgA抗体量を増加させる試みがされている。例えば、従来の不活化インフルエンザワクチンに該ウイルス膜蛋白のノイラミニダーゼを添加混合して抗体産生量を増加させたり、アジュバントとしてMF59を添加混合する方法等が試みられている。しかし、これには痛みを生じ、副反応が強くなる等の不都合が見られる。
(2)経鼻投与型の不活化ワクチン:最も有効と考えられる分泌型IgA抗体による感染防御のため、液状のスプリット抗原を経鼻に直接接種する方法が試みられたが、IgA産生量の低いことが指摘されている。そこでIgA抗体産生能を上げるため、スプリット抗原にアジュバントとしてコレラ毒素を添加混合し、粘膜免疫応答、即ち、IgA抗体産生能を上げる試みがなされているが、アジュバントとしての毒素の安全性が保証されていない現状から、実用化には至っていない。また、大腸菌易熱性毒素をアジュバントに用いたスプリット型の経鼻・不活化インフルエンザワクチン[Berna Biotech社(スイス)製・商品名Nasalflu]が、世界初の経鼻インフルエンザワクチンとしてスイスで認可され2000年10月から販売されていた。しかし、該ワクチン被接種群において、ベル麻痺が25.2%の被接種者で検出されたため、2004年2月に臨床使用が中止された(非特許文献1及び2)。
(3)鼻腔内接種が可能な低温馴化株を用いる生ワクチン:低温馴化インフルエンザウイルス(2つのA型株と1つのB型株の合計3株の混合、いずれの株もリアソータント)を鼻腔内に接種する生ワクチン[MedImmune V/Accines社(米国)製・商品名FluMist]が米国で2003年6月に認可・販売されてはいる(非特許文献3)。尚、これ等の低温馴化株ウイルスの増殖の最適温度は25℃であり、37℃(B型株)又は39℃(A型株)ではほとんど増殖しない。しかし、低温馴化親株の弱毒のメカニズムが明らかでなく毒性復帰の危険性は否定できない。更に、ワクチンの有効成分が生きたウイルスのため、細胞内への侵入力が高く免疫の初期化には優れているが、軽度のインフルエンザ症状が散発するので、インフルエンザに感染すると重症化しやすいハイリスクのヒトや高齢者等には使えない;インフルエンザウイルス抗原の頻繁な連続変異(drift)や不連続変異(shift)に対する有効性は不明等の欠点が見られる。
(4) その他のワクチン:ワクチニアウイルスをウイルスベクターとしたベクターワクチンや、リバースジェネティクスによる弱毒生ワクチン、DNAやcDNAそのものを有効成分として用いるDNAワクチン等の開発が実験的に進められてはいるが実用化には至っていない。

更に、以下、免疫アジュバントの開発につき、説明する:
(1)免疫アジュバント:免疫アジュバントは、免疫応答の強化や抑制等の調節活性を有する物質の総称であり、被接種体内での抗原の徐放や貯留等を目的とした投与形態に係る物質と、免疫応答の高進や抑制等を図るための物質に2大別される。これ等のうち、前者、投与形態のためのアジュバントとしては、例えばリン酸アルミニウム、ミョウバン等を用いるワクチンやトキソイドが既に実用化されている。しかし、後者、免疫応答の強化・高進を図るためのアジュバントの実用化は、未だ知られていない。例えば、細菌由来のBCG生菌、BCG-CWS、エンドトキシン、グルカン等、合成されたムラミルジペプチド、レバミソール、ポリI-ポリC、ベスタチン等、また、サイトカイン類のインターフェロン、TNF、CSF等が公知であるが、関節炎、慢性関節リウマチ、高γグロブリン血症、貧血等のアジュバント病、効果が不十分等々の理由により、これ等の実用化には安全性と有効性の保証が必要だと思量される。また、広く体液性免疫の誘導強化を図るため、高等動物由来の肺サーファクタント・プロテインBをアジュバントとして用いる技術(特許文献1及び非特許文献4)が公知であるが、その実用化は未だ知られていない。
(2)粘膜免疫用アジュバントの開発:例えば、百日咳毒素Bオリゴマー(特許文献2)、コレラ毒素(特許文献3)、大腸菌の易熱性エンテロトキシンBサブユニットLTB(特許文献4)、デンプン粒子(特許文献5)、コレラトキシンB鎖タンパク質CTB(特許文献6)、ベロ毒素1のBサブユニツト(特許文献7)、オリゴヌクレオチド(特許文献8)、インターロイキン12(非特許文献7)、キトサン(非特許文献5)、ナイセリア属菌の可溶化・外皮膜タンパク質(非特許文献6)等々、多種多様に開発されてはいるが、未だ実用化には至っていない。

以上の通り、皮下や筋肉内等へ接種する従来ワクチンから、ウイルスの自然感染ルートである粘膜においてIgA抗体の産生を誘導する粘膜ワクチンへの切り替えの必要性は、広くかつ深く認識されている。特に、21世紀における次世代ワクチンとしては、IgA抗体の産生、局所免疫あるいは粘膜免疫を誘導する、いわゆる粘膜ワクチンの開発と実用化が全世界で待望されてはいるが、未だ達成されていない。その理由は、IgA抗体産生、局所免疫ないしは粘膜免疫を誘導する機能をワクチンに付与するための安全かつ有効なアジュバントが特定・確立されていないことにあると思量される。
【特許文献1】特表2002-521460号公報
【特許文献2】特開平3-135923号公報
【特許文献3】特表平10-500102号公報
【特許文献4】特表2001-523729号公報
【特許文献5】特表2002-50452号公報
【特許文献6】特開2003-116385号公報
【特許文献7】特開2003-50452号公報
【特許文献8】PCT公表WO00/20039号パンフレット
【非特許文献1】New Engl.J.Med.、第350巻、896-903頁、2004年
【非特許文献2】New Engl.J.Med.、第350巻、860-861頁、2004年
【非特許文献3】Cleve.Clin.J.Med.、第70巻、801-806頁、2003年
【非特許文献4】Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.、第24巻、452-458、2001年
【非特許文献5】AdV/Ances Drug Delivery Rev.、第51巻、81-96頁、2001年
【非特許文献6】V/Accine、第21巻、3706-3712、2003年
【非特許文献7】Infection and Immunity、第71巻、4780-4788頁、2003年
【非特許文献8】J.neonatal Nursing、第10巻、2-11頁、2004年
【非特許文献9】Biology of the Neonate、第74巻(suppl1)、9-14頁、1998年

産業上の利用分野 この発明は、経鼻、経粘膜及び経皮投与を可能にする抗原薬物(AD)ビークル、これを用いる粘膜免疫及び体液性免疫の誘導方法、更に詳しくは、IgA抗体の選択的産生の誘導からIgA及びIgG両抗体産生の誘導への切換えを可能にするADビークル、これを用いる経鼻ワクチン、粘膜ワクチン、アレルギーの治療と予防剤等に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
肺サーファクタントプロテインBの断片又はその機能構造に模倣の合成ペプチド、肺サーファクタントプロテインCの断片又はその機能構造に模倣の合成ペプチド、若しくは肺サーファクタントプロテインBおよびCのそれぞれの断片の融合型合成ペプチド、並びに少なくとも1種の脂質からなる複合体である抗原薬物(AD)ビークルに、分泌型IgAを誘導する量のインフルエンザ抗原を共存、接触、捕捉又は吸着させることにより得られる粘膜ワクチンであって、
肺サーファクタントプロテインBの断片が配列番号21~24に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
肺サーファクタントプロテインBの断片の機能構造に模倣の合成ペプチドが配列番号26に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
肺サーファクタントCの断片が配列番号20、25に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
肺サーファクタントプロテインCの断片の機能構造に模倣の合成ペプチドが配列番号27~29に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、
融合型合成ペプチドが配列番号30に記載のアミノ酸配列からなるペプチドであり、
上記ビークルの乾燥質量(V)と上記抗原の乾燥質量(A)との重量比V/Aが1を超える場合に分泌型IgAとIgGの両抗体の産生を誘導し、
上記重量比V/Aが以下になる場合に分泌型IgA抗体産生を選択的に誘導する、
ことを特徴とする粘膜ワクチン。

【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種の脂質が、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群より選択される請求項1に記載の粘膜ワクチン。

【請求項3】
請求項1に記載の粘膜ワクチンを非ヒト動物に経鼻投与して粘膜免疫を誘導する方法であって、ビークルの乾燥質量(V)と抗原の乾燥質量(A)との重量比V/Aが1を超える粘膜ワクチンを投与して分泌型IgAとIgGの両抗体の産生を誘導するか、または上記重量比V/Aが1以下である粘膜ワクチンを投与して分泌型IgA抗体産生を選択的に誘導することを特徴とする粘膜免疫誘導法。
国際特許分類(IPC)
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