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小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定データの取得方法およびその利用 コモンズ

国内特許コード P09P006426
整理番号 OP00403
掲載日 2010年1月12日
出願番号 特願2008-274887
公開番号 特開2009-131247
登録番号 特許第5540343号
出願日 平成20年10月24日(2008.10.24)
公開日 平成21年6月18日(2009.6.18)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
優先権データ
  • 特願2007-288985 (2007.11.6) JP
発明者
  • 大守 伊織
  • 大内田 守
出願人
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定データの取得方法およびその利用 コモンズ
発明の概要 【課題】本発明は、脳炎または脳症を発症していない者について、脳炎または脳症に罹患するリスクを判定するためのデータを取得する脳炎または脳症の罹患リスク判定データの取得方法およびその利用、並びに熱性けいれんのてんかんへの移行リスク判定データの取得方法およびその利用を提供する。
【解決手段】生体から分離した試料を用いて、電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するサブユニットをコードする遺伝子群に含まれる少なくとも1つの遺伝子について、アミノ酸変化を伴う変異の有無を検出する。これにより、脳炎または脳症を発症していない者について、急性および慢性を問わず、脳炎または脳症に罹患するリスクを判定するためのデータを取得することができる。また、熱性けいれん既往者がてんかんへ移行するリスクを判定するためのデータを取得することができる。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要



小児の脳炎および脳症には処置が遅れると、難治性で予後の悪い病態に進行するものが多い。脳炎および脳症としては、短期に病状が進行する急性脳炎および急性脳症や、長期にわたって持続する慢性脳炎の「ラスムッセン脳炎」などが挙げられる。





急性脳炎および急性脳症は乳幼児期に多く、様々なウイルス感染や薬剤が引き金になって起きる。例えば、日本では、インフルエンザウイルス感染に伴って急性脳炎または急性脳症を引き起こすことが多い。このようなインフルエンザウイルスによって引き起こされる急性脳炎および急性脳症はインフルエンザ脳症とも呼ばれる。急性脳炎および急性脳症の原因には、インフルエンザのほか、種々のウイルス感染やアスピリン(解熱剤)、テオフィリン(気管支拡張剤)などの薬剤等がある。しかし、原因が同定できない場合も少なからず認められる。





急性脳炎および急性脳症は、ウイルス感染を発症してから数時間~数日後に、意識障害、けいれん、異常行動(奇声をあげる、意味のわからない発言や行動など)、異常なおびえや怒り、幻覚などの精神症状などで発症する。





医学的には、髄液にウイルスを検出できた場合を急性脳炎、ウイルスを検出できない場合を急性脳症として区別される。しかし、髄液から原因ウイルスを検出できなくても中枢神経系への感染を否定することは現状では困難である。また、両者の臨床症状が非常に類似している。そのため、実際の医療現場では急性脳炎と急性脳症とを区別して扱うよりも「急性脳炎および急性脳症」として総括して報告することが多い(非特許文献1を参照)。





急性脳炎および急性脳症は、軽症の場合、後遺症を残すことなく回復する。しかし、重症の場合、突然のけいれんや意識障害が出現することが多い。また、後遺症としては、てんかん、知能障害、四肢麻痺などが認められる。





さらに、重症な場合には、経過中に、播種性血管内凝固、肝機能障害、腎機能障害、横紋筋融解症など、他の重篤な合併症を伴うことが多い。このような合併症を伴う最重症例では、最終的に多臓器不全の状態に陥り死亡することがある。中には、脳症発症後1~2日で死亡に至ることもあり、死亡率は30%、後遺症も25%の患者に認められる重篤な疾患で、小児の死亡原因の第6位になっている。





我が国では、急性脳炎および急性脳症の発症頻度は10万人に2~4人程度(0.003%)と考えられている(非特許文献2および3を参照)。具体的には、非特許文献2には、小児脳炎の発症頻度は小児10万人あたり3.3人であることが記載されている。また、非特許文献3には、急性脳炎および急性脳症の発症頻度は、100万人あたり17.7人であることが記載されている。さらに、急性脳炎および急性脳症のうち、日本人で頻度の高いインフルエンザ脳症について言えば、主に6歳以下の子供がかかり、日本では毎年100~300人前後の患者が発症している。





急性脳炎および急性脳症の治療法として、例えば、インフルエンザ脳症では、抗インフルエンザ剤の投与、ステロイド療法、ガンマグロブリン療法、血漿交換、低体温療法などが行われている。しかし、これら治療法の効果は、いまだ十分とはいえず、治療法が確立されたといえる状況には至っていない。





そのため、急性脳炎および急性脳症を診断する方法がいくつか開発されている。具体的には、インフルエンザ脳症は、日本を含む東アジアに多く欧米には少ないため、遺伝的要因の関連が考えられており、遺伝的要因に着目した診断方法がいくつか開発されている。





例えば、特許文献1には、小児髄液中に含まれる14-3-3タンパク質のアイソフォームにおいて、β、θ、γ、ζ、εの順に強く検出された場合に、小児インフルエンザ脳症であると判断できることが記載されている。





また、最近、インフルエンザ脳症への罹患を左右する遺伝子多型解析が行われており、染色体10q22に位置する特定の遺伝子の遺伝子多型がインフルエンザ脳症の発症と関連していることが報告されている。





さらに、解熱鎮痛剤及びこれに関連する薬剤を投与したときにインフルエンザ脳症を発症するリスクを判定する方法として、例えば、特許文献2の技術が知られている。





特許文献2に開示されるインフルエンザ脳症の発症リスクの判定方法では、まず、血管内皮細胞に、インビトロでウイルスを感染させる前後又は同時に、解熱鎮痛剤又はその候補薬剤を接触させ、あるいは、非ヒト動物に、ウイルスを感染させる前後又は同時に、解熱鎮痛剤又はその候補薬剤を投与する。次に、(1)血管内皮細胞内のウイルス増殖の程度、(2)血管内皮細胞における血管の透過性亢進の程度、又は、(3)血液脳関門における血管内皮細胞間のタイトジャンクションを構成するタンパク質の発現量を測定する。これらの結果を、解熱鎮痛剤又はその候補薬剤無添加の場合と比較することにより、解熱鎮痛剤又はその候補薬剤を投与したときに、インフルエンザ脳症を発症するリスクを判定する。





一方、慢性脳炎としては、ラスムッセン脳炎が挙げられる。ラスムッセン脳炎は、神経細胞に対する自己免疫疾患の一つで、しばしば部分発作の重積で発症する。年余にわたり緩徐に進行する慢性脳炎で、さまざまな脳機能障害や精神症状を起こす。子供に発病することが多く、脳炎にかかった部分の脳は萎縮し難治てんかん発作を反復する。





ラスムッセン脳炎の治療方法としては、病巣を部分的に切除しても、残された脳組織に再発するので大脳半球離断術が推奨されている。





また、小児には約8%の高い発症率で熱性けいれんが起こる。熱性けいれんは、発熱によって起こるけいれん発作である。生後6ヶ月から5歳頃までに発症し、大多数の症例では6歳までに治癒する。積極的な治療を必要としないことが多く原則として良性の疾患である。





しかし、1歳未満に発症する熱性けいれんの中には、6歳以降もけいれんが持続する難治てんかん患者が混在している。すなわち、熱性けいれんからてんかんへの移行が起こりうる。難治てんかん患者は何度もけいれんを繰り返し、てんかん重積など危険な状態を経験していることがしばしばである。難治てんかん患者は、程度に差があるものの、歩行に軽度の遅れがみられることがあり、有意語はみられるが文章を話すようになることはほとんどない。歩行の不安定性は持続、または進行することがある。





このように、熱性けいれんがてんかんへ移行すると重篤な症状を呈するため、より早期にてんかん発症を予測することが患者にとって重要である。より早期にてんかん発症を予測することが可能になれば、事前に対応することができ、患者が重篤な状態になるのを防ぐことが可能である。そのためには、熱性けいれん既往者のてんかんへの移行を予測する方法の開発が必要であり、当該方法が開発されれば、てんかんへ移行する可能性が高いと予測される者をできるだけ早い時期にてんかん専門医に紹介することが可能となる。





これまでに、てんかん患者の遺伝子を検査することによっててんかんのタイプを診断する方法についてはいくつかの技術が知られている(特許文献3,4)。

【特許文献1】

開2005-292108号公報(平成17(2005)年10月20日公開)

【特許文献2】

開2007-53942号公報(平成19(2007)年3月8日公開)

【特許文献3】

表2004-512812号公報(平成16(2004)年4月30日公表)

【特許文献4】

開2002-136289号公報(平成14(2002)年5月14日公開)

【非特許文献1】

児科臨床 54,193-199(発行日:平成13年(2001)2月5日、発行所:日本小児医事出版社)

【非特許文献2】

児科臨床 57,2223-2228(発行日:平成16年(2004)11月5日、発行所:日本小児医事出版社)

【非特許文献3】

学のあゆみ 別冊 神経疾患(ver.1),432-435(発行日:平成11(1999)年11月15日、発行所:医歯薬出版株式会社)

産業上の利用分野



本発明は、脳炎または脳症の罹患リスク判定データの取得方法およびその利用、並びに熱性けいれんのてんかんへの移行リスク判定データの取得方法およびその利用に関するものであり、特に、脳炎および脳症を発症していない者について、脳炎または脳症に罹患するリスクを判定するためのデータを取得する脳炎または脳症の罹患リスク判定データの取得方法およびその利用、並びに、熱性けいれんの既往者について、てんかんに罹患するリスクを判定するためのデータを取得する熱性けいれんのてんかんへの移行リスク判定データの取得方法およびその利用に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスクを判定するためのデータを取得する小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定データの取得方法であって、
小児てんかん患者から分離した試料を用いて、電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子について、以下の(1)~(4)の何れか1つ以上のアミノ酸変化を伴う変異の有無を検出することを含むことを特徴とする小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定データの取得方法
(1)配列番号2に示される塩基配列の第3006位のシトシンの欠失;
(2)配列番号2に示される塩基配列の第4721位のシトシンのグアニンへの置換;
(3)配列番号2に示される塩基配列の第5020位のグアニンのシトシンへの置換;
(4)配列番号2に示される塩基配列の第5726位のシトシンのチミンへの置換。

【請求項2】
上記変異は、上記電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1の活性を変化させる変異であることを特徴とする請求項1に記載の小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定データの取得方法。

【請求項3】
小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスクを判定するための小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定キットであって、電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子について、以下の(1)~(4)の何れか1つ以上のアミノ酸変化を伴う変異の有無を検出するために、
(a)電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子のエキソン領域、エキソンとイントロンとの境界領域、もしくはmRNA、またはそれらの一部を増幅できるように設計されたプライマー、
(b)電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子の特定の遺伝子型のエキソン、エキソンとイントロンとの境界領域、もしくはmRNA、またはそれらの一部のみを特異的に検出できるように設計されたプローブ、並びに
(c)電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子の特定の遺伝子型の翻訳産物であるポリペプチドまたはその一部のみに特異的に結合する抗体のうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の罹患リスク判定キット
(1)配列番号2に示される塩基配列の第3006位のシトシンの欠失;
(2)配列番号2に示される塩基配列の第4721位のシトシンのグアニンへの置換;
(3)配列番号2に示される塩基配列の第5020位のグアニンのシトシンへの置換;
(4)配列番号2に示される塩基配列の第5726位のシトシンのチミンへの置換。

【請求項4】
小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の治療薬剤をスクリーニングするための細胞であって、
電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子に、以下の(1)~(4)の何れか1つ以上のアミノ酸変化を伴う変異を有することを特徴とする細胞
(1)配列番号2に示される塩基配列の第3006位のシトシンの欠失;
(2)配列番号2に示される塩基配列の第4721位のシトシンのグアニンへの置換;
(3)配列番号2に示される塩基配列の第5020位のグアニンのシトシンへの置換;
(4)配列番号2に示される塩基配列の第5726位のシトシンのチミンへの置換。

【請求項5】
小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の治療薬剤をスクリーニングするための細胞の製造方法であって、
電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子に、以下の(1)~(4)の何れか1つ以上のアミノ酸変化を伴う変異を導入する工程を含むことを特徴とする細胞の製造方法
(1)配列番号2に示される塩基配列の第3006位のシトシンの欠失;
(2)配列番号2に示される塩基配列の第4721位のシトシンのグアニンへの置換;
(3)配列番号2に示される塩基配列の第5020位のグアニンのシトシンへの置換;
(4)配列番号2に示される塩基配列の第5726位のシトシンのチミンへの置換。

【請求項6】
請求項4に記載の細胞に、候補薬剤を投与し、
該細胞における電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1の活性が変化したか否かを判定することを含むことを特徴とする小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の治療薬剤のスクリーニング方法。

【請求項7】
上記候補薬剤は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1に対する阻害剤もしくは作動薬、または電位依存性ナトリウムイオンチャネルNa1.1を構成するαサブユニット1型をコードする遺伝子もしくはその核酸配列の一部からなるポリヌクレオチドを含む発現プラスミドベクターもしくはウイルスベクターであることを特徴とする請求項6に記載の小児てんかん患者における急性脳炎または急性脳症の治療薬剤のスクリーニング方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
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