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磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス

国内特許コード P09A014972
整理番号 QP050038-JP
掲載日 2010年1月29日
出願番号 特願2007-535391
登録番号 特許第4189502号
出願日 平成18年7月25日(2006.7.25)
登録日 平成20年9月26日(2008.9.26)
国際出願番号 PCT/JP2006/314663
国際公開番号 WO2007/032149
国際公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
優先権データ
  • 特願2005-271096 (2005.9.16) JP
発明者
  • 能崎 幸雄
  • 松山 公秀
出願人
  • 九州大学
発明の名称 磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス
従来技術、競合技術の概要 【背景技術】近年、ユビキタス環境を指向した高度情報化社会において、GHz帯の周波数を利用する情報通信機器(携帯電話や高速道路料金自動収受システム(ETC)、RF-ICタグ等)が増加している。これを背景に、GHzオーダの共鳴周波数をもつ強磁性共鳴(FMR)を利用して、共振器、バンドストップフィルタ、バンドパスフィルタ、高周波薄膜インダクタ、電磁波受信デバイス、移相器、磁気メモリ、磁気連想メモリなどを実現しようとする研究が1980年代後半から報告されてきた。強磁性共鳴現象とは、MRAM記憶セルのように一軸磁気異方性Kuを持つ試料に対し、磁化困難軸方向に交流磁界Hacを印加した場合、磁化Mの振幅がある周波数(共鳴周波数: fres)で急激に増大する現象である。一般に、強磁性共鳴周波数fresは、以下の式で表される。
【数1】
ここでHextは磁化容易軸方向に印加した外部磁界、Hk(=2Ku/Ms)は一軸磁気異方性の強さを表す異方性等価磁界、Msは強磁性体の飽和磁化、γはジャイロ磁気定数を表している。このような強磁性体を伝送線路に用いれば、共鳴周波数において強磁性共鳴現象によるエネルギー吸収が生じるので、図1(A)に模式的に示したような構造を有し、図1(B)に示したような特性を有するバンドストップフィルタとして機能する。上記式を見てもわかるように、ストップバンドは主に異方性等価磁界Hkの大きさで決まる。このため、GHz帯のフィルタリングを実現するために、一軸磁気異方性Kuの大きな単結晶材料を用いた報告例が多い。しかし、強磁性金属の単結晶成長は半導体の場合に比べて非常に難しく、量産化に向けた技術はいまだ確立されていない。また、上記式はストップバンドを外部磁界により変調できることを示している。しかしながら、GHz帯で変調する場合には、1kOeを超える大きな磁界が必要となるため、実デバイス化に向けてこれが大きな課題となっている。そのため従来、各種の高周波デバイスでは、磁性層の膜厚方向の電気伝導率を低減し、渦電流損失の増加を防ぐために強磁性体の多層構造を用いている。これは多層構造にすると、高周波領域で大きなインダクタンス値を確保できるからである。例えば、特開平06-349637号公報(特許文献1)等には、強磁性層と非磁性絶縁層を交互に積層した多層構造が開示されている。しかしながら電磁波の吸収体(フィルタ等)や、メモリや、論理演算素子などのデバイス応用を指向した技術では、強磁性体の多層構造はあまり利用されていない。しかし各種高周波デバイスに搭載するための薄膜インダクタには、強磁性体の多層構造を利用したものが知られている。例えば、特開2003-249408号公報(特許文献2)「スパイラルコイルを用いたインダクタ」、特開平06-349637号公報(特許文献3)「つづら折型のコイルを用いたインダクタ」、及び特開平11-135326号公報(特許文献4)「つづら折型のコイルを用いたインダクタ」がある。これらの公報に記載の技術では、強磁性体の多層構造を渦電流損失の増加を防ぐ目的で用いている。しかしながら特開2003-257739号公報(特許文献5)「高周波デバイス」には、多層構造(強磁性金属膜と反強磁性酸化物薄膜から成る)を強磁性/反強磁性交換結合による一方向磁気異方性の発現と、渦電流損の低減とに利用し、これにより伝送線路や各種デバイスの高周波化・広帯域化を実現する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平06-349637号公報
【特許文献2】特開2003-249408号公報
【特許文献3】特開平06-349637号公報
【特許文献4】特開平11-135326号公報
【特許文献5】特開2003-257739号公報
産業上の利用分野 本発明は、複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されてなる磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイスに関するものであり、特にフィルタ、高周波薄膜インダクタ、電磁波受信デバイス、磁気メモリ装置及び磁気連想メモリ等に適した高周波デバイスに関するものである。
特許請求の範囲 【請求項1】 伝送線路と、 複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されて構成され且つ前記伝送線路に対して配置される1以上の磁性多層膜ドットとを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態において、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持できる膜厚寸法、形状及び磁気特性をそれぞれ有しており、 前記複数の磁性層の積層方向が前記伝送線路を流れる電磁波の進行方向と直交する方向に向くように、前記1以上の磁性多層膜ドットが前記伝送線路に対して配置されており、前記磁性多層膜ドットの共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が前記伝送線路を通過することが阻止されることを特徴とする磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項2】 前記伝送線路に沿って複数の前記磁性多層膜ドットが配置され、 前記複数の磁性多層膜ドットが同じ共鳴周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項3】 前記伝送線路に沿って複数の前記磁性多層膜ドットが配置され、 前記複数の磁性多層膜ドットが、異なる共鳴周波数を有する二種類以上の磁性多層膜ドットを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項4】 複数の前記磁性多層膜ドットを有し、 前記複数の磁性多層膜ドットの磁化状態を選択的に変えるために必要な磁場を前記複数の磁性多層膜ドットに選択的に印加する選択磁場発生手段を更に備えている請求項2に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項5】 高周波デバイスのフィルタ周波数設定方法であって、 前記高周波デバイスは、伝送線路と、複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されてなる1以上の磁性多層膜ドットとを備え、前記複数の磁性層の積層方向が前記伝送線路を流れる電磁波の進行方向と直交する方向に向くように前記1以上の磁性多層膜ドットが前記伝送線路に対して配置されて、フィルタ周波数と同じ周波数の電磁波の通過を阻止するように構成されるフィルタ機能を有しており、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層を、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持できる膜厚寸法、形状及び磁気特性をそれぞれ有するように定め、 前記1以上の磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層の磁化方向を、前記1以上の磁性多層膜ドットに印加する磁場の状態を変えることにより、前記平行状態または前記反平行状態のいずれかに定めることにより、前記1以上の磁性多層膜ドットの共鳴周波数を前記フィルタ周波数として設定することを特徴とする磁性多層膜ドットを用いたフィルタ機能を有する高周波デバイスのフィルタ周波数設定方法。
【請求項6】 複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されてなる1以上の磁性多層膜ドットと、 直流信号が流れる信号線と、 前記信号線に電気的に入力部が接続された前記1以上の磁性多層膜ドットからなる周波数検出部と、 前記1以上の磁性多層膜ドットから出力される交流信号のみを出力する出力回路とを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持することができ、しかも前記反平行状態にあるときに共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が入力されると磁気抵抗効果を発現して前記交流信号を前記出力部から出力し、前記平行状態にあるときにはすべての周波数の電磁波に対して磁気抵抗効果を発現することがないように、膜厚寸法、形状及び磁気特性が定められており、 前記反平行状態にある前記磁性多層膜ドットの前記共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が入力されると、前記出力回路から前記共鳴周波数と同じ周波数を有する信号を出力することを特徴とする磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項7】 複数の前記磁性多層膜ドットを有し、 前記複数の磁性多層膜ドットの磁化状態を選択的に変えるために必要な磁場を前記複数の磁性多層膜ドットに選択的に印加する選択磁場発生手段を更に備えている請求項6に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項8】 前記複数の磁性多層膜ドットが前記反平行状態にあるときの前記共鳴周波数がすべて異なることを特徴とする請求項6に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項9】 前記電磁波が流れる伝送線路が、前記信号線に沿って配置されている請求項6に記載の磁性多層膜ドットを用いた高周波デバイス。
【請求項10】 一方向に延びる第1の導電パターンと、前記一方向と直交する方向に延びる第2の導電パターンとが組み合わされて構成されたインダクタコイルと、 前記第1の導電パターン及び前記第2の導電パターンの少なくとも一方の上に実装された、複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されてなる1以上の磁性多層膜ドットとを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持できる膜厚寸法、形状及び磁気特性をそれぞれ有しており、 前記複数の磁性層の積層方向が、前記第1の導電パターンを流れる電磁波の進行方向と直交する方向に向くように前記1以上の磁性多層膜ドットが配置された状態で、前記1以上の磁性多層膜ドットが前記第1の導電パターン及び前記第2の導電パターンの少なくとも一方の上に配置されていることを特徴とする高周波デバイス。
【請求項11】 所定の間隔をあけて並んで配置され且つ一方向に延びる複数の第1の導電パターンと、前記複数の第1の導電パターンと組み合わされ且つ前記一方向と直交する方向に延びる1以上の第2の導電パターンとから構成されたインダクタコイルと、 隣り合う2本の前記第1の導電パターンの間に誘電体膜を間に介して配置された、複数の磁性層が非磁性層を間に介して積層されてなる1以上の磁性多層膜ドットとを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持できる膜厚寸法、形状及び磁気特性をそれぞれ有しており、 前記複数の磁性層の積層方向が、前記第1の導電パターンを流れる電磁波の進行方向と直交する方向に向くように前記1以上の磁性多層膜ドットが配置された状態で、前記1以上の磁性多層膜ドットが2本の前記第1の導電パターンの間に配置されていることを特徴とする高周波デバイス。
【請求項12】 複数の周波数の電磁波が重なった周波数多重波から所定の周波数の電磁波を選択的に受信する電磁波受信機能を有する高周波デバイスであって、 直流信号が流れる信号線と、 前記信号線に電気的に入力部が接続された複数の磁性多層膜ドットからなる周波数検出部と、 前記複数の磁性多層膜ドットの出力部に電気信号が現れたことを検出する出力検出回路とを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持することができ、しかも前記反平行状態にあるときに共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が入力されると磁気抵抗効果を発現して前記交流信号を前記出力部から出力し、前記平行状態にあるときにはすべての周波数の電磁波に対して磁気抵抗効果を発現することがないように、膜厚寸法、形状及び磁気特性が定められ、 前記反平行状態にある前記複数の磁性多層膜ドットの前記共鳴周波数は、すべて異なっており、 前記反平行状態にある前記複数の磁性多層膜ドットの前記共鳴周波数と同じ周波数の電磁波の入力に応答して信号を出力することを特徴とする電磁波受信機能を有する高周波デバイス。
【請求項13】 読み出し用の電磁波が流れる伝送線路と、 前記伝送線路に沿って配置された、直流信号が流れる信号線と、 前記信号線に電気的に入力部が接続された同一種類の複数の磁性多層膜ドットからなるメモリ部と、 前記複数の磁性多層膜ドットの出力部に電気信号が現れたことを検出する出力検出回路と、 前記複数の磁性多層膜ドットの磁化状態を選択的に変えるために必要な磁場を前記複数の磁性多層膜ドットに選択的に印加する選択磁場発生手段とを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持することができ、しかも前記反平行状態にあるときに共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が入力されると磁気抵抗効果を発現して前記交流信号を前記出力部から出力し、前記平行状態にあるときにはすべての周波数の電磁波に対して磁気抵抗効果を発現することがないように、膜厚寸法、形状及び磁気特性が定められ、 前記反平行状態にある前記磁性多層膜ドットの前記共鳴周波数と同じ周波数の電磁波を前記読み出し用の電磁波として用いることを特徴とする磁気メモリ装置として機能する高周波デバイス。
【請求項14】 読み出し用の電磁波が流れる伝送線路と、 前記伝送線路に沿って配置された、直流信号が流れる信号線と、 前記信号線に電気的に入力部が接続された複数の磁性多層膜ドットからなるメモリ部と、 前記複数の磁性多層膜ドットの出力部に現れた電気信号を加算する加算回路と、 前記複数の磁性多層膜ドットの磁化状態を選択的に変えるために必要な磁場を前記複数の磁性多層膜ドットに選択的に印加する選択磁場発生手段とを備え、 前記磁性多層膜ドットを構成する前記複数の磁性層は、すべて単磁区に磁化された状態で、前記複数の磁性層の磁化方向がすべて一致する平行状態と前記複数の磁性層の磁化方向が交互に異なる反平行状態とを安定して維持することができ、しかも前記反平行状態にあるときに共鳴周波数と同じ周波数の電磁波が入力されると磁気抵抗効果を発現して前記交流信号を前記出力部から出力し、前記平行状態にあるときにはすべての周波数の電磁波に対して磁気抵抗効果を発現することがないように、膜厚寸法、形状及び磁気特性が定められ、 前記複数の磁性多層膜ドットは、前記反平行状態にあるときに前記共鳴周波数が全て異なっており、 前記複数の磁性多層膜ドットの複数の前記共鳴周波数を含む電磁波を前記読み出し用の電磁波として用いることを特徴とする磁気連想メモリとして機能する高周波デバイス。
産業区分
  • 伝送回路空中線
  • 磁性材料
  • 固体素子
  • 電子応用機器
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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