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乳酸残基を含有するデプシペプチド 新技術説明会

国内特許コード P09S000316
整理番号 IP18-025
掲載日 2010年1月29日
出願番号 特願2008-530857
登録番号 特許第5158716号
出願日 平成19年8月10日(2007.8.10)
登録日 平成24年12月21日(2012.12.21)
国際出願番号 JP2007065720
国際公開番号 WO2008023582
国際出願日 平成19年8月10日(2007.8.10)
国際公開日 平成20年2月28日(2008.2.28)
優先権データ
  • 特願2006-228281 (2006.8.24) JP
発明者
  • 奥 浩之
  • 下田 裕也
  • 井上 彩
  • 高山 千恵
  • 山田 圭一
  • 片貝 良一
出願人
  • 国立大学法人群馬大学
発明の名称 乳酸残基を含有するデプシペプチド 新技術説明会
発明の概要

下記一般式 (I) で表される化合物または該化合物を重合させて得られるポリマー化合物。
R1-Gly-Lac-Pro-R2 (I)
(式中、-Gly-Lac-Pro- は下記式(II)のグリシン残基、乳酸残基、プロリン残基の結合したトリデプシペプチドを示し、R1は水素原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸、R2は水酸基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を表す)

従来技術、競合技術の概要


(1)デプシペプチドおよび関連材料の現況:
デプシペプチドは式(A)に示すように主鎖がエステル結合とアミド結合で連結されたポリマーまたはオリゴマーである。その構造の骨格はアミド結合とエステル結合からできている。
【化学式1】




骨格に含まれるアミド結合とエステル結合は分子レベルでは3種類の相互作用が知られている。即ちアミド結合同士では、分子レベルでは分子内と分子間に水素結合により、強い相互作用と分子構造の安定化を起こす。よって巨視的には溶媒への不溶化と機械的強度の向上が期待される。またエステル結合同士では、分子レベルでは水素結合による分子間と分子内の相互作用が生じない。よって巨視的には機械的強度の減少による柔軟性または弱さが期待される。即ちアミド結合とエステル結合の間では、分子レベルでは分子内と分子間にエステル部位の酸素原子とアミド部位のNHの間でやや弱い水素結合により、分子構造の構造安定化を起こす。よって巨視的にはアミド結合のみの場合より小さな機械的強度の向上が期待される。従ってデプシペプチドはアミノ酸やヒドロキシカルボン酸によるオリゴマーやポリマーの特徴を生かした材料とすることができる。つまりアミノ酸とヒドロキシカルボン酸の種類や組成、配列を変化させることで幅広い特性を持つ材料を合成することができる。さらに、デプシペプチドの長所として、体内に炎症をおこしにくいこと、酸性成分に弱い物質の薬物運搬材料として利用できること、水素結合と疎水性相互作用といった分子間や分子内相互作用により成型物の強度が極めて高いこと、の3点が挙げられる。このようにデプシペプチドは極めて魅力的な物質である。



実際にポリデプシペプチドについてはさまざまな研究が行われた。例えばヒドロキシカルボン酸の側鎖をH-、CH3-、(CH3)2CH-、(CH3)2CH-CH2-のように疎水性と立体障害の大きさを変化させると生体内での分解速度が2週間から6ヶ月まで幅広く調節することができることがわかっている。また生体組織との接合面に炎症はみられないことも特徴的である(非特許文献1)。
ポリデプシペプチドでは炎症が見られなかったが、一般にポリヒドロキシカルボン酸のみを使用する材料では分解が速い場合、炎症反応を引き起こしやすいことが知られている(非特許文献2)。これは乳酸やグリコール酸のような比較的強い酸性成分が蓄積するためと考えられている。一方、ポリデプシペプチドではデプシペプチドオリゴマーが分解物として生成するために酸性成分が蓄積されず、分解速度が速くても炎症が見られなかったと考えられる。



ポリデプシペプチドは、合成方法の点からも近年改良が行われてきた。例えば反応ステップ数を削減する研究である。すなわち、アミノ基を保護されたアミノ酸のカルボキシル基と、無保護のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸のヒドロキシル基とを、アミノピリジン化合物を触媒として反応させ、ジデプシペプチドを生成することができるようになった(特許文献1、非特許文献3,4)。これらの研究により、ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基の保護基を形成せずに繰り返し配列をもつデプシペプチドをより簡便に製造できるようになった。即ち、実験室レベルの合成設備(数mL~数百mL)でも、純粋なポリデプシペプチドを数百mg~数gの単位で一度に合成することが可能となった。工場設備(数L~数百L)へ規模拡大した場合は数kg単位での製造を十分に行うことができる。



(2)温度応答性材料の現況:
近年、温度を上昇させることで凝集する温度応答性材料の研究に注目が集まっている。これらは水を多く含有する性質を利用して薬物運搬体、創傷被覆材料、人工筋肉、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜などへの利用が期待されている。



デプシペプチドを用いた方法によっても近年、温度応答性材料が開発された。(特許文献2、非特許文献5)例えば、-Gly-Val-Gly-Hmb-Pro- と -Gly-Val-Gly-Hmb-Ala-Pro-(Hmb = バリン酸残基)を繰り返し単位とするデプシペプチドポリマーが開示されている。これらはバリン酸(Hmb)と呼ばれるβ分岐型ヒドロキシカルボン酸を有する点を特徴としている。ここで示した配列に於けるバリン酸の位置には、温度応答性の発現のために、β分岐型アミノ酸(またはヒドロキシカルボン酸)が必要であると考えられてきたためである。



デプシペプチドまたはペプチドによる温度応答性材料に於いて、β分岐型アミノ酸の役割は、加熱によりValγCH3(またはHmbγCH3)とProδCH2の疎水性水和した水分子が熱エネルギーによる分子運動の増大で側鎖から遊離して、側鎖間に疎水性相互作用を起こすこと(加熱による温度応答性の凝集現象)、またその逆の過程が起こること(冷却による温度応答性の溶解現象)で、可逆的な温度応答性を引き起こすと考えられてきた。(Val残基での例として、非特許文献6~9)(Ile残基での例として、非特許文献10)



ペプチドによる温度応答性材料に於いて、実際にβ分岐型アミノ酸ではない、アラニン(Ala)残基の場合、非可逆な温度応答を示し直ちに水に不溶な物質になってしまうことが指摘されている。(非特許文献11)すなわち従来の温度応答性材料には、決まった位置にβ分岐型アミノ酸を導入する必要があり、配列の制限が大きい点で問題があった。



これまでの生体材料として実際に市販されてきたヒドロキシカルボン酸は、主に乳酸とグリコール酸を構成成分としている。これらは多くの使用例があり、長所と短所がわかっている点で優れている。
一方、これまでのデプシペプチドによる温度応答性材料は、その他のヒドロキシカルボン酸である、バリン酸(Hmb)を使用している。これは抗生物質のように多くの天然物に含まれるためほとんど問題はないと予想されるが、生体材料として使用された事例は少ない。そのため、バリン酸(Hmb)を含んだ温度応答性高分子の生体応用には、体内動態を含めて多くの検討が必要と考えられる点で、まだ問題が残っていた。



興味深い研究として、温度応答性材料に関連したポリデプシペプチド配列が、1990年に報告されている。(非特許文献12、13)ここでは-Val-Pro-Gly-Hmb-Gly-と -Val-Ala-Pro-Gly-Hmb-Gly-の2種類の繰り返し配列をもつポリマーが報告されている。これらは、温度応答性が示されていない、合成ステップ数が多い、縮合反応と呼ばれるエステル結合又はアミド結合を生成する最も重要な反応が低収率であること(5つの反応が記載され、それぞれ23、33,54,70、76%)、低収率の結果最終生成物のポリマー体が10 mgしか得られていないこと、の4点に於いて問題があった。実際、論文中には、
この配列の合成がいかに困難であるか述べてある点は注目される。
即ち、本発明者らの報告した事例(特許文献2、非特許文献5)を除き、一般には現在まで、温度応答性材料に関連したポリデプシペプチドおよびオリゴデプシペプチド配列の合成は非常に困難であり、実用的ではないと考えられてきた。

【特許文献1】特開2004-269462

【特許文献2】WO2006/043644A1

【非特許文献1】吉田ら、Journal of Biomedical Materials Research、1990年、24巻、1173ページ

【非特許文献2】敷波保夫、リウマチ科、1999年、21巻第3号、267ページ

【非特許文献3】片貝ら、Biopolymers、2004年、73巻、641ページ

【非特許文献4】奥ら、Acta Crystallographica Section E、2004年、E60巻、o927ページ

【非特許文献5】七里ら、Peptide Science 2004、2005年、633ページ

【非特許文献6】チャンら、Journal of Biomolecular Structure and Dynamics、1989年、6巻、851ページ

【非特許文献7】ウリーら、Biochemistry and Biophysics Research Communication、1977年、79巻、700ページ

【非特許文献8】ウリーら、Biopolymers、1989年、28巻、819ページ

【非特許文献9】ウリーら、Progress in Biophysics and Molecular Biology、1992年、57巻、23ページ

【非特許文献10】ウリーら、Biopolymers、1986年、25巻、1939ページ

【非特許文献11】ラパカら、International Journal of Peptide and Protein Research、1978年、81ページ

【非特許文献12】アラッド&グッドマン、Biopolymers、1990年、29巻、1633ページ

【非特許文献13】アラッド&グッドマン、Biopolymers、1990年、29巻、1651ページ

産業上の利用分野


本発明は、温度応答性材料として使用しうる新規なデプシペプチド化合物およびそれを重合させて得られるデプシペプチドポリマーに関する。更に詳しくは、乳酸残基とアミノ酸残基が脱水縮合されてできたデプシペプチドを構成成分として持つ新規なデプシペプチド化合物およびそれを重合させて得られるデプシペプチドポリマーに関する。
本発明の材料は水、緩衝液または含水溶媒中で温度に応答し凝集または溶解する温度応答性材料として使用しうるため、生体吸収性組成物、環境分解性組成物、細胞接着剤、人工筋肉、マイクロカプセル、バイオマシン、バイオセンサー、分離膜、検査キットなどを構成するのに有用である。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式 (I)
R1-Gly-Lac-Pro-R2 (I) で表される化合物。
(式中、-Gly-Lac-Pro- は下記式(II)の構造を示し、R1は水素原子、アミド結合で結合したアミノ酸、ポリペプチドまたはヒドロキシカルボン酸、R2は水酸基、アミド結合で結合したアミノ酸もしくはポリペプチド、またはエステル結合で結合したヒドロキシカルボン酸を表す。)
【化学式1】



【請求項2】
前記一般式(I)が、X1-X2-Gly-Lac-Pro (X1およびX2はα-アミノ酸残基を示す)である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を重合させて得られるポリマー。
【請求項4】
末端に糖鎖配列、タンパク質、多糖、金属錯体、高分子担体、ゲル、フィルム、ラテックス粒子、金属微粒子、無機微粒子、ガラスプレート、もしくはプラスチックプレートが結合した、請求項1もしくは2に記載の化合物、または請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3に記載のポリマーを、水、緩衝液、食塩水、または含水有機溶媒と混合させることにより得られる組成物であって、溶媒和状態、ゲル状態、懸濁物、均一な溶液、または相分離状態を形成する組成物。
【請求項6】
加温により水分子を放出し、冷却により水分子を取り込む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項3に記載のポリマーを含む温度応答性組成物。
産業区分
  • 有機化合物
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2008530857thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
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