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位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法

国内特許コード P09A015045
整理番号 P2005-030-JP01
掲載日 2010年2月19日
出願番号 特願2005-155069
公開番号 特開2006-331901
登録番号 特許第4726048号
出願日 平成17年5月27日(2005.5.27)
公開日 平成18年12月7日(2006.12.7)
登録日 平成23年4月22日(2011.4.22)
発明者
  • 柿林 博司
  • 郷原 一寿
出願人
  • 株式会社日立製作所
  • 学校法人北海道大学
発明の名称 位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法
発明の概要

【課題】実像と電子回折像を測定する際の微小径かつ平行な電子線を、明るくかつ均一な強度分布にする位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術を提供する。
【解決手段】位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像を観察する際には、収束電子線を試料3の注目領域2に走査しながら照射し、撮像素子11で検出した透過電子線の強度を前記収束電子線の走査と同期させてモニター17に表示することによって前記注目領域2を画像化し、前記電子回折像を観察する際には、前記注目領域2の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞り15を前記試料3の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞り15を通して前記試料3の注目領域2に照射し、前記試料3を透過した電子線が作る電子回折像を前記撮像素子11により検出する。
【選択図】 図5

従来技術、競合技術の概要


電子顕微鏡の高分解能化技術の主なものとして、分解能を制限する要因である対物レンズの収差を電子光学系のハードウエア技術によって取り除き高分解能な実像を観察する方法と、試料の電子回折像と試料外側はゼロポテンシャルという条件を用いて位相回復アルゴリズムで演算処理することにより、高分解能な実像を得る方法の2つがある。前者の技術は、例えば、「Journal of Electron Microscopy, Vol. 48, p. 821-826 (1999)」に示されている。後者の技術は、例えば、「SCIENCE Vol. 300, p. 1419-1421 (2003)」に示されている。



後者の技術内容を図示すると、図1のようになる。例えば、試料が結晶性の微粒子である場合、電子顕微鏡の電子回折像モードにより、図1(a)に示すような微粒子の電子回折像(逆空間拘束条件)を得る。微粒子の形状を何らかの観察法で観察し、図1(b)に示すような、微粒子の外側をゼロポテンシャルとしたデータを得る。図1(b)は、微粒子の外側のポテンシャル分布(実空間拘束条件)を示し、図中、白い部分は微粒子の形状、黒い部分はゼロポテンシャルを示す。それらを入力データとして位相回復アルゴリズムを用いたプログラムによる位相回復再生像の計算をコンピューターで行う。その結果、図1(c)に示すような、微粒子の高分解能な実像(位相回復再生像)が得られ、原子配列が見えるようになる。



位相回復のアルゴリズムを、図2に示す。実空間における試料の構造(ポテンシャル分布)をρtとすると、それをフーリエ変換(FT)したものは、
f = |f(K)|eiφ(K)
と表せる。ここで、f(K)、φ(K)はK空間(逆空間)における振幅と位相である。fを逆フーリエ変換すれば、元の試料構造ρtが得られる。



電子顕微鏡において試料に電子線を照射すると対物レンズの後焦点面には電子回折像が形成されるが、それは|f(K)|2に相当する。すなわち、試料を構成する周期構造の振幅情報のみが含まれており、位相情報は失われている。しかし、電子回折像には電子顕微鏡の実像が有する分解能以上の高周波数の周期構造情報が含まれている。一方、電子顕微鏡で観察される実像は、対物レンズの実像面に形成される像を後段のレンズで拡大したものであるが、それはρtの投影像に相当する。ただし、実像の分解能は、対物レンズの収差、伝染の波長やエネルギー幅などで制限される。さらに、測定時の試料ドリフトや振動、磁場などの外乱影響が付加され、記録された実像の分解能が決まる。結果として、その分解能以上の微細構造情報は失われている。従って、電子回折像の位相情報を回復できれば、それを逆フーリエ変換することにより、電子顕微鏡の実像が有する分解能あるいは記録された像の分解能以上の実像を再生できる可能性がある。



電子顕微鏡で観察した試料の電子回折像と、何らかの観察法で得た試料外形と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータを用いて、位相回復により高分解能実像を得るための手順は、次のようになる。先ず、試料構造ρtの初期値としてランダム構造ρを仮定し、それをフーリエ変換してfを求める。fの振幅|f(K)|に電子回折像の強度分布から求めた値|f'(K)|を逆空間拘束の条件として代入する。これによってfは、
f' = |f'(K)|eiφ(K)
となる。これを逆フーリエ変換して、試料構造の位相が回復したρ'tが得られる。次に実空間拘束の条件として試料外形と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータを代入する。これによって位相情報の回復が高速化される。こうして試料の実像が再生される。これを新たなρtとして上記の操作を繰り返す。操作終了の目安は、再生した実像において試料が存在しない領域の強度の総和を、実像を構成する全画素数で割った値が収束することである。



逆空間の拘束条件となる電子回折像は、以下のようにして測定される。先ず、位相回復アルゴリズムを用いたプログラムによる位相回復再生像の計算を行う際に、扱える電子回折像と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータのサイズには条件がある。そのため、図3に示すように、試料3の電子線照射領域2に照射する電子線1の直径を通常観察の場合よりも小さくする必要がある。許容される最大の電子線径は、電子線の波長と電子回折像のカメラ長との積を撮像デバイスの1画素のサイズで割って得られる。撮像デバイスとしてイメージングプレート(画素数:3200×4000個、画素サイズ:25×25μm)を用い、電子線の加速電圧を200kV(波長:0.0025nm)とし、カメラ長が1mである場合には、最大電子線径は100nmとなる。また、シャープな電子回折像を観察するために、平行な電子線を照射しなければならない。これらを満足させるために、前記従来技術では、図4(b)に示す電子光学経路で観察している。



以下に、従来技術による電子回折像の測定方法を、図4(b)を用いて説明する。従来技術では、電子顕微鏡のうち透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)を用いている。透過電子顕微鏡は、電子銃4、コンデンサー絞り5、照射レンズ6、対物レンズ(前磁場)7、対物レンズ(後磁場)8、中間レンズ9、投射レンズ10、撮像素子11から構成される。通常の観察では試料の広い領域(ミクロンのオーダー)に平行な電子線を照射するために、照射レンズ6によって電子線1を広げる。これに対して前記従来技術では、図4(b)に示すように、照射レンズ6によって電子線1を収束させ小さな電子線径にする。但し、この段階では電子線は平行ではないので、対物レンズ(前磁場)7を強励磁状態で用いて収束した電子線を平行にして、試料3(図中、黒色の矢印で示す。)の電子線照射領域(注目領域)2(図中、白色の矢印で示す。)に照射する。電子線照射領域2の大きさは、電子銃4の加速電圧や電子放出方式、コンデンサー絞り5の孔径、照射レンズ6と対物レンズ(前磁場)7の励磁条件などによって決まる。数十nm直径にすることが可能である。試料内部で散乱や回折した後に透過した電子線は、対物レンズ(後磁場)8、中間レンズ9、投射レンズ10によって結像される。図4(b)に示した電子回折像モードでは電子線照射領域の電子回折像12が観察される。



また、従来技術では明記していないが、通常の透過電子顕微鏡の観察モードとして、図4(a)に示した実像モードがある。このモードでは電子線照射領域の実像13が観察できる。両モードでは、中間レンズ9と投射レンズ10の励磁条件が異なる。すなわち、(a)実像モードでは、対物レンズ(後磁場)8下方の実像面に形成された電子線照射領域の実像13を中間レンズ9、投射レンズ10で拡大する。(b)電子回折像モードでは、対物レンズ(後磁場)8下方の回折像面(後焦点面)に形成された電子線照射領域の電子回折像12を中間レンズ9、投射レンズ10で拡大する(カメラ長が可変である)。




【非特許文献1】Journal of Electron Microscopy, Vol. 48, p. 821-826 (1999)

【非特許文献2】SCIENCE Vol. 300, p. 1419-1421 (2003)

産業上の利用分野


本発明は、電子線を試料に照射して、試料を透過した電子を検出して拡大像を得る電子顕微鏡装置に係り、特に、位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
加速した電子線を収束あるいは平行にして試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子線を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像を観察する際には、前記収束電子線を前記試料の注目領域に走査しながら照射し、前記撮像素子で検出した透過電子線の強度を前記収束電子線の走査と同期させてモニターに表示することによって前記注目領域を画像化し、前記電子回折像を観察する際には、前記注目領域の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞りを前記試料の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞りを通して前記試料の注目領域に照射し、前記試料を透過した電子線が作る電子回折像を前記撮像素子により検出することを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。

【請求項2】
請求項1に記載の位相回復方式電子顕微鏡による観察方法において、前記実像を観察する際に、前記撮像素子で検出される散乱電子の検出角度範囲を、前記撮像素子の上方に挿入した検出角度制限絞りを用いて設定するようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。

【請求項3】
加速した電子線を対物レンズを介して試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像と電子回折像を観察する際に、前記対物レンズの実像面に、前記対物レンズの実像面における倍率と電子線の波長とカメラ長との積を前記撮像素子の1画素のサイズで割算した値よりも小さい孔径を有する制限視野絞り挿入して、前記実像と電子回折像の強度分布を得るようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。

【請求項4】
請求項1又は3に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記実像と電子回折像の強度分布を、前記撮像素子や検出系によりデジタル記録したデータを、位相回復アルゴリズムを用いて演算処理することにより、デジタル記録した実像よりも高分解能な実像を再生するようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。

【請求項5】
請求項1又は3に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、観察に用いる電子線が透過しない厚さの金属板に、収束イオンビームや機械研磨や化学研磨のうち少なくとも何れか一つの加工方法によって加工した孔を有し、かつ、前記孔の加工面は電子回折像の強度分布にノイズを与えない滑らかさを有していることを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。

【請求項6】
請求項4に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、前記位相回復アルゴリズムを用いて演算処理するための実像や電子回折像の観察に用いる第1の孔および通常の制限視野観察に用いる第2の孔の両方、または前記第1の孔のみを有することを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
産業区分
  • 電子管
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2005155069thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
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