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細胞の分化/増殖を制御するための基材

国内特許コード P09S000327
整理番号 P2004-272-JP02
掲載日 2010年2月19日
出願番号 特願2007-505992
登録番号 特許第4956753号
出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
登録日 平成24年3月30日(2012.3.30)
国際出願番号 JP2006303909
国際公開番号 WO2006093207
国際出願日 平成18年3月1日(2006.3.1)
国際公開日 平成18年9月8日(2006.9.8)
優先権データ
  • 特願2005-058236 (2005.3.2) JP
発明者
  • 田中 賢
  • 鶴間 章典
  • 山本 貞明
  • 下村 政嗣
出願人
  • 国立大学法人北海道大学
発明の名称 細胞の分化/増殖を制御するための基材
発明の概要

本発明は、細胞の形態を自由に制御することができる構造体に関する。一実施形態において、本発明の構造体は、幹細胞の分化または増殖を自由に操作することができる構造体であって、0.01~100μmの範囲の膜厚を有している薄膜を、1または複数積層して備えている培養基材であり得る。本実施形態に係る培養基材は、上記薄膜は、樹脂からなることが好ましい。

従来技術、競合技術の概要

生物では、未分化細胞から幹細胞を経て、血液細胞、免疫細胞、神経細胞、皮膚組織などの機能的な分化細胞が形成される。種々の系列において、その分化(すなわち、成熟)の誘導または制御に関する研究は、細胞移植(例えば、骨髄移植)または組織再生もしくは組織修復という応用面で注目されている。特に、自己複製能(自己増幅能)および多分化能(個体を形成する全ての細胞種へ分化する能力)を有する胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)は、これらの能力を利用した再生医療(例えば、所望の細胞および/または組織を必要に応じて作製して生体内へ移植する医療)における応用が期待されている。


幹細胞については、主に造血幹細胞の研究がなされてきたが、胚性幹細胞の確立に続いて、現在までに各細胞系列(例えば、肝臓、筋肉、皮膚、神経など)の幹細胞も同定されている。これらの幹細胞を遺伝子レベルで改変してその機能を必要に応じて修飾する技術を開発することが、難治性疾患(例えば、ガンおよび変性疾患など)の治療法の開発につながると考えられる。実際に、造血幹細胞はすでに骨髄移植に応用されており、マウス胚性幹細胞は遺伝子ターゲティングにおいて使用されている。さらに、最近単離されたヒト胚性幹細胞は移植を介する臓器形成への応用が期待されており、正常組織幹細胞はガン治療もしくは再生医学、または組織幹細胞を標的とする遺伝子治療への応用も期待されている。


これまで全能性を有する胚性幹細胞が特に注目されて、研究が進められている。すなわち、胚性幹細胞のみが唯一の全能性幹細胞であると従来考えられており、体性幹細胞(すなわち、造血幹細胞、神経幹細胞などの組織幹細胞)は臓器限定的な再生能のみを有すると考えられていた。


しかし、近年いくつかの組織幹細胞が環境に応じた幅広い分化能を有することが示され、現在では、哺乳動物において、ほとんどの組織に固有の幹細胞が存在し、その増殖および分化によって機能性の成熟細胞が供給され、その結果として、各組織の恒常性が維持されるということが知られている。また、Bjornsonらは培養神経幹細胞からインビボで成熟血球細胞を産生させたことを報告している(非特許文献1を参照のこと)。


しかし、幹細胞を用いる研究の大きな課題は、いずれの幹細胞もその数が非常に少ないことである。非特許文献1に示された結果は再現されていないものの、この知見が事実であれば、培養および継代が可能な神経幹細胞を使用すれば造血幹細胞をインビトロで増幅させることが可能になる。


このように幹細胞を遺伝子治療、臓器移植、骨髄移植、ガン治療、または再生医学へ応用しようとする試みが数多くなされているが、幹細胞を分化させずに自己増幅させる技術はほとんど開発されていない。従って、幹細胞を自由に操作する技術を開発することは非常に望まれている。


細胞は、増殖因子またはサイトカインなどの液性因子だけでなく、種々の高分子からなる細胞外基質との接着によってその増殖および/または分化が制御されていることが知られている。この細胞と細胞外基質との相互作用において、細胞は、細胞外基質分子の化学的な性質だけでなく、基質を構成する高分子が織り成す微細な形状によってその増殖および/または分化が制御されることもまた知られている。


組織を構築および/または再生する際もまた、その組織の細胞および液性因子だけでなく細胞の足場(scaffold)を検討することが重要であり、組織工学の分野においては足場の開発が活発に行われている。このように、細胞外基質は細胞の特性を制御する足場として細胞工学および組織工学の分野において注目されており、特に特定の3次元構造を有する人工基質の開発に向けて、多くの研究がなされている。例えば、半導体技術において利用されているマイクロパターンなどが3次元構造の製造に利用されている。また、足場の材料として生体適合性および生分解性の高分子が用いられており、材料表面のマイクロパターンが細胞の分化、増殖、形態に大きく影響を及ぼしていることが報告されている。


このように、足場が、人工物であってもその三次元構造に基づいて細胞の接着、増殖および/または分化を誘導し得ること、ならびに細胞を組込んだ足場を生体に移植することによって組織を再構築し得ることが見出されている。神経細胞を標的とした場合、微細加工技術によって作製された種々のマイクロパターン基板を用いることによって、神経細胞の接着形態、神経突起の伸長を制御し、人工的な神経回路を構築することが検討されており、神経再生への応用が期待される。


しかし、マイクロパターン技術は、非常に高度な技術が必要であり、大量生産が出来ず、高コストであるといった多くの問題を抱えている。


本発明者は、生分解性高分子と両親媒性ポリマーとを適当な割合で組み合わせることによって、経済的な調製が可能であり、自立性が有り、構造的にも安定な構造体を作製し、該構造体を用いた細胞培養用基材を完成させている(例えば、特許文献1および2を参照のこと)。

【特許文献1】特開2002-347107公報(平成14年12月4日公開)
【特許文献2】特開2002-335949公報(平成14年11月26日公開)
【非特許文献1】Bjornson,C.R.ら、Science 283:534-537(1999)。


上述したように、幹細胞を遺伝子治療、臓器移植、骨髄移植、ガン治療、または再生医学へ応用しようとする試みが数多くなされている。しかし、幹細胞を用いる研究の大きな課題は、幹細胞の数が非常に少なく、幹細胞特異的マーカーも発見されていないことである。そのため、幹細胞を純化することは困難であり、また増殖因子を添加せずに、幹細胞を分化させずに自己増殖させる技術も開発されていない。また、分化誘導因子を添加せずに細胞の分化を制御する技術も開発されていない。


本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、細胞の形態を自由に制御することができる構造体を提供するとともに、幹細胞の分化と増殖とを自由に操作することができる構造体を提供することにある。

産業上の利用分野

本発明は、細胞の形態を自由に制御することができる構造体に関するものであり、より詳細には、本発明は、幹細胞の分化または増殖を自由に操作することができる構造体に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】 増殖因子を用いることなく神経幹細胞を未分化状態を維持すると同時に自己増殖させるための培養基材であって、
平均孔径が0.1~3μmの複数の孔を有する薄膜を複数積層して備えており、該薄膜が、生分解性ポリマーおよび両親媒性ポリマーからなる樹脂からなり、該生分解性ポリマーと両親媒性ポリマーとの混合溶液をキャストして高湿度雰囲気下にて作製されたことを特徴とする培養基材。
【請求項2】 前記薄膜の膜厚が孔径より大きく100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の培養基材。
【請求項3】 前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、およびポリ(グリコール酸-乳酸)共重合体からなる群より選択されることを特徴とする請求項に記載の培養基材。
【請求項4】 前記両親媒性ポリマーが、疎水性側鎖としてドデシル基を有し親水性側鎖としてラクトース基またはカルボキシル基を有している、アクリルアミドポリマーを主鎖骨格とする両親媒性樹脂;ポリエチレングリコール系共重合体;および、アニオン性高分子と長鎖アルキルアンモニウム塩とのポリイオンコンプレックスからなる群より選択されることを特徴とする請求項に記載の培養基材。
【請求項5】 前記複数の孔がハニカム様に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の培養基材。
【請求項6】 各孔が貫通していることを特徴とする請求項1に記載の培養基材。
【請求項7】 各孔が連通していることを特徴とする請求項1に記載の培養基材。
産業区分
  • 微生物工業
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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