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生理活性物質を含む樹脂組成物とその製造方法

国内特許コード P09A015127
整理番号 21
掲載日 2010年2月26日
出願番号 特願2007-327660
公開番号 特開2008-179788
登録番号 特許第5288370号
出願日 平成19年12月19日(2007.12.19)
公開日 平成20年8月7日(2008.8.7)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
優先権データ
  • 特願2006-352051 (2006.12.27) JP
発明者
  • 依田 智
  • 大山 秀子
出願人
  • 独立行政法人産業技術総合研究所
  • 学校法人立教学院
発明の名称 生理活性物質を含む樹脂組成物とその製造方法
発明の概要

【課題】形状セット性、引張強さ、破断伸度、衝撃強さなどの好ましい物性を有し、かつ生理活性物質を含有する新規な生分解性の樹脂組成物、及び該樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂組成物の組成を、(1)ガラス転移温度40℃以上で、かつ乳酸及びグリコール酸から選ばれる少なくとも1種の構造を含む生分解性ポリマーを、全生分解性ポリマーに対して50.00~99.99重量%、(2)ガラス転移温度又は副転移温度が40℃未満の生分解性ポリマーを、全生分解性ポリマーに対して0.01~50.00重量%、(3)生理活性物質を、全樹脂組成物に対して0.001~10.000重量%とする。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


生体内に導入する医療器具を構成する医療用の材料は、生体内吸収性と生体内非吸収性の二種類に大別される。生体内非吸収性材料は機械特性に優れるため、種々の医療器具の製造に用いられてきた。しかしながら、非吸収性材料は生体内に導入した後、そのまま生体内に残存することから、発ガン、炎症など多くの2次的な疾患を不可避的に引き起こすという問題がある。また、金属製の医療器具を生体内に留置することについては磁気の影響も心配されている。このような理由から、非吸収性材料の生体内に留置する医療器具への応用は、例えば水頭症用シャント、眼内レンズ、シリコーンインプラント、人工血管、パッチ類、人工関節などに限定されていた。



一方、生体内吸収性材料は生体内で分解、吸収されて消滅することから、長期間の生体適合性は必要とされないという利点があり、ある一定期間のみ生体内に留置することが必要な医療器具の製造に好適である。例えば、縫合糸等の医療器具の製造に生体内吸収性材料を用いれば、器具は役割を終えた後に生体内で分解、吸収され、消滅するため、再手術により器具の抜去を行う必要もなく、2次的な疾患が起こる可能性も極めて低いと考えられている。すなわち、生体内吸収性材料の生体内に留置する医療器具への用途の拡大が期待されている。



ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び乳酸-グリコール酸共重合体などに代表される脂肪族ポリエステルは、生体適合性を有し、生体内で非酵素的に加水分解され、代謝経路により最終的には炭酸ガスと水になり体外へ放出される生分解性ポリマーであり、生体内吸収性材料として積極的に研究が進められている。また、トリメチレンカーボネート、p-ジオキサノン、ε-カプロラクトンらのラクトン等の重合体又はそれらの共重合体も、生体内で分解され、最終的に炭酸ガスと水になり体外へ放出される特性が注目され、研究が進められている。



例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸-グリコール酸共重合体等は、縫合糸、ガーゼらの無菌外科手術用品としてすでに市場に出ている。
しかしながら、このような生分解性ポリマーが臨床応用されている例は、縫合や止血に用いられる一部の医療器具(縫合糸、ガーゼ等)に限られているのが現状である。これは、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーは、変形歪を固定することができない(形状セット性に劣る)、引張強さ、破断伸度、衝撃強さ等が十分でないなどの問題があるためである。



このような背景において、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーの物性を改良し、その用途を拡大することが望まれている。すなわち、生体内吸収性材料に形状セット性、引張強さ、破断伸度、衝撃強さ等の物理的に良好な特性を付与する技術が強く望まれている。



なお、生体内非吸収性材料の優れた機械的特性と生体内吸収性材料が持つ生体適合性を生かした例として、生物学的生理活性物質を含有する生分解吸収性ポリマー層(例えばポリ乳酸)を金属器具表面に皮膜して体内で使用する技術が報告されている(特許文献1、2、3、4、5、6)。しかしながら、このような医療材料の場合、基材として用いる金
属は体内に残存し、2次的疾患の要因となるという問題は依然として解決されない。



本発明者らは、ポリ乳酸に代表されるポリエステルを主成分とする生分解性ポリマーに良好な特性を付与するために研究を重ねてきた。本発明者らは、ポリ乳酸に生分解性脂肪族-芳香族共重合体を添加して、その両成分を溶融混練して生分解性樹脂組成物を生成し、ポリ乳酸に延伸性や形状セット性を付与し得ることを見出した(特許文献7)。
また、他の生分解性ポリマーを用いてポリ乳酸などの性質を改良することも試みられている。例えば、ラクチド及び/又はグリコリドを重合させた重合体にゴム相を組み合わせて、ガラス転移温度を10℃程度とする技術が開示されている(特許文献8)。しかしながら、この技術では良好な形状セット性を達成することはできなかった。
なお、カプロラクトンとラクチド及び/又はグリコリドとの共重合体からなる伸縮性の素材も開発されている(特許文献9)。
しかしながら、形状セット性、引張強さ、破断伸度、衝撃強さの全てにおいて良好な物性を有する生分解性材料は、未だ得られていないという現状がある。



一方、医療材料の生体適合性を高めたり、医療材料に生理活性を付与するために、医療材料に生理活性物質(薬剤)を付着させることがなされている。医療材料の生体適合性を高めるためには、医療材料を生理活性物質で二次的に処理して、特性を付加したり、改良したりすることが研究されている。
例えば、ポリ乳酸等の高分子材料の表面にイオンビームを照射して、照射部位に細胞を優先的に接着させる技術が開発されている(特許文献10、11)。
また、医療材料に生理活性物質を付着させる技術としては、金属製の医療器具の表面に生理活性物質を含有させた生分解性ポリマーをコーティングする技術が開発されている。生理活性物質を樹脂組成物に含有させるには、一般的には有機溶媒などに生理活性物質を溶解して樹脂組成物を浸漬する方法が多く取られている。しかしながら、樹脂組成物内から使用した有機溶媒を完全に除去することは困難である。一方、有機溶媒には、人体に有害なものが多く、このような有機溶媒を用いて製造した樹脂組成物を医療材料として使用した場合には、残留溶媒の人体への悪影響が問題となる。



このため、人体への害がなく、容易にポリマーから揮散する液体又は超臨界状態の二酸化炭素に薬剤等を溶解して、これをポリマーへ含浸させる技術が検討されている。高圧下で液体状態、又は臨界温度、臨界圧力以上で超臨界状態にある二酸化炭素は、疎水性有機溶媒に類似した物性と無毒性、不燃性、高い環境調和性を併せ持つため、近年有機溶媒に代わるプロセス溶媒として各種の用途が検討されている。



液体又は超臨界状態の二酸化炭素(超臨界二酸化炭素)を用いて、医療用材料の樹脂部分に薬理成分を含浸した例としては以下のような特許が出願されている。特許文献12においては、薬理成分と樹脂との混合物を超臨界二酸化炭素を用いてステント等の医療材料にコーティングする方法が示されている。特許文献13においては超臨界二酸化炭素の噴霧等によるコーティングの手法及び装置が示されている。また特許文献14及び15においては体内プロテーゼ、管腔内プロテーゼの一部の樹脂構造に薬理成分(生理活性物質)を高圧二酸化炭素で含浸させた例が示されている。



しかしながら、これらの例では、従来の金属製の医療器具の表面に樹脂をコーティングするに止まっており、医療器具全体での生分解性は考慮されていない。また、薬理成分は樹脂部分にしか担持させられないことから、薬理成分の担持量が不十分であり長期に渉る効果が期待できない、徐放性の制御が困難である等の問題がある。また、樹脂以外の材料により構成された部分から、高圧二酸化炭素により膨潤したり、可塑化したりした樹脂部分が剥離する可能性がある等の問題がある。



また、生体内に留置させる医療器具の一つであるステントは、狭心症、心筋梗塞、動脈瘤などの治療で血管を押し広げて固定する器具である。ステントによる治療は従来のバイパス手術と比べて、より安全に体に低負荷で行うことができるので、過去10年間で急速に普及し、すでにステントだけで世界で8000億円の市場がある。ステントの材料は、大きな変形を与えることが可能であり、さらに変形された形状が保持される形状セット性を有することが必要である。そのため、従来、ステントの材料としてモリブデンを添加したステンレス等の金属が多く使用されてきたが、ステント留置後に血栓がつき、血管が詰まる再狭窄が30%以上の確率で起こるという問題があった。また、金属は生体内で永久に残るので、発ガン、炎症などの二次的な疾患を起こす原因となっていた。一方、ステントの留置が原因で起こる管内の再狭窄を防ぐために、近年ではステント表面に抗がん剤などの薬剤を塗布し、再狭窄を抑制する方法がとられている。



このような背景において、金属が有しているような機械特性を有し、生体適合性に優れ、かつ、トラッグデリバリー機能などの生理活性を発揮し、役割を終えた後には、生体内で分解、吸収されるような究極の樹脂の開発が望まれていた。




【特許文献1】特開2004-97810号公報

【特許文献2】特開2004-41704号公報

【特許文献3】特開2003-305124号公報

【特許文献4】特開2004-329426号公報

【特許文献5】特開2004-357986号公報

【特許文献6】特開2004-275748号公報

【特許文献7】特開2005-330458号公報

【特許文献8】特許3328285号公報

【特許文献9】特開2003-246851号公報

【特許文献10】特開平5-49689号公報

【特許文献11】特開2003-82119号公報

【特許文献12】特表2003-533286号広報

【特許文献13】特表2005-505318号広報

【特許文献14】特表2006-506208号広報

【特許文献15】特表2006-512175号広報

産業上の利用分野


本発明は、生理活性物質を含む生分解性の樹脂組成物とその製造方法、該樹脂組成物を用いた成形体に関するものである。本発明は、特にステント等の生体内留置用の医療器具の製造に用いるための樹脂組成物とその製造方法、該樹脂組成物を成形することにより得られる、生体内に留置させる医療器具用の成形体に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
(1)ガラス転移温度40℃以上のポリ乳酸からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマーを、全生分解性ポリマーに対して50.00~99.99重量%、(2)ガラス転移温度又は副転移温度が40℃未満のラクチド-カプロラクトン共重合体及び/又はラクチド-トリメチレンカーボネート共重合体からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマーを、全生分解性ポリマーに対して0.01~50.00重量%、及び(3)生理活性物質を、全樹脂組成物に対して0.001~10.000重量%含むことを特徴とする樹脂組成物。

【請求項2】
前記(1)ガラス転移温度40℃以上の生分解性ポリマーの重量平均分子量が10.5万~13.5万であり、前記(2)ガラス転移温度又は副転移温度が40℃未満の生分解性ポリマー数平均分子量が18万~19万であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。

【請求項3】
前記(3)生理活性物質は、抗がん剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、NO供
与剤、カルシウム拮抗薬、抗高脂血症薬、抗炎症剤、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、フラボノイド、カロチノイド、脂質改善
薬、DNA合成阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗血小板薬、血管平滑筋増殖抑制薬、生
体由来材料、血管造影剤、及びインターフェロンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。

【請求項4】
前記(3)生理活性物質は、樹脂組成物内に分散されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂組成物。

【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
(1)ガラス転移温度40℃以上のポリ乳酸からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマー、及び(2)ガラス転移温度又は副転移温度が40℃未満のラクチド-カ
プロラクトン共重合体及び/又はラクチド-トリメチレンカーボネート共重合体からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマーを溶融混練し、次に(3)生理活性物質を液体又は超臨界状態の二酸化炭素に溶解し、前記溶融混練した生分解性ポリマーに含浸させることを特徴とする製造方法。

【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
(1)ガラス転移温度40℃以上のポリ乳酸からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマー、及び(2)ガラス転移温度又は副転移温度が40℃未満のラクチド-カプロラクトン共重合体及び/又はラクチド-トリメチレンカーボネート共重合体からなる数平均分子量が6万~70万の生分解性ポリマーを溶融混練し、次に(3)生理活性物質を人体に無害な有機溶媒及び気体、液体又は超臨界状態の二酸化炭素の混合物に溶解し、前記溶融混練した生分解性ポリマーに含浸させることを特徴とする製造方法。

【請求項7】
前記人体に無害な有機溶媒及び気体、液体又は超臨界状態の二酸化炭素の混合物が、エタノールと二酸化炭素の均一相である、請求項に記載の製造方法。

【請求項8】
前記生理活性物質の含浸は、生理活性物質の分解温度以下で行うことを特徴とする請求項5~の何れか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。

【請求項9】
請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。

【請求項10】
前記成形体の形状は、フィルム状、シート状又は板状であることを特徴とする請求項に記載の成形体。

【請求項11】
前記成形体の形状は、網状、繊維状、不織布状、織布状又はフィラメント状であることを特徴とする請求項に記載の成形体。

【請求項12】
前記成形体の形状は、棒状、チューブ、パイプ、ボトル、又は円柱状であることを特徴とする請求項に記載の成形体。

【請求項13】
生体内に留置させる医療器具用であることを特徴とする請求項12の何れか一項に記載の成形体。

【請求項14】
前記医療器具が、体内埋込型の治療補助器具、組織縫合器具又は人工組織であることを特徴とする請求項13に記載の成形体。

【請求項15】
前記体内埋込型の治療補助器具が、生体内消滅型ステントであることを特徴とする請求項14に記載の成形体。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 治療衛生
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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