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オオムギ渦遺伝子の直接検出方法

国内特許コード P09A015147
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2003-008560
公開番号 特開2004-215604
登録番号 特許第4231919号
出願日 平成15年1月16日(2003.1.16)
公開日 平成16年8月5日(2004.8.5)
登録日 平成20年12月19日(2008.12.19)
発明者
  • 蝶野 真喜子
  • 本多 一郎
  • 最相 大輔
  • 武田 和義
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
  • 国立大学法人 岡山大学
発明の名称 オオムギ渦遺伝子の直接検出方法
発明の概要

【課題】オオムギ渦遺伝子の有無を判定する方法及びその判定結果に基づく渦性品種の育種方法の提供。
【解決手段】特定配列で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子において、該アミノ酸配列の857番目のアミノ酸のヒスチジンからアルギニンへの変異を伴う塩基の変異を検出することを特徴とする、オオムギ渦遺伝子の有無を判定する方法。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要
オオムギ渦遺伝子は、日本古来のオオムギ半矮性遺伝子として古くから知られている遺伝子であり、1922年にすでにその遺伝子の遺伝学的特徴について報告されている(非特許文献1)。渦遺伝子はオオムギ3番染色体の動原体付近に座乗すると考えられている(非特許文献2)単一の劣性遺伝子であるが、この渦遺伝子の多面発現により、オオムギの渦性(うずせい)系統は半矮性で直立した厚く短い濃緑色の葉をつけ、多肥・密植に適する草型となる。このようなタイプの矮性形質である渦性に対し、遺伝的に対立関係にある普通型の表現型が並性である。
【0003】
交配により渦遺伝子の導入されたオオムギは多収を示すことが後々の詳細な研究により示されている(非特許文献3)。この渦遺伝子は、現在でも、重要な短稈・多収遺伝子として、日本国内で栽培されているすべての裸性オオムギ、及び皮性オオムギの約半数に導入され利用されている(非特許文献4)。このように、渦遺伝子はオオムギの多収化に貢献している重要な短稈遺伝子であるが、その矮化機構に関し、遺伝的・生理的に制御しているその遺伝子の機能については不明であったため、通常の交配以外では渦遺伝子本体を利用した植物の改良方法は開発されていなかった。
【0004】
矮性植物の矮性化機構に関しては、植物ホルモンと称される化学伝達物質との関わりで数多く研究されている。近年ではそれらの遺伝子が単離され、遺伝子そのものの利用が可能となってきている。今日、一般に植物ホルモンとして認識されている物質としては、オーキシン類、ジベレリン類、サイトカイニン類、アブシジン酸、ブラシノステロイド、およびエチレンが挙げられるが、このうち特にジベレリンは古くから植物の伸長生長に不可欠の化合物と考えられ、イネのdy、d18や、トウモロコシd1, d2, d3, d5、D8、コムギRhtなどの多くの矮性変異体は、そのジベレリン反応性と内生ジベレリンの含量より、いずれもジベレリンの生合成や受容に関する変異体であることが予測されていた。その後、これらの矮性変異体のコードする遺伝子が次々と明らかになってきており、その遺伝子そのものの利用方法も提示されているが、いずれも予測されていた通りジベレリン生合成や受容・シグナル伝達関連遺伝子であった。
【0005】
一方、従来からジベレリンではその矮化原因が説明できなかった矮性植物も知られており、その矮化原因は長らく不明であった。近年、このような矮性変異体の一つであるシロイヌナズナの矮性変異体がブラシノステロイドの生合成変異であることが明らかとなったのを契機に、植物の矮化原因としてブラシノステロイドの生合成や受容の変異体が知られるようになった。その後多くの植物でブラシノステロイドの生合成遺伝子や受容体遺伝子が明らかになり、これらを利用した植物の改良方法も提示されてきている(特許文献1及び2、並びに非特許文献5~7)。しかしながら、その矮性植物の多彩な表現型と矮性の原因である遺伝子変異との関係については依然として不明な点が多い。例えば、矮化の原因遺伝子として報告されているイネのブラシノステロイド受容体遺伝子については、その相補鎖を過剰発現する形質転換イネの表現型には様々なバリエーションがあることが報告されている(非特許文献7)。
【0006】
オオムギの渦性系統については、従来からジベレリンとは無関係な矮性であることが指摘されており、その暗発芽の幼鞘の長さとオーキシン類であるインドール酢酸含量に相関があることから、オーキシン生合成関連の矮性の可能性があることが指摘されていた(非特許文献8)。一方で、オオムギの渦性系統においてこの関係がみられるのは暗発芽幼葉鞘においてのみであり、発芽から成熟までの様々な局面で見られる渦性系統の矮性としての特徴的な形態を説明できるとは考えにくく、疑問も呈されている(非特許文献9)。このように、オオムギの渦性系統はその育種的な有用性が古くから明らかになっている変異体であるにも関わらず、その矮化原因は全く不明であり、その遺伝子本体も提示されていなかった。
【0007】
ところで、育種的にある特定の形質を持つ遺伝子を別の系統に導入する場合、交配育種の場では、交配後得られた後代でその形質の導入を判断し選抜していくが、導入する形質が遺伝的に劣性な形質などの場合、雑種第1代では目的とする形質が見られないため、多くの年限を費やすのが一般的である。最近、この年限を短縮する選抜法として、当該遺伝子と同時に遺伝する(連鎖する)DNA断片を得、これを分子マーカーとして選抜に利用するMAS(Marker Assist Selection)法の有用性が指摘されている。すなわち、当該遺伝子に強く連鎖するDNAマーカーが得られれば、幼植物などの組織の一部から抽出するDNAからその存在が確認できるため、植物を十分に栽培しなくても、その遺伝子型の推定ができるものであり、かかるDNAマーカーは育種上極めて有用であると考えられる。しかしながら、これらの分子マーカーは、通常ランダムスクリーニングによって無作為に見いだされた目的遺伝子そのものとは無関係な配列である場合がほとんどである。これらは単純に目的形質を制御する遺伝子の近傍に座乗するため、同時に後代に伝わる確率が高いだけであり、目的遺伝子とはある低い確率ながら別々の遺伝をする。すなわち、分子マーカーによる遺伝子型の推定(MAS)には一定の誤りが起こりうることが知られている(非特許文献10)。
【0008】
渦性は遺伝的に劣性な形質であることから、雑種第1代で渦遺伝子の有無を検出できる分子マーカーは、育種を効率化するために重要である。従来、渦遺伝子との連鎖を示す分子マーカーが報告されているが(非特許文献11)、いずれもAFLP法やRFLP法などによって見いだされた単純に渦遺伝子に遺伝的に連鎖するだけのマーカーであり、渦遺伝子とは同座ではないと考えられる。そのため、これらの遺伝子マーカーによる渦遺伝子の有無の推定には一定の誤りが起こる危険性があることが十分に考えられることから、渦遺伝子を確実に検出できる手法の開発が待たれていた。
【0009】
最近、オオムギ渦性系統におけるブラシノステロイド非感受性及び内生ブラシノステロイドの大量蓄積が報告された。ブラシノライド(BL)は、ブラシノステロイド(BRs)の1種である植物ホルモンである。これまでにも、シロイヌナズナ等の複数の植物で、ブラシノステロイドの欠損や非感受性が矮性原因となっている様々なブラシノステロイド関連変異体が報告されている(例えば、非特許文献6[シロイヌナズナbri1]、非特許文献7[イネd61]、非特許文献12[ブラシノステロイドと植物のステロイドホルモンの情報伝達]、及び非特許文献13[シロイヌナズナbin2] を参照されたい)。なおシロイヌナズナbri1とbin2は、別個の遺伝子の変異体であるにも関わらず、よく似た表現型を現すことが報告されている(非特許文献13)。これらの知見から、オオムギでもブラシノステロイド非感受性と渦性系統の矮性とが関連することが示唆された。
【0010】
【特許文献1】
特表2002-508665号公報
【特許文献2】
特表2001-327287号公報
【非特許文献1】
三宅、今井, 植物学雑誌, 東京植物学会, (1922) 第36巻, p.25-38
【非特許文献2】
Barley Genetics Newsletter, (United States of America), The American Malting Barley Association, Inc., (1997), Vol.26, p.136
【非特許文献3】
高橋隆平ら、農学研究, 岡山大学資源生物科学研究所, (1961), 49, p.67-87
【非特許文献4】
河田尚之、転作全書, 農山漁村文化協会, (2001), 「第1巻」ムギ, p.141-149
【非特許文献5】
Fujioka, S., et al., The Plant Cell, (1997), 9, p.1951-1962
【非特許文献6】
A putative leucine-rich repeat receptor kinase involved in brassinosteroid signal transduction., Cell, (1997), Vol.90, p.929-938
【非特許文献7】
"Loss of function of a rice brassinosteroid insensitive1 homolog prevents internode elongation and bending of the lamina joint.", The Plant Cell, (2000), Vol.12, p.1591-1605
【非特許文献8】
Inoue, M. et al., Plant & cell physiology, (1982), 23, p.689-698
【非特許文献9】
Honda, I. et al., "Dwarfism of dwarf barley "uzu"", Proceeding of seventh international symposium of Pre-harvest sprouting in cereals 1995, Center for Academic Societies Japan, Osaka, (1996), p.477-482
【非特許文献10】
池田、農林水産文献解題No23, 農林統計協会, (2000), p.601-615
【非特許文献11】
Mano, Y., et al. Genome/National Research Council Canada, (2001), 44, p.284-292
【非特許文献12】
Bishop G.J. and Koncz C., The Plant Cell, Supplement 2002, S97-110
【非特許文献13】
Li, J., et al., Plant physiology, September 2001, Vol. 127, p. 14-22
産業上の利用分野
本発明は、オオムギ渦遺伝子の有無を判定する方法、及びその判定結果に基づく渦性品種の育種方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】 配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子における該アミノ酸配列の857番目のアミノ酸をコードするコドンを調べ、該コドンとしてヒスチジンではなくアルギニンをコードするコドンが検出された場合は渦遺伝子が存在すると判定することを特徴とする、オオムギ渦遺伝子の有無を判定する方法。
【請求項2】 前記のアルギニンをコードするコドンがCGCである、請求項1記載の方法。
【請求項3】 配列番号1で示される塩基配列を有する遺伝子における該塩基配列の2612番目の塩基を調べ、該塩基としてアデニンではなくグアニンが検出された場合は渦遺伝子が存在すると判定することを特徴とする、オオムギ渦遺伝子の有無を判定する方法。
【請求項4】 核酸試料について、dCAPS法、PCRダイレクトシークエンシング法、AP-PCR法、RAPD法、PCR-SSCP法からなる群より選ばれる少なくとも1つの方法によって前記変異を検出する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】 配列番号17及び配列番号18で示されるそれぞれの塩基配列からなる2種のポリヌクレオチドからなるプライマー・セットと制限酵素Hha Iとを用いるdCAPS法によって、前記変異を検出する、請求項4記載の方法。
【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項記載の方法により得られた判定結果に基づいて、渦性品種を識別する方法。
【請求項7】 請求項1~5のいずれか1項記載の方法により得られた判定結果に基づいて、育種親を選択することを特徴とする、渦性品種の育種方法。
【請求項8】 配列番号5で示される塩基配列の一部であって2612番目の塩基位置を含む少なくとも15塩基の連続した配列若しくはそれに相補的な配列からなるポリヌクレオチド又はその標識物。
【請求項9】 以下の1)~3)からなる群より選択される1)及び2)、又は2)及び3)の組み合わせであるポリヌクレオチド又はその標識物からなるプライマー・セット。
1) 配列番号5で示される塩基配列の一部であって2612番目の塩基位置よりも5'側に位置する15~50塩基の連続した配列からなるポリヌクレオチド、又はその標識物、
2) 配列番号5で示される塩基配列の一部であって2612番目の塩基位置よりも3'側に位置する15~50塩基の連続した配列に相補的な配列からなるポリヌクレオチド、又はその標識物、
3) 配列番号1で示される塩基配列の2611番目の塩基位置を3'末端とする15~50塩基の連続した配列について2610番目の位置の塩基をグアニンに変更した配列からなるポリヌクレオチド、又はその標識物。
【請求項10】 請求項8記載のポリヌクレオチド若しくはその標識物、及び/又は請求項9記載のプライマー・セットを含む、オオムギ渦遺伝子の有無を判定するためのキット。
【請求項11】 配列番号5で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
産業区分
  • 微生物工業
  • 農林
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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24980_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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