TOP > 国内特許検索 > 多糖を含む素材からの低分子糖質等の製造法

多糖を含む素材からの低分子糖質等の製造法

国内特許コード P09A015168
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2006-281007
公開番号 特開2008-035853
登録番号 特許第5190858号
出願日 平成18年10月16日(2006.10.16)
公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
登録日 平成25年2月8日(2013.2.8)
優先権データ
  • 特願2006-191805 (2006.7.12) JP
発明者
  • 徳安 健
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 多糖を含む素材からの低分子糖質等の製造法
発明の概要

【課題】 本発明は、多糖、特に難分解性多糖を含む素材から低分子糖質等を製造するための技術を提供することにより、エタノールや石油代替製品等をターゲットとした糖質バイオマスの高度利用に繋げることを目的とする。
【解決手段】 本発明は、多糖の結晶構造を改変する活性をもつ塩またはその水系溶液、あるいはそれらと実質的に同等の活性をもつ物質を用い、多糖を含む素材に含まれる、多糖の低分子化・可溶化を最低限に抑えつつその結晶構造を改変した後、酵素加水分解反応を行い、多糖の低分子化・可溶化を行うことを特徴とする低分子糖質の製造法を提供する。さらに、本発明は、強酸の塩あるいはその水和物、またはそれを溶解したもの、あるいはそれらと機能的に同等の活性をもつ溶液、多糖を含む素材および強酸を含む反応液中で、化学的に低分子化反応または可溶化・分散化反応を行う工程を含むことを特徴とする、低分子糖質等の製造法を提供する。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


環境政策や脱化石資源への取組みが地球規模で進むなかで、バイオエタノールのガソリンへの混入が世界各国で政策目標となっており、澱粉やショ糖のエネルギー変換技術の開発が急速に進められている。ブラジルではサトウキビのショ糖から1100万キロリットルのエタノールを作り、そしてアメリカではトウモロコシ澱粉の糖化によって生産されたグルコースを用いて1000万キロリットル以上のエタノール製造が行われている。また、タイ、インドなどでは、サトウキビ、キャッサバ等を用いたエタノール製造規模を飛躍的に増大する計画を打ち出している。
しかしながら、サトウキビ、穀類、芋類などからショ糖絞りかすや澱粉抽出かすとして副生される植物繊維系バイオマスの大部分は、少量のショ糖や澱粉を残したまま、腐敗性の高い残渣として燃焼、鍬込み等によって処分されているのが現状である。



一般に、植物繊維系バイオマスは、セルロースを構成するグルコースの他、ヘミセルロースを構成するキシロース、アラビノースやペクチンを構成するガラクツロン酸等、多くの有用糖質を含んでおり、特に、主としてセルロースから得られるグルコースは、発酵原料や石油代替品の原料としても極めて有用性が高い。
このようななかで、アメリカでは、米国エネルギー省主導で、セルロース系資源をエタノール変換するための総合的技術開発プロジェクトが行われているところである。また、ブラジルでは、セルロースからのエタノール発酵技術が開発されつつある。
しかしながら、セルロースの分解効率が低いことなどが原因となり、経済的に成り立つレベルでの有効な利用技術が開発されていないのが現状である。



例えばアメリカでは、アルカリ・過酸化水素処理後に酵素糖化を行う方法が報告されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、この方法は、アルカリ・過酸化水素の取扱いが極めて困難であり、中和にも大量の酸を用いる必要がある。また、アルカリ・過酸化水素処理は、脱リグニン/ヘミセルロースが主目的であり、中和工程後の糖化工程では反応液中に多様な塩が生成することになる。



また、これまでのバイオマス糖化技術では、濃硫酸、希硫酸による加熱処理あるいは水蒸気爆砕処理等が用いられてきた。
しかしながら、これらの処理条件は過酷であり、設備が高度になることなどから、環境負荷が低い酵素法を中心とした独自技術の開発へのニーズが増していた。



これまでに、世界中の研究者により、生物が生産する様々なセルロース分解酵素の量やその触媒特性を最適化させ、分解効率を向上させるための研究が数多く行われてきた。
しかしながら、セルロースは強固な水素結合や疎水結合により密にパッキングされており、目覚ましい分解効率の向上は極めて困難と考えられてきた。



また、多糖を含む素材中に含まれる多糖の低分子化や膨潤のためには、酸による加水分解法や解繊法が用いられてきた。例えば、キチンを膨潤して分散性を高めたコロイダルキチン、キチンの部分加水分解物であるキチンオリゴ糖やN-アセチルグルコサミン等の製造においては、濃塩酸処理が行われている。
しかしながら、濃塩酸等の強酸を大量に使用する条件では、使用する酸の取り扱いに細心の注意を図る必要があり、副反応等にも注意する必要がある。酸の使用量を抑えた効果的な低分子化・膨潤技術の開発が求められている。



我が国のバイオマスエネルギー利用形態の一つは、地域密着型になるものと考えられており、農林水産省では、バイオマス・ニッポン総合戦略に基づくバイオマスタウン構想等により、地域から生産される素材をマテリアルまたはエネルギーに変換するための総合研究が行われているところである。その素材は、農林水産物そのものの他、砂糖絞りかす、澱粉抽出かす、おから、果汁残渣、生産調整用に廃棄される農林水産物、未利用植物、資源作物、未利用藻類、籾殻、藁、作物の茎葉、コーンコブ、茶かす、コーヒーかす、剪定枝葉、おがくず、木片、流木、間伐材、建築廃材、製紙スラッジ、古紙、古布、発酵残渣、甲殻類外殻など、多岐にわたる。
これらの素材を糖化する、あるいは新たな素材として有効利用するためには、地域における取組を推進するための基盤技術開発が強く求められているところである。また、澱粉絞りかすの中には、相当量の澱粉粒が残存していることが知られている。物理的処理では回収が困難であるとともに、腐敗の原因となることから、その利用技術の開発が望まれている。




【非特許文献1】Biotechnol. Prog., 22, pp. 449-453 (2006)

【非特許文献2】キチン、キトサン実験マニュアル, 技報堂出版,(ISBN 4-7655-0734-7C3043), pp.5-6およびpp.79-81 (1991)

産業上の利用分野


本発明は、多糖、特に難分解性多糖を含む素材を有効利用するための技術に関し、具体的には生体由来の難分解性多糖を含む素材から低分子糖質等を製造するための技術に関し、さらには、エタノールや石油代替製品等をターゲットとした糖質バイオマスの高度利用技術に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、それらの水和物またはそれらの水系溶液を、摂氏マイナス20度~摂氏40度で、多糖を含む素材に対して作用させることにより、該多糖を含む素材に含まれる、多糖の低分子化・可溶化を最低限に抑えつつその結晶構造を改変した後、酵素加水分解反応を行い、多糖の低分子化・可溶化を行うことを特徴とする、低分子糖質の製造法。

【請求項2】
チオシアン酸カルシウムあるいはその水和物、またはそれらの水系溶液を用い、チオシアン酸カルシウム換算でその濃度が20%(w/v)以上となるように多糖を含む素材に対して作用させることを特徴とする請求項記載の方法。

【請求項3】
多糖を含む素材中に含まれる多糖の少なくとも一部分がセルロースであり、酵素の少なくとも一部分がセルロース加水分解酵素またはセルロースの部分加水分解物を加水分解する活性をもつ酵素である、請求項1または2に記載の方法。

【請求項4】
多糖を含む素材中に含まれる多糖の少なくとも一部分が澱粉であり、酵素の少なくとも一部分が澱粉加水分解酵素または澱粉の部分加水分解物を加水分解する活性をもつ酵素である、請求項1または2に記載の方法。

【請求項5】
低分子化・可溶化された糖質の少なくとも一部がグルコースである、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項6】
多糖を含む素材が、澱粉または砂糖を蓄積させた植物体の少なくとも一部の器官、あるいは同植物体における澱粉または砂糖の蓄積部位からの澱粉抽出かすまたは砂糖搾汁かすから得られるものである、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項7】
多糖を含む素材が、パルプ製造時に副生されるセルロースを含む素材、パルプ、古紙、あるいはセルロースを含む繊維である、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項8】
チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、それらの水和物またはそれらの水系溶液が、極性有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項9】
多糖の結晶構造を改変した後に、多糖を含む素材の洗浄を行う、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項10】
塩化カルシウムあるいはその水和物、またはそれらを溶解した溶液を、多糖を含む素材に加えて、摂氏50度より高い温度での高温処理を施した後に、摂氏37度以下での低温処理を施す工程に次いで、請求項1~9のいずれかに記載の低分子糖質の製造法を行うことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。

【請求項11】
多糖の結晶構造を改変する工程において、強酸の塩あるいはその水和物、またはそれを溶解した溶液中で、多糖を含む素材を静菌・保存することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。

【請求項12】
強酸の塩が塩化カルシウムであり、溶液中に塩化カルシウム・二水和物換算でその濃度が10%(w/v)以上となることを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【請求項13】
アルカリおよび過酸化水素を含有する溶液中で多糖を含む素材を酸化処理する工程を行い、その後に多糖の結晶構造を改変する工程を行うことを特徴する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。

【請求項14】
アルカリが水酸化カルシウムであることを特徴とする、請求項13に記載の方法。

【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法により低分子糖質を製造し、該低分子糖質を発酵することを特徴とするエタノールの製造法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 処理操作
  • 有機化合物
  • 高分子化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

25000_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close