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植物の種子休眠を制御するSdr4遺伝子およびその利用

国内特許コード P09A015177
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2006-334667
公開番号 特開2008-142038
登録番号 特許第5177807号
出願日 平成18年12月12日(2006.12.12)
公開日 平成20年6月26日(2008.6.26)
登録日 平成25年1月18日(2013.1.18)
発明者
  • 杉本 和彦
  • 矢野 昌裕
  • 竹内 善信
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 植物の種子休眠を制御するSdr4遺伝子およびその利用
発明の概要 【課題】本発明は、植物の種子休眠を制御する新規な遺伝子を提供することを課題とする。また、該遺伝子を利用して植物の種子休眠を制御する方法を提供することを課題とする。さらに、被検植物の穂発芽耐性を検出する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために、まず、マップベースクローニング法を利用して、穂発芽耐性遺伝子であるSdr4の塩基配列を単離・同定することに成功した。さらに、相補試験、ノックダウン系統による機能解析、ミュータントの単離により日本晴のSdr4にも発芽抑制能があることを確認した。また、イネSdr4遺伝子と相同性の高いシロイヌナズナの遺伝子を検索した結果、最も相同性の高いAtSdr4L1は、発芽を制御する機能を有することを見出した。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


植物の種子は、成熟にともないその発芽能力を獲得すると、適当な栽培環境(温度や光)が提供されるまで、みずから発芽を抑制する機能をもつ。一般に、この現象を種子休眠という。種子休眠は、作物が栽培化されるにしたがって、その程度が小さくなり、最近の品種・系統では、種子休眠性が弱くなったものが多い。種子休眠性が弱くなると、収穫前の種子でも、発芽に好ましい温度や水分が与えられることで、発芽がおこる(穂発芽性)。イネでは、穂発芽が生じることにより玄米品質の低下が生じることが問題となっている。また、乾燥した気候を好むムギ類の場合、降雨量の多い日本における栽培は穂発芽による品質の劣化が特に重要な問題となっている。このように穂発芽した種子は品質が大きく低下することから、農業上大きな問題となっており、穂発芽耐性の付与は穀類の育種上重要な目標となっている。



種子休眠性(穂発芽性)の遺伝研究は、トウモロコシの易穂発芽変異体の解析により進展し、Vp1などの穂発芽変異体遺伝子が単離されてきた(非特許文献1)。植物ではアブシジン酸(ABA)により種子の発芽が抑制されることが知られており、これまでにシロイヌナズナのABA非感受性変異(abi)、発芽時にABA感受性が高まった変異(ahg)、ABA応答性の高まった変異(era)やABA合成異常(aba)の原因遺伝子が単離されてきた(非特許文献2)。またシロイヌナズナではジベレリン(GA)が発芽を促進することから、GAに対する感受性や生合成に関しても解析が進められ、関連する遺伝子が単離されてきた(非特許文献3)。これら変異体は種子休眠性以外にも変化が見られるが、より休眠性に特異的な変異体としてrdo1-4なども報告されている(非特許文献4)。近年は、休眠性の強いシロイヌナズナエコタイプであるCviからの休眠性関連遺伝子の同定が進み、休眠性に関わる14のQTL(DOG: Delay of Germination)の存在が報告されているが(非特許文献5)、さらに最近になりDOG1の遺伝子単離が報告された(非特許文献6)。DOG1は休眠性に関わる遺伝子であるが、Sdr4とは全く類似性を示さない遺伝子であった。



イネにおいても穂発芽耐性あるいは種子休眠性に関わる遺伝子同定の取り組みがなされ、易穂発芽突然変異を用いて関与遺伝子が単離されている。すなわちイネミュータントパネルから単離されたシロイヌナズナaba1変異体に相当するゼオキサンチンエポキシダーゼ(ZEP)の変異体である(非特許文献7)。また、自然変異を用いた穂発芽性の遺伝解析により、5つのQTL(量的形質遺伝子座)が報告されている(非特許文献8)。その他、ジャポニカに近縁の雑草イネとインディカの組み合わせ、あるいは近縁野生種を利用した遺伝解析により、複数のQTLが見いだされている(非特許文献9-11)。これらの背景のもと、イネの種子休眠性(穂発芽性)の理解を深め、さらには穂発芽耐性改良にむけた品種育成を効率化するためには、自然変異を用いた遺伝子単離とそれによる種子休眠性の分子レベルでの理解が不可欠となっている。



なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【非特許文献1】
McCarty Annual Review Plant Physiology & Plant Molecular Biology 46:71-93, 1995
【非特許文献2】
総説、Gubler et al. Current Opinion in Plant Biology 8:183-187, 2005
【非特許文献3】
総説、Peng and Harberd Current Opinion in Plant Biology 5:376-381, 2002
【非特許文献4】
Peeters et al. Physiologia Plantarum 115:604-612, 2002
【非特許文献5】
Alonso-Blanco et al. Genetics 164:711-729
【非特許文献6】
Bentsink et al. Proc Natl Acad Sci USA. 103, 17042-17047
【非特許文献7】
Agrawal et al. Plant Physiology 125:1248-1257, 2001
【非特許文献8】
Lin et al. TAG 96:997-1003, 1998; Takeuchi et al. TAG 107:1174-1180, 2003
【非特許文献9】
Gu et al. Genetics 166:1503-1516, 2004
【非特許文献10】
TAG 110:1108-1118, 2005
【非特許文献11】
Cai and Morishima TAG 100:840-846
【非特許文献12】
Lin et al. TAG 96:997-1003, 1998

産業上の利用分野


本発明は、植物の種子休眠を制御するSdr4遺伝子およびその利用に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(h)のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、種子休眠が制御された形質転換植物体の製造方法。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における69~1100位、配列番号:2に記載の塩基配列における1675~2706位、配列番号:4に記載の塩基配列における69~1097位または配列番号:5の塩基配列における1678~2706位を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
(e)配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号:8に記載の塩基配列における1930~2994位を含むDNA
(g)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(h)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA

【請求項2】
植物が単子葉植物または双子葉植物である、請求項1に記載の製造方法。

【請求項3】
下記(A)又は(C)に記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、種子休眠が制御された形質転換植物体の製造方法。
(A)植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする下記(a)から(h)のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的な15塩基以上のアンチセンスRNAをコードするDNA;
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における69~1100位、配列番号:2に記載の塩基配列における1675~2706位、配列番号:4に記載の塩基配列における69~1097位または配列番号:5の塩基配列における1678~2706位を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
(e)配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号:8に記載の塩基配列における1930~2994位を含むDNA
(g)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(h)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
(C)配列番号:10に示されるDNA

【請求項4】
植物の種子休眠を制御するために用いる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。

【請求項5】
植物の種子休眠を制御する機能が欠損した植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)または(b)に記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
(a)配列番号:7に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:7に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA

【請求項6】
前記DNAを含むベクターを植物細胞に導入する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。

【請求項7】
前記形質転換植物体の子孫またはクローンを得る工程を更に含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。

【請求項8】
植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の発芽を抑制する方法。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における69~1100位、配列番号:2に記載の塩基配列における1675~2706位、配列番号:4に記載の塩基配列における69~1097位または配列番号:5の塩基配列における1678~2706位を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA

【請求項9】
植物の細胞内における、内因性の、植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする、植物の発芽を促進する方法。
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における69~1100位、配列番号:2に記載の塩基配列における1675~2706位、配列番号:4に記載の塩基配列における69~1097位または配列番号:5の塩基配列における1678~2706位を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA

【請求項10】
下記(A)又は(C)に記載のDNAを植物に導入することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
(A)植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的な15塩基以上のアンチセンスRNAをコードするDNA;
(a)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(b)配列番号:1に記載の塩基配列における69~1100位、配列番号:2に記載の塩基配列における1675~2706位、配列番号:4に記載の塩基配列における69~1097位または配列番号:5の塩基配列における1678~2706位を含むDNA
(c)配列番号:3または6に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:1、2、4または5に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
(C)配列番号:10に示されるDNA

【請求項11】
植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(e)から(h)のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させることを特徴とする、植物の発芽を促進する方法。
(e)配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号:8に記載の塩基配列における1930~2994位を含むDNA
(g)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(h)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA

【請求項12】
植物の細胞内における、内因性の、植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(e)から(h)のいずれかに記載のDNAの発現を抑制することを特徴とする、植物の発芽を抑制する方法。
(e)配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号:8に記載の塩基配列における1930~2994位を含むDNA
(g)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(h)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA

【請求項13】
下記(A)に記載のDNAを植物に導入することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
(A)植物の種子休眠を制御する機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(e)から(h)のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的な15塩基以上のアンチセンスRNAをコードするDNA;
(e)配列番号:9に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA
(f)配列番号:8に記載の塩基配列における1930~2994位を含むDNA
(g)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において1~30個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(h)配列番号:8に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
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