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2以上の水酸基を有する化合物のライブラリー合成方法

国内特許コード P09A015197
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2007-036623
公開番号 特開2008-201686
登録番号 特許第5126706号
出願日 平成19年2月16日(2007.2.16)
公開日 平成20年9月4日(2008.9.4)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
発明者
  • 今場 司朗
  • 寺内 毅
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 2以上の水酸基を有する化合物のライブラリー合成方法
発明の概要

【課題】化合物ライブラリーの合成方法を提供する。
【解決手段】保護された複数の水酸基を有する化合物の保護基を選択的に脱保護し、遊離した水酸基に所望のドナーを選択的に導入してライブラリーを合成する方法において、
(1)1個の保護基Wが塩基性で脱離可能であり、他の保護基がA(Y)m基(Aは酸性で脱離可能な保護基、Yは-NR1-CR23-CO-)であるアクセプターを準備する工程、
(2)W基を選択的に脱保護し、遊離した水酸基に、所望のドナーを選択的に導入する工程、
(3)工程(2)で得られた中間体のA(Y)m基を、Y基中の酸アミド結合をN末端側から逐次切り離す方法により順次選択的に脱保護し、遊離した水酸基に、所望のドナーを選択的に導入する工程、
(4)上記工程(3)を、所望の水酸基へのドナーの導入が終了するまで繰り返す工程を含む方法。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


多数の水酸基を有する化合物(特に糖質、複合糖質、それらの誘導体又は類縁体)のライブラリー合成は未だ達成されていない未開の領域である。それはひとえに同じような反応性を持つ水酸基を選択的に遊離させる技術、特にライブラリー合成に最適化された水酸基の保護基の技術が存在していない為である。多くの従来の技術では様々な種類の保護基を適宜用いて、その反応性の違いを利用して目的の保護基のみを選択的に脱離させていたが、この様な手法では、ライブラリー合成は不可能である。なぜならライブラリーを合成する為にはある一つの条件で除去可能な一次元的な保護基が必要だからである。これを可能にする唯一の技術として、特定の保護基Yを用いた方法(以下「Y法」という)が挙げられる(特許文献1)。たとえば、3個の水酸基を有する化合物Aに、3個の水酸基を有する化合物Bを結合し、さらに3個の水酸基を有する化合物Cをライブラリー的に結合させる場合には、下記のスキーム1に示すように、まずそれぞれ5個の水酸基を有する3種類の2糖が合成され、次に、化合物Cを結合させるには5種類の水酸基をそれぞれ選択的に遊離出来るような保護基が必要である。つまり5種類の異なる条件で選択的に除去できる保護基が必要である。



スキーム1
【化学式1】




糖鎖が延びれば延びるだけ、異なる条件で選択的に除去できる保護基の数が増える為、上記の方法により糖鎖ライブラリーを合成することは現実的には不可能であった。しかし、Y法を用いれば、単にY基の重合度を変えるだけで無限の水酸基を選択的に遊離させる事が出来る。しかし、実際に糖鎖ライブラリー合成にこのY法を用いると、Y基が隣の水酸基に転移してしまい、選択的に目的の水酸基を遊離させる事が出来ない事が分かった。下記のスキーム2は実際に行った実験の結果を示している。







スキーム2
【化学式2】




ガラクトースの3、4位水酸基をそれぞれ、1重合のY基(上記の例では-N(CH(C252)-CH2-CO-)、2重合のY基で保護した化合物1に対して、Y基の重合度を減少する操作、つまり、エドマン分解を行った。エドマン分解は次の4つの段階より成り立っている。
1段階目:Y基のアミノ基の保護基であるBoc基を除去する段階。
2段階目:エドマン分解の試薬であるPITC(フェニルイソチオシアネート)を結合させる段階。この段階で1重合のY基は選択的に除去される。
3段階目:酸性条件により重合度を減少させる段階。2重合のY基が1重合のY基になる。
4段階目:新しく遊離したY基のアミノ基をBoc基で保護する段階。
この4段階からなるエドマン分解により、化合物1から選択的に化合物5が形成されるというのが特許文献1に記載された方法である。しかし、この化合物1においては、3段階目の重合度を減少させる際、副生成物として4位を保護しているY基が3位に転移した化合物4’が、化合物4に対して約1対1の比で生成する。その後、4段階目の再Boc化を経ると目的の化合物5と同じ量の化合物5’が生成する。つまり、4位水酸基が選択的に遊離されず、3位水酸基が遊離された化合物との混合物として得られてしまう。これでは、選択的に目的の水酸基を遊離させる事が出来ない。



さらに、実際の糖鎖合成においては、選択的に目的の水酸基に糖を縮合する点に加え、糖の1位(アノメリック位)の立体を制御する必要がある。1位にはβ体と、α体が存在し、2位水酸基がエクアトリアルの位置の糖の場合、β体を選択的に形成するには2位水酸基をアシル系保護基、例えば、ベンゾイル基やピバロイル基で保護しておけばよいことが知られているが、選択的にα体を形成する条件はほとんど知られていない。わずかに2位水酸基をエーテル系保護基、例えば、ベンジル基やメチル基で保護し、更に反応溶媒にエーテル系溶媒、例えば、ジエチルエーテルやTHFなどを用いると、β体に対してα体が優先的に生成するという知見がある程度である。例外的に唯一、4,6位をDTBS基で環状的に保護した場合、選択的にα体を形成するという報告がなされている(非特許文献1)。しかし、この様に、4,6位を環状基で保護してしまうと、DTBS基を脱保護すると4,6位水酸基が同時に遊離し、選択的に水酸基を遊離させる事が出来なくなる。そこで、Y基がある状態で、選択的にα体を形成できる条件を確立する必要がある。




【特許文献1】特開2005-75729

【非特許文献1】Imamura A., et al. Tetrahedron Lett. 44(35) 6725-6728, 2003

産業上の利用分野


本発明は、2以上の水酸基を有する化合物、典型的には糖類のライブラリーの合成方法に関し、さらに詳細には、(Y)n基で保護された水酸基を有するアクセプターのY基を順次選択的に脱保護し、選択的に遊離せしめた水酸基に、所望のドナーを選択的に導入して化合物ライブラリーを合成する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
保護された水酸基n個(nは2以上の整数)を有する化合物をアクセプターとして用い、該保護基を選択的に脱保護し、遊離した水酸基に所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入して化合物ライブラリーを合成する方法において、
前記アクセプターが糖であり、
(1)1個の保護基がW基であり、他の保護基がA(Y)m基であるアクセプターを準備する工程であって
前記W基は、Fmoc(Y)基または、下記表1に記載された各構造式で表される基から選択され、
【表1】


前記Aは下記表2及び表3に記載された各構造式で表される基から選択され、
【表2】


【表3】


前記Yは-NR1-CR23-CO-、R1は炭素数1~6のアルキル基又は水素原子、R2及びR3は水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、炭素数6~7のアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基であり、同一でも異なっていても良く、mはYの重合度を示し、1以上の整数であり、mが2以上の整数の場合、各Y中のR1、R2、R3は、相互に同一でも異なっていても良い、前記工程
(ここで、
前記W基としてFmoc(Y)基または表1に示した保護基1、2又は3を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A~Pから選択され、
前記W基として表1に示した保護基4を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A、B、D~J、L、O及びPから選択され、
前記W基として表1に示した保護基5又は6を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A~Pから選択され、
前記W基として表1に示した保護基7を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A~I、O及びPから選択され、
前記W基として表1に示した保護基8を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A~N及びPから選択され、
前記W基として表1に示した保護基9を使用した場合、前記A基は表2及び3に示した保護基A~Oから選択される。)
(2)W基を選択的に脱保護し、選択的に遊離せしめた水酸基に、所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(3)工程(2)で得られた中間体のA(Y)m基を、Y基中の酸アミド結合をN末端側から逐次切り離す方法により順次選択的に脱保護し、選択的に遊離せしめた水酸基に、所望のドナー又はキャッピング基を選択的に導入する工程、
(4)上記工程(3)を、所望の水酸基へのドナー又はキャッピング基の導入が終了するまで繰り返す工程を含み、
(a) アクセプターが、隣接する2個の炭素原子にそれぞれ結合した2個の水酸基を所望のドナー又はキャッピング基との結合に供与させたい化合物であるときは、一方の水酸基がA(Y)m基で保護され、他方の水酸基がW基で保護され、
(b) アクセプターが、隣接する3個の炭素原子にそれぞれ結合した3個の水酸基を所望のドナー又はキャッピング基との結合に供与させたい化合物であるときは、中央の炭素原子に結合した水酸基がW基で保護され、他の水酸基がA(Y)m基と、A(Y)m’基(m’はYの重合度を示す1以上の整数、mとm’は相互に同一でも良く、異なっていても良い)で保護され、
(d) アクセプターが、1級水酸基及び、それが結合した炭素原子に1個の炭素原子を介して隣接する第1の炭素原子及び第1の炭素原子に隣接した第2の炭素原子にそれぞれ結合した第1及び第2の2級水酸基を所望のドナー又はキャッピング基との結合に供与させたい化合物であるときは、第1の2級水酸基がW基で保護され、他の水酸基がA(Y)m基と、A(Y)m’基(m’はYの重合度を示す1以上の整数、mとm’は相互に同一でも良く、異なっていても良い)で保護され、又は、第2の2級水酸基がW基で保護され、1級水酸基がA(Y)m基で保護され、第1の2級水酸基がA(Y)m’基(m’はYの重合度を示す1以上の整数、ただし、m≧m’)で保護され、
(e) アクセプターが、1級水酸基及び、それが結合した炭素原子に1個の炭素原子を介して隣接する3個の炭素原子にそれぞれ結合した第1,第2及び第3の2級水酸基を所望のドナー又はキャッピング基との結合に供与させたい化合物であるときは、1級水酸基がA(Y)m基で保護され、第2の2級水酸基がW基で保護され、第1の2級水酸基がA(Y)m’基(m’はYの重合度を示す1以上の整数、ただし、m≧m’)で保護され、第3の2級水酸基がA(Y)m”基(m”はYの重合度を示す1以上の整数、mとm”または、m’とm”は相互に同一でも良く、異なっていても良い)で保護され、
(f) アクセプターが、第1の1級水酸基、それが結合した炭素原子に1個の炭素原子を介して結合した第1の炭素原子に結合した第1の2級水酸基、第1の炭素原子に隣接する第2の炭素原子に結合した第2の2級水酸基、及び第2の炭素原子に1個の炭素原子を介して結合した第2の1級水酸基を所望のドナー又はキャッピング基との結合に供与させたい化合物であるときは、第1の2級水酸基がW基で保護され、第2の2級水酸基がA(Y)m基で保護され、第1の1級水酸基がA(Y)m’基(m’はYの重合度を示す1以上の整数、mとm’または、m”とm’は相互に同一でも良く、異なっていても良い)で保護され、第2の1級水酸基がA(Y)m”基(m”はYの重合度を示す1以上の整数、ただし、m”≧m)で保護された保護アクセプターを使用することを特徴とする化合物ライブラリーの合成方法。

【請求項2】
保護基AがBoc基であり、保護基WがFmoc(Y)基である請求項1記載の方法。

【請求項3】
アクセプターが、6炭糖、そのオリゴ糖、その誘導体又は類縁体である請求項1又は2記載の方法。

【請求項4】
6炭糖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、フコース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、イズロン酸、ソルボース、タガトース、フルクトース、及びプシコースからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項記載の方法。

【請求項5】
アクセプターが、5炭糖、そのオリゴ糖、その誘導体又は類縁体である請求項1又は2記載の方法。

【請求項6】
5炭糖が、アラビノース、キシロース、リボース、リキソース、リブロース、及びキシルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項記載の方法。

【請求項7】
アクセプターが、シアル酸、そのオリゴ糖、その誘導体又は類縁体である請求項1又は2記載の方法。

【請求項8】
アクセプターが、リンカーを介して固相に固定されている請求項1~のいずれか1項記載の方法。

【請求項9】
固相が、樹脂である請求項記載の方法。
産業区分
  • 有機化合物
  • 高分子化合物
  • その他有機化学
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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25023_01SUM.gif
出願権利状態 権利存続中


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