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ダニ抗原米

国内特許コード P09A015229
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2007-266864
公開番号 特開2009-095244
登録番号 特許第5263477号
出願日 平成19年10月12日(2007.10.12)
公開日 平成21年5月7日(2009.5.7)
登録日 平成25年5月10日(2013.5.10)
発明者
  • 高岩 文雄
  • 鈴木 一矢
  • 楊 麗軍
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 ダニ抗原米
発明の概要 【課題】本発明は、複数のT細胞エピトープを含むダニ抗原タンパク質部分ペプチド、または抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているダニ抗原ペプチドをイネ種子へ集積させる方法、および該ペプチドを集積させた植物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために、ダニ抗原ペプチド改変体を蓄積したイネの種子(コメ)の作製を試みた。その結果、該ダニ抗原ペプチド改変体を発現、蓄積した遺伝子組換えイネを開発し、これをマウスに経口摂取させることにより、免疫寛容を誘導し、特にその喘息における効果を実証し、本発明を完成するに至った。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


ハウスダストによるアレルギー患者は世界でも5~10%程度存在するとされている。特にその主な原因となっているダニの死骸やフンによるアレルギーは、気管支喘息やアトピー性皮膚炎の大きな原因の一つとなっており、成人のみならず、小児においては、致命的な疾病ともなりうる。アレルギーは、通常は抗原として認識されることのない物質が抗原として認識され、Th2 型の免疫反応によって引き起こされる疾患である。



近年、アレルギー疾患に対する根治的治療法は、従来注射によりアレルゲンそのものを投与し、長期間にわたり段階的に増加させアレルゲン特異的な免疫反応性を鈍らせる減感作療法であった。しかしこの療法では、アレルギー症状を引き起こす肥満細胞に結合しているIgE抗体との反応性が残っており、アナフィラキシーショック等の副作用が見られる問題があることが指摘されている。



アレルゲンに由来するT細胞エピトープペプチドを投与するペプチド免疫療法が注目されている。その作用機構として、アレルゲン特異的なヘルパーII型のT細胞の不応答や欠失が起こると考えられる。T細胞エピトープを利用するペプチド免疫療法は一般にアレルギー反応を起こすB細胞エピトープを含まず、アレルゲン特異的なIgE抗体との結合性もないことから、従来の減感作療法で起きている副作用が起きにくく安全である。



一方、経口接種されたタンパク質等に対しては不必要に免疫応答がおこらないよう、免疫系を抑制するメカニズムが知られており、これは経口免疫寛容として知られている。スギ花粉症のアレルゲンに由来するT細胞エピトープペプチドについても、特異的T細胞に対する高い反応性を示すことから、本発明者らは以前に、スギアレルゲン特異的なT細胞エピトープを実際に有用な植物へ集積させ、該植物の経口投与によって免疫寛容を誘導する方法を開発している(特許文献1)。



特に日本でも問題になっているのがDermatopagoides farinae(D. farinae、コナヒョウヒダニ)および Dermatopagoides(D. pteronyssinus、ヤケヒョウヒダニ)とよばれる二種類のダニによるアレルギーである。これらのダニによるアレルゲンの解析は多く報告されており、これまでのところ20種類以上のアレルゲンが報告されている(非特許文献1-3)。しかしながら、この中でも、ダニアレルギー患者におけるIgEの結合活性の60-90%程度がグループIアレルゲンおよびグループIIアレルゲンに属するタンパク質群であるとされている。



Der p1またはDer f1などのタイプI抗原は主にダニの糞に含まれている。分子量は約25kDaで、システインプロテアーゼと同時にセリンプロテアーゼをもコードすることが知られている。これら二つの酵素の活性中心は同じアミノ酸である(非特許文献4)。このシステインプロテアーゼの活性により、免疫担当細胞表面に存在する分子マーカーの一つであるCD25(IL-2受容体α鎖)を切断することにより生体の免疫応答をTh2型にシフトさせることが報告されている(非特許文献5)。また、CD23(低親和性のIgE受容体)に対しても同様にこれを切断し、IgE産生のネガティブフィードバックのシグナルを阻害することも報告されている(非特許文献6)。また、このタンパク質が生体内に侵入し、ダニ抗原としてその抗原性を発揮するためには自身のもつシステインプロテアーゼ活性が保持されることが重要であることも知られている(非特許文献7)。



一方、Der p2またはDer f2などのタイプII抗原は分子量約14kDaのタンパク質であり、主にダニの虫体にあるとされているが、そのタンパク質としての機能、役割についてはこれまでのところ不明である。その分子内にある3組のS-S結合によって立体構造を維持しており(非特許文献8)、その立体構造がNMR解析によって明らかにされている(非特許文献9、10)。さらにこれらのS-S結合を構成するシステインのうち、第8位と第119位のシステインで構成されるS-S結合に変異を入れた場合、ヒトにおいては血清中のIgEの結合能を著しく低下させつつも抗原特異的なT細胞の増殖は野生型とほぼ同等である、という報告がなされている(非特許文献11)。



なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【特許文献1】
WO2004/094637
【非特許文献1】
Thomas, W.R. et al. Int Arch Allergy Immunol 129, 1-18 (2002)
【非特許文献2】
Kawamoto, S. et al., J Biosci Bioeng 94, 285-298 (2002)
【非特許文献3】
Weber, E. et al., J Allergy Clin Immunol 112, 79-86 (2003)
【非特許文献4】
Hewitt C.R. et al., Clin Exp Allergy 27, 201-207 (1997)
【非特許文献5】
Schulz, O. et al., J Exp Med 187, 271-275 (1998)
【非特許文献6】
Hewitt, C.R.et al., J Exp Med 182, 1537-1544 (1995)
【非特許文献7】
Kikuchi Y. et al., J Immunol. 177, 1609-1617 (2006)
【非特許文献8】
Nishiyama C. et al., Int Arch Allergy Immunol 101, 159-166 (1993)
【非特許文献9】
Ichikawa S. et al., J. Biol Chem 273, 356-360 (1998)
【非特許文献10】
Mueller G.A. et al., Biochemistry 37, 12707-12714 (1998)
【非特許文献11】
Takai T. et al., Nature Biotechnol 15, 754-758 (1997)

産業上の利用分野


本発明は、ダニタンパク質におけるヒトの主要なT細胞エピトープを含む部分ペプチド、ダニ抗原特異的なIgE結合活性を低下させた改変ペプチド、またはシステインプロテアーゼ活性を失活するよう改変したペプチドをイネに蓄積させる方法、および該ペプチドを蓄積させたイネに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
イネ植物体の種子貯蔵タンパク質プロモーターの制御下に以下の(a)から(d)のいずれかのDNAが配置された構造を有するDNA構築物であって、
(a)5’末端に貯蔵タンパク質シグナル配列をコードするDNA、および/または3’末端に小胞体係留シグナル配列をコードするDNAが付加されていることを特徴とする、ダニ抗原タンパク質由来のペプチドをコードするDNAであって、該ペプチドが複数のT細胞エピトープを含むペプチドであることを特徴とするDNA
(b)N末端に貯蔵タンパク質シグナル配列、および/またはC末端に小胞体係留シグナル配列が付加されていることを特徴とする、ダニ抗原タンパク質由来のペプチドであって、複数のT細胞エピトープを含むペプチドをコードするDNA
(c)5’末端に貯蔵タンパク質シグナル配列をコードするDNA、および/または3’末端に小胞体係留シグナル配列をコードするDNAが付加されていることを特徴とする、ダニ抗原タンパク質をコードするDNAであって、該ダニ抗原タンパク質が抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているタンパク質であることを特徴とするDNA
(d)N末端に貯蔵タンパク質シグナル配列、および/またはC末端に小胞体係留シグナル配列が付加されていることを特徴とする、ダニ抗原タンパク質であって、抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているタンパク質をコードするDNA;
前記ダニ抗原タンパク質が、以下の(i)、(ii)又は(iii)に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である、前記DNA構築物。
(i)配列番号:2、4、6または8のいずれかに記載のアミノ酸配列
(ii)配列番号:2または6に記載のアミノ酸配列において1~15個、配列番号:4または8に記載のアミノ酸配列において1~5個、のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列
(iii)配列番号:2、4、6または8のいずれかに記載のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列

【請求項2】
ダニ抗原タンパク質がタイプ1型またはタイプ2型の抗原タンパク質である、請求項1に記載のDNA構築物。

【請求項3】
(ii)又は(iii)に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が、(i)に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等である、請求項1または2に記載のDNA構築物。

【請求項4】
複数のT細胞エピトープを含むペプチドが、以下の(i)または(ii)の領域を含むペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載のDNA構築物。
(i)配列番号:2に記載のアミノ酸配列における第45位~第67位、第94位~第104位、または第117位~第143位から選択される2以上の領域
(ii)配列番号:2に記載のアミノ酸配列における第21位~第49位、第71位~第100位、第93~108位、第110位~第131位または第197位~第212位から選択される2以上の領域
(iii)配列番号:4に記載のアミノ酸配列における第11位~第35位、第87位~第104位、第105位~129位から選択される2以上の領域
(iv)配列番号:4に記載のアミノ酸配列における第35位~第50位、第35位~第60位、第87位~104位から選択される2以上の領域

【請求項5】
前記複数のT細胞エピトープを含むペプチドが、以下の(i)~(ii)に記載の、ペプチドが抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変された部分ペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のDNA構築物。
(i)配列番号:2に記載のアミノ酸配列における第45位~第144位までの領域を含むアミノ酸配列からなるペプチド
(ii)配列番号:6に記載のアミノ酸配列における第1位~第144位までの領域を含むアミノ酸配列からなるペプチド

【請求項6】
前記複数のT細胞エピトープを含むペプチドが、システインプロテアーゼ活性を有さないよう改変されたペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のDNA構築物。

【請求項7】
配列番号:2に記載のアミノ酸配列における第34位のシステイン残基(Cys)がアラニン残基(Ala)に改変されることを特徴とする、請求項6に記載のDNA構築物。

【請求項8】
前記抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているダニ抗原タンパク質が、IgE誘導活性中心を持たないように改変されていることを特徴とする請求項1に記載のDNA構築物。

【請求項9】
前記ダニ抗原タンパク質が、配列番号:4または8に記載のアミノ酸配列における、第8位、第21位、第27位、第73位、第78位または第119位のシステイン残基(Cys)のいずれか1つまたは複数がセリン残基(Ser)に改変されたアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする、請求項8に記載のDNA構築物。

【請求項10】
前記ダニ抗原タンパク質が、配列番号:4における第11位~第129位までの領域を含む部分ペプチド、または、配列番号:8における第11位~第129位までの領域を含む部分ペプチドのシステイン残基を改変した部分ペプチドであることを特徴とする、請求項9に記載のDNA構築物。

【請求項11】
前記ダニ抗原タンパク質をコードするDNAが、イネ胚乳で発現可能なようにコドンが改変された塩基配列からなるDNAであることを特徴とする、請求項1に記載のDNA構築物。

【請求項12】
前記ダニ抗原タンパク質をコードするDNAが、以下の(a)~(d)のいずれかに記載の塩基配列からなる、請求項1に記載のDNA構築物。
(a)配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:9に記載の塩基配列からなるDNAと90%以上の配列同一性を有するDNA
(c)配列番号:10に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA
(d)配列番号:10に記載のアミノ酸配列において1~5個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA

【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のDNA構築物によりコードされるポリペプチド。

【請求項14】
糖鎖が付加され、かつタンパク質顆粒Iに封入されていることを特徴とする、請求項13に記載のポリペプチド。

【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載のDNA構築物を含む、ベクター。

【請求項16】
請求項1~12のいずれかに記載のDNA構築物または、請求項15に記載のベクターを保持する形質転換イネ細胞。

【請求項17】
請求項16に記載の形質転換イネ細胞を含む、複数のT細胞エピトープを含み、または抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているペプチドを集積する、形質転換イネ。

【請求項18】
前記ペプチドがイネの種子に集積されることを特徴とする、請求項17に記載の形質転換イネ。

【請求項19】
請求項17に記載の形質転換イネの子孫またはクローンである、形質転換イネ。

【請求項20】
請求項17または18に記載の形質転換イネの繁殖材料。

【請求項21】
請求項17または18に記載の形質転換イネの種子。

【請求項22】
請求項21に記載の形質転換イネの種子を有効成分とする、ダニを抗原とするアレルギー性疾患の治療または予防のための食品組成物。

【請求項23】
アレルギー性疾患がI型アレルギーである、請求項22に記載の食品組成物。

【請求項24】
請求項21に記載の形質転換イネの種子を有効成分とする、ダニを抗原とするアレルギー性疾患の治療または予防のための医薬組成物。

【請求項25】
アレルギー性疾患がI型アレルギーである、請求項24に記載の医薬組成物。

【請求項26】
経口投与用であることを特徴とする、請求項24または25に記載の医薬組成物。

【請求項27】
以下の工程(a)~(c)を含む、請求項1~12のいずれかに記載のDNA構築物によりコードされる複数のT細胞エピトープを含むダニ抗原タンパク質由来のペプチドをイネに集積させる方法。
(a)複数のT細胞エピトープを含むペプチドをコードするDNAを取得する工程、
(b)前記(a)で取得されたDNAの5’末端に貯蔵タンパク質シグナル配列をコードするDNA、および/または3’末端に小胞体係留シグナル配列をコードするDNAを付加する工程、
(c)前記(b)のDNAを、植物において貯蔵タンパク質プロモーターの制御下で発現させる工程

【請求項28】
以下の工程(a)~(d)を含む、請求項1~12のいずれかに記載のDNA構築物によりコードされる、抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているダニ抗原タンパク質由来のペプチドをイネに集積させる方法。
(a)ダニ抗原タンパク質をコードするDNAを取得する工程、
(b)前記ペプチドが抗原として認識されるための立体構造を形成しないように、前記(a)で取得されたDNAを改変する工程、
(c)前記(b)で取得されたDNAの5’末端に貯蔵タンパク質シグナル配列をコードするDNA、および/または3’末端に小胞体係留シグナル配列をコードするDNAを付加する工程、
(d)前記(c)のDNAを、植物において貯蔵タンパク質プロモーターの制御下で発現させる工程

【請求項29】
前記ペプチドがイネの種子に集積されることを特徴とする、請求項27または28に記載の方法。

【請求項30】
請求項27から29のいずれかに記載の方法により作出される、複数のT細胞エピトープを含み、かつ抗原として認識されるための立体構造を形成しないように改変されているダニ抗原タンパク質由来のペプチドが集積された形質転換イネ。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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25055_01SUM.gif
出願権利状態 登録


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