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タンパク質複合体の会合領域の空間を評価する方法およびプログラムならびに解析装置

国内特許コード P09A015231
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2007-279664
公開番号 特開2008-135019
登録番号 特許第5127037号
出願日 平成19年10月26日(2007.10.26)
公開日 平成20年6月12日(2008.6.12)
登録日 平成24年11月9日(2012.11.9)
優先権データ
  • 特願2006-291846 (2006.10.26) JP
発明者
  • 前田 美紀
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 タンパク質複合体の会合領域の空間を評価する方法およびプログラムならびに解析装置
発明の概要 【課題】タンパク質複合体における構造単位間の相補性を高精度で表すための新たな指標およびその測定方法を提供する。
【解決手段】タンパク質複合体における構造単位間の会合領域の表面積とともに、会合領域の空間体積を構造単位間の相補性の指標として導入し、タンパク質複合体を構成する構造単位間の会合領域の空間を高精度で記述し、この空間の形状から構造単位間の相補性を評価する。タンパク質複合体の会合領域を定義する工程および定義された会合領域空間を四面体分割により作成した四面体の集合体を精密化して、凹多面体で記述する工程を含む。
【選択図】図3
従来技術、競合技術の概要


タンパク質そのものに対する立体構造研究はこれまでは構造決定が主流であり、「構造ゲノム科学」の進展とともに立体構造の情報が蓄積されている。
タンパク質構造解析に関連するコンピュータを利用した方法開発としては、これまで構造決定のための手法開発、決定された構造の検証方法の開発などが中心であったが、今後は立体構造データを利用・解析し、タンパク質立体構造構築原理などの生物学的意味を見つける研究がますます増加すると考えられる。
特に、単量体中心で解析されてきたタンパク質の構造解析は、今後複合体の研究へと進むと予想されるため、複合体を解析するための新しい方法の開発が必要である。



タンパク質複合体とは、少なくとも1つのタンパク質を含む複数の構造単位の会合体であり、構造単位には、タンパク質、低分子化合物、糖類、核酸等の分子が含まれる。すなわち、タンパク質複合体は、複数のタンパク質分子からなるタンパク質多量体、またはタンパク質と、低分子化合物、糖類、核酸等の分子との異種複合体を意味する。
なお、本書類中でタンパク質サブユニットとは、多量体タンパク質の1つの連続したアミノ酸の鎖からなるタンパク質分子を意味すると同時に、多種複合体タンパク質の場合ではそれを構成する個々の連続したアミノ酸鎖をも意味し、単に、サブユニットと表記する場合もある。



タンパク質の構造決定に限定されないコンピュータを利用した方法開発としてはドラッグデザインへの応用[特許文献1~5]が早くから行われており、タンパク質-低分子リガンドのドッキング、ドラッグデザインなどのツール、分子(動)力学シミュレーションプログラムは一般に利用されるレベルの精度のものが既に開発されている。
しかし、タンパク質多量体(特に会合面)の解析例がまだまだ少ないことから、分子量の大きいタンパク質多量体の解析ツールはまだ十分ではない。特にタンパク質多量体をシミュレーションするためには、膨大な計算機のパワーが必要であるため、このような方法による会合状態の解析はまだ一般的でない。



タンパク質科学の領域では、古くからタンパク質の相互認識は相互作用表面の相補的な形によると考えられている。この相補的という単語には、物理化学的相補性と形状相補性の2つの意味が含まれる。
タンパク質-タンパク質相互作用の検出については電荷の相補性など物理化学的相補性についての先行研究は数多くあるが、タンパク質多量体におけるタンパク質サブユニット間の会合面の相補性を評価する方法としては、X線結晶学者が利用している形状相補性(Shape Complementarity; SC)プログラム以外一般に公開されていない[非特許文献1]。
このSCプログラムは、2つのタンパク質表面上に法線ベクトルをそれぞれ設定し、2つの法線ベクトルの一致性を検出するものであるが、結果がタンパク質の表面形状に依存するという問題があった。



【特許文献1】
特許第3256307号明細書
【特許文献2】
特許第2621842号明細書
【特許文献3】
特許第3669704号明細書
【特許文献4】
特許第3747048号明細書
【特許文献5】
米国特許第6727100号明細書
【非特許文献1】
Lawrence MC, Coleman PM. J. Mol. Biol. 234, 946-950 (1993)
【非特許文献2】
Chothia C. J. Mol. Biol. 105, 1-12 (1976)
【非特許文献3】
Eisenberg D, McLachlan AD. Nature 319, 199-203 (1986)
【非特許文献4】
Raschke TM, Tsai J, Levitt M. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 5965-5969 (2001)
【非特許文献5】
Lee B, Richards FM. J. Mol. Biol. 55, 379-400 (1971)
【非特許文献6】
Maeda M. J. Mol. Graph. Modell. 19, 543-551 (2001)
【非特許文献7】
Maeda M, Minaka N. "Evolutionary and structural estimation of ligand binding domain of steroid hormone receptors." Keystone symposia 2000, macromolecular assembly at work: Application of physics, chemistry and mathematics to biology (C5) (Feb. 2000)
【非特許文献8】
Ponstingl H, Henrick K, Thornton JM. Proteins: Struct. Funct. Genet. 41, 47-57 (2000)
【非特許文献9】
奥清高、伊藤正文、野口文雄、小林秀彦、「VRMLを用いた双晶形態の可視化」: http://www.apc.saitama-u.ac.jp/~chemsoft/314.html
【非特許文献10】
Eargle J, Luthey-Schulten Z. Computational Biology and Chemistry. 30, 2219-226 (Jun. 2006)
【非特許文献11】
Jones S, Thornton JM. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93, 12-20 (Jan. 1996)
【非特許文献12】
“The Chemist's Companion: A Handbook of Practical Data, Techniques, and References”, ed. by Gordon AJ and Ford RA, A Wiley-Interscience Publications. 1972, pp108
【非特許文献13】
Laskowski RA. J. Mol. Graph. 13, 323-330 (1995)

産業上の利用分野


本発明は、タンパク質複合体の会合領域の空間を評価する方法に関する。より詳しくは、本発明は、タンパク質複合体の会合領域の空間体積を計算する方法および会合領域を可視化する方法に関する。
さらに、本発明は、タンパク質複合体の会合領域の表面積に対する空間体積の比から、タンパク質複合体を構成する構造単位間の相補性を判定する方法にも関する。
以下、本書類中では、構造単位とはタンパク質複合体を形成する個々の分子(共有結合で結合した原子からなる一連の構造体)を指す。

特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも1のタンパク質を含む複数の構造単位からなるタンパク質複合体の1または複数の会合領域の空間を評価する方法であって、
(a)評価対象とするタンパク質複合体の立体構造座標データに基づき、前記タンパク質複合体の構造単位を構成する原子またはアミノ酸残基のうち、前記タンパク質複合体の1または複数の会合領域に存在する原子またはアミノ酸残基を定義する工程;
(b)前記タンパク質複合体の1または複数の会合領域に存在する原子であると定義された原子の座標データまたは前記タンパク質複合体の1または複数の会合領域に存在するアミノ酸残基であると定義されたアミノ酸残基のα炭素の座標データを母点として、前記会合領域の空間を四面体分割して、前記空間内に四面体の集合体を作成し、ついで、前記タンパク質複合体の立体構造座標データに基づいて、前記四面体の集合体が前記構造単位の内部に対応する部分が存在するか否かを判定し、内部に対応する部分が存在する場合、構造単位間空間を含む四面体のみを抽出することによって前記四面体の集合体を精密化して得られる凹多面体で前記空間を記述する工程を含む、会合領域空間の評価方法。

【請求項2】
さらに、
(c)前記凹多面体を構成する個々の四面体の内部に、メッシュ点を三次元的に等間隔に発生させ、ついで、四面体の内部に存在する原子のファンデルワールス半径内に存在するメッシュ点を除外し、残ったメッシュ点を会合領域内メッシュ点と定義する工程;
(d)個々の四面体内部の会合領域内メッシュ点を積算して、前記凹多面体全体に含まれる会合領域内メッシュ点の総数を計数する工程;および
(e)前記凹多面体全体に含まれる会合領域内メッシュ点の総数と、メッシュ点間距離を一辺とする単位立方体の体積とを用いて、会合領域の空間体積を計算する工程を含む請求項1に記載の評価方法。

【請求項3】
前記工程(a)において、
(a-1)評価対象とするタンパク質複合体の立体構造座標データに基づき、前記タンパク質複合体に含まれる全原子の各々について、複合体を形成している状態で第1の溶媒接触表面積を計算し、前記タンパク質複合体の各構造単位が単独で存在する状態で第2の溶媒接触表面積を計算し;ついで、
(a-2)全原子の各々について、第1の溶媒接触表面積と第2の溶媒接触表面積との差表面積を計算し、前記差表面積が所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記所定の閾値以上の差表面積を示す原子を、前記タンパク質複合体の1または複数の会合領域に存在する原子であると定義するか、または、全原子の各々について計算された第1の溶媒接触表面積および第2の溶媒接触表面積を用いて、前記タンパク質複合体に含まれるアミノ酸残基の各々について、複合体を形成している状態での第1の溶媒接触表面積と、前記タンパク質複合体の各構造単位が単独で存在する状態での第2の溶媒接触表面積との差表面積を計算し、前記差表面積が所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記所定の閾値以上の差表面積を示すアミノ酸残基を、前記タンパク質複合体の1または複数の会合領域に存在するアミノ酸残基であると定義する請求項1または2に記載の評価方法。

【請求項4】
前記工程(b)において、前記母点群の座標データに基づいて、所定の閾値により前記母点群を複数のクラスタに分類し、これら複数のクラスタを別個の会合領域として、複数の会合領域の各々の空間について、四面体分割する請求項1または2に記載の評価方法。

【請求項5】
前記工程(b)において、前記母点群の座標データから作成されるドロネー四面体群のうち辺の長さが閾値以下であるものを抽出することによって会合領域多面体を精密化する請求項1または2に記載の評価方法。

【請求項6】
さらに、(f)前記会合領域内メッシュ点の全てまたは一部のメッシュ点を、単独で、または、前記タンパク質複合体もしくは前記タンパク質サブユニットの立体構造とともに、表示する工程を含む請求項2に記載の評価方法。

【請求項7】
さらに、(g)前記会合領域の空間表面積に対する前記空間体積の比を計算し、この比から前記2つのタンパク質サブユニット間の相補性を判定する工程を含む請求項3に記載の評価方法。

【請求項8】
前記会合領域の精密化前の体積に対する精密化後の体積の比を計算し、この比からタンパク質会合領域の形状を判定する工程を含む請求項5に記載の評価方法。

【請求項9】
工程(c)から(e)までにおいて計算される原子内外のメッシュ点数の比から求められるタンパク質会合空間中の原子占有率を計算する請求項2に記載の評価方法。

【請求項10】
工程(a)および(b)で記述される会合領域多面体の内部にある、水分子など低分子化合物を構成する原子を検出する請求項1に記載の評価方法。

【請求項11】
請求項1ないし8いずれかに記載の会合領域空間の評価方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。

【請求項12】
少なくとも、中央処理装置、外部インターフェース、操作部、表示部および記憶装置を含み、請求項1ないし8いずれかに記載の会合領域空間の評価方法を実行するための解析装置。
国際特許分類(IPC)
Fターム
  • 5L049DD06
画像

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JP2007279664thum.jpg
出願権利状態 登録


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