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アスペルギルス属菌の新規薬剤耐性組換え選択マーカー遺伝子

国内特許コード P09A015234
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2007-301034
公開番号 特開2009-124961
登録番号 特許第5257972号
出願日 平成19年11月20日(2007.11.20)
公開日 平成21年6月11日(2009.6.11)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発明者
  • 伊藤 康博
  • 矢部 希見子
  • 嶋 羊子
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 アスペルギルス属菌の新規薬剤耐性組換え選択マーカー遺伝子
発明の概要

【課題】アスペルギルス属微生物において有用な新たな薬剤耐性マーカー遺伝子を提供すること。
【解決手段】アスペルギルス属に属する微生物を、酢酸を炭素源とする培地で培養することにより、該微生物がカルボキシン感受性となることを見い出し、さらにアスペルギルス属に属する微生物の遺伝子に突然変異誘発処理を行うことにより、カルボキシン耐性微生物が出現し、カルボキシン耐性変異遺伝子が生じたことが予測されたので、アスペルギルス・オリゼRIB40の全塩基配列から、担子菌のカルボキシン耐性遺伝子として知られているコハク酸脱水素酵素Ipサブユニット遺伝子に対応する遺伝子を検索することによって、該遺伝子に変異が生じていることを確認した。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


アスペルギルス属は、菌類真菌門に属し、形態的には、無色の分岐した長い菌糸を有することから子のう菌門の糸状菌の一種とされ、有性生殖を行わず無性生殖で無性胞子を作って繁殖する不完全菌類に属する。清酒、味噌、醤油などの発酵食品生産に古くから利用されているアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)といった有益な種がある一方、自然界で最も強力な発ガン性と急性毒性を持つアフラトキシンを産生するアスペルギルス・パラシチカス(Aspergillus parasiticus)などの有害な種も存在する。アスペルギルス・オリゼに関しては、食品生産のための発酵効率向上のための育種のみならず、高いタンパク質分泌生産能力を有することから、組換えタンパク質生産又は各種有用物質生産の宿主として利用され、そのための研究開発も盛んに行われている。他方、アスペルギルス・パラシチカスに関しては、特に熱帯・亜熱帯地域で収穫される穀物に対するアフラトキシンによる汚染が世界的な問題となっており、その制御のための研究が重要視されている。



遺伝子組換え法は、ある生物から取り出した有用な遺伝子を種の壁を越えて他の生物に導入することができるため、宿主生物の改良の範囲を画期的に拡大できるという利点がある。また生体内において遺伝子を操作できるため、遺伝子機能の研究に必須の技術でもある。上述のとおりアスペルギルス属の菌は有性生殖が見い出されておらず、多くの生物と異なり交雑による遺伝子交換ができないので古典的遺伝学が適用できず、変異遺伝子を別の変異株から移すことができない。そのため、アスペルギルス属の菌の遺伝子の改変による育種、又は遺伝子機能研究については特に遺伝子組換え法の適用が有効な手段である。



遺伝子組換え法による遺伝子導入の効率については、導入処理した細胞のうち数万分の1以下しか導入された遺伝子を保持する組換え細胞になっていないことが多い。大多数の組換えが起こっていない細胞の中から組換え細胞を選抜するためには、選択マーカー遺伝子を同時に導入し、目的の組換え細胞を選抜する方法が現在広く用いられている。すなわち、組換え処理後の細胞を培養する際、選択マーカー遺伝子が導入されていなければ生存できない条件下で培養することで、組換え体だけを選んでくるという方法である。



一般的に、組換え体選択マーカーとして利用される遺伝子は2つに分けられる。一つは栄養要求性相補遺伝子に代表される、変異によりある条件で生育できない変異細胞に対してその変異を相補する変異相補性遺伝子であり、もう一つは通常の細胞に対して生育阻害を示す薬剤に対する薬剤耐性遺伝子である。前者は遺伝子組換え試験を始める前の準備として、宿主となる細胞にあらかじめ選抜に必要な変異を導入しておく必要があるのに対し、後者は通常の細胞のいずれにも利用できるため、適用範囲が広く実用性が高い。アスペルギルス・オリゼで利用されている変異相補性遺伝子としては、アルギニン要求性相補遺伝子argB(非特許文献6参照)、ウラシル要求性相補遺伝子pyrG(非特許文献2参照)、アデニン要求性相補遺伝子adeA, adeB(非特許文献3参照)、硝酸塩資化遺伝子niaD(非特許文献4参照)、硫酸資化遺伝子sC(非特許文献5参照)等がある。しかしながら、アスペルギルス・オリゼやアスペルギルス・パラシチカスで現在利用されている薬剤耐性遺伝子は薬剤ピリチアミンに対するptrA(特許文献1及び非特許文献1参照)のみである。



一方、担子菌においても、組換え体選択マーカーとして栄養要求性相補遺伝子が多く使われてきたが、最近、薬剤耐性遺伝子としてカルボキシアミド系の薬剤、特にカルボキシンに対する耐性遺伝子が単離され、選択マーカーとして利用されている。カルボキシン及びその類縁体は主として担子菌が原因となる作物病害に効果を示す農薬である。カルボキシン耐性はコハク酸脱水素酵素複合体(Sdh)の中のIpサブユニット又は膜サブユニット(SdhC)のいずれかの遺伝子の変異により獲得されることが知られている(特許文献2及び非特許文献7~10参照)。また、カルボキシンに感受性が弱いアスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)を酢酸を炭素源とする培地で培養すると、カルボキシンに対する感受性が強くなったという報告がある(非特許文献11参照)。




【特許文献1】特開2000-308491号公報

【特許文献2】特開2001-69987号公報

【非特許文献1】Biosci. Biotechnol. Biochem.. 64, 1416-1421(2000)

【非特許文献2】Biochem. Biophys. Res. Commun., 112, 284-289,(1983)

【非特許文献3】Biosci. Biotechnol. Biochem.. 68, 656-62(2004)

【非特許文献4】Gene, 111, 149-155 (1992)

【非特許文献5】Gene. 84, 329-334(1989)

【非特許文献6】Agric. Biol. Chem. 51, 2549-2555 (1987)

【非特許文献7】Curr. Genet. 19, 475-481(1991)

【非特許文献8】Curr. Genet. 37, 209-212(2000)

【非特許文献9】Biosci. Biotechnol. Biochem., 67, 2006-2009 (2003)

【非特許文献10】Mol.Genet.Genomics 272, 328-335 (2004)

【非特許文献11】Gunatilleke et. al., Genet. Res. Camb. 26. 297-305 (1976)

産業上の利用分野


本発明は、酢酸を炭素源とする培地で、アスペルギルス属に属するカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質や、該タンパク質をコードするカルボキシン耐性マーカー遺伝子等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)又は(2)のタンパク質をコードするDNA。
(1)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質
(2)配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換され、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質

【請求項2】
配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなるDNA。

【請求項3】
配列表の配列番号2に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号2において、その塩基番号940~942の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNA。

【請求項4】
配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、AAC、AAT、TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、又はCTGに置換された塩基配列からなるDNA。

【請求項5】
配列表の配列番号3に示される塩基配列、又は該塩基配列を含む塩基配列からなるDNAの変異体であって、配列番号3において、その塩基番号745~747の塩基が、CTC又はAACに置換された塩基配列からなるDNA。

【請求項6】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンがアスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質。

【請求項7】
配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列において、その249番目のヒスチジンが、アスパラギン、又はロイシンに置換されたアミノ酸配列において、さらに249番目以外の1~3個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ酢酸を炭素源とする培地でカルボキシン感受性微生物にカルボキシン耐性を付与する機能を有するタンパク質。

【請求項8】
請求項1~5のいずれか記載のDNAを含む組換えベクター。

【請求項9】
請求項8記載の組換えベクターが導入されたアスペルギルス属に属する微生物からなる形質転換体。

【請求項10】
アスペルギルス属に属する微生物が、アスペルギルス・オリゼ又はアスペルギルス・パラシチカスであることを特徴とする請求項9記載の形質転換体。

【請求項11】
請求項1~5のいずれか記載のDNAを、アスペルギルス属に属する微生物のマーカー遺伝子として使用する方法。

【請求項12】
請求項1~5のいずれか記載のDNAと目的遺伝子とが組み込まれた組換えベクターでアスペルギルス属に属する微生物を形質転換し、得られた形質転換体を酢酸を炭素源とするカルボキシン含有培地で培養し、カルボキシン耐性を指標として前記形質転換体を選抜する方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中


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