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セルロースを含むバイオマスの糖化方法

国内特許コード P09A015252
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2008-032732
公開番号 特開2009-189291
登録番号 特許第5322150号
出願日 平成20年2月14日(2008.2.14)
公開日 平成21年8月27日(2009.8.27)
登録日 平成25年7月26日(2013.7.26)
発明者
  • 徳安 健
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 セルロースを含むバイオマスの糖化方法
発明の概要

【課題】 本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、セルロースを含み、複数種類の糖質から構成されるバイオマスを、可能な限り、グルコース、キシロース等の単糖にまで、過分解を抑制しつつ、しかも効率よく低分子化する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 本発明は、セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上150℃以下の条件で1分から3時間加水分解した後に固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分を、pH調整後に酵素固定化物と接触させて酵素加水分解する、という一連の工程を含むことを特徴とする、バイオマスの糖化方法である。
【選択図】 なし

従来技術、競合技術の概要


バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると考えられている。
また、バイオマス原料を単糖に変換することにより、石油化学原料に代わる化学原料を製造するための、いわゆるバイオリファイナリ技術を開発する際には、原料に含まれる多様な糖質資源を単糖として回収する工程が重要である。でん粉系原料をエタノールに変換する場合は、コスト、エネルギー効率およびLCA評価においても実用性が高いという評価を受けているが、リグノセルロース原料を用いた場合には研究開発の余地が大きいのが現状である。



また、馬鈴薯、甘藷、トウモロコシ、稲、ムギ、キャッサバ、サゴ等をホールプラントとして利用したり、砂糖やでん粉の大部分を簡単な工程で除き、残った部分をまとめて糖化したりする際には、砂糖やでん粉と繊維質を両方含む混合物からの簡単な糖化法の開発が求められる。
さらに、農産廃棄物や一次加工廃棄物等の原料を確保する段階で季節性が高いことが問題となり、工場の稼働日数が制限され、雇用の確保が不安定化することが懸念されている。特定の原料に拘らず、選定残渣や雑草、食品廃棄物等の原料が混入して材料がヘテロになった場合においても、安定的に周年稼働する糖化システムの開発が望まれている。



リグノセルロース原料の糖化技術としては、濃硫酸法、希硫酸二段階法、塩酸法などの酸糖化技術や、希硫酸爆砕法、中性水加熱処理法、アルカリ処理法などの化学前処理-酵素糖化技術などが注目されている。



特に、木質系バイオマス原料を用いて糖化を行う場合には、濃硫酸法または希硫酸二段階法が長く注目されてきた(非特許文献1参照)。



濃硫酸法は、セルロースを可溶化させる濃度の硫酸を原料に接触させたのち、全体を水で希釈し、その他の多糖も含めて単糖にまで希硫酸加水分解する方法である。
しかしながら、加水分解を受けやすいキシランなどの多糖を回収する際には、処理条件が過酷すぎることから過分解に注意が必要となる。フルフラールなどの過分解物は、エタノール発酵工程における阻害物質として知られており、その生成を抑えることが重要である。これまでに、予めヘミセルロースを回収するための前・前処理(希硫酸処理)が行われるような方法も考案されているが(鈴木宏之著「バイオマスの科学的転換利用とエンジニアリングアプローチ」、武田書店、H12年発行)、多様なヘミセルロース、ペクチン、でん粉等の多糖を含む単数または複数の原料を用いる場合には、過分解を抑えつつ単糖の収率を最大にするよう原料組成別に処理条件を最適化する必要が生じる。また、濃硫酸処理によってセルロースを可溶化した後には、硫酸濃度を下げて加水分解を行う必要があり、回収・再利用すべき硫酸の濃度が低くなり、その濃縮・再利用工程にエネルギーを消費するという欠点がある。さらに、糖液を分離回収した後には中和を行う必要がある。



希硫酸二段階法は、加水分解を受けやすいヘミセルロースなどの多糖を先に分解し、その後に条件をきつくして、セルロースを加水分解するという方法である。
しかしながら、この方法では、一段階目での加水分解で単糖にまで加水分解することから、糖の種類によっては過分解が起こる可能性に注意をする必要がある。また、二段階目では、希硫酸加水分解の条件をやや強くして、セルロースからグルコースを製造しているが、反応条件が過酷であることから、過分解を抑制する段階で反応を停止する必要が生じ、セルロース由来のグルコース収率が低くなる。さらに、一段階目の希酸加水分解における糖化液と二段階目の希酸加水分解における糖化液は、別々に中和する必要があり、結果的に多量の薬液を使用することとなる。



草本系バイオマスについては、セルロースが剥き出しになりやすいことから、酵素を用いた、希硫酸爆砕法、水蒸気爆砕処理法、アルカリ処理法などの前処理-酵素糖化技術などが注目されている。それぞれ、前処理後に固形物として生成する、セルロースの酵素糖化を主糖化工程と位置づけている。
しかしながら、加水分解を受けやすい細胞壁多糖、セルロースの非晶部分、絞りかす中の砂糖、でん粉の一部などは、処理工程において可溶化することとなり、その一部は過分解されてしまい、その効率的な回収が困難となる。酸性条件下における水蒸気爆砕法による前処理については、セルロースの酵素糖化効率を向上させるが、スケールアップ時の設備コストや硫酸による高圧処理装置の腐食が問題となるとともに、先に述べた過分解の問題が残る。コーンストーバを熱水前処理し、キシランを中心としたヘミセルロースの単糖への分解を行いつつ可溶化率を最大にして、過分解を抑えるという考え方は文献(非特許文献2参照)で発表されているが、pH調整が不要という熱水前処理を用いた利点を活かしたものであり、希硫酸処理法については、可溶化率を指標とした検討は行われていない。



また、希酸前処理により可溶化糖質を回収し、これを基質として固定化酵素を用いて糖化を行い、酵素利用効率を向上させるという糖化方法については試みられていない。



バイオマス中には、加水分解特性の異なる複数種類の糖質が存在していることが一般的である。多糖の特性に応じて単糖にまで加水分解する工程を最適化させるのは極めて困難であり、また、季節性をもつ草本系バイオマス原料を複数利用することを考慮する際には、原料の変化にも対応できる、汎用性の高いシステムを構築することが必要となる。
さらに、酵母が資化できるグルコース、ガラクトースなどの他に、細胞壁多糖の構成成分であるキシロース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノースなども回収することにより、新たな変換技術の適用範囲を拡げることが可能となる。




【非特許文献1】鈴木宏之著「バイオマスの科学的転換利用とエンジニアリングアプローチ」、武田書店、H12年発行

【非特許文献2】Mosier Nathanら、Bioresour. Technol., 96, 1986-1993(2005)

産業上の利用分野


本発明は、セルロースを含み、複数種類の糖質から構成されるバイオマスの総合的な糖化技術に関連するものである。本明細書における「糖化」とは、多糖やオリゴ糖などを可能な限り、グルコース、キシロース等の単糖にまで低分子化する工程を示し、製品としてのオリゴ糖の取得を目的として、適度に低分子化することを目的とした「部分加水分解」工程を示すものではない。
本発明は、バイオマス原料を、過分解を抑えた穏和な条件で希硫酸加水分解した後に、硫酸可溶性オリゴ糖を含む硫酸水溶液可溶性画分と、結晶性セルロースを含む不溶性画分に分離することを特徴とする。前者は、pH調整後に酵素固定化物に接触させることによりさらに糖化し、後者は濃硫酸処理後の希硫酸加水分解を含む工程により糖化する。

特許請求の範囲 【請求項1】
セルロースおよびそれ以外の多糖を含むバイオマスに対して、硫酸濃度0.1wt%以上5wt%以下の硫酸水溶液を加え、80℃以上121℃以下の条件で1分から3時間加水分解した後に固液分離し、遊離オリゴ糖を含む液画分と、結晶性セルロースを含む不溶性画分と、に分離し、前記遊離オリゴ糖を含む液画分を、pH調整後に酵素固定化物と接触させて酵素加水分解する、という一連の工程を含むこと;並びに、
前記結晶性セルロースを含む不溶性画分を、硫酸濃度65wt%以上の硫酸水溶液と接触させることにより、セルロースを部分分解物として可溶化後、硫酸水溶液とセルロース部分分解物を分離して、分離されたセルロース部分分解物を、希硫酸により加水分解し糖化する、という一連の工程を含むこと;
を特徴とする、バイオマスの糖化方法。

【請求項2】
請求項1記載の方法において、セルロース部分分解物を吸着素材に吸着させることにより硫酸水溶液と分離した後に、吸着素材から溶出させた、希硫酸セルロース部分分解物を含む溶液を、第一段階の希硫酸加水分解の際の希硫酸供給源の少なくとも一部として用いる工程を含むことを特徴とする、バイオマスの糖化方法。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中


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