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転写因子遺伝子の導入による植物の病害抵抗性の改良

国内特許コード P09S000356
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2007-517912
登録番号 特許第4997376号
出願日 平成18年5月26日(2006.5.26)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
国際出願番号 JP2006310542
国際公開番号 WO2006126671
国際出願日 平成18年5月26日(2006.5.26)
国際公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
優先権データ
  • 特願2005-154731 (2005.5.26) JP
発明者
  • 高辻 博志
  • 菅野 正治
  • 霜野 真幸
  • 姜 昌杰
  • 加来 久敏
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 転写因子遺伝子の導入による植物の病害抵抗性の改良
発明の概要 本発明者らは、植物の病害への抵抗性に関与する遺伝子の解析を行った。その結果、植物が本来もつ全身獲得性抵抗性(SAR)を活性化することによって、すなわち病害抵抗性を植物に誘導すると考えられている薬剤 benzothiadiazole(以下、BTHと表記することもある)でイネを処理することにより、イネの葉身に誘導される転写因子遺伝子OsWRKY45を見出した。さらに、該遺伝子をイネに再導入して恒常的に発現させることによって、イネのいもち病および白葉枯病菌に対する抵抗性が顕著に向上することを明らかにした。
従来技術、競合技術の概要


農作物生産においては一般に、高品質植物の安定生産および農薬依存度の軽減が要望されている。そのため、植物細胞融合技術や組換えDNA技術などの有用な植物バイオテクノロジー技術を利用し、病害虫および病原菌に対して抵抗性を示す植物の品種の改良、育種および開発が盛んに行われている。既に除草剤耐性を示す形質転換植物(特許文献1)、ウイルス抵抗性を示す形質転換植物(特許文献2)および害虫抵抗性を示す形質転換植物(特許文献3)が、組換えDNA技術を利用して作出されている。さらに、病原糸状菌の産生する毒素を不活化する酵素の遺伝子の導入により、病原糸状菌に対して抵抗性を示す形質転換植物(非特許文献1)や、昆虫由来の抗菌性タンパク質の遺伝子の導入により、少なくとも1つの病原菌に抵抗性を示す形質転換植物(特許文献4)、コマツナ由来の遺伝子の導入による複合病害抵抗性植物の作出(特許文献5)、チオニン遺伝子を用いた複数病害抵抗性植物の作出方法(特許文献6)、酸性型タウマチン様タンパク質遺伝子を用いた複合病害抵抗性植物の作出方法(特許文献7)のように、植物病原菌に対して抵抗性を示す形質転換植物も数種作出されている。しかしながら、単一の抵抗性遺伝子の導入によって得られる病害抵抗性は、効果が十分でないともいわれている。また、導入遺伝子が形質転換体の生育や稔性等に悪影響を及ぼす場合もあり、実用化を妨げる原因となっている。



WRKY転写因子に関して、アラビドプシスなどの双子葉植物では病害抵抗性に関与していることなどが報告されている(非特許文献2~7)。報告されているアラビドプシスのWRKY転写因子の過剰発現体では、いずれの場合も、矮化、形態異常、葉の壊死などの望ましくない形質が表れている(WRKY6:矮化、頂芽優勢低下、葉の壊死、AtWRKY18:生長阻害、矮化、種子減少、WRKY70:形態異常、矮化)。また、WRKY転写因子はスーパー・ファミリーを形成しており(イネでは約100種)、構造上3グループに分類されている。病害抵抗性以外にも形態形成や二次代謝への関与が示唆されているものもあり、それぞれのWRKY型転写因子が個別の機能をもっていると考えられる(非特許文献8)。イネのOsWRKY遺伝子に関しては、aleurone層におけるABA応答性遺伝子発現への関与に関する報告があるが、この報告においては、病害抵抗性における機能については記述されていない(非特許文献9)。これまで、イネのOsWRKY遺伝子が、植物の病害抵抗性を向上させる報告は今まで行われていなかった。



なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【特許文献1】
特開平2-186925
【特許文献2】
特開平4-330233
【特許文献3】
特開平3-247220
【特許文献4】
特開平7-250685
【特許文献5】
特開2004-329215
【特許文献6】
特開2003-88379
【特許文献7】
特開2003-199448
【非特許文献1】
Windhovel, U., Geiges, B., Sandmann, G. and Boger, P. (1994) Expression of Erwinia uredovora Phytoene Desaturase in Synechococcus PCC7942 Leading to Resistance against a Bleaching Herbicide. Plant Physiol. 104, 119-125.
【非特許文献2】
Kalde, M., Barth, M., Somssich, I.E. and Lippok, B. (2003) Members of the Arabidopsis WRKY group III transcription factors are part of different plant defense signaling pathways. Mol. Plant Microbe Interact. 16, 295-305.
【非特許文献3】
Li, J., Brader, G. and Palva, E.T. (2004) The WRKY70 transcription factor: a node of convergence for jasmonate-mediated and salicylate-mediated signals in plant defense. Plant Cell 16, 319-331.
【非特許文献4】
Robatzek, S. and Somssich, I.E. (2002) Targets of AtWRKY6 regulation during plant senescence and pathogen defense. Genes Dev. 16, 1139-1149.
【非特許文献5】
Yu, D., Chen, C. and Chen, Z. (2001) Evidence for an important role of WRKY DNA binding proteins in the regulation of NPR1 gene expression. Plant Cell 13, 1527-1540.
【非特許文献6】
Chen, C. and Chen, Z. (2002) Potentiation of developmentally regulated plant defense response by AtWRKY18, a pathogen-induced Arabidopsis transcription factor. Plant Physiol. 129, 706-716.
【非特許文献7】
Asai, T., Tena, G., Plotnikova, J., Willmann, M.R., Chiu, W.L., Gomez-Gomez, L., Boller, T., Ausubel, F.M., and Sheen, J. (2002). MAP kinase signalling cascade in Arabidopsis innate immunity. Nature 415, 977-983.
【非特許文献8】
Eulgem, T., Rushton, P.J., Robatzek, S., and Somssich, I.E. (2000). The WRKY superfamily of plant transcription factors. Trends in Plant Sci. 5, 199-206.
【非特許文献9】
Xie, Z., Zhang, Z.L., Zou, X., Huang, J., Ruas, P., Thompson, D. and Shen, Q.J. (2005) Annotations and Functional Analyses of the Rice WRKY Gene Superfamily Reveal Positive and Negative Regulators of Abscisic Acid Signaling in Aleurone Cells. Plant Physiol. 137, 176-189.

産業上の利用分野


本発明は、植物の病害への抵抗性を向上させる機能を有する遺伝子、および、該遺伝子を含み植物の病害への抵抗性が向上した形質転換植物体に関する。さらに、該遺伝子を利用した、植物の病害への抵抗性を向上させる方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
植物の病害への抵抗性を向上させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする、下記(a)から(c)のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。

【請求項2】
植物が単子葉植物由来である、請求項1に記載のベクター。

【請求項3】
植物の病害が糸状菌性の病害である、請求項1に記載のベクター。

【請求項4】
植物の病害が細菌性の病害である、請求項1に記載のベクター。

【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のベクターが導入された宿主細胞。

【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のベクターが導入された植物細胞。

【請求項7】
請求項6に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。

【請求項8】
請求項7に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。

【請求項9】
請求項7または8に記載の形質転換植物体の繁殖材料。

【請求項10】
請求項1から4のいずれかに記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。

【請求項11】
下記(a)から(c)のいずれかに記載のDNAによりコードされるタンパク質。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列の相同性を有するアミノ酸配列からなる、植物の病害への抵抗性を向上させる機能を有するタンパク質をコードするDNA。

【請求項12】
請求項5に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、請求項11に記載のタンパク質の製造方法。

【請求項13】
請求項11に記載のタンパク質に結合する抗体。

【請求項14】
下記(a)から(c)のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の病害への抵抗性を向上させる方法。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列の相同性を有するアミノ酸配列からなる、植物の病害への抵抗性を向上させる機能を有するタンパク質をコードするDNA。

【請求項15】
下記(a)から(c)のいずれかに記載のDNA、もしくは請求項1から4のいずれかに記載のベクターを有効成分とする、植物の病害への抵抗性を向上させる薬剤。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列であって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の配列の相同性を有するアミノ酸配列からなる、植物の病害への抵抗性を向上させる機能を有するタンパク質をコードするDNA。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録


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