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植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法

国内特許コード P09A015329
掲載日 2010年3月12日
出願番号 特願2009-150795
公開番号 特開2010-035553
登録番号 特許第5527723号
出願日 平成21年6月25日(2009.6.25)
公開日 平成22年2月18日(2010.2.18)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
優先権データ
  • 特願2008-180439 (2008.7.10) JP
発明者
  • 徳安 健
  • 張 子蓮
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法
発明の概要 【課題】 植物細胞壁成分を加水分解することで得られる低利用性の単糖を資化させて、α-グルカンとして‘大量に’蓄積させた細菌の菌体を製造することを、課題とする。
【解決手段】 植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖をα-グルカンに変換し保持する特定の細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα-グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法、を提供する。
【選択図】 なし
従来技術、競合技術の概要



食料と競合しないバイオマス利用技術を開発する場合、農産物の一次加工残渣や食品加工廃棄物などの廃棄物資源や、稲わら、もみ殻、麦わら、バガス、雑草、製材残渣、間伐材などの未利用資源、さらには、エネルギー作物の有効利用技術開発が鍵となる。これらの利用においては、植物細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロースやペクチンの利用技術開発が重要となる。

植物細胞壁の各構成糖のうち、グルコースやフラクトースなどの六炭糖は、酵母などの発酵性細菌の基質となりやすく、バイオエタノールや他の種々の発酵生産物の製造原料として用いられている。しかしながら、植物細胞壁中には、上記六炭糖のほかに、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロースなどの多様な糖が含まれており、これらは、主として‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’などの高分子の構成成分として存在している。





しかしながら、これらの成分の利用技術は十分に開発されていない。

例えば、‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’の構成糖をエタノールに変換する工程では、ヘミセルロースの構成糖である‘キシロース’や‘アラビノース’に対して、発酵性を有する微生物が知られている。しかし、キシロース発酵性酵母Pichia stipitisは、酸素要求性、エタノール低耐性などが問題となり、商業レベルでの発酵技術として完成しておらず、同様にアラビノースをエタノール発酵する微生物の利用性も低く実用化には程遠い状態にある。

また、当該代謝を司る遺伝子を導入した微生物を利用する方法も検討されている。例えば、キシロースやアラビノースなど多様な糖質を資化できる大腸菌へ、エタノール代謝遺伝子導入することにより、KO11と呼ばれるエタノール発酵性大腸菌が作出され、多様な事業に用いられてきた。また、酵母やZymomonas属の細菌などの高濃度エタノール耐性菌に対して、キシロースやアラビノースの代謝経路を司る遺伝子を導入し、エタノール製造効率を向上する試みが数多く行われてきた。

しかしながら、これらの遺伝子組み換え技術を適用する場合、環境への組み換え微生物放出を抑制するためのシステムに対する設備・管理コストが高いものになると懸念される。





現在、‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’などの主な利用法としては、機能性食品素材としての用途が存在する。例えば、キシリトール、キシロオリゴ糖、アラビノース、ペクチンオリゴ糖などが開発されており、一部で実用化されている。しかし、その市場は小さく、大量のバイオマス原料から副生する量をカバーできる規模の出口になっていない。このように、ヘミセルロースやペクチンを主体とする細胞壁成分の有効利用技術の開発が求められている。

また、利用性の低い、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロースなどの糖を廃棄して堆肥化・メタン発酵に用いる用途も存在するが、産業上、利用性が高く、大量消費が可能な物質に変換することが望ましく、特に、食料、飼料、微生物栄養源、あるいは化学工業原料・燃料などの、通年的に大量消費される物質への変換が望ましい。

このような中で、グリコーゲンなどの「α-グルカン」は、グルコースより構成される多糖類の糖質であり、高等動物をはじめとして極めて多くの生物によって酵素分解される物質として、食料、飼料や微生物栄養源等への利用が期待できる糖質である。

また、α-グルカンは、酵素のみならず、酸処理によっても分解され、グルコースに変換できる。このことは、グルコースからの発酵システムが完成しているような、バイオエタノール等の種々の化学工業原料・燃料の製造におけるグルカンの利用性が高いことを示す。

しかしながら、このような目的で、植物細胞壁成分である低利用性糖質(ヘミセルロースやペクチン)を変換して、α-グルカンを製造する技術の開発は行われておらず、その有効利用技術の開発が期待されている。





グリコーゲンなどのα-グルカンを生産する微生物自体は、数多く知られている。例えば、酵母などの真核生物のほか、Bacillus subtilis, Streptomyces coelicolor, Micropruina glycogenica, Mycobacterium smegmatis, Corynebacterium glutamicum, Escherichia coli, Mesorhizobium lotiなど多くの細菌が生産することが知られている。

これら微生物由来α-グルカンについては、‘グルコース’を含む培地で培養した際には、菌体乾燥重量比で、最大で8.4%、あるいは9%程度蓄積するというデータが得られている(例えば、非特許文献1および2参照)。

しかしこれらの微生物の多くは、活性汚泥法による‘リン酸’の除去法において鍵となる微生物群として基礎研究が行われてきた経緯があり、‘植物細胞壁成分に由来する低利用性の単糖’を変換する技術と関連づけられた研究は行われていない。また、その蓄積量は、実用的には不十分な量である。

また、キシロースやアラビノースなどの単糖を代謝して、グリコーゲンを蓄積する能力を有するEscherichia coliやMicropruina glycogenicaなども存在するが(例えば、非特許文献1および3参照)、これらについても実用面で十分と認められる大量のα-グルカンを蓄積させる技術については検討されていない。また、これらの微生物が、キシロースやアラビノース以外のヘミセルロース、ペクチン等の構成糖を代謝した場合のα-グルカンの蓄積特性についても報告されていない。

産業上の利用分野



本発明は、植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法に関し、詳しくは、細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上の‘大量の’α-グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法に関する。

また本発明は、前記製造方法から得られたα-グルカンを保持する菌体からグルコースを製造する方法、さらには、前記グルコースからエタノールを製造する方法、に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖を資化してα-グルカンに変換し保持する性質を有するEnterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株である細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα-グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項2】
前記単糖が、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクツロン酸、L-ラムノース、D-グルクロン酸、D-ガラクトース、および、D-マンノースのうちの、少なくともいずれか一つ以上のものである、請求項1に記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項3】
前記培養液中における前記単糖を、グルコース換算で当該単糖量の10%以上の量のα-グルカンに変換する、請求項1又は2のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項4】
前記培養液中における前記単糖の濃度が、0.05%(w/v)以上であり0.5%(w/v)未満である、請求項1~3のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項5】
植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって加水分解し、当該加水分解物を含有する培養液中でEnterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株である細菌を培養して、前記加水分解物を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα-グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項6】
前記植物細胞壁成分が、ヘミセルロース及び/又はペクチンを主成分とするものである、請求項1~のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項7】
前記植物細胞壁成分が、キシランを主成分とするものである、請求項1~のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項8】
前記α-グルカンが、グリコーゲンを主成分とするものである、請求項1~のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項9】
前記細菌を培養した後、固液分離して菌体を固形分として回収する、請求項1~のいずれかに記載のα-グルカンを保持する菌体の製造方法。

【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の製造方法により得られた、α-グルカンを保持する菌体。

【請求項11】
請求項10に記載のα-グルカンを保持する菌体を破壊した後、α-グルカンを、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α-グルコシダーゼのうち少なくとも一つ以上の酵素で処理することによって、グルコースに加水分解する、グルコースの製造方法。

【請求項12】
請求項10に記載のα-グルカンを保持する菌体を、希塩酸または希硫酸を用いて60℃以上の温度で処理することによって、α-グルカンをグルコースに加水分解することを特徴とする、グルコースの製造方法。

【請求項13】
請求項11又は12のいずれかに記載の製造方法によりグルコースを得て、当該グルコースを、エタノール発酵の原料として用いることを特徴とする、エタノールの製造方法。

【請求項14】
請求項10に記載のα-グルカンを保持する菌体を利用することを特徴とする、食料、飼料または微生物栄養源の製造方法

【請求項15】
請求項11又は12のいずれかに記載の製造方法によりグルコースを得て、当該グルコースを利用することを特徴とする、食料、飼料または微生物栄養源の製造方法
国際特許分類(IPC)
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画像

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出願権利状態 登録


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