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相同組換えを利用したイネアントラニル酸合成酵素の改変

国内特許コード P10A015375
掲載日 2010年4月9日
出願番号 特願2009-177959
公開番号 特開2010-051310
登録番号 特許第5648822号
出願日 平成21年7月30日(2009.7.30)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
優先権データ
  • 特願2008-197789 (2008.7.31) JP
発明者
  • 雑賀 啓明
  • 土岐 精一
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 相同組換えを利用したイネアントラニル酸合成酵素の改変
発明の概要 【課題】遺伝子ターゲッティング法による高濃度のトリプトファンを含有する植物体の製造方法及び当該方法により製造される植物体等を提供することを課題とする。
【解決手段】遺伝子ターゲッティング法に用いるベクターの設計にあたり、S126Fの点変異がライトボーダー側に位置するように設計した。S126Fの変異をT-DNAのライトボーダー(RB)側に配置することにより、相同配列領域が短くならざるを得ない場合でも、効率よく遺伝子ターゲッティング個体を得られることが確認された。
またOASA2遺伝子の遺伝子ターゲッティングに成功した個体を選抜する際、これまでに報告されていた濃度より高い500μMの5MTを利用することが効果的であることがわかった。このようにして得られた遺伝子ターゲッティング個体は、イネ葉身において約8.62nmol/mgの遊離トリプトファンを蓄積している。これは野生型の遊離トリプトファン含量の約130倍であった。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


アントラニル酸合成酵素(AS)は、トリプトファン合成の鍵酵素として知られており、高濃度のトリプトファンによって負に制御されていることが知られている。ASはα及びβサブユニットからなる4量体であるが、そのうち、高濃度のトリプトファンによってフィードバック阻害を受けるのはαサブユニットである。イネにおいて、ASのαサブユニットをコードする遺伝子は2コピー存在し、それぞれOASA1、OASA2遺伝子と名付けられている(非特許文献1)。OASA2遺伝子は、OASA1遺伝子と比較してイネ組織で広く発現しているが、高濃度のトリプトファンに対する感受性はOASA2の方がOASA1より高い(非特許文献2)。また、OASA2合成タンパク質を利用した生化学的な研究から、2アミノ酸を置換した改変型OASA2(S126F/L530D)やOASA2(Y367A/L530D)は、高濃度のトリプトファンに対して感受性が低下するだけでなく、酵素活性自体も非常に高くなることが分かっている(非特許文献3)。例えば、変異型OASA2遺伝子(S126F/L530D)を大量に発現させた形質転換イネカルスでは、非形質転換体の300-400倍ものトリプトファンが蓄積することが示されている(非特許文献4)。



相同組換えを利用した遺伝子ターゲッティング(ジーンターゲッティング、GT)は、従来の遺伝子導入方法とは異なり、標的遺伝子だけを改変することができる非常に有用な技術である。従来の遺伝子導入方法は、ゲノム中のランダムな位置に外来DNAが挿入されるが、GTでは標的遺伝子だけを思い通りに改変することができるため、より「クリーン」な遺伝子改変技術であるといえる。酵母などの微生物やマウスなどの哺乳動物において、GTを利用した標的遺伝子の改変が広く行われている。それに対し、イネなどの高等植物においては、相同組換えの効率が非常に低い。植物細胞に導入したDNA配列が相同組換えを起こす確率は、その配列がランダムに植物ゲノム中に挿入される確率の10-3-10-5であるといわれている。そのため、GTによる標的遺伝子の改変は容易ではない。



最近になり、モデル高等植物であるイネやシロイヌナズナにおいて、GTによる内性遺伝子の改変に成功したという報告がなされている。イネにおけるGTの最初の成功例は、Waxy遺伝子をノックアウトしたものである(非特許文献5)。この方法は、GT個体を選抜するためのマーカーとしてハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を利用している。よって、その他の遺伝子にも適用することが可能であり、ADH2遺伝子も同様な方法でノックアウトすることに成功している(非特許文献6)。一方、内在性遺伝子自身が選抜マーカーとして利用できる場合は、抗生物質を利用することなくGT個体を選抜することが可能である。イネALS遺伝子は、点変異を導入することによって除草剤であるビスピリパック(BS)に対して耐性型となることが報告されている。これを利用して、GTに成功した細胞だけがBS耐性を示すような選抜を行い、ALS遺伝子に目的の点変異を導入することに成功している(非特許文献7)。また、従来の遺伝子組換え技術によってBS耐性型ALS遺伝子を大量に発現させた個体は、内在性のBS感受性ALS遺伝子が発現しているために、高濃度のBSを処理すると感受性を示す。それに対し、GTによって野生型のBS感受性ALS遺伝子を排除した個体(すなわち、GTによってホモでBS耐性型ALS遺伝子を持つ個体)は、BSに対する完全な耐性を獲得していることが明らかになった(非特許文献7)。これは、GTによって内在性のALS遺伝子を完全に排除することができたためであると考えられた。

産業上の利用分野


本発明は、高濃度のトリプトファンを含有する植物体の製造方法及び当該方法により製造される植物体、並びにその利用に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
下記(a)および(b)の工程を含む方法によって得られる形質転換された植物体であって、高濃度のトリプトファンを含有する、内在性のアントラニル酸合成酵素αサブユニットを含有しない植物体;
(a)遺伝子ターゲティング法により配列番号:7から10のいずれかに記載の塩基配列からなるベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程

【請求項2】
植物が単子葉植物である、請求項に記載の植物体。

【請求項3】
単子葉植物がイネ科植物である、請求項に記載の植物体。

【請求項4】
イネ科植物がイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ソルガム、えん麦、イネ科牧草からなる群より選択される、請求項に記載の植物体。

【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の植物体から単離された細胞。

【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の植物体の繁殖材料。

【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の植物体から単離された器官。

【請求項8】
下記(a)及び(b)の工程を含む、トリプトファンを含有する、内在性のアントラニル酸合成酵素αサブユニットを含有しない植物体の製造方法;
(a)遺伝子ターゲティング法により配列番号:7から10のいずれかに記載の塩基配列からなるベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程。

【請求項9】
植物が単子葉植物である、請求項に記載の方法。

【請求項10】
単子葉植物がイネ科植物である、請求項に記載の方法。

【請求項11】
イネ科植物がイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ソルガム、えん麦、イネ科牧草からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。

【請求項12】
下記(a)及び(b)の工程を含む、内在性のアントラニル酸合成酵素αサブユニットを含有しない植物にトリプトファンを含有させる方法;
(a)遺伝子ターゲティング法により配列番号:7から10のいずれかに記載の塩基配列からなるベクターを植物細胞に導入する工程、及び
(b)工程(a)においてDNA又はベクターが導入された植物細胞から植物体を再生する工程。

【請求項13】
植物が単子葉植物である、請求項12に記載の方法。

【請求項14】
単子葉植物がイネ科植物である、請求項13に記載の方法。

【請求項15】
イネ科植物がイネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ソルガム、えん麦、イネ科牧草からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。

【請求項16】
配列番号:7から10のいずれかに記載の塩基配列からなるベクターのうち少なくとも1種類を有効成分として含有する、植物に高濃度のトリプトファンを含有させるための薬剤。

【請求項17】
下記(a)及び(b)の工程を含む、トリプトファンの製造方法;
(a)請求項から15のいずれかに記載の方法で、トリプトファンを含有する植物体を取得する工程、及び
(b)工程(a)で取得された植物体からトリプトファンを回収する工程。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録


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