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組織内の脂質抗原の免疫染色方法 コモンズ

国内特許コード P10P006675
整理番号 K078P07
掲載日 2010年5月21日
出願番号 特願2008-270568
公開番号 特開2010-101631
登録番号 特許第5070183号
出願日 平成20年10月21日(2008.10.21)
公開日 平成22年5月6日(2010.5.6)
登録日 平成24年8月24日(2012.8.24)
発明者
  • 河崎 洋志
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 組織内の脂質抗原の免疫染色方法 コモンズ
発明の概要 【課題】オリゴデンドロサイト系列細胞におけるガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドの可視化方法を提供する。
【解決手段】オリゴデンドロサイト系列細胞とコレステロール特異的界面活性剤とを接触させる工程、およびコレステロール特異的界面活性剤と接触させたオリゴデンドロサイト系列細胞とガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドに特異的な抗体とを接触させる工程を含む、オリゴデンドロサイト系列細胞におけるガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドの可視化方法。
【選択図】なし
従来技術、競合技術の概要


オリゴデンドロサイト(OL)は中枢神経系におけるミエリン形成を担っている。OL前駆細胞(OPC)、前ミエリン形成OLおよびミエリン形成OLを含むOL系列細胞の分化は、逐次的に発現されるOL系列特異的な糖脂質およびタンパク質によって特徴付けられている。これらの抗原の免疫組織化学的検出により、発生過程におけるOL系列細胞の分化段階の同定が可能になる。



最も量の多いミエリン脂質はガラクトセレブロシド(GalC)およびその硫酸化誘導体であるスルファチド(SUL)であり、これらを合わせるとミエリン脂質の約27%を占める。この量の多さおよび細胞特異性により、GalC/SULは、細胞分裂を終了したOLの最も初期のマーカーの1つとして特に有用になっている。さらに、GalC/SUL免疫反応性はOLの細胞膜のほぼ全体に分布しているので、GalC/SULは発生過程におけるOLの形態変化を可視化するために有用である。



さらに、GalC/SUL生合成酵素であるUDP-ガラクトースセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(CGT)を欠損するマウスにおいて、OLの突起は軸索に沿って適切に配置されず、その結果、神経伝導の欠陥およびランビエ絞輪の異常形成が生じる。



病理学的状態におけるGalCおよび抗GalC抗体の関与が報告されている。クラッベ病(グロボイド細胞白質ジストロフィーとしても知られる)がGalC触媒酵素であるガラクトセレブロシダーゼ活性の機能障害によって引き起こされることが示されている。クラッベ病では、GalCがインビボで蓄積されることが報告されている。GalCは脱髄疾患にも関与している。抗GalC抗体は感染後脳炎およびギラン・バレー症候群の患者において検出されている。さらに、抗GalC抗体は実験的アレルギー性神経炎を引き起こすことが報告されている。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の神経細胞および粘膜上皮への侵入におけるGalCの役割の可能性が報告されている。



上記の結果は、インビボにおけるGalC/SUL発現の分析がOLの分化およびミエリンの機能を理解するために重大であることを示唆する。



培養OLにおけるGalC/SULの発現レベルおよび分布は多く研究されている。しかし、シュワン細胞中のGalC発現レベルが培養中に経時的に急速に変化することが報告されており、培養細胞中のGalC発現レベルがインビボでの発現レベルとは異なる可能性が示唆されている。それゆえ、組織切片中のGalCの発現レベルおよび分布パターンを調べることが望ましい。しかしながら、インビボにおけるGalC/SULの発現はさほど研究されていない。これは、組織切片におけるGalC/SULの免疫組織化学的局在の解析が容易でないことによる。



他の脂質分子および親油性トレーサーの場合のように、GalC/SULの免疫反応性は、組織切片中への抗体の浸透を増強するために一般的に使用される界面活性剤であるTriton X-100によって阻害される(非特許文献1~2)。これはおそらく、GalC/SULがTriton X-100によってOLの細胞膜から溶出されたからであると推測される。



免疫染色プロトコルのTriton X-100での透過処理工程を省略することによってこの問題が解決できる可能性がある。実際、固定脳切片におけるGalCの分布パターンが透過処理なしで調べられている(非特許文献1~4)。しかし、固定組織切片を透過処理なしで免疫染色すると、切片の表面に位置する抗原のみが標識され、切片の中央に位置する抗原は染色されないままであった(非特許文献5)。従って、界面活性剤を使用しなければ、切片においてGalC/SULの3次元分布、形態分化およびOL数を包括的に調べることは困難であった。Warringtonらは、未固定組織切片を用いて組織切片中の糖脂質の分布パターンを明確に可視化した(非特許文献6)。しかし、抗糖脂質抗体はしばしば培養OLに対して生物学的活性を示すので、抗糖脂質抗体との未固定組織のインキュベーションはOLに対して予想外の効果を有する可能性がある。



メタノールおよびエタノールもまた脳切片中への抗体の浸透を増強する目的で使用されることがある。これらの試薬は抗体の組織切片中への浸透を効率的に改善するが、これらは広範な脂質をほぼ無差別に可溶化するので(非特許文献7)、これらの試薬を免疫染色に使用した場合、脂質抗原の検出はしばしば困難になる。



それゆえ、GalC/SUL発現分布を阻害することなく組織切片中への抗体の浸透を増強する新たな免疫組織化学的方法を確立することが望まれていた。
【非特許文献1】
Ghandour MS et al., J Neurocytol, 1988; 17: 485-98
【非特許文献2】
Reynolds R et al., Development, 1988; 102: 409-25
【非特許文献3】
Curtis R et al., J Neurocytol, 1988; 17: 43-54
【非特許文献4】
Hardy R et al., Development, 1991; 111: 1061-80
【非特許文献5】
Matsubayashi Y et al., J Neurosci Methods, 2008; 174: 71-81
【非特許文献6】
Warrington AE et al., J Neurosci Res, 1992; 33: 338-53
【非特許文献7】
Schuck S etal., Proc Natl Acad Sci USA, 2003; 100: 5795-800

産業上の利用分野


本発明は、脳組織内の脂質抗原の免疫染色方法に関する。より詳細には、本発明は、コレステロール特異的界面活性剤を使用するオリゴデンドロサイト系列細胞におけるガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドの可視化方法、そのための組成物およびキットに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
オリゴデンドロサイト系列細胞とコレステロール特異的界面活性剤とを接触させる工程、およびコレステロール特異的界面活性剤と接触させたオリゴデンドロサイト系列細胞とガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドに特異的な抗体とを接触させる工程を含む、オリゴデンドロサイト系列細胞におけるガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドの可視化方法であって、ここでコレステロール特異的界面活性剤がジギトニンである、方法

【請求項2】
コレステロール特異的界面活性剤を含む、オリゴデンドロサイト系列細胞へのガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドに特異的な抗体の浸透促進用組成物であって、ここでコレステロール特異的界面活性剤がジギトニンである、組成物

【請求項3】
コレステロール特異的界面活性剤およびガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドに特異的な抗体を含む、オリゴデンドロサイト系列細胞におけるガラクトセレブロシドおよび/またはスルファチドの可視化用キットであって、ここでコレステロール特異的界面活性剤がジギトニンである、キット
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) さきがけ 生命システムの動作原理と基盤技術 領域
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