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並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌の製造方法

国内特許コード P10A015471
掲載日 2010年6月4日
出願番号 特願2008-262390
公開番号 特開2010-088359
登録番号 特許第5388096号
出願日 平成20年10月9日(2008.10.9)
公開日 平成22年4月22日(2010.4.22)
登録日 平成25年10月18日(2013.10.18)
発明者
  • 篠原 信
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌の製造方法
発明の概要

【課題】有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成する並行複式無機化反応において、有機物を硝酸態窒素に無機化する反応が終了するまでの時間を大幅に短縮することができ、有機物を一度に大量添加することが可能であり、その結果、高濃度の硝酸態窒素を効率よく生成することができ、且つ、微生物源の添加量を大幅に縮減することができる方法を、提供する。
【解決手段】水を溜めることができる容器に水を張り、並行複式無機化反応を行う微生物群を接種し、前記水中において並行複式無機化反応が進行する環境を維持することで、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養し、前記水と接する固体表面にバイオフィルムを形成させ、次いで、当該バイオフィルムを回収し、回収された前記バイオフィルムを、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌とする、種菌の製造方法。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


近年、循環型社会を構築すべきとの観点から、化学肥料の使用を控え有機質肥料の使用を推進する動きが世界的に活発になっている。
トマトなどの野菜や花き等の生産で広がりを見せている、土壌を用いない‘養液栽培’でも、有機質肥料を活用するよう、期待が高まっていた。
しかし、養液栽培では従来、有機質肥料を利用することができなかった。養液に有機物を直接添加すると有害な中間分解産物が発生し、植物の根が傷んでしまうためである。それゆえ、従来、養液栽培には化学肥料のみが使用されてきた。



養液栽培で有機質肥料を活用するには、あらかじめ有機物を無機化し、植物に吸収しやすいものにする技術が必要である、と、多くの研究者が考えた。
有機物を無機化する技術としては、微生物群を利用した排水処理技術(例えば、特許文献1参照)などがある。
しかし、これらは脱窒反応(硝酸態窒素を還元し窒素ガスとして放出する反応)を伴うため、硝酸態窒素を回収するには不向きであり、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料に利用する目的には合致するものではなかった。



そこで、有機物から硝酸態窒素(硝酸イオンとして)を回収して、無機肥料成分として利用できる技術として、特許文献2および非特許文献2に記載の「並行複式無機化法」が発明されている。
この技術は、脱窒反応を抑えながら有機態窒素を分解し、硝酸態窒素である硝酸イオンを、無機肥料成分として回収できる再現性の高い方法である。当該技術は、有機物の分解(アンモニア化成)および硝酸イオンの生成(硝酸化成)を進める微生物群を同じ反応系中で順次増殖していくことを利用することにより、アンモニア化成および硝酸化成を同じ反応液の中で並行して行わせるものである。この反応は上記排水処理技術などと異なり、脱窒反応を抑えることが可能である。



この並行複式無機化法の技術を用いることで、養液栽培で有機質肥料を直接添加して利用することが可能になり、さらにこの技術を転用することで、有機物を硝酸態窒素に無機化して無機肥料成分を製造することが可能になった(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
この特許文献2に記載の発明は、有機質肥料を活用した養液栽培を実現するとともに、有機質資源を原料にして、硝酸態窒素などの無機肥料成分の製造を実現する技術として注目を集めている。このため、新たな養液栽培技術として関心を持つ農家や植物工場、有機質資源の再資源化を計画する企業などから、多大な期待を集めている。



しかし、上記特許文献2に記載の方法では、微生物源として土壌や湖沼の水など「自然に由来する微生物源」を利用するほかなかった。
これらの微生物源は、並行複式無機化反応に最適化されたものとは言えないため、従来の並行複式無機化法には、実用面で改善すべき以下の課題が残されていた。
すなわち、まず第1の課題は、反応終了までに長い時間がかかることである。これは、「自然に由来する微生物源(土壌や湖沼の水など)」が並行複式無機化反応に最適化されているわけではないために、アンモニア化成反応、そして硝酸化成反応へと反応が進んでいくごとに、それぞれの反応を行う微生物群が順次、増殖してくるのを待たなければならないためである。
具体的には、反応が終了するまでにかかる時間は、約2週間以上が必要であり、このため、養液栽培の苗の定植適期に間に合わないなどのトラブルが起きかねなかった。



次に第2の課題は、有機物を一度に大量に添加することができないということである。上述のように、「自然界由来の微生物源」は、並行複式無機化反応に最適化されているわけではないため、これに含まれる硝化菌(硝酸化成を行う微生物)は有機成分の曝露に弱い状態となっており、大量の有機成分の曝露を受けると死滅してしまう。このため、‘培養過程’において有機物を一度に大量に添加した場合、硝酸化成反応が進まなくなり、硝酸態窒素を回収できなくなる。
具体的には、反応系の水(溶液)1Lに対して1回あたり約2gの有機物の添加が上限である。従って、高濃度の硝酸態窒素を回収したい場合は有機物の添加作業を数回に分けて(好ましくは毎日)添加しなければならないため、操作が煩雑になる問題があった。



そして第3の課題は、微生物源の添加量が大きくなってしまうということである。
これは、上記自然界由来の微生物源が、並行複式無機化反応に最適化されたもの(微生物生態系)となっていないために、硝化菌が有機成分の曝露に極めて弱い状態となっており、このため、硝化菌が有機成分の曝露によって大きなダメージを受けることは避けられず、そのダメージによる損失を考慮した添加量の大きさにしなければならないためである。
具体的には、反応系の水(溶液)1Lに対して5g程度以上の土壌の添加が必要である。それ以下の添加量だと、硝化菌は有機成分の曝露によって死滅してしまい、硝酸態窒素を回収することができなくなる恐れがある。
また、大量に微生物源を添加しなければならないことは、養液栽培の現場では問題となる。養液栽培の現場ではトン単位の養液が用いられるので、数キロ相当の土壌を養液に投入しなければならない計算になる。しかし、それだけの量の土壌を添加すると、土壌粒子が流路を目詰まりさせるなどの問題が生じやすくなる。
さらに、これだけの投入量になると土塊が大きくなり、その内部が嫌気性になりやすくなり、嫌気条件の環境を好む脱窒菌(脱窒反応を行う微生物群)が繁殖し、硝酸態窒素が窒素ガスとなって失われてしまうなどの恐れがある。また、嫌気性微生物は植物にとって好ましくない成分(phytotoxic)を分泌し、植物の生育を悪化させてしまう。
このため、微生物源の添加量を大幅に縮減する技術の開発が求められていた。



そこで、並行複式無機化反応を行って有機物から無機肥料成分である硝酸態窒素を生成するにあたり、上記3つの課題を解決して、実用化に適した水準で効率よく行うことができる方法の開発が求められていた。



【特許文献1】特開2001-300583号公報【特許文献2】特開2007-119260号公報【非特許文献1】研究ジャーナル2008年、31(1)44-46ページ【非特許文献2】「有機肥料の養液栽培」農業及び園芸、第81巻 p. 753-764(2006年)

産業上の利用分野


本発明は、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌の製造方法に関する。
また、本発明は、前記種菌を用いた無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
水を溜めることができる容器に水を張り、並行複式無機化反応を行う微生物群を含む以下(B)に記載の微生物源を添加し、;以下(C1)~(C4)に記載の全ての条件を満たすように前記水中の環境を維持することで、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養し、;前記水と接する以下(E)に記載の固体表面にバイオフィルムを形成させ、次いで、当該バイオフィルムを回収し、;回収された前記バイオフィルムを、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌とすることを特徴とする、種菌の製造方法。
(B): 土壌, 堆肥, 活性汚泥, 又は自然より採取した水, から選ばれた1以上の微生物源。
(C1): 水温が15~37℃の条件。
(C2): 曝気、振盪、又は曝気及び振盪により好気的条件を維持する条件。
(C3): 1~14日あたり前記水1Lに対して乾燥重量換算で0.01~2gずつの以下(D)に記載の有機物が添加される条件。
(C4): 前記水中に生成される硝酸イオン濃度が10~50mg/Lに達した場合には、前記有機物の添加が停止される条件。
(D): 魚煮汁, トウモロコシ浸漬液, 油粕, 魚粉, 牛乳, 大豆粕, 酵母粕, 酒粕, 焼酎粕, 又は生ゴミ, から選ばれた1以上の有機物。
(E): 前記容器の壁面及び前記容器の底面から選ばれた1以上の固体表面。
【請求項2】
前記容器は、以下(A1)~(A3)に記載のいずれか1以上のものを浸漬されたものであり、
前記バイオフィルムは、以下(E-1)に記載の固体表面に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の種菌の製造方法。
(A1): 竹炭, 木炭, パーライト, 海砂, バーミキュライト, セラミック, ゼオライト, ガラス, ロックウール, ウレタン, ナイロン, 又はメラミン樹脂, からなる固体担体。
(A2): ガラス, アクリル, プラスチック, 陶器片, 又は焼き物, からなる板状物。
(A3): ガラス, アクリル, プラスチック, 陶器片, 又は焼き物, からなる柱状物。
(E-1): 前記容器の壁面, 前記容器の底面, 前記固体担体の表面, 前記板状物の表面, 又は前記柱状物の表面, から選ばれた1以上の固体表面。
【請求項3】
水を溜めることができる容器に水を張り、請求項1又は2に記載の種菌の製造方法により得られた種菌を微生物源として添加し、;以下(C1)、(C2)、(C3-2)、及び(C4)に記載の全ての条件を満たすように前記水中の環境を維持することで、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養し、;前記水と接する以下(E)に記載の固体表面にバイオフィルムを形成させ、次いで、当該バイオフィルムを回収し、;回収された前記バイオフィルムを、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌とすることを特徴とする、種菌の製造方法。
(C1): 水温が15~37℃の条件。
(C2): 曝気、振盪、又は曝気及び振盪により好気的条件を維持する条件。
(C3-2): 1~14日あたり前記水1Lに対して乾燥重量換算で0.01~10gずつの以下(D)に記載の有機物が添加される条件。
(C4): 前記水中に生成される硝酸イオン濃度が10~50mg/Lに達した場合には、前記有機物の添加が停止される条件。
(D): 魚煮汁, トウモロコシ浸漬液, 油粕, 魚粉, 牛乳, 大豆粕, 酵母粕, 酒粕, 焼酎粕, 又は生ゴミ, から選ばれた1以上の有機物。
(E): 前記容器の壁面及び前記容器の底面から選ばれた1以上の固体表面。
【請求項4】
前記容器は、以下(A1)~(A3)に記載のいずれか1以上のものを浸漬されたものであり、
前記バイオフィルムは、以下(E-1)に記載の固体表面に形成されることを特徴とする、請求項3に記載の種菌の製造方法。
(A1): 竹炭, 木炭, パーライト, 海砂, バーミキュライト, セラミック, ゼオライト, ガラス, ロックウール, ウレタン, ナイロン, 又はメラミン樹脂, からなる固体担体。
(A2): ガラス, アクリル, プラスチック, 陶器片, 又は焼き物, からなる板状物。
(A3): ガラス, アクリル, プラスチック, 陶器片, 又は焼き物, からなる柱状物。
(E-1): 前記容器の壁面, 前記容器の底面, 前記固体担体の表面, 前記板状物の表面, 又は前記柱状物の表面, から選ばれた1以上の固体表面。
【請求項5】
前記バイオフィルムの回収が、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した後に得られる培養液の上清を廃棄し、その後、前記固体表面に形成されたバイオフィルムを回収するものである、請求項1~4のいずれかに記載の種菌の製造方法。
【請求項6】
前記バイオフィルムの回収が、前記固体表面に形成されたバイオフィルムと、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養した後に得られる培養液の上清と、を混合した混合液として回収するものである、請求項1~5のいずれかに記載の種菌の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれかに記載の種菌の製造方法において、前記形成されたバイオフィルムを回収した後、遠心分離又はろ過することによって余分な水分を除去することを特徴とする、種菌の製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の種菌の製造方法において、前記培養液の上清を廃棄した後に乾燥処理を行うことを特徴とする、種菌の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の種菌の製造方法において、前記余分な水分を除去した後に乾燥処理を行うことを特徴とする、種菌の製造方法。
【請求項10】
前記種菌が、50~80℃の加熱をした際に、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌としての機能を失わないものである、請求項1~9のいずれかに記載の種菌の製造方法。
【請求項11】
前記種菌が、アンモニア化成を行う微生物群を含み、且つ、前記種菌1gに対して硝酸化成を行う微生物群を1万~1億細胞含むものである、請求項1~10のいずれかに記載の種菌の製造方法。
【請求項12】
水を溜めることができる容器に水を張り、これに以下(i)又は(ii)に記載の種菌の製造方法により得られた種菌を添加し、;前記水中において並行複式無機化反応が進行する環境である、有機物が添加され且つ温度が15~37℃に維持され且つ好気的条件になるように維持された環境、を維持することで、前記水中で並行複式無機化反応を進行させ、;100mg/L以上の硝酸イオンを含む反応液を得、;得られた前記反応液を、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料とすることを特徴とする、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料の製造方法。
(i):水を溜めることができる容器に水を張り、並行複式無機化反応を行う微生物群を接種し、前記水中において並行複式無機化反応が進行する環境を維持することで、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養し、;前記水と接する固体表面にバイオフィルムを形成させ、次いで、当該バイオフィルムを回収し、;回収された前記バイオフィルムを、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌とすることを特徴とする、種菌の製造方法。
(ii):水を溜めることができる容器に水を張り、前記(i)に記載の種菌の製造方法により得られた種菌を接種し、前記水中において並行複式無機化反応が進行する環境下で、前記並行複式無機化反応を行う微生物群を培養し、;前記水と接する固体表面にバイオフィルムを形成させ、次いで、当該バイオフィルムを回収し、;回収された前記バイオフィルムを、並行複式無機化反応の触媒として最適化された微生物群の種菌とすることを特徴とする、種菌の製造方法。
【請求項13】
水を溜めることができる容器に水を張り、これに請求項1~11のいずれかに記載の種菌の製造方法で得られた種菌を添加し、;前記水中において並行複式無機化反応が進行する環境である、有機物が添加され且つ温度が15~37℃に維持され且つ好気的条件になるように維持された環境、を維持することで、前記水中で並行複式無機化反応を進行させ、;100mg/L以上の硝酸イオンを含む反応液を得、;得られた前記反応液を、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料とすることを特徴とする、無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の肥料の製造方法において、前記有機物の添加が、前記水1Lに対して乾燥重量換算で10gを超えない量までを一度に添加できるものである、肥料の製造方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれかに記載の肥料の製造方法において、100mg/L以上の硝酸イオンが生成された反応液が、8日を越えない日数で得ることができるものである、肥料の製造方法。
【請求項16】
請求項12~15のいずれかに記載の肥料の製造方法において、前記種菌の添加が、前記水1Lに対して0.01gを下回らない量を添加するものである、肥料の製造方法。
【請求項17】
請求項12~16のいずれかに記載の肥料の製造方法において、並行複式無機化反応を進行させる際に、脱窒反応を伴わないものである、肥料の製造方法。
【請求項18】
請求項12~17のいずれかに記載の肥料の製造方法により肥料を製造し、得られた無機肥料成分である硝酸態窒素を含む肥料を用いて植物を栽培することを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項19】
請求項12~17のいずれかに記載の前記反応液中で、有機物を含む肥料を直接添加して養液栽培を行う、植物の栽培方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の植物の栽培方法において、前記植物が、葉菜類の野菜、果実を収穫対象とする果菜、果樹、樹木、又は花卉である、植物の栽培方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2008262390thum.jpg
出願権利状態 登録


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