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RSISを用いた簡便な遺伝子発現抑制方法

国内特許コード P10S000396
掲載日 2010年6月4日
出願番号 特願2008-554067
登録番号 特許第5206419号
出願日 平成20年1月17日(2008.1.17)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
国際出願番号 JP2008050481
国際公開番号 WO2008087998
国際出願日 平成20年1月17日(2008.1.17)
国際公開日 平成20年7月24日(2008.7.24)
優先権データ
  • 特願2007-008994 (2007.1.18) JP
発明者
  • 高岩 文雄
  • 保田 浩
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 RSISを用いた簡便な遺伝子発現抑制方法
発明の概要 本発明者らはRSISを見いだし、RSISを標的遺伝子のプロモーターからmRNAの5’末端配列および終止コドン以降の3’UTRを含むターミネーター配列の間に連結することによって標的遺伝子の発現を抑制することができた。また、異なる遺伝子由来のプロモーターとターミネーターおよびそれぞれのmRNAの一部を用いることによって、プロモーターの働く細胞内で両遺伝子の発現を同時に抑制することができることも示した。
従来技術、競合技術の概要


モデル植物といわれるイネやアラビドプシスのゲノム配列がほぼ決定され、今後はそれぞれの遺伝子産物(タンパク質)の機能の解明が重要な課題として挙げられている。タンパク質の機能の解明には様々な方法が用いられるが、生体内での機能については遺伝学的な2つの方法が用いられている。
第一の方法は変異体(表現型の異常)を探してその原因遺伝子を突き止めていく順遺伝学的手法である。変異体の作成には変異原処理やγ線の照射等が行われている。



第二の方法は既知の遺伝子の構造を破壊する、もしくは発現を抑制することによってその個体の表現型がどう変わるのかを観察する逆遺伝学的手法である。逆遺伝学的手法では遺伝子組換えによる強制発現や相同組換え、トランスポゾンタギング、RNAサイレンシングによるノックダウン等により、既知遺伝子の発現が調整されている。植物の場合、既知遺伝子の発現抑制法として相同組換えが困難であることから、RNAサイレンシングが頻繁に行われている。



植物の研究において分子生物学的手法の発達や形質転換法の確立によって未知遺伝子の機能の解明といった基礎科学の分野以外に、作物の高付加価値化といった応用の分野にもRNAサイレンシングが利用されるようになってきている(非特許文献1~3参照)。また植物の本質的なウイルス抵抗性にRNAサイレンシングが関わっていることが明らかとなってから、人工的なRNAサイレンシングを利用したウイルス抵抗性作物の開発も行われており(非特許文献4および5参照)、今後RNAサイレンシング法は高付加価値を付与した作物の開発技術の一つとしてさらに利用されるものと思われる。



遺伝子組換え技術を利用して目的の遺伝子発現を抑制する方法として、これまではアンチセンス法が用いられていた。しかし近年になってアンチセンス法よりも高頻度でより抑制効果の高いRNAサイレンシングを利用した方法が主流になってきており、その機構も明らかとなりつつある。RNAサイレンシングの過程は大きく分けて次の3段階に分けられる。第1段階は2本鎖RNA(dsRNA)の形成、第2段階はDicer(非特許文献6参照)による21から26塩基対からなる2本鎖RNA(siRNA, 非特許文献7参照)への断片化、第3段階はRNAサイレンシング誘導複合体(RISC, 非特許文献8参照)によるsiRNAと相同配列を持つmRNAの分解、である。



人工的なRNAサイレンシングを誘導するためには2本鎖RNAを形成させることが最も重要であり、そのための方法としてinverted repeatやhairpin-roop構造をその転写物に形成させると効率よくRNAサイレンシングを誘導できることが知られている。また、イントロンの配列をスペーサーとして用いるとサイレンシングの効率がさらに高まることが知られている(非特許文献9および10参照)。またこのような構造を取らせるためのベクター(pHANNIBAL, pHELLSGATE, pANDA)も開発されている(非特許文献11および12参照)。



なお、ヒトのペプチドホルモンであるGLP-1(glucagon-like peptide 1;グルカゴン様ペプチド1)の塩基配列を、イネ胚乳中で高頻度に用いられているコドンに置き換えたmGLP-1配列を用いた、イネ植物体におけるRNAサイレンシングについては知見がある(非特許文献13参照)。しかしながらこのmGLP-1配列には制限酵素認識部位が複数存在していたために実際の使用には不向きであった。またmGLP-1の発現がグルテリン遺伝子を抑えるだけの特殊な現象でしかないと考えられていた。



【非特許文献1】
Fukusaki E.外6名著、「Flower color modulations of Torenia hybrida by downregulation of chalcone synthase genes with RNA interference.」、J. Biotechnol.、2004年、Vol.111、p.229-240.
【非特許文献2】
Liu Q.外2名著、「High-stearic and high-oleic cottonseed oils produced by hairpin RNA-mediated post-transcriptional gene silencing.」、Plant Physiol.、2002年、Vol.129、p.1732-1743.
【非特許文献3】
Ogita S.外4名著、「Producing decaffeinated coffee plants.」、Nature、2003年、Vol.423、p.823.
【非特許文献4】
Lindbo J. A.外3名著、「Induction of a highly specific antiviral state in transgenic plants: implications for regulation of gene expression and virus resistance.」、Plant Cell、1993年、Vol.5、p.1749-1759.
【非特許文献5】
Waterhouse P. M.外2名著、「Virus resistance and gene silencing in plants can be induced by simultaneous expression of sense and antisense RNA.」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1998年、Vol.95、p.13959-13964.
【非特許文献6】
Bernstein E.外3名著、「Role for a bidentate ribonuclease in the initiation step of RNA interference.」、Nature、2001年、Vol.409、p.363-366.
【非特許文献7】
Hamilton A. J. および Baulcombe D. C.著、「A species of small antisense RNA in posttranscriptional gene silencing in plants.」、Science、1999年、Vol.286; 950-952.
【非特許文献8】
Rand T.A.外3名著、「Biochemical identification of Agronaute 2 as the sole protein required for RNA-induced silencing complex activity.」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、2004年、Vol.101、p.14385-14389.
【非特許文献9】
Wesley S. V.外13名著、「Construct design for efficient, effective and high-throughput gene silencing in plants.」、Plant J.、2001年、Vol.27、p.581-590.
【非特許文献10】
Smith N. A.外5名著、「Total silencing by intron-spliced hairpin RNAs.」、Nature、2000年、Vol.407、p.319-320.
【非特許文献11】
Helliwell C. および Waterhouse P.著、「Constructs and methods for high-throughput gene silencing in plants.」、Methods、2003年、Vol.30、p. 289-295.
【非特許文献12】
Miki D. および Shimamoto K.著、「Simple RNAi vectors for stable and transient suppression of gene function in rice.」、Plant Cell Physiol.、2004年、Vol.45、p.490-495.
【非特許文献13】
Yasuda H.外4名著、「Expression of the small peptide GLP-1 in transgenic plants」、Transgenic Research、2005年、Vol.14、p.677-684

産業上の利用分野


本発明は、RNAサイレンシングを誘導するDNA、該DNAを有する標的遺伝子の発現を抑制するDNA、これらDNAを利用して簡便に標的遺伝子の発現を抑制あるいは標的遺伝子のサイレンシングを誘導する方法、標的遺伝子の発現抑制剤あるいは標的遺伝子のサイレンシング誘導剤、さらにsiRNA発現ベクターの製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)~(c)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNA
(b)配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAと95%以上の同一性を示すDNAであって、ここで、該DNAはXho IおよびEco RIの制限酵素認識部位を含まず、さらに、該DNAは標的遺伝子のサイレンシングを誘導する機能を有するDNA
(c)配列番号:3に記載の塩基配列において5個以内の塩基が置換、欠失、付加および/または挿入した塩基配列からなるDNAであって、ここで、該DNAはXho IおよびEco RIの制限酵素認識部位を含まず、さらに、該DNAは標的遺伝子のサイレンシングを誘導する機能を有するDNA

【請求項2】
標的遺伝子の発現を抑制するDNAであって、請求項1に記載のDNAに、さらに以下の(a)~(c)に記載のDNAが機能的に連結した構造を有するDNA。
(a)請求項1に記載のDNAの上流に、プロモーター配列をコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの下流に、ターミネーター配列をコードするDNA
(c)前記(a)のDNAの下流であり、さらに前記(b)のDNAの上流に、標的遺伝子のmRNAの全長もしくは部分配列をコードするDNA

【請求項3】
複数個の標的遺伝子の発現を同時に抑制するDNAであって、請求項1に記載のDNAに、さらに以下の(a)~(c)に記載のDNAが機能的に連結した構造を有するDNA。
(a)請求項1に記載のDNAの上流に、プロモーター配列をコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの下流に、ターミネーター配列をコードするDNA
(c)前記(a)のDNAの下流であり、さらに前記(b)のDNAの上流に、複数個の標的遺伝子それぞれのmRNAの全長もしくは部分配列をコードするDNA

【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のDNAによってコードされるタンパク質。

【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のDNAを含むベクター。

【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを含む組成物。

【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターが導入された形質転換植物細胞。

【請求項8】
請求項7に記載の形質転換植物細胞を含む形質転換植物体。

【請求項9】
請求項8に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。

【請求項10】
請求項8または9に記載の形質転換植物体の繁殖材料。

【請求項11】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを用いることを特徴とする、標的遺伝子の発現を抑制する方法。

【請求項12】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを用いることを特徴とする、標的遺伝子のサイレンシングを誘導する方法。

【請求項13】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。

【請求項14】
請求項1~3にいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、標的遺伝子の発現が抑制された植物体もしくはその種子の製造方法。

【請求項15】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを有効成分として含む、標的遺伝子の発現抑制剤。

【請求項16】
請求項1~3のいずれかに記載のDNA、あるいは請求項5に記載のベクターを有効成分として含む、標的遺伝子のサイレンシング誘導剤。

【請求項17】
以下の(1)および(2)の工程を含むことを特徴とする、siRNA発現ベクターの製造方法。
(1)請求項1に記載のDNAに、さらに以下の(a)~(c)に記載のDNAを機能的に連結させる工程
(a)請求項1に記載のDNAの上流に、プロモーター配列をコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの下流に、ターミネーター配列をコードするDNA
(c)前記(a)のDNAの下流であり、さらに前記(b)のDNAの上流に、標的遺伝子のmRNAの全長もしくは部分配列をコードするDNA
(2)前記DNAをベクターに組み込む工程

【請求項18】
以下の(1)および(2)の工程を含むことを特徴とする、siRNA発現ベクターの製造方法。
(1)請求項1に記載のDNAに、さらに以下の(a)~(c)に記載のDNAを機能的に連結させる工程
(a)請求項1に記載のDNAの上流に、プロモーター配列をコードするDNA
(b)請求項1に記載のDNAの下流に、ターミネーター配列をコードするDNA
(c)前記(a)のDNAの下流であり、さらに前記(b)のDNAの上流に、複数個の標的遺伝子それぞれのmRNAの全長もしくは部分配列をコードするDNA
(2)前記DNAをベクターに組み込む工程
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録


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