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蛍光特性のあるカルサイト結晶およびその製造方法

国内特許コード P10P006903
整理番号 A-019
掲載日 2010年7月16日
出願番号 特願2008-329933
公開番号 特開2010-150387
登録番号 特許第5540327号
出願日 平成20年12月25日(2008.12.25)
公開日 平成22年7月8日(2010.7.8)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発明者
  • 吉田 直人
出願人
  • 国立大学法人 宮崎大学
発明の名称 蛍光特性のあるカルサイト結晶およびその製造方法
発明の概要 【課題】結晶は広い範囲の波長によって励起され、広い範囲の蛍光波長を放出ことができる、容易に製造することが可能な炭酸カルシウム質蛍光体の提供。
【解決手段】新規細菌Geobacillus thermoglucosidasius NY05(受託番号FERM P-21717)を酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、および硫酸マグネシウムを含む結晶形成溶液中でインキュベートすることにより、細胞外に、260~400 nmの範囲の波長の光により励起されたときに350~600 nmの範囲の波長の蛍光を発することができる、カルサイト型構造を有する炭酸カルシウム質蛍光体が形成される。
【選択図】図9
従来技術、競合技術の概要



生物が生体、細胞の内外に無機鉱物結晶を作る作用をバイオミネラリゼーション(biomineralization)という。この言葉は1947年日本の真珠研究者によってはじめて使われ、一つの研究分野が誕生した。バイオミネラリゼーションは細菌などの原核生物からほ乳動物などの真核生物まで普遍的に見られる。たとえば円石藻のウロコ(ココリス)、軟体動物の貝殻、甲殻類の外骨格、魚類の耳石やウロコ、脊椎動物の骨や歯の形成、植物のプラントオパールなどがあげられる。バイオミネラリゼーションによって作られる結晶は通常大部分が無機鉱物から成るが、微量の有機物(有機基質)を含む。この有機基質がバイオミネラリゼーションを制御していると考えられてきたが、未だに不明な点が多い。バイオミネラリゼーションの研究はこれまで多方面から行われてきた。





細菌によるバイオミネラリゼーションでは、細胞外または細胞内に無機結晶が形成されることが知られている。細胞外に結晶が形成される例として、細菌によるカルサイト(炭酸カルシウム)形成があげられる。ある種の海洋性細菌はカルサイトを形成する能力があり、この能力と海底の炭酸カルシウム堆積物との関連性が調べられている(非特許文献1)。Boquetらは多くの種類の土壌細菌が酢酸カルシウム、酵母エキス、グルコースを含む固形培地上でカルサイトを形成することを初めて報告した(非特許文献2)。Sanchez-Romanらは19種類の中等度好塩性細菌について、カルシウムとマグネシウムの割合を変化させた培地にて炭酸塩鉱物とリン酸塩鉱物形成を調査し、形成された鉱物がカルサイトやストルバイトであることを報告した(非特許文献3)。Baskarらは鍾乳石から単離された細菌が鍾乳石形成にどのような地質学的影響を及ぼすのか研究を進め、微生物活性は鍾乳石やカルサイト形成の重要な因子であることを報告した (非特許文献4)。





細胞内に無機結晶が形成される例としては、磁性細菌の微小磁石が挙げられる。磁性細菌は細胞内にナノサイズのマグネタイト(Fe3O4)結晶あるいはグレガイト(Fe3S4)結晶を室温、中性の環境下で生成し、地磁気センサーとして利用している。その結晶型は種に特異的であり、その大きさも極めて均一であることから、生物工学分野の研究者の興味を集めている。





しかしながら、バイオミネラリゼーションの観点から材料科学にアプローチした研究は多くはない。





従来から知られている蛍光体のほとんどは、その製造時に高純度かつ高価な希土類酸化物を付活剤として使用している。炭酸カルシウム結晶においても、結晶形成時にユーロピウムやセリウム、テルビウムなどを付活剤として添加すると、蛍光特性をもった炭酸カルシウム結晶が得られることが知られている。たとえばユーロピウム付活バテライト型炭酸カルシウム結晶は最大励起波長330nm、最大蛍光波長620nmで赤色蛍光を発する(特許文献1)。付活剤としてセリウムとテルビウムを使用した場合、励起波長300-450nm、最大放出波長545nmの緑色蛍光を発する炭酸カルシウム結晶が得られる(特許文献2)。特許文献3ではマンガンおよびセリウムにより付活された、ブラックライト(300~450nm)照射により赤色蛍光発光する炭酸カルシウム質蛍光体が開示されている。しかしながらこれらの蛍光体は常温にて発光強度が激しく減少するという欠点がある。またこれらの蛍光体の放出波長幅は50nmほどである。特許文献4では製造コストを低減させることを目的として、カルサイト型構造を有する炭酸カルシウム結晶にスズを固溶させて蛍光体とする技術が開示されている。しかしながらこの蛍光体もまた放出波長幅が狭いものであった。





【特許文献1】

開2001-279241号公報

【特許文献2】

許第3985584号公報

【特許文献3】

許第3965823号公報

【特許文献4】

開平10-226786号公報

【非特許文献1】

rennan, S.T., Lowenstein, T.K., Horita, J (2004) Seawater chemistry and the advent of biocalcification. Geology 32, 473-476

【非特許文献2】

oquet E, Boronat A, Ramos-Cormenzana A (1973) Production of calcite (calcium carbonate) crystals by soil bacteria is a general phenomenon. Nature, 264, 527-529.

【非特許文献3】

anchez-Roman M, Rivadeneyra MA, Vasconcelos C, McKenzie JA. Biomineralization of carbonate and phosphate by moderately halophilic bacteria.FEMS Microbiol Ecol. 2007 Aug;61(2):273-84.

【非特許文献4】

askar, S., Baskar, R., Mauclaire, L. and McKenzie, J.A. (2006). Microbially induced calcite precipitation in culture experiments: Possible origin for stalactites in Sahastradhara caves, Dehradun, India, Current Science, v. 90, 58-64.

【非特許文献5】

限環境微生物とその利用 堀越弘毅、関口武司、中村聡、井上明 講談社サイエンティフィク

【非特許文献6】

ujita Y, Taylor JL, Gresham TL, Delwiche ME, Colwell FS, Mcling TL, Petzke LM, Smith RW. Stimulation of microbial urea hydrolysis in groundwater to enhance calcite precipitation. Environ Sci Technol. 2008 Apr 15;42(8):3025-32.

【非特許文献7】

achmeier KL, Williams AE, Warmington JR, Bang SS. Urease activity in microbiologically-induced calcite precipitation. J Biotechnol. 2002 Feb 14;93(2):171-81.

産業上の利用分野



本発明は、カルサイト型構造を有する炭酸カルシウム質蛍光体および細菌を用いて当該蛍光体を製造する方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
Geobacillus thermoglucosidasius NY05(受託番号FERM P-21717)または炭酸カルシウム質蛍光体の結晶形成能を有するその変異株を、水中に炭素数1または2のカルボン酸塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む弱酸性に調整された結晶形成溶液中または該結晶形成溶液のゲル化物上にて、45~70℃の温度にて好気条件でインキュベートしたときに形成される、260~400 nmの範囲の波長の光により励起されたときに350~600 nmの範囲の波長の蛍光を発することができる、カルサイト型構造を有する炭酸カルシウム結晶に、カルシウムの原子数を100(原子%)としたとき、原子数換算で15~25のマグネシウム、10~15のナトリウム、4~6のケイ素、2~3の硫黄、1~2のリンおよび1~2の塩素が固溶している炭酸カルシウム質蛍光体。

【請求項2】
前記結晶形成溶液または前記ゲル化物が、他の無機塩をさらに含む、請求項1の炭酸カルシウム質蛍光体。

【請求項3】
Geobacillus thermoglucosidasius NY05(受託番号FERM P-21717)または炭酸カルシウム質蛍光体の結晶形成能を有するその変異株であって、水中に炭素数1または2のカルボン酸塩、およびカルシウム塩を含む弱酸性に調整された結晶形成溶液中または該結晶形成溶液のゲル化物上にて、45~70℃の温度にて好気条件でインキュベートしたときに請求項1または2の蛍光体を形成する能力を有する細菌。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2008329933thum.jpg
出願権利状態 登録


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