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絹タンパク質ナノファイバー及びその製造方法、並びに絹タンパク質複合体ナノファイバー及びその製造方法 コモンズ 実績あり

国内特許コード P10P007300
整理番号 NI0800035
掲載日 2010年7月16日
出願番号 特願2008-331483
公開番号 特開2010-150712
登録番号 特許第5186671号
出願日 平成20年12月25日(2008.12.25)
公開日 平成22年7月8日(2010.7.8)
登録日 平成25年2月1日(2013.2.1)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 大川 浩作
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 絹タンパク質ナノファイバー及びその製造方法、並びに絹タンパク質複合体ナノファイバー及びその製造方法 コモンズ 実績あり
発明の概要

【課題】家蚕又は野蚕由来の絹タンパク質ドープを用いるエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造する方法及び得られた絹タンパク質ナノファイバー、並びに該ドープを用いるエレクトロスピニングにより絹タンパク質複合体ナノファイバーを製造する方法及び得られた絹タンパク質複合体ナノファイバーを提供すること。
【解決手段】家蚕又は野蚕由来の絹タンパク質水溶液を透析して純粋な絹タンパク質ドープを調製し、又はこの絹タンパク質ドープに非イオン界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれた少なくとも1種を添加して絹タンパク質複合ドープを調製し、この絹タンパク質ドープ若しくは絹タンパク質複合ドープを用いてエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバー又は絹タンパク質複合体ナノファイバーを製造する。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


近年、ナノファイバーの製造にエレクトロスピニング技術が応用されつつある。このナノファイバーは、「エレクトロスピニング」装置を用いて製造できるナノオーダーの極細のファイバーである。このエレクトロスピニング技術によれば、所定の濃度のポリマードープを入れた貯蔵タンクに陽極電極を入れ、一定の距離を隔てて陰極板(コレクター)を設置し、陰極と陽極との間に電圧を印加して両電極間に電気引力を生じさせ、この電気引力がポリマー溶液の表面張力以上となると、静電力により紡糸口から陰極板に向かって霧状態の微細なポリマージェットが噴射され、その結果、ナノファイバーが陰極板上に吹き付けられて積層される。



このエレクトロスピニングにより得られるナノファイバーは、その太さがナノ~マイクロメートルのオーダーであり、このファイバー集合体の表面積が極めて大きいため、再生医療工学、創傷材料等のヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野から新素材として関心が寄せられている。



エレクトロスピニング技術が開発された当初は、アクリル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のナノファイバーの素材の開発に対して、この技術が応用されていたが、最近は、液晶性高分子、DNA、タンパク質、導電性高分子等の機能性高分子のドープからナノファイバーを製造する技術が開発されている。



工業用熱可塑性高分子、生分解性高分子、ポリマーブレンド等のような、エレクトロスピニングで紡糸できる広範の高分子に加えて、カイコ由来で、酵素により生分解する絹タンパク質からなる絹タンパク質ナノファイバーは、各種産業分野において、将来的に利用価値の高い素材である。しかし、絹タンパク質ナノファイバーの原料は、天然高分子の絹糸であり、絹糸を溶解させて高分子量の絹フィブロインドープを製造するための溶媒は極めて限られているので、絹タンパク質ナノファイバーを製造するために克服する課題が極めて多いのが現状である。



例えば、絹タンパク質ナノファーバーを製造するための従来技術としては、絹フィブロイン及び/又は絹様材料を溶解する溶媒としてヘキサフルオロアセトン水和物(以下、HFAcとも称す。)を用い、絹フィブロイン繊維から製造した絹フィブロイン及び/又は絹様材料を溶解してシルクドープを製造し、このシルクドープを用いてエレクトロスピニングする手法がある(例えば、特許文献1参照)。



上記特許文献1には、絹フィブロイン及び/又は絹様材料をHFAcに溶解した溶液(絹フィブロインドープ、すなわちシルクドープ)を用いて紡糸してなる繊維、フィルム、不織布及びその製造技術が開示されている。すなわち、絹フィブロイン繊維を溶解して得た絹フィブロイン膜をHFAcに溶解し、得られたシルクドープを用いてエレクトロスピニングによりシルク様繊維を製造している。



この特許文献1には、絹フィブロイン繊維を溶解する溶媒として、従来、HFAcとは別の溶媒であるヘヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPとも称す。)が頻繁に用いられていたことが記載されている。



上記特許文献1記載のように、HFAcやHFIP等の溶媒を用い、絹フィブロインの高い分子量を維持しながら絹フィブロインを溶解するには長時間が必要である。また、これらの溶媒は、安全面でも取扱に注意する必要があった。さらに、上記HFAcは、例えば和光純薬工業(株)製のもので5g 4,500円であり、また、上記HFIPは、和光純薬工業(株)製のもので100mL 27,000円であり、価格が高く、かつ入手困難である。このような溶媒を使用して工業的にシルクドープを調製し、絹タンパク質ナノファイバーを製造することは、経済的視点から考えても現実的ではない。そのため、シルクドープを経済的にかつ効率的に製造する技術が強く求められている。



また、絹タンパク質ナノファイバーの製造法として、絹フィブロイン繊維を、臭化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の加熱した中性塩水溶液中で溶解した後、得られた絹フィブロイン水溶液をセルロース製透析膜に入れ、蒸留水で置換し、純度の高い絹フィブロイン水溶液を調製し、得られた絹フィブロイン水溶液を凍結乾燥して絹フィブロインゲルを製造し、時間をかけながらこのゲルを蟻酸に溶解して「シルクの蟻酸ドープ」を調製し、このドープを用いてエレクトロスピニングすることで絹タンパク質ナノファイバーを製造することが知られていた。すなわち、絹フィブロイン繊維から絹フィブロイン水溶液を製造し、絹フィブロインゲル(絹フィブロインスポンジ)(以下、シルクゲル又はシルクスポンジとも称す)を調製した後、これを蟻酸に溶かしてシルクドープを調製し、それをエレクトロスピニングすることで絹タンパク質ナノファイバーを製造していた。そのため、工程が簡単な絹タンパク質ナノファイバーの製造技術の開発が強く望まれてきた。



エレクトロスピニング法で絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、シルクドープを効率的に経済的に、しかも良好な作業環境下、簡単な製造工程で製造できることが製造上の重要な要件であった。上記したように、従来、カイコの絹フィブロイン繊維を原料にしてエレクトロスピニングによりナノファイバーを製造するには、絹フィブロイン繊維をHFAc又はHFIP等、購入価格が高価な有機溶媒に先ず溶解してシルクドープを得るか、又は絹フィブロイン繊維を中性塩溶液に溶解して製造できる絹フィブロイン水溶液を透析処理した後凍結乾燥処理して絹フィブロインゲルを調製し、このシルクゲル(シルクスポンジ)を蟻酸に溶解して得られるシルクの蟻酸ドープを得、このシルクの蟻酸ドープをエレクトロスピニング用のシルクドープとして用いていた。



このHFAc、HFIPは購入価格が高価であり、試薬に含有されているフッ素に基づく健康上の有害性が指摘されている。蟻酸は安価であるが刺激臭があり、皮膚に触れると短時間に水泡が生ずるほどの皮膚炎症性を示すかなり強い酸であるため、蟻酸を用いる作業環境は劣悪となり、絹を溶解する適当な溶媒の探索が求められてきた。しかし、従来技術には、その要求を満足するものはなかった。



さらに、シルクドープを用いてエレクトロスピニングする前の工程で、シルクドープにポリエチレンオキサイドのような生体適合性高分子を含ませエレクトロスピニングすることで、シルクをベースにした生体組織に悪影響を及ぼさない新素材及びその製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。



さらにまた、非イオン界面活性剤(Triton X-100)をポリビニルピロリドンに加えるとポリビニルピロリドン水溶液の表面張力が低下し、その結果、エレクトロスピニングによる紡糸状態が改善でき、極細のポリビニルピロリドンのナノファイバーが製造できることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、例えば、高い水溶性を示し、非解離性の高分子であるポリビニルピロリドンと違って、試料が置かれたpH環境によっては正負の電荷を持ち得る両電解性の絹タンパク質と非イオン界面活性剤とからなるドープから直接極細の絹タンパク質ナノファイバーを製造するための従来技術は知られていない。



上記従来のエレクトロスピニング法により極細の絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、ドープ濃度、印加電圧、陽極・陰極間距離、溶液送り出し速度等の紡糸条件を変えながらナノファイバーの最適製造条件を試行錯誤的に検討する必要があった。このことからも、シルクドープ、シルク複合ドープから、エレクトロスピニングで製造できる絹タンパク質ナノファイバーの太さを極細にするには、絹タンパク質ナノファイバーの濃度を変える手段の他に、様々な製造条件を試行錯誤的に変えながら所望の条件に合う最適条件を探すことが不可欠であった。




【特許文献1】特開2004-68161号公報(特許請求の範囲)

【特許文献2】特開2006-504450号公報(段落:0004)

【非特許文献1】Shu-Qian Wang, Ji-Huan He, and Lan Xu, Non-ionic surfactants for enhancing electrospinability and for the preparation of electrospun nanofibers, Polymer Int 57:1079-1082 (2008)

産業上の利用分野


本発明は、絹タンパク質ナノファイバー及びその製造方法、並びに絹タンパク質複合体ナノファイバー及びその製造方法に関し、特にカイコ(家蚕、野蚕)由来の純粋な絹タンパク質ドープを用いて、エレクトロスピニングにより得られた絹タンパク質ナノファイバー及びその製造方法、並びに絹タンパク質複合体ナノファイバー及びその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
家蚕又は野蚕由来の絹タンパク質水溶液を透析して純粋な絹タンパク質水溶液である絹タンパク質ドープを調製した後、この絹タンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造することからなり、前記絹タンパク質ドープが、野蚕から得られた生糸を精練してセリシンを除去し、得られた絹フィブロイン繊維を加熱中性塩溶液で溶解し、透析して得られた純粋な絹フィブロイン水溶液であるシルクドープ、家蚕若しくは野蚕から得られた生糸を精練する際に熱水抽出してなる絹セリシン溶液、家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹フィブロインから得られた絹フィブロインドープ、又は家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹セリシンから得られた絹セリシンドープであることを特徴とする絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項2】
家蚕又は野蚕由来の絹タンパク質水溶液を透析して純粋な絹タンパク質水溶液である絹タンパク質ドープを調製し、この絹タンパク質ドープに非イオン界面活性剤から選ばれた少なくとも1種及び水溶性高分子から選ばれた少なくとも1種を添加して絹タンパク質複合ドープを調製した後、この絹タンパク質複合ドープを用いてエレクトロスピニングにより絹タンパク質複合体ナノファイバーを製造することからなり、前記絹タンパク質ドープが、野蚕から得られた生糸を精練してセリシンを除去し、得られた絹フィブロイン繊維を加熱中性塩溶液で溶解し、透析して得られた純粋な絹フィブロイン水溶液であるシルクドープ、家蚕若しくは野蚕から得られた生糸を精練する際に熱水抽出してなる絹セリシン溶液、家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹フィブロインから得られた絹フィブロインドープ、又は家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹セリシンから得られた絹セリシンドープであることを特徴とする絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項3】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項4】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2又は3記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項5】
前記非イオン界面活性剤及び水溶性高分子が、その合計で絹タンパク質重量に対して5~45wt%添加されることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の方法により、非イオン界面活性剤の少なくとも1種及び水溶性高分子の少なくとも1種を含む絹タンパク質複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより絹タンパク質複合体ナノファイバーを製造した後、該絹タンパク質複合体ナノファイバーに水不溶化処理を施して絹タンパク質を不溶化せしめ、次いで水不溶化処理を施した絹タンパク質複合体ナノファイバーを水で処理して、水不溶性の絹タンパク質複合体ナノファイバーを製造することを特徴とする絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項7】
前記水不溶化処理が、メタノール、エタノール、及びプロパノールから選ばれた低級アルコール、又はメチルエーテル、エチルエーテル、及びプロピルエーテルから選ばれた低級エーテルを用いて行われることを特徴とする請求項6記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項8】
前記水不溶化処理が、アルコール濃度が30~90%の水-アルコール水溶液を用いて行われることを特徴とする請求項6記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーの製造方法。

【請求項9】
家蚕又は野蚕由来の絹タンパク質の水溶液を透析して得られた純粋な絹タンパク質ドープからエレクトロスピニングにより得られた絹タンパク質と、非イオン界面活性剤の少なくとも1種及び水溶性高分子の少なくとも1種とからなることを特徴とする絹タンパク質複合体ナノファイバー

【請求項10】
前記絹タンパク質が、絹フィブロイン又は絹セリシンであることを特徴とする請求項9記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー

【請求項11】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項9又は10記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー

【請求項12】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール及びヒドロキシプロピルセルロースポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、及びポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー

【請求項13】
前記非イオン界面活性剤及び水溶性高分子が、その合計で絹タンパク質重量に対して5~45wt%含まれていることを特徴とする請求項9~12のいずれか1項に記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー。

【請求項14】
前記絹タンパク質ドープが、家蚕若しくは野蚕から得られた生糸を精練してセリシンを除去し、得られた絹フィブロイン繊維を加熱中性塩溶液で溶解し、透析して得られた純粋な絹フィブロイン水溶液であるシルクドープ、該生糸を精練する際に熱水抽出してなる絹セリシン溶液、家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹フィブロインから得られた絹フィブロインドープ、又は家蚕若しくは野蚕体内から取り出した絹糸腺由来の絹セリシンから得られた絹セリシンドープであることを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー。

【請求項15】
請求項9~14のいずれか1項に記載の絹タンパク質複合体ナノファイバーにおいて、絹タンパク質が、水不溶化処理により水不溶化された絹タンパク質であることを特徴とする絹タンパク質複合体ナノファイバー。

【請求項16】
前記水不溶化処理が、メタノール、エタノール、及びプロパノールから選ばれた低級アルコール、又はメチルエーテル、エチルエーテル、及びプロピルエーテルから選ばれた低級エーテルを用いて行われたことを特徴とする請求項15記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー。

【請求項17】
前記水不溶化処理が、アルコール濃度が30~90%の水-アルコール水溶液を用いて行われたことを特徴とする請求項15記載の絹タンパク質複合体ナノファイバー。

【請求項18】
野蚕由来の絹フィブロイン又は家蚕若しくは野蚕由来の絹セリシンからなる絹タンパク質の水溶液を透析して得られた純粋な絹フィブロイン水溶液であるシルクドープ又は絹セリシンドープからなる絹タンパク質ドープからエレクトロスピニングにより得られた絹タンパク質からなることを特徴とする絹タンパク質ナノファイバー。
産業区分
  • 高分子化合物
  • 布製品
  • その他繊維
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 権利存続中
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