TOP > 国内特許検索 > 組換え酵素を用いた遺伝子増幅方法

組換え酵素を用いた遺伝子増幅方法 新技術説明会

国内特許コード P10A015692
整理番号 QP070164
掲載日 2010年8月31日
出願番号 特願2008-034640
公開番号 特開2009-189318
登録番号 特許第4883532号
出願日 平成20年2月15日(2008.2.15)
公開日 平成21年8月27日(2009.8.27)
登録日 平成23年12月16日(2011.12.16)
発明者
  • 上平 正道
  • 河邉 佳典
  • 竹之内 雄太
出願人
  • 国立大学法人九州大学
発明の名称 組換え酵素を用いた遺伝子増幅方法 新技術説明会
発明の概要

【課題】組換え酵素Creと、スペーサー領域、並びにその左右にそれぞれ配置された左アーム領域及び右アーム領域からなる、Creのターゲットサイトとを用いる遺伝子組換え方法における、アーム変異と、2以上の各々独立して機能するスペーサー変異との組み合わせ使用方法を提供する。
【解決手段】野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1;変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2;野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3;及び変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4を用いる遺伝子組換え方法。
【選択図】図2A

従来技術、競合技術の概要


遺伝子組換え動物細胞を用いて、治療用抗体をはじめとするバイオ医薬品などの物質生産を行う際、目的遺伝子を細胞のゲノム染色体に挿入して安定形質転換体を樹立する必要がある。一般に動物細胞への遺伝子導入では、ウイルスベクターを用いる場合を除いて、導入遺伝子がゲノムに組み込まれる効率は低く、薬剤耐性遺伝子や核酸生合成酵素遺伝子を選択マーカーとして用いることによって、偶然に目的遺伝子が組み込まれた細胞を、導入遺伝子の働きによる選抜培地中での生存によってスクリーニングを行うため、染色体への導入部位もランダムである。物質生産を目的とした遺伝子組換え動物細胞では、さらに生産性を上げるために目的遺伝子のコピー数を染色体上で増幅させるために、遺伝子増幅処理が行われる(非特許文献1、2)。これは、選択マーカーとして用いた薬剤耐性遺伝子や核酸生合成酵素遺伝子に対応したスクリーニング用薬剤を培養期間中に段階的に濃度をあげることによって、結果的に導入遺伝子のコピー数が増幅された細胞を選抜するものである。この方法は、生産性の高い細胞株の樹立に必須であるが、ランダムにおこる現象に期待するため、確実性に欠けるとともに選抜に長期間を要することが問題となっている。



一方で、細胞レベルでの遺伝子導入に限らず、遺伝子治療やトランスジェニック動物作製など様々な局面においてゲノム染色体の特定の位置に目的遺伝子を導入する方法の開発が望まれている(非特許文献3)。こういった目的においては従来、相同組換えによる遺伝子置換による目的遺伝子の導入が行われてきた。これは、目的遺伝子断片の両側を導入したい染色体部位の遺伝子配列ではさんだものを用意し細胞に導入することで、宿主細胞の遺伝子修復メカニズムの作用によって、ある頻度で導入遺伝子が目的染色体部位に挿入されることを利用した方法である(非特許文献4)。この方法も細胞側の複雑なメカニズムに依存しているため、導入する細胞に大きく依存するとともに、組込効率の低さが問題となっている。



宿主細胞の遺伝子修復メカニズムに依存した受動的な相同組換えによる遺伝子導入とは対照的に、配列特異的な組換え酵素(リコンビナーゼ)を用いた、より積極的な配列特異的遺伝子導入システムが、動物細胞の染色体工学において種々検討されるようになっている(非特許文献5、6)。そういった組換え酵素の代表的なものに、バクテリオファージP1由来Cre(非特許文献7)、酵母由来Flp(非特許文献8)、バクテリオファージΦC31由来インテグラーゼ(非特許文献9)がある。これらの組換え酵素は、組換えターゲットサイトと呼ばれる明確な配列モチーフ(それぞれ、loxP, FRT及びattB/attPと呼ばれる)を認識し、これに作用して効率的な遺伝子断片の再配列を触媒するものである。



第1世代の組換え酵素の利用による遺伝子導入制御は、Cre-loxPやflp-FRTシステムを用いた導入遺伝子の削除であった。これらの組換え酵素は、それぞれ対応するターゲットサイトへの組込み反応を触媒しうるが、逆反応である削除反応も触媒し、反応平衡は、むしろ削除反応に大きくかたよっていることによる。この方法は、現在でもコンディショナルノックアウト法として繁用されている。



第2世代の組換え酵素による遺伝子導入制御は、遺伝子カセット交換法としての利用である。これは、2種類のお互い同士組換え反応をしないターゲットサイト用いることで、それらのターゲットサイトではさまれた領域の組換え置換反応をおこさせるものである。ΦC31インテグラーゼのシステムでは、もともとの組換えシステムとして不可逆的な置換反応を触媒することができるが、Cre-loxPやflp-FRTシステムでも、いくつかの変異ターゲットサイトが開発されたことにより利用できるようになった(非特許文献10~14)。特に、lox66/lox71(非特許文献15~17)では不可逆的な組込み反応も可能となっており、Cre-loxPでは多くの変異loxPが報告されるにいたっている(非特許文献18)。




【非特許文献1】Crouse GF, McEwan RN, Pearson ML., Expression and amplification of engineered mouse dihydrofolate reductase minigenes. Mol Cell Biol. 1983, 3(2):257-266.

【非特許文献2】Powell JS, Berkner KL, Lebo RV, Adamson JW., Human erythropoietin gene: high level expression in stably transfected mammalian cells and chromosome localization. Proc Natl Acad Sci U S A. 1986, 83(17):6465-6469.

【非特許文献3】Coates CJ, Kaminski JM, Summers JB, Segal DJ, Miller AD, Kolb AF., Site-directed genome modification: derivatives of DNA-modifying enzymes as targeting tools. Trends Biotechnol. 2005, 23(8):407-419.

【非特許文献4】Glaser S, Anastassiadis K, Stewart AF., Current issues in mouse genome engineering. Nat Genet. 2005, 37(11):1187-1193.

【非特許文献5】Kolb AF., Genome engineering using site-specific recombinases. Cloning Stem Cells. 2002, 4(1):65-80.

【非特許文献6】Akopian A, Marshall Stark W., Site-specific DNA recombinases as instruments for genomic surgery. Adv Genet. 2005, 55:1-23.

【非特許文献7】Hoess RH, Ziese M, Sternberg N., P1 site-specific recombination: nucleotide sequence of the recombining sites. Proc Natl Acad Sci U S A. 1982, 79(11):3398-3402.

【非特許文献8】Golic KG, Lindquist S., The FLP recombinase of yeast catalyzes site-specific recombination in the Drosophila genome. Cell. 1989, 59(3):499-509.

【非特許文献9】Thorpe HM, Smith MC., In vitro site-specific integration of bacteriophage DNA catalyzed by a recombinase of the resolvase/invertase family. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998, 95(10):5505-5510.

【非特許文献10】Hoess RH, Wierzbicki A, Abremski K., The role of the loxP spacer region in P1 site-specific recombination. Nucleic Acids Res. 1986, 14(5):2287-2300.

【非特許文献11】Lee G, Saito I., Role of nucleotide sequences of loxP spacer region in Cre-mediated recombination. Gene. 1998, 216(1):55-65.

【非特許文献12】Langer SJ, Ghafoori AP, Byrd M, Leinwand L., A genetic screen identifies novel non-compatible loxP sites. Nucleic Acids Res. 2002, 30(14):3067-3077.

【非特許文献13】Seibler J, Bode J., Double-reciprocal crossover mediated by FLP-recombinase: a concept and an assay. Biochemistry. 1997, 36(7):1740-1747.

【非特許文献14】Schlake T, Bode J., Use of mutated FLP recognition target (FRT) sites for the exchange of expression cassettes at defined chromosomal loci. Biochemistry. 1994, 33(43):12746-12751.

【非特許文献15】Albert H, Dale EC, Lee E, Ow DW., Site-specific integration of DNA into wild-type and mutant lox sites placed in the plant genome. Plant J. 1995, 7(4):649-659.

【非特許文献16】Araki K, Araki M, Yamamura K., Targeted integration of DNA using mutant lox sites in embryonic stem cells. Nucleic Acids Res. 1997, 25(4):868-872.

【非特許文献17】Araki K, Araki M, Yamamura K., Site-directed integration of the cre gene mediated by Cre recombinase using a combination of mutant lox sites. Nucleic Acids Res. 2002, 30(19):e103.

【非特許文献18】Missirlis PI, Smailus DE, Holt RA., A high-throughput screen identifying sequence and promiscuity characteristics of the loxP spacer region in Cre-mediated recombination. BMC Genomics. 2006, 7:73.

産業上の利用分野


本発明は、遺伝子組換え技術に関する。より詳細には、組換え酵素Creと変異型loxP配列とを用いた、宿主細胞における遺伝子の組換え方法に関する。本発明を用いれば、動物細胞の染色体上で、目的遺伝子の増幅を行うことができる。本発明は、動物細胞又はトランスジェニック動物を利用した、組換えタンパク質の大量生産のために有用である。

特許請求の範囲 【請求項1】
組換え酵素Creと、
スペーサー領域、並びにその左右にそれぞれ配置された左アーム領域及び右アーム領域からなる、Creのターゲットサイトと
を用いる遺伝子組換え方法であって:
(A) スペーサー領域1、変異のある一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるターゲットサイト1であって、宿主染色体に導入されたもの;
(B) 遺伝子1、及び遺伝子1の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト2及びターゲットサイト3を含む組込カセットであって、
このときターゲットサイト2は、スペーサー領域1、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなり、そして
ターゲットサイト3は、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子1に近い側である一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの;及び
(C) 遺伝子2、遺伝子2の両側にそれぞれ連結されたターゲットサイト4及びターゲットサイト5を含む置換カセットであって、
このときターゲットサイト4は、スペーサー領域2、及び変異のある、ターゲットサイト1とは反対側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
このときターゲットサイト5は、スペーサー領域3(但し、スペーサー領域3は、スペーサー領域1と同じか、又はスペーサー領域1及び2各々とは独立して機能可能なものである。)、及び変異のある、ターゲットサイト1と同じ側であって、かつ遺伝子2に近い側の一方のアーム領域、及び野生型である他方のアーム領域からなるもの
を準備し;
(1) ターゲットサイト1と組込カセットとを、Creによって反応させ、反応生成物を得る工程;そして
(2) 該反応生成物と置換カセットとを、Creよって反応させる
工程を含む、染色体上で2以上の組換えを行うための、遺伝子組換え方法であって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなるものであり;
変異のある右アーム領域が、
列番号:12からなるものであり;
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、方法。

【請求項2】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項1に記載の、遺伝子組換え方法。

【請求項3】
組換え酵素Creを用いる遺伝子組換えにおいて、
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4
を組み合わせて使用する方法であって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなり;
異のある右アーム領域が
列番号:12からなり
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、方法。

【請求項4】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項3に記載の、使用方法。

【請求項5】
下記から選択される1以上を含む、組換え酵素Creを用い、2以上の組換えを行うためのキット:
野生型左アーム領域、スペーサー領域1、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト1からなるポリヌクレオチド;
変異型左アーム領域、スペーサー領域1、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト2からなるポリヌクレオチド;
野生型左アーム領域、スペーサー領域1とは独立して機能可能なスペーサー領域2、及び変異型右アーム領域からなるターゲットサイト3からなるポリヌクレオチド;及び
変異型左アーム領域、スペーサー領域2、及び野生型右アーム領域からなるターゲットサイト4からなるポリヌクレオチドであって、
スペーサー領域1及び2の一方が、
配列番号:10のヌクレオチド配列からなり
スペーサー領域1及び2の他方が、
配列番号:11のヌクレオチド配列からなり
変異のある左アーム領域が
列番号:9からなり
変異のある右アーム領域が
列番号:12からなり
野生型左アーム領域が、配列番号:8のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
野生型右アーム領域が、配列番号:13のヌクレオチド配列からなるものである、キット。

【請求項6】
ターゲットサイト1が、配列番号:2のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト2が、配列番号:4のヌクレオチド配列からなるものであり;
ターゲットサイト3が、配列番号:3のヌクレオチド配列からなるものであり;そして
ターゲットサイト4が、配列番号:5のヌクレオチド配列からなるものである、請求項5に記載の、キット。

【請求項7】
下記のいずれかである、Creのターゲットサイトからなるポリヌクレオチド:
配列番号:2からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:3からなる、ポリヌクレオチド;
配列番号:4からなる、ポリヌクレオチド;及び
配列番号:5からなる、ポリヌクレオチド。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2008034640thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
上記の特許・技術に関心のある方は、下記問合せ先にご相談下さい。


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close