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絹タンパク質ナノファイバーの製造方法 コモンズ 新技術説明会 実績あり

国内特許コード P100000423
整理番号 NI0800093
掲載日 2009年11月20日
出願番号 特願2009-125856
公開番号 特開2010-270426
登録番号 特許第5257943号
出願日 平成21年5月25日(2009.5.25)
公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 森川 英明
  • 三浦 幹彦
  • 佐藤 雄司
  • 山口 麻梨子
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 絹タンパク質ナノファイバーの製造方法 コモンズ 新技術説明会 実績あり
発明の概要

【課題】エレクトロスピニング技術を利用して平均繊維径と繊維径分布の制御が可能となる絹タンパク質ナノナノファイバーを製造する方法を提供すること。
【解決手段】家蚕若しくは野蚕幼虫由来の絹タンパク質を水、蟻酸、ヘキサフルオロアセトン水和物、又はヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して、絹タンパク質ドープを調製し、得られた絹タンパク質ドープを用いて、絹タンパク質ドープがゲル化しない温度でエレクトロスピニングすることにより絹タンパク質ナノファイバーを製造する。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


近年、ナノファイバーの製造にエレクトロスピニング技術が応用されつつある。このナノファイバーは、「エレクトロスピニング」装置を用いて製造できるナノオーダーの極細ファイバーである。このエレクトロスピニング技術の原理によれば、所定の濃度のポリマードープを入れた貯蔵タンクに陽極電極を入れ、この陽極電極から一定の距離を隔てて陰極板(コレクター)を設置し、陰極と陽極との間に電圧を印加して両電極間に電気引力を生じさせ、この電気引力がポリマー溶液の表面張力以上になると、静電力により紡糸口のノズルから陰極板に向かって霧状態の微細なポリマージェットが噴射され、その結果、ナノファイバーが陰極板上に積層される。この陰極と陽極との間の距離が紡糸距離に相当する。



このエレクトロスピニングにより得られるナノファイバーは、その太さ(平均繊維径と略記することもある)がナノ~マイクロメートルのオーダーである。このナノファイバー集合体の表面積は極めて大きいため、再生医療工学、創傷材料等のヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野から新素材として関心が寄せられている。



エレクトロスピニング技術が開発された当初は、アクリル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のナノファイバーの素材の開発に対して、この技術が応用されていたが、最近は、液晶性高分子、DNA、タンパク質、導電性高分子等の機能性高分子のドープからナノファイバーを製造する技術が開発されている。工業用熱可塑性高分子、生分解性高分子、ポリマーブレンド等のような、エレクトロスピニング技術により紡糸できる広範の高分子からなるナノファイバーに加えて、カイコ由来で、酵素により生分解する絹タンパク質からなる絹タンパク質ナノファイバーは、各種産業分野において、将来的に利用価値の高い素材であるとして関心が寄せられている。



上記したエレクトロスピニングできる素材の内、カイコ由来で、酵素により生分解する絹タンパク質ナノファイバーの原料は、天然高分子の絹糸である。しかるに、絹糸を溶解させて高分子量の絹タンパク質ドープを調製するための溶媒は極めて限られているので、平均繊維径と繊維径分布とを制御して絹タンパク質ナノファイバーを製造する上で克服する課題が極めて多いのが現状である。



絹タンパク質ナノファイバーの製造法として、絹フィブロイン繊維を、臭化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の加熱した中性塩水溶液中で溶解した後、得られた絹フィブロイン水溶液をセルロース製透析膜に入れ、蒸留水で置換し、純度の高い絹フィブロイン水溶液を調製し、得られた絹フィブロイン水溶液を凍結乾燥して絹フィブロインゲルを製造し、次いで時間をかけながらこのゲルを蟻酸に溶解して「シルクの蟻酸ドープ」を調製し、このドープを用いてエレクトロスピニングすることで絹タンパク質ナノファイバーを製造することが知られている。すなわち、絹フィブロイン繊維から絹フィブロイン水溶液を製造し、これから絹フィブロインゲル(絹フィブロインスポンジ)(以下、シルクゲル又はシルクスポンジとも称す)を調製した後、これを蟻酸に溶かして絹タンパク質ドープを調製し、このドープを用いてエレクトロスピニングすることで絹タンパク質ナノファイバーを製造しており、工程が複雑である。そのため、工程が簡単な絹タンパク質ナノファイバーの製造技術の開発が強く望まれてきた。



絹タンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、絹タンパク質ドープとして、沈殿を起こすことなく、ゲル化も一切起こさない均一な水溶液状態のドープ(水溶液)を使用することが必須条件である。こうした条件に合う絹タンパク質ドープを用いることで絹タンパク質ナノファイバーを効率的にしかも経済的に製造することができる。



絹タンパク質ドープである絹フィブロインドープ又は絹セリシンドープは、室温に長く放置したり、低温領域に長時間静置したりすると、試料分子間に水素結合が形成され、それに基づいて架橋され、絹タンパク質がゲル化を起こしてしまう。また、絹フィブロインドープにクエン酸、塩酸等を加えたり、絹フィブロインドープのpHが5以下に低下したりすると、短時間でゲル化が起こるし、絹セリシンドープを絹フィブロインドープに加えるとフィブロインのゲル化する速度が加速することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。



エレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、絹タンパク質ドープを効率的、かつ経済的に、しかも良好な作業環境下、簡単な製造工程で調製できることが重要な要件である。上記したように、従来、カイコの絹フィブロイン繊維を原料にしてエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、例えば絹フィブロイン繊維を中性塩溶液に溶解して絹フィブロイン水溶液を製造し、この水溶液を透析処理した後、凍結乾燥処理して絹フィブロインゲルを調製し、このフィブロインゲル(フィブロインスポンジ)を蟻酸に溶解して絹フィブロインの蟻酸ドープを得、この蟻酸ドープをエレクトロスピニング用の絹タンパク質ドープとして用いていた。



上記従来のエレクトロスピニングにより極細の絹タンパク質ナノファイバーを製造するには、ドープ濃度、印加電圧、陽極・陰極間距離(紡糸距離)、溶液(ドープ)送り出し速度等の紡糸条件を変えながらナノファイバーの最適製造条件を試行錯誤的に検討する必要があった。このことからも、絹タンパク質ドープから、エレクトロスピニングにより製造できる絹タンパク質ナノファイバーの繊維径を極細にするには、絹タンパク質ドープの濃度を変える手段の他に、様々な製造条件を試行錯誤的に変えながら所望の条件に合う最適条件を探すことが不可欠であった。



上記したように、絹フィブロインドープや絹セリシンドープは、pHや温度の変化、タンパク質の濃度変化等によりゲル化を起こし易いという本質的な問題を抱えている。すなわち、絹タンパク質ドープを室温に長時間放置したり、絹タンパク質ドープ温度が低下したりすると、絹タンパク質ドープがゲル化するため、エレクトロスピニングの際に、紡糸口のノズル付近で絹タンパク質ドープが目詰まりを起こしてしまい、絹タンパク質ナノファイバーを製造することができないという問題がある。



ゲル化を起こしやすいという本質的な特徴を持つ絹タンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより、平均繊維径や繊維径分布の制御された絹タンパク質ナノファイバーを製造するためには克服すべき課題が多い。そこで、これらの問題解決を可能とする経済的で、かつ効率的な絹タンパク質ナノファイバーの製造技術の出現が強く望まれてきた。



上記したエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造するための原料である絹タンパク質ドープを調製するための溶媒として、従来、(1)絹フィブロイン繊維を溶解するために、ヘキサフルオロアセトン1.5水和物(HFAc、例えば、和光純薬工業(株)製)を用いること(例えば、特許文献1参照)、(2)繭糸を精練してセリシンを除去した絹フィブロイン繊維をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP、例えば、和光純薬工業(株))を用いること(例えば、特許文献2参照)が知られている。



特許文献2は、絹フィブロイ及び/又は絹様材料をヘキサフルオロアセトン水和物又はそれを主成分とする溶剤に溶解した溶液(絹タンパク質ドープ)を紡糸(エレクトロスピニング)してなる絹又は絹様繊維(繊維、フィルム、不織布)及びその製造技術を開示している。例えば、絹フィブロイン繊維を溶解して製造した絹フィブロイン膜をヘキサフルオロアセトン水和物に溶解し、得られた絹タンパク質ドープを用いて、エレクトロスピニングによりシルク様繊維を製造している。



上記したように、従来、カイコの絹フィブロイン繊維を原料として用い、エレクトロスピニングによりナノファイバーを製造するには、絹フィブロイン繊維をヘキサフルオロアセトン(HFAc)又はヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等の、購入価格が高価な溶媒に先ず溶解して有機溶媒の絹タンパク質ドープを得るか、絹フィブロイン繊維を中性塩溶液に溶解し、透析処理後、凍結乾燥処理して絹フィブロインゲル(絹フィブロインスポンジともいう)を製造し、それを蟻酸等に溶解してエレクトロスピニング用の絹タンパク質ドープとして用いていたが、絹タンパク質ナノファイバーの平均繊維径や繊維径のバラツキに対応する標準偏差を制御する技術は明らかになっておらず、その点の解明が求められていた。



従来の手法で絹タンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングにより製造される絹タンパク質ナノファイバーの平均繊維径は、広い繊維径分布を持つことが一般的であるが、平均繊維径や繊維径の標準偏差を制御する方法については明らかにされていない。



絹タンパク質ナノファイバーにおいては、平均繊維径と繊維径分布を制御することで絹タンパク質ナノファイバーマットの目詰まり状態(密度)が異なり、気体透過性、比表面積効果が大きく異なる。その結果、平均繊維径が小さい絹タンパク質ナノファイバーは、フィルター、衣料材料、医用材料を中心とした各種産業分野で利用され、また、有用細胞を効率的に増殖させるための再生医療材料としての利用価値も高く、様々な生体細胞との親和性が良く、短時間に細胞増殖が可能となるため再生医用材料として広範に利用できる。



こうした多目的利用が可能な絹タンパク質ナノファイバーを製造するため、平均繊維径と繊維径分布(平均繊維径の標準偏差)との制御が可能な製造技術の開発が強く望まれている。

産業上の利用分野


本発明は、絹タンパク質ナノファイバーの製造方法に関し、特にカイコ(家蚕、野蚕)由来の絹タンパク質ドープ又はこのドープにメタノール等の溶媒を添加したものを用いてエレクトロスピニングし、平均繊維径及び繊維径分布の制御された絹タンパク質ナノファイバーを製造する方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
家蚕若しくは野蚕幼虫由来の絹タンパク質を水、蟻酸、ヘキサフルオロアセトン水和物、又はヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して、絹タンパク質ドープを調製し、次いで得られた絹タンパク質ドープにメタノール、エタノール、ジメチルスルフォキシド、及びジメチルホルムアミドから選ばれた溶媒を添加し、該溶媒を添加した絹タンパク質ドープを用いて、この溶媒添加絹タンパク質ドープがゲル化しない温度でエレクトロスピニングすることにより絹タンパク質ナノファイバーを製造することを特徴とする絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項2】
前記絹タンパク質が、水、ヘキサフルオロアセトン水和物、又はヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して調製した絹タンパク質ドープであり、前記ゲル化しない温度が、20~55℃であることを特徴とする請求項1記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項3】
前記絹タンパク質が、蟻酸に溶解して調製した絹タンパク質ドープであり、前記ゲル化しない温度が、40~55℃であることを特徴とする請求項1記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項4】
前記溶媒が、絹タンパク質ドープ中のタンパク質重量基準で2.6~21.1wt%添加されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項5】
前記絹タンパク質が、絹フィブロイン又は絹セリシンであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項6】
前記絹タンパク質が、絹セリシンであり、この絹セリシンが、絹セリシンパウダー、絹セリシンスポンジ又は絹セリシン膜であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項7】
前記絹タンパク質が、絹フィブロインであり、この絹フィブロインが、絹フィブロイン繊維から得られた絹フィブロインパウダー、絹フィブロインスポンジ又は絹フィブロイン膜であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項8】
家蚕若しくは野蚕幼虫由来の絹タンパク質である絹セリシンを水又は蟻酸に溶解して調製した絹タンパク質ドープを5℃に1昼夜以上保存し、その後この絹タンパク質ドープを用い、該絹タンパク質ドープがゲル化しない温度でエレクトロスピニングすることにより絹タンパク質ナノファイバーを製造することを特徴とする絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項9】
前記絹タンパク質ドープがゲル化しない温度が、20~55℃であることを特徴とする請求項記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項10】
家蚕若しくは野蚕幼虫由来の絹タンパク質から得られた絹フィブロインパウダー、絹フィブロインスポンジ、又は絹フィブロイン膜を水、蟻酸、ヘキサフルオロアセトン水和物、又はヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して、濃度が3~15wt%の絹フィブロインドープを調製し、次いで得られた絹タンパク質ドープにメタノール、エタノール、ジメチルスルフォキシド、及びジメチルホルムアミドから選ばれた溶媒を添加し、該溶媒を添加した絹タンパク質ドープを用いて、紡糸温度:20℃~55℃でエレクトロスピニングすることを特徴とする絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。

【請求項11】
前記溶媒が、得られたドープ中のタンパク質重量基準で2.6~21.1wt%添加されることを特徴とする請求項10記載の絹タンパク質ナノファイバーの製造方法。
産業区分
  • 布製品
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2009125856thum.jpg
出願権利状態 権利存続中
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