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鋼構造物の疲労き裂補修構造及び補修方法 コモンズ

国内特許コード P100000568
整理番号 NU-0310
掲載日 2010年3月5日
出願番号 特願2009-263101
公開番号 特開2011-106181
登録番号 特許第5441114号
出願日 平成21年11月18日(2009.11.18)
公開日 平成23年6月2日(2011.6.2)
登録日 平成25年12月27日(2013.12.27)
発明者
  • 山田 健太郎
  • 石川 敏之
  • 柿市 拓巳
出願人
  • 国立大学法人名古屋大学
発明の名称 鋼構造物の疲労き裂補修構造及び補修方法 コモンズ
発明の概要

【課題】鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂を簡便かつ安価に補修することが可能であり、疲労き裂の進展を止める、あるいは疲労き裂の進展を遅延させて鋼構造物の疲労寿命の延命化を図ることができる疲労き裂補修構造及び補修方法を提供する。
【解決手段】鋼板1の表面1aの疲労き裂2の開口部の周辺(La,La)及び/又は直上(La)を疲労き裂と平行にピーニングすることにより鋼板1の表面1aに塑性変形を付与し、鋼板1の表面1aの疲労き裂2の開口部を閉じてき裂接触面2aを形成する。同様に、鋼板1の裏面1bの疲労き裂2の開口部の周辺(Lb,Lb)及び/又は直上(Lb)を疲労き裂2と平行にピーニングすることにより鋼板1の裏面1bに塑性変形を付与し、鋼板1の裏面1bの疲労き裂2の開口部を閉じてき裂接触面2bを形成する。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


鋼橋に代表される鋼構造物が繰返し荷重を受けると、金属疲労によって鋼構造部材の表面に疲労き裂が発生する場合があり、この疲労き裂を放置すると、疲労き裂が進展し、鋼橋の耐力が維持できなくなる危険性がある。このため、鋼橋の維持・管理においては、疲労き裂の発生防止や早期発見・補修・補強などの疲労き裂対策が求められている。



日本では、1960年代からの高度経済成長に合わせて道路網が整備され、多くの鋼橋が建設されてきた。これらの鋼橋は供用開始後40~50年が経過しており、様々な劣化現象が顕在化しているのに加えて、近年の交通荷重とその頻度の増加に伴って、鋼橋の溶接継手部に疲労き裂が発生しているのが発見されるようになった。



図14に鋼橋における代表的な継手構造である面外ガセット溶接継手のまわし溶接部における溶接止端に発生した疲労き裂がその周辺の鋼板部に進展していく状況を示す。面外ガセット溶接継手50は、鋼板51と直角にガセットプレート52がすみ肉溶接された継手構造からなる。すみ肉溶接金属53の特にまわし溶接部53aの溶接止端及びその周辺は、溶接時の熱による引張残留応力の蓄積や、溶接止端を境界に形状が急変することにより応力集中の影響を受け易いことから、疲労き裂54が発生し易い部位となっている。



図14(a)は疲労き裂54が発生していない状況、図14(b)はまわし溶接部53aの溶接止端に疲労き裂54が発生した状況(以下、Ntoeと呼ぶ)、図14(c)はまわし溶接部53aの溶接止端に発生した疲労き裂54が進展してすみ肉溶接金属53の溶接止端から離れ始めた状況(以下、Nと呼ぶ)、図14(d)は疲労き裂54が鋼板51に10mm進展した状況(以下、N10と呼ぶ)、図14(e)は疲労き裂54が鋼板51に30mm進展した状況(以下、N30と呼ぶ)、図14(f)は疲労き裂54が鋼板51に60mm進展した状況(以下、N60と呼ぶ)を示している。



図14の(b)~(f)に示した面外ガセット溶接継手50を疲労き裂54に沿って切断した断面図を図15に示す。鋼板51の表面51aに発生した疲労き裂54が、Ntoe→N→N10→N30→N60と進展するのに伴って、疲労き裂54は、鋼板51の厚さ方向(深さ方向)と面方向(横方向)に進展する。そして、N30まで進展した段階において、疲労き裂54が鋼板51の表面51aから裏面51bまで貫通することが多い。N30の段階からさらに疲労き裂54が進展すれば、鋼板51の表面51aと裏面51bの双方から疲労き裂54が面方向に進展して、やがてN60の段階となる。なお、N10から先の疲労き裂54の進展は急速であることが知られている。



このような鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂は、鋼橋の桁や部材の破断に繋がる危険なき裂である。このため、鋼板の面方向の疲労き裂の先端に、疲労き裂の進展を停止させるためのドリル孔(ストップホール)が設けられると共に、疲労き裂発生部分に添接板を配置して高力ボルトで摩擦接合を行うという恒久的な補修・補強対策が実施されるのが一般的である。



なお、疲労き裂が小さくて鋼板の表面から裏面まで貫通しておらず、疲労き裂が危険な状況まで進展していないと判断される場合には、添接板を用いずにストップホールを設けることのみによって一時的に疲労き裂の進展を止めるという疲労き裂補修方法が実施されている。また、鋼板の表面から裏面まで疲労き裂が貫通していない段階において、疲労き裂の開口部の周辺及び直上を疲労き裂と平行にピーニングすることにより鋼板の表面に塑性変形を付与し、疲労き裂の開口部を閉じてき裂接触面を形成するという疲労き裂補修方法も発明者らによって実用化されつつある(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。

産業上の利用分野


本発明は鋼構造物に発生した疲労き裂の補修構造及び補修方法に関し、詳しくは鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂の補修構造及び補修方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂の補修構造であって、
前記鋼板の表面の前記疲労き裂の開口部の周辺及び/又は直上を該疲労き裂と平行にピーニングすることにより該鋼板の表面に塑性変形が付与され、該鋼板の表面の該疲労き裂の開口部が閉じられてき裂接触面が形成されていると共に、
前記鋼板の裏面の前記疲労き裂の開口部の周辺及び/又は直上を該疲労き裂と平行にピーニングすることにより該鋼板の裏面に塑性変形が付与され、該鋼板の裏面の該疲労き裂の開口部が閉じられてき裂接触面が形成されていることを特徴とする鋼構造物の疲労き裂補修構造。
【請求項2】
前記き裂接触面に作用する圧縮残留応力が設計引張応力以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋼構造物の疲労き裂補修構造。
【請求項3】
鋼板の表面から裏面まで貫通した疲労き裂を補修の対象とし、
前記鋼板の表面の前記疲労き裂を挟んだ両側のうち少なくとも一側を該疲労き裂と平行にピーニングすることにより該鋼板の表面に塑性変形を付与し、該鋼板の表面の該疲労き裂の開口部を閉じてき裂接触面を形成する疲労き裂周辺ピーニング工程と、
前記鋼板の裏面の前記疲労き裂を挟んだ両側のうち少なくとも一側を該疲労き裂と平行にピーニングすることにより該鋼板の裏面に塑性変形を付与し、該鋼板の裏面の該疲労き裂の開口部を閉じてき裂接触面を形成する疲労き裂周辺ピーニング工程と、を有することを特徴とする鋼構造物の疲労き裂補修方法。
【請求項4】
前記鋼板の表面及び/又は裏面に対する前記疲労き裂周辺ピーニング工程の後工程として、前記疲労き裂の直上をピーニングすることにより前記鋼板の表面及び/又は裏面に塑性変形を付与し、前記き裂接触面の接触面積及び/又は接触圧力を増加する疲労き裂直上ピーニング工程を有することを特徴とする請求項3に記載の鋼構造物の疲労き裂補修方法。
【請求項5】
前記疲労き裂と平行に設置したガイドにより前記ピーニングの軌道を案内しながら、該ピーニングを行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の鋼構造物の疲労き裂補修方法。
【請求項6】
前記き裂接触面に作用する圧縮残留応力が設計引張応力以上であることを特徴とする請求項3~5のうちのいずれか一つに記載の鋼構造物の疲労き裂補修方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2009263101thum.jpg
出願権利状態 登録
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