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ES細胞の継代方法及びES細胞増殖方法 新技術説明会 実績あり

国内特許コード P100000591
整理番号 L0900001
掲載日 2010年3月19日
出願番号 特願2009-171639
公開番号 特開2011-024449
登録番号 特許第5750793号
出願日 平成21年7月22日(2009.7.22)
公開日 平成23年2月10日(2011.2.10)
登録日 平成27年5月29日(2015.5.29)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 阿部 康次
  • 小澤 洋子
  • 佐々木 克典
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 ES細胞の継代方法及びES細胞増殖方法 新技術説明会 実績あり
発明の概要 【課題】各種細胞を強く付着・吸着できる細胞吸着材、細胞培養基材及びその製造方法、細胞の継代方法、並びに細胞増殖方法の提供。
【解決手段】化学修飾加工された又はグラフト加工された動物由来の繊維状及び膜状の天然有機高分子から選ばれた少なくとも1種からなる、この細胞吸着材からなる細胞培養基材。界面活性剤水溶液とフッ素を含むモノマーとからなるグラフト加工液、リン酸モノエステル、メタクリルアミド、及びメタクリル酸2-ヒドロキシルエチルを含む水溶液、又は二塩基酸無水物若しくはエポキシ化合物の有機溶媒溶液中に、上記天然有機高分子を浸漬し、重合開始剤の存在下にグラフト加工或いは化学修飾加工し、細胞培養基材を製造する。上記細胞培養基材を用い、未分化状態で増殖可能環境中で細胞を継代し、また、細胞を増殖環境で増殖させる。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


まず、各種細胞のうちのES細胞について説明する。ES細胞は、受精卵(胚)の内部細胞から作られ、ほとんどが細胞に分化する能力を潜在的に持つため、再生医療における細胞供給源として注目されている。この細胞が特定の臓器に変化するために行われる「分化誘導」には、サイトカインや成長因子、その他の細胞との共培養等を用いた方法が試みられているが、目的の細胞を選択的に培養することができておらず、また、大量培養を実現できていないのが、現状である。従って、ES細胞研究のひとつの大きな課題は、新しい分化誘導法を見出すことである。



マウス由来の細胞を研究する学術的な意味は重要であるため、マウスに由来するES細胞の増殖、植え継ぎを例にとって説明する。ES細胞は培養操作が進むと細胞数が増えて増殖し、細胞が塊状にまで増殖するとコロニーを形成する。ES細胞のコロニーが増殖し、サイズが600μm以下であれば、未分化のES細胞であるため利用度の高いES細胞であるが、コロニーサイズが600μmを超えるとES細胞は分化してしまい、別な細胞となり利用度の低下した細胞になってしまう。



ES細胞を効率よく培養するには、経済的な視点からみると、未分化の細胞をいかに培養するかが重要となる。マウス由来のES細胞の継代作業は繁雑で継続的な労力が必要となる。培地は毎日交換しなければならず、培養基材表面に付着したES細胞に対して酵素を作用させてこの細胞を剥離し、遠心分離器にかけるという作業を繰り返すことで、必要とする細胞を分離しなければならない。こうして、2日あるいは3日に1回の植え継ぎ作業が必要となる。このように、ES細胞を利用する際には、増殖性の良い細胞を用い、常時植え継ぐ作業を継続しなければならず、マウス由来の細胞を多量に経済的に、効率的に増殖するには、現状では、労力を要する細胞の植え継ぎ作業が必要不可欠である。ヒトに由来するES細胞の場合も同様である。



マウス又はヒト由来のES細胞の植え継ぎには、3~4日に1回継代することが要求され、細胞培養基材表面からES細胞を剥離するには、ES細胞取り扱い上、デリケートな方法が要求される。この作業がうまくいかないと細胞が分化していまい、所望の細胞を増殖することはできない。このようにマウス又はヒト由来のES細胞の増殖、継代には手間暇がかかるため、多量にしかも経済的に培養可能な技術開発が強く望まれている。



また、マウス又はヒト由来のES細胞等の植え継ぎには、熟練を要する繁雑な作業が必要となるため、熟練を要することなく、誰にでも簡便にできる方法で、しかも、経済的・効率的に細胞の植え継ぎ作業ができる簡易技術の出現が強く望まれている。そのため、マウス又はヒト由来のES細胞の植え継ぎ効率を高めることができ、大量培養や大脳神経細胞産生を可能とならしめ、再生医療や創薬開発を目指す細胞培養の新しい技術を可能にするための技術開発が望まれてきた。



マウス由来のES細胞を継代培養できる簡易な技術が開発できれば、ヒト由来のES細胞を用いて実施する基礎・応用研究を進展するうえで極めて有用な情報源となる。医学分野、生物分野で細胞を応用するための段階に達するには、ES細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、胸腺細胞、SNL(フィーダー)等の細胞操作が不可欠である。このような細胞を扱う上で、熟練を要することなく、誰でも操作ができる簡便な操作が強く望まれている。



繊維状、膜状の天然有機高分子に各種細胞を固定化できれば、(1)細胞操作過程で細胞の移動操作が容易となり、また、(2)細胞を付着・吸着する繊維状、膜状の天然有機高分子を2次元、3次元の構造体集合物として形を変えることにより高能率の細胞培養が可能となる。すなわち、細胞培養基材として利用できる繊維状及び/又は膜状の天然有機高分子であれば、様々な素材の形に変形させることができるので、その素材に細胞を付着・吸着せしめて細胞の培養を行うことにより、所望形状の細胞を得ることができる。



次に、マウス又はヒト由来のフィーダー細胞を効率的に増殖することの意義について説明する。線維芽細胞と呼ばれるフィーダー細胞は、肝細胞、腎臓細胞、胸腺細胞とは異なり、産業上は、直接的には重要ではないが、マウス又はヒトの体の枠組み(結合組織)をつくる重要な細胞であり、さまざまな環境に馴染みやすい細胞である。この細胞を利用することで、付着し難い対象細胞を培養基材の表面に付着させることもできる。この細胞は、他の細胞の挙動を考える際のコントロールとしてよく用いる細胞である。



繊維状の天然有機高分子材料にマウスのES細胞等を付着させて増殖する意義は次の通りである。



ES細胞の培養、分化誘導をいかに簡単に制御できるか、細胞培養時においてどこまで人間の手を省けるかが本発明者らの研究のスタートであり、これが企業化に直結する重要なポイントになるものと判断される。



ES細胞の効率的で経済的な培養を達成できる細胞培養基材が開発されれば、その企業化が可能となって初めて製造過程におけるコストダウンが達成できる。最終的にES細胞を医療や産業に応用し、福祉に役立たせ、多くの人たちに還元するためにも、低コストで培養できることが絶対に必要な要件である。



繊維状の天然有機高分子に細胞を付着・固定化できれば、繊維を細く分けて分繊することで細胞操作が簡便化できる。細胞の操作には繁雑で時間を要するマンパワーが必要であるが、繊維状の天然有機高分子を使用することで細胞培養の繁雑な作業や操作をかなり軽減化できる。



ES細胞を用いた研究を進めるためには、常時、正常な増殖能力を有する細胞を維持するための細胞の植え継ぎ作業、すなわち継代培養が必要不可欠であり、一定期間毎に繰り返す作業は細胞を利用するためには煩雑であるが、必要なものである。細胞を随時利用するための継代培養は細胞を扱う上で必要な作業であるため、この繁雑な操作が簡易化され、特殊な技術なくして誰にでも継代操作が可能となることが望ましい。



ES細胞が自由な状態で分化しまうと、最終的には増殖能力を次第に失い、全く役に立たない細胞だけの状態になってしまう。ES細胞の継代で最も大切なことは、ES細胞の増殖能力を継続させ、確保させ、同時に常に多分化能を持ちつづける機能を持つ細胞を得ることである。



ES細胞等の有用細胞の培養においては、それらの有用細胞の状態を維持したまま(ES細胞の場合は未分化性を維持する)、効率的・経済的に培養することが重要である。そのためには、マウス又はヒト由来の各種細胞の継代作業が不可欠である。特にES細胞の継代作業は、熟練を要し、かつ繁雑であるため非効率である。細胞培養の培地は毎日交換する必要があり、少なくとも2日あるいは3日に1回の植え継ぎ作業が不可欠であるからである。



培養基材表面に付着した細胞に対して酵素を作用させて剥離し、これを遠心分離器にかけるルーチン作業を何度も繰り返した上で、必要とする細胞を分離しなければならない。細胞利用にあたっては、増殖性の良い細胞を常時、植え継ぐ作業を継続しなければならないので、ES細胞等を多量に経済的に、しかも効率的に増殖させるには、現状では、煩雑で熟練を要する細胞の植え継ぎ作業が必要である。細胞の植え継ぎ作業がうまくいかないと、細胞の分化が起こり、細胞の増殖率が低下してしまい、所望の細胞を得ることができない。このように、マウス又はヒト由来の各種細胞の増殖・継代には手間暇がかかり、多量にしかも経済的に有用な細胞を培養するための技術開発が強く望まれてきたが、いまだにこの目的を達成できる細胞吸着材及び細胞培養基材は開発されていないのが現状である。



例えば、動物細胞増殖用の細胞培養床基材として、絹フィブロイン及び/又は絹セリシンを含む膜体を細胞培養床の基質に被着させた細胞培養床基材が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、水溶性絹フィブロインを含んでなる細胞培養用培地が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの基材も培地もES細胞等を満足できるようには強く付着・吸着しない。

産業上の利用分野


本発明は、細胞の継代方法及び細胞増殖方法に関し、各種細胞との付着・吸着性に優れた繊維状及び膜状の天然有機高分子からなる細胞の継代方法及び細胞増殖方法に関するものである。本発明は、培養過程で生ずる細胞増殖性に悪影響を与えず、かつ各種細胞の分化に悪影響を及ぼすことの無い細胞付着性に優れた天然有機高分子の利用に関するものであり、本発明では、特定の細胞吸着材及び細胞培養基材を使用することで、例えば、細胞の植え継ぎ作業の効率を飛躍的に高めることができる。

特許請求の範囲 【請求項1】
フルオロアルキルアクリレート及びフルオロアルキルメタクリレートから選ばれた少なくとも1種のフッ素を含むモノマーによりグラフト加工された動物由来の繊維状並びに膜状の天然有機高分子から選ばれた少なくとも1種からなる細胞吸着材からなる細胞培養基材を滅菌し、この滅菌した細胞培養基材を用い、ES細胞を増殖させる際に、該ES細胞実質的に未分化状態で増殖することが可能な増殖環境中で、前記ES細胞のコロニーのサイズを600μm以下に抑制して未分化状態で増殖せしめ、培地上で該ES細胞を継代することを特徴とするES細胞の継代方法。

【請求項2】
フルオロアルキルアクリレート及びフルオロアルキルメタクリレートから選ばれた少なくとも1種のフッ素を含むモノマーによりグラフト加工された動物由来の繊維状並びに膜状の天然有機高分子から選ばれた少なくとも1種からなる細胞の継代用細胞吸着材からなる細胞の継代用細胞培養基材を滅菌し、この滅菌した細胞の継代用細胞培養基材を用い、ES細胞を、この細胞実質的に未分化状態で増殖することが可能な増殖環境で、前記ES細胞のコロニーのサイズを600μm以下に抑制して未分化状態で増殖させることを特徴とするES細胞増殖方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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