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防炎性繊維、防炎性繊維製品及び防炎性膜、並びにその製造方法

国内特許コード P100000686
整理番号 NI0900077
掲載日 2010年5月21日
出願番号 特願2010-007382
公開番号 特開2011-144482
登録番号 特許第5464424号
出願日 平成22年1月15日(2010.1.15)
公開日 平成23年7月28日(2011.7.28)
登録日 平成26年1月31日(2014.1.31)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 田中 智子
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 防炎性繊維、防炎性繊維製品及び防炎性膜、並びにその製造方法
発明の概要 【課題】 耐久性に富み、元来の繊維材料の機械的特性を劣化させない防炎性繊維及び防炎性繊維製品、並びにその製造方法を提供すること。
【解決手段】 家蚕及び野蚕由来の絹タンパク質繊維、羊毛繊維、ケラチン繊維、並びにコラーゲン繊維から選ばれた少なくとも1種の動物タンパク質繊維、又はその繊維製品を、リン酸基を含むアクリル酸誘導体又はメタアクリル酸誘導体を有効成分とするグラフト化剤でグラフト加工してなる。
【選択図】 図2
従来技術、競合技術の概要



防炎加工は、繊維に火炎を接触させ、これを遠ざけるときに、繊維が自ら炎を発しながら燃え続けることが無いように、あるいは余燼(glow)が残り続けないようにするための技術手法である。繊維の防炎加工は主としてセルロースを対象に研究が進んできた。従来の防炎加工に用いた試薬はリン酸化合物が中心であり、リン酸化合物を繊維の表面に付着させたり、試料内部に充填させたりすることで繊維に防炎機能を持たせることが有効であるとされていた。こうした目的で使用する防炎加工試薬には、リン酸塩、リン酸基が含まれるため、リン酸基等を効率よく経済的に繊維に導入することができれば、優れた防炎機能を持つ繊維素材が製造できることになる可能性がある。





(1)絹糸について:

絹糸の機能特性を向上させる加工手法にグラフト加工があり、ビニル化合物のようなグラフトモノマーによるグラフト加工で、絹の機能特性を改変すること(例えば、塩縮繊維等)が知られている(例えば、特許文献1参照)。化学修飾加工でタンパク質繊維表面に撥水性機能を持たせたり(例えば、非特許文献1参照)、カチオン性染料により染色性を向上させたり(例えば、非特許文献2参照)する研究も知られている。グラフト加工モノマーの特性を効率よく活用すれば絹糸等の種々の機能が改善できる。例えば、界面活性剤、重合開始剤及びグラフトモノマーを含んだグラフト加工溶液に絹繊維を入れ、所定温度で加熱することによりグラフト加工が可能となる。本発明者らによる予備実験の結果、例えば、リン酸基を持つホスマー(Phosmer)(ユニケミカル株式会社の登録商標であり、以下、登録商標という文言は省略する)と呼ばれるモノマーで絹糸をグラフト加工することにより繊維内でホスマーが重合し、リン酸基が繊維内部に確実に導入できるので、耐久性に優れた防炎素材を製造できるものと期待できることが分かった。





防炎機能を持つ繊維を製造する際には、製造された繊維は防炎性の持続的な効果を持つものであることが強く求められる。燐酸とリン酸アンモニウムとを併用してセルロース系織維の防炎性を向上させる技術が知られている。この場合、防炎機能の持続性を高めるには、対象繊維素材とこれらの加工薬剤との間に直接的な結合を発生させる必要があり、そのためには繊維素材を高温処理する必要があった。この反応には高い温度と長い時間をかけるため、繊維素材の劣化は避けられないという問題と共に、反応過程で未反応試薬が試料に残るという問題もあった。そのため、この技術を絹糸に適用するには問題があった。





また、セルロース系繊維材料への耐久性防炎加工法として、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウム塩1モルと尿素0.2~3.0モルとの反応物(固形分として)100重量部に、水溶性メチルホスホン酸エステル誘導体5~100重量部を配合した加工液を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。





さらに、ハロゲンを含まない、合成樹脂エマルジョン又は合成樹脂溶液100重量部(固形分)に、水に不溶ないし難溶性で、かつ粒径が50μm以下の縮合リン酸アンモニウム、縮合リン酸メラミン、縮合リン酸アミドアンモニウムから選ばれた1種以上の縮合リン酸化合物5~100重量部を混合して得られる加工液を、繊維製品に対して固形分で3~100%付着させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。





上記従来の方法で、防炎性素材を製造するには、化学的な技能と手法を熟知する必要があり、経験が必要である。また、防炎性試薬が素材表面に付着させる処理に基づいて実施されるため、素材の特性が失われ易いという問題があった。処理程度が高まると対象繊維の損傷が大きくなることが実用上の問題となっていた。





(2)羊毛について:

羊毛はオルソコルテックス、パラコルテックス、スケールなどの成分を有し、絹糸とは全く異なる特徴を有する。毛織物は、羊やアンゴラ・アルパカ・ラクダの毛を連続繊維となるように紡績して製造した繊維を織った布である。羊毛は、短繊維を紡績したものであるため、繊維の体積の約60%もの多量の空気を含むので、冬の衣料材料として尊重されている。羊毛構成分子には、「窒素」含量が多く、それが原因で発火温度が高いため、着火しても羊毛製品の先が炭化するだけで、それ以上は燃え広がらないという優れた特徴を有する。





年間の火災件数は約6万件にのぼり、およそ2,000人の尊い命が犠牲者となっている(消防白書)。燃えやすいものを防炎加工することにより、万一出火しても火の回りが抑制できる素材であれば、着火した後、避難する時間が確保され、逃げ遅れによる事故が防止できる。防炎機能を補償するための表示として、インテリアのカーペットには、「防炎マーク」と呼ぶ日本防炎協会の定める防炎性能試験に合格した製品の品質の保証書が添付されており、防炎機能を持つ素材への関心が高いことが理解できる。





簡易の防炎加工方法としては、防炎試薬をスプレーする手法もあるが、耐久性の点で完璧ではなく、更に耐久性に優れた防炎性の羊毛を製造するための技術開発が望まれている。





(3)柞蚕について:

柞蚕は、ヤママユ蛾に属する野蚕(野生のカイコ)の一種であり、柞蚕は、櫟・樫などの葉を食べて育ち、体色だけでも黄色いものや青いものなど、様々な種類の柞蚕が飼育されている。その繭の生産量は、気象にも左右され、蚕は蚕病にかかり易い。柞蚕は、一粒の繭から採取できる糸の量が家蚕の半分以下である。柞蚕は、中国原産の野蚕であり、明治初年日本に輸入された。柞蚕絹糸は、野蚕絹糸がもつ独特の色艶を有する他に、ヤママユガ科のみに見られる多孔性を有する繭糸(生糸は緻密性繭糸)である。多孔性であるため、繊維の中に空気を取り込むことができ、保温・保湿性に優れている。紫外線やエックス線など波長の長い光線を反射吸収する機能がある。





野蚕絹糸も家蚕絹糸と同様にタンパク質から構成され、フィブロインとセリシンの二重構造から成っているが、構成しているアミノ酸組成は、家蚕絹糸はグリシンが多いのに比べ、野蚕絹糸はアラニンが主体となっている。また、野蚕絹糸のセリシンは、石灰分、タンニン分、樹脂分等を多く含んでいるため、アルカリ液に溶解しにくい特徴を有する。





野蚕絹糸は、タンパク質から成るとは言っても、家蚕絹糸とは異なる組成と構造とを有するため性質は全く異なる。野蚕絹糸は、家蚕絹糸と比べて、引張り強度や弾性に劣り、しなやかさも劣り、加熱による縮みがあり、節も多く、抱合不良も多く、糸むらも大きい等といった短所がある。綺麗な糸、しなやかな糸としての品質は家蚕絹糸の方が圧倒的に上である。





しかし、天然素材がブームの現在では、野蚕絹糸には、家蚕絹糸にない素朴さ、糸の堅さ、軽さ、染色時の斑、独特の光沢等の特徴があることから、また、野生味に富んだナチュラル感を有することから、野蚕絹糸が好まれる場合がある。





羊毛、家蚕由来の絹糸や柞蚕、天産、ヒマ蚕等の野蚕由来の絹糸は、熱水処理し、乾燥する過程で試料長が収縮する等の問題を含んでおり、寸法安定性の低いことが実用上の問題であった。こうしたタンパク質繊維に防炎加工をするには、処理温度をいかに低く制御しながら防炎加工をするかが重要な課題であった。従って、繊維素材の特性を劣化させることが無いように、低温度で防炎処理が可能な防炎機能を持つ繊維素材の製造方法の出現が強く求められていた。





(4)コラーゲンについて:

コラーゲンは、絹糸と同様に、タンパク質から構成され、ヒトの皮膚、筋肉・内臓・骨・関節・髪等の組織に含まれている。コラーゲンは、タンパク質であるため、多数のアミノ酸が結合したものである。このようなコラーゲンとしては繊維状又は膜状のコラーゲンがあるが、この繊維状又は膜状のコラーゲンに対しても防炎機能を付与することが求められている。

産業上の利用分野



本発明は、防炎性繊維、防炎性繊維製品及び防炎性膜、並びにその製造方法に関し、更に詳しくは、リン酸基を持つビニル化合物でグラフト加工した耐久性に富む防炎性繊維、防炎性繊維製品及び防炎性膜、並びにその製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
家蚕及び野蚕由来の絹タンパク質繊維、羊毛繊維、ケラチン繊維、並びにコラーゲン繊維から選ばれた少なくとも1種の動物タンパク質繊維、又はその繊維製品を、リン酸基を含むメタアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルメタクリレート:
【化5】


又はリン酸基を含むアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルアクリレート:
【化9】


を有効成分とするグラフト化剤でグラフト加工してなることを特徴とする防炎性繊維又は繊維製品。

【請求項2】
家蚕及び野蚕由来の絹タンパク質膜、並びにコラーゲン膜から選ばれた少なくとも1種の膜を、リン酸基を含むメタアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルメタクリレート:
【化5】


又はリン酸基を含むアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルアクリレート:
【化9】


を有効成分とするグラフト化剤でグラフト加工してなることを特徴とする防炎性膜。

【請求項3】
家蚕及び野蚕由来の絹タンパク質繊維、羊毛繊維、ケラチン繊維、並びにコラーゲン繊維から選ばれた少なくとも1種の動物タンパク質繊維、又はその繊維製品に対して、リン酸基を含むメタアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルメタクリレート:
【化5】


又はリン酸基を含むアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルアクリレート:
【化9】


を有効成分とするグラフト化剤を作用させ、グラフト加工された防炎性を有する防炎性繊維又は繊維製品を製造することを特徴とする防炎性繊維又は繊維製品の製造方法。

【請求項4】
家蚕及び野蚕由来の絹タンパク質膜、並びにコラーゲン膜から選ばれた少なくとも1種の膜に対して、リン酸基を含むメタアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルメタクリレート:
【化5】


又はリン酸基を含むアクリル酸誘導体である以下の構造式を有する3-クロロ-2-アシッド・ホスホキシ・プロピルアクリレート:
【化9】


を有効成分とするグラフト化剤を作用させ、グラフト加工された防炎性を有する膜を製造することを特徴とする防炎性膜の製造方法。
産業区分
  • その他繊維
  • その他無機化学
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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