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シルク複合ナノファイバー及びその製造方法 実績あり

国内特許コード P100000882
整理番号 NI0900112
掲載日 2010年8月13日
出願番号 特願2010-073744
公開番号 特開2011-208286
登録番号 特許第5470569号
出願日 平成22年3月26日(2010.3.26)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 村田 夏子
  • 小山 太吾
  • 森川 英明
  • 山口 麻梨子
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 シルク複合ナノファイバー及びその製造方法 実績あり
発明の概要 【課題】 微細な平均繊維径を持ち、繊維径が揃ったシルク複合ナノファイバー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 カイコのシルクフィブロインと、ポリオキシ酸及び多糖類から選ばれた生分解性素材の少なくとも1種とを主成分とする。カイコのシルクフィブロインのドープと、ポリオキシ酸及び多糖類から選ばれた少なくとも1種の生分解性素材のドープとからなるシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることにより製造する。
【選択図】 図1
従来技術、競合技術の概要



近年、ナノスケールの繊維径を持つファイバーをエレクトロスピニング技術を応用して製造する技術が進展している。このナノファイバーは、「エレクトロスピニング」装置を用いて製造できるナノオーダーの極細のファイバーである。このエレクトロスピニング技術によれば、所定の濃度のポリマードープを入れた貯蔵タンクに陽極電極を入れ、一定の距離を隔てて陰極板(コレクター)を設置し、陰極と陽極との間に電圧を印加して両電極間に電気引力を生じさせ、この電気引力がポリマー溶液の表面張力以上となると、静電力により紡糸ノズルから陰極板に向かって霧状態の微細なポリマージェットが噴射され、その結果、ナノファイバーが陰極板上に吹き付けられて積層される。





このエレクトロスピニングにより得られるナノファイバーは、その太さがナノ~マイクロメートルのオーダーであり、このファイバー集合体の表面積が極めて大きいため、生体適合性機能の発現可能なナノファイバーは、再生医療工学、創傷材料等のヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野から新素材として関心が寄せられている。





エレクトロスピニング技術が開発された当初は、アクリル樹脂やポリエチレン、ポリプロピレン等のナノファイバーの素材の開発に対して、この技術が応用されていたが、最近は、液晶性高分子、DNA、タンパク質、導電性高分子等の機能性高分子のドープからナノファイバーを製造する技術が開発されている。





例えば、シルクのナノファーバーを製造するための従来技術としては、絹フィブロイン及び/又は絹様材料を溶解する溶媒としてヘキサフルオロアセトン水和物(以下、HFAcとも称す。)を用い、絹フィブロイン繊維から製造した絹フィブロイン及び/又は絹様材料を溶解してシルクドープを製造し、このシルクドープを用いてエレクトロスピニングする手法がある(例えば、特許文献1参照)。





上記特許文献1には、絹フィブロイン及び/又は絹様材料をHFAcに溶解した溶液(絹フィブロインドープ、すなわちシルクドープ)を用いて紡糸してなる繊維、フィルム、不織布及びその製造技術が開示されている。すなわち、絹フィブロイン繊維を溶解して得た絹フィブロイン膜をHFAcに溶解し、得られたシルクドープを用いてエレクトロスピニングによりシルク様繊維を製造している。





また、ポリオキシ酸、多糖類、シルクのナノファイバーの製造についての知見はあるが、シルクとポリオキシ酸とからなシルク複合ナノファイバー、又はシルクと多糖類とからなるシルク複合ナノファイバーの製造及びその利用に関しては知られていない。さらに、シルクとポリオキシ酸とを含むシルク複合ナノファイバー、又はシルクと多糖類とを含むシルク複合ナノファイバーで、かつ平均繊維径が微細で繊維径分布が揃っているシルク複合ナノファイバー及びその製造法についても知られていない。





医用分野で用いられるポリオキシ酸には、酵素作用の影響を受けて、劣化・生分解して低分子化するものが多い。ポリ乳酸やポリグリコール酸などのポリオキシ酸は最近用いられる代表的な生分解性有機素材であり、体内埋め込み材、デリバリー用材料又は医薬品の徐放担体として広範に利用され、また、生分解性プラスチックとして利用されつつあるが、ポリオキシ酸は高価格であることが普及上の問題となっている。





ポリ乳酸やポリグルコース酸等のポリオキシ酸は、無毒であり生分解性素材として広く用いられ、高重合体が得られる強度等力学的特性の良い材料であり、体内に埋込むと数週間後に体内で吸収され、水と二酸化炭素とに分解してしまう。ポリグルコール酸は、こうした優れた生化学的な特性を持つ反面、価格が高く、結晶性が高く、硬すぎて軟組織適合性が低い、分解速度が制御し難い、素材に化学修飾をすることで生分解性を調節することが困難であるという問題がある。





例えば、多糖類を含んでなるナノスケールの繊維及び成形体については知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献には、繊維径が500nm以下の多糖類のナノファイバー及びその製造方法が開示されている。また、多糖類以外の添加物を含む複合組成物としての多糖類ナノファイバーの製造についても知られており、安全性が高く、細胞毒性がなく、比表面積が大きいため、医療材料分野で利活用できるものとされている。





また、アルギン酸誘導体等の多糖類10重量部と、曳糸性付与剤0.4~1.2重量部とを含む組成物からなり、曳糸性付与剤が重量平均分子量60万~650万の熱可塑性樹脂であり、平均繊維径が1nm以上1000nm未満である多糖類ナノファイバーが知られている(例えば、特許文献3参照)。ここで用いられる熱可塑性樹脂として、ポリエチレンオキサイド(本明細書中では、以下、PEGと略記することもある)が例示されているが、この樹脂は、多糖類ナノファイバーに熱可塑性機能を付与することが目的とするものであり、ナノファイバー繊維径の制御を目的としては用いられていない。





ファインケミストリーと呼ばれる「微粒子・粉体を原料として使用する分野」は、塗料、土木・建築、医薬品、農薬、化粧品、食品、トナー、コーティング剤、エレクトロ・セラミックス等、多岐にわたる。こうした分野での先端素材には、超微粒子化、表面改質、複合化など微粒子・粉体の機能化が基盤技術となっている。このような技術分野において、シルクと他の物質とからなり、平均繊維径が揃い、かつ繊維径にバラツキがないシルク複合ナノファイバーを提供できれば、付加価値の高い利用が可能となるものと考えられる。





シルクとポリオキシ酸又は多糖類とからなるシルク複合ナノファイバーは、繊維径が微細なものほど、また、繊維径が揃った繊維径にバラツキのないシルク複合ナノファイバーほど付加価値が高く、有用であるが、このようなシルク複合ナノファイバーは知られていない。





さらに、シルクドープを用いてエレクトロスピニングする前の工程で、シルクドープにポリエチレンオキサイドのような生体適合性高分子を含ませエレクトロスピニングすることで、シルクをベースにした生体組織に悪影響を及ぼさない新素材及びその製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。





さらにまた、非イオン界面活性剤(Triton X-100)をポリビニルピロリドンに加えると、ポリビニルピロリドン水溶液の表面張力が低下し、その結果、エレクトロスピニングによる紡糸状態が改善でき、極細のポリビニルピロリドンのナノファイバーが製造できることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、例えば、優れた水溶性を示し、非解離性の高分子であるポリビニルピロリドンと違って、試料が置かれたpH環境によっては正負の電荷を持ち得る両電解性の絹タンパク質と非イオン界面活性剤とからなるドープから直接極細の絹タンパク質ナノファイバーを製造するための従来技術は知られていない。





上記従来のエレクトロスピニング法により極細のシルク複合ナノファイバーを製造するには、ドープ濃度、印加電圧、陽極・陰極間距離、溶液送り出し速度等の紡糸条件を変えながら、ナノファイバーの最適製造条件を試行錯誤的に検討する必要があった。このことからも、シルク複合ドープから、エレクトロスピニングで製造できるシルク複合ナノファイバーの太さを極細にするには、ドープの濃度を変える手段の他に、様々な製造条件を変えながら所望の条件に合う最適条件を探索することが不可欠であった。

産業上の利用分野



本発明は、シルク複合ナノファイバー及びその製造方法に関し、特にカイコ由来のシルクと生分解性を有するポリオキシ酸や多糖類とからなるシルク複合ナノファイバー及びその製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
カイコのシルクフィブロインと、ポリオキシ酸から選ばれた生分解性素材の少なくとも1種とを主成分とするシルク複合ナノファイバーであって、該シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクフィブロインを含んでいることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項2】
カイコのシルクフィブロインと、ポリオキシ酸から選ばれた生分解性素材の少なくとも1種とを主成分とし、さらにPVA、PEG、又はPVA及びPEGの両方を含有せしめてなるシルク複合ナノファイバーであって、該シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクフィブロインを含んでなり、また、前記PVA、PEG又はPVA及びPEGの両方が、シルク複合ナノファイバーに含まれるシルク重量に対して5~45wt%含有されてなることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項3】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープを複合してなるシルク複合ドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項4】
前記シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクを含んでなることを特徴とする請求項3に記載のシルク複合ナノファイバー。

【請求項5】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープを複合してなるシルク複合ドープに対し、さらにPVA、PEG、又はPVA及びPEGの両方を含有せしめたドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項6】
前記シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクを含んでなり、また、前記PVA、PEG又はPVA及びPEGの両方が、シルク複合ナノファイバーに含まれるシルク重量に対して5~45wt%含有されてなることを特徴とする請求項5に記載のシルク複合ナノファイバー。

【請求項7】
前記ポリオキシ酸が、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、及び乳酸とグルコール酸との共重合物から選ばれた少なくとも1種の生分解性素材であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバー。

【請求項8】
前記カイコが、家蚕幼虫又は野蚕幼虫であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバー。

【請求項9】
カイコのシルクフィブロインのドープと、ポリオキシ酸から選ばれた少なくとも1種の生分解性素材のドープとからなるシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルク複合ナノファイバーを製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項10】
前記ポリオキシ酸が、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、及び乳酸とグルコール酸との共重合物から選ばれた少なくとも1種の生分解性素材であることを特徴とする請求項9に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項11】
前記シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクフィブロインを含んでいることを特徴とする請求項9又は10に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項12】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープを複合してシルク複合ドープを得、このシルク複合ドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルク複合ナノファイバーを製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項13】
前記シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクを含んでなることを特徴とする請求項12に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項14】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープを複合してシルク複合ドープを得、このシルク複合ドープにさらにPVA、PEG又はPVA及びPEGの両方を含有せしめ、かくして得られたドープを用いてエレクトロスピニングすることによりシルク複合ナノファイバーを製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項15】
前記ポリオキシ酸が、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、及び乳酸とグルコール酸との共重合物から選ばれた少なくとも1種の生分解性素材であることを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項16】
前記シルク複合ナノファイバーの重量に対して、ポリオキシ酸を20~60wt%、残部シルクを含んでなり、また、前記PVA、PEG又はPVA及びPEGの両方が、シルク複合ナノファイバーに含まれるシルク重量に対して5~45wt%含有されてなることを特徴とする請求項14又は15に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項17】
前記カイコが、家蚕幼虫又は野蚕幼虫であることを特徴とする請求項9~16のいずれか1項に記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項18】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープ、キトサンをトリフルオロ酢酸で溶解して得られたキトサンドープ、又は該ポリオキシ酸ドープと該キトサンドープとの複合ドープを複合してなるシルク複合ドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項19】
カイコのシルクスポンジをトリフルオロ酢酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープ、キトサンを蟻酸又はトリフルオロ酢酸で溶解して得られたキトサンドープ、又は該ポリオキシ酸ドープと該キトサンドープとの複合ドープを複合してなるシルク複合ドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項20】
カイコのシルクスポンジを蟻酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープ、キトサンをトリフルオロ酢酸で溶解して得られたキトサンドープ、又は該ポリオキシ酸ドープと該キトサンドープとの複合ドープを複合してなるシルク複合ドープに対し、さらにPVA、PEG、又はPVA及びPEGの両方を含有せしめたドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項21】
カイコのシルクスポンジをトリフルオロ酢酸で溶解して得られたシルクドープに、ポリオキシ酸をクロロフォルム若しくはジクロロメタンで溶解して得られたポリオキシ酸ドープ、キトサンを蟻酸又はトリフルオロ酢酸で溶解して得られたキトサンドープ、又は該ポリオキシ酸ドープと該キトサンドープとの複合ドープを複合してなるシルク複合ドープに対し、さらにPVA、PEG、又はPVA及びPEGの両方を含有せしめたドープをエレクトロスピニングしたものであることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項22】
カイコのシルクフィブロインと、多糖類であるプルラン、ジェラン、ペクチン、及び硫酸セルロースから選ばれた生分解性素材の少なくとも1種とを主成分とするシルク複合ナノファイバーであって、該シルク複合ナノファイバーの重量に対して、多糖類を7~13wt%、残部シルクフィブロインを含んでいることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。

【請求項23】
カイコのシルクフィブロインと、多糖類であるプルラン、ジェラン、ペクチン、及び硫酸セルロースから選ばれた生分解性素材の少なくとも1種とを主成分とし、さらにPVA、PEG、又はPVA及びPEGの両方を含有せしめてなるシルク複合ナノファイバーであって、該シルク複合ナノファイバーの重量に対して、前記多糖類を17~30wt%、残部シルクフィブロインを含んでなり、また、前記PVA、PEG又はPVA及びPEGの両方が、シルク複合ナノファイバーに含まれるシルク重量に対して5~45wt%含有されてなることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。
産業区分
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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