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ナトリウム/プロトン対向輸送体遺伝子

国内特許コード P100000987
掲載日 2010年9月30日
出願番号 特願2000-589698
登録番号 特許第3955938号
出願日 平成11年12月22日(1999.12.22)
登録日 平成19年5月18日(2007.5.18)
国際出願番号 JP1999007224
国際公開番号 WO2000037644
国際出願日 平成11年12月22日(1999.12.22)
国際公開日 平成12年6月29日(2000.6.29)
優先権データ
  • 特願1998-365604 (1998.12.22) JP
発明者
  • 福田 篤徳
  • 田中 喜之
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 ナトリウム/プロトン対向輸送体遺伝子
発明の概要 イネのNa/H対向輸送体遺伝子をクローニングすることに成功した。単離した遺伝子やこれと機能的に同等な遺伝子を利用して、耐塩性植物の作出を行うことが可能である。
従来技術、競合技術の概要


植物の耐塩性は農業および環境保全上重要な問題である。現在、地球上の約3分の1は乾燥地に属しているといわれ、現在も耕地や緑地の砂漠化が進んでいることから、その割合は将来増加することが予想される。2050年には世界人口が現在の1.5倍以上になるといわれ、食糧問題はますます深刻化することを考えると、耕作不適地、特に乾燥地でも育つ作物品種や栽培技術の開発は緊急を要する課題である。そこで、乾燥地の農業において問題となっているのは、土壌における塩分集積の問題である。乾燥気候下では、蒸発散量が降水量を上回るため、排水が不完全な状態で潅漑を続けた場合、塩分を含んだ地下水位の上昇が促進されて塩分が地表に析出するため、土壌における多量な塩分集積に結びつく。その結果耕作が不能になる例は、チグリス―ユーフラテス文明の滅亡を代表に太古の昔から知られており、現在でも未だ問題になることが多い。以上のことから、作物の耐塩性を高めることは、乾燥地や塩分集積地の農業を進める上で重要な課題となっている(但野利秋 (1983) 化学と生物 21, 439-445 作物の耐塩性とその機構; 内山泰孝 (1988) 化学と生物 26, 650-659 塩性環境の農業利用)。
植物に対する塩ストレスを考える場合、2種類のストレス、つまり浸透圧ストレスとイオンストレスが問題になる。浸透圧ストレスとは、植物を取り囲む環境が高い濃度の塩分のため高浸透圧となり、植物の水分吸収の妨げになると同時に植物体から水を奪う結果となることから、乾燥ストレスと同じ作用をするストレスである。植物にはこの浸透圧ストレスを回避する機構が存在することが知られており、その中心的働きをするのがイオン(K+、Na+、Cl-、有機酸など)や適合溶質と呼ばれる物質である。適合溶質とは、細胞内に高濃度蓄積されても種々の代謝系を乱さず酵素活性を阻害しない糖、アミノ酸の一種プロリン、四級アンモニウム化合物のグリシンベタインなどのことを指し、植物はこれらを細胞内に蓄積して外界との浸透圧バランスをとっている(石谷学, 荒川圭太, 高部鉄子 (1990) 植物の化学調節 25, 149-162 植物耐塩性の分子機構)。
イオンストレスについては、植物の回避機構についてほとんど研究が進んでいない。過剰なNa+が植物の細胞内に吸収されると、細胞内の酵素反応が阻害され代謝障害が起こる(間籐徹 (1997) 植物の化学調節 32, 198-206 植物の耐塩性メカニズム)。そのため、細胞内に蓄積したNa+を細胞外に排出したり、液胞などの細胞内器官に隔離する必要がある。その中心的な働きをすると考えられているのがNa+/H+対向輸送体(ナトリウム/プロトン対向輸送体)である。植物のNa+/H+対向輸送体は、細胞質膜や液胞膜に存在すると考えられ、H+を輸送するH+ポンプ(H+-ATPaseやH+-PPase)によって形成される生体膜を介したpH勾配をエネルギー源として利用して、細胞質に存在するNa+を細胞外や液胞内に輸送する。また、高塩処理を受けた植物は、細胞質内のK+/Na+比率を高く保たねばならず、Na+/H+対向輸送体によって液胞にNa+を蓄積することにより、外界との浸透圧バランスをとるとも考えられている。
細胞質膜に局在するNa+/H+対向輸送体については、動物、酵母、細菌などでよく調べられている。動物細胞の細胞質膜では、細胞内のH+バランスをとるために、Na+/K+-ATPaseによって形成された膜内外のNa+濃度勾配を利用してNa+/H+対向輸送体がH+を輸送する。このため、この対向輸送体は、細胞内のpH調整、細胞容量のコントロール、細胞質膜を介したNa+輸送などに強く関与していると考えられている(Orlowski, J. and Grinstein, S. (1997) J. Biol. Chem. 272, 22373-22376; Aronson, P.S. (1985) Ann. Rev. Physiol. 47, 545-560)。動物では、Na+/H+対向輸送体は様々な細胞に存在し、6種類のアイソフォーム(NHE1-6)が報告されている(Orlowski, J. and Grinstein, S. (1997) J. Biol. Chem. 272, 22373-22376)。酵母では、まず分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)でNa+輸送と耐塩性に関連した遺伝子としてクローニングされ(sod2)(Jia, Z.P., McCullough, N., Martel, R., Hemmingsen, S. and Young, P.G. (1992) EMBO J. 11: 1631-1640)、これと高い相同性を持つ遺伝子が出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)やZygosaccharomyces rouxiiで見つかっている(それぞれNHA1、ZSOD2と名付けられている)(Prior, C. et al.(1996) FEBS Letter 387, 89-93; Watanabe, Y. et al. (1995) Yeast 11, 829-838)。大腸菌では、異なった2種類のNa+/H+対向輸送体遺伝子(nhaA、nhaB)が単離されており(Karpel, R. et al. (1988) J.Biol. Chem. 263, 10408-10410; Pinner, E. et al. (1994) J.Biol. Chem. 269, 26274-26279)、それぞれNa+輸送と耐塩性に強く関与している。植物では、藻類などで活性が調べられている(Katz, A. et al. (1989) Biochim. Biophys. Acta 983: 9-14)。
一方、液胞膜に局在しているものについては植物のみから活性についての報告があるにすぎない。液胞膜のNa+/H+対向輸送体は、塩濃度の高い環境に生育する塩生植物(Matoh, T. et al. (1989) Plant Physiol. 89: 180-183; Hassidim, M. et al.(1990) 94: 1795-1801; Barkla, B.J. et al.(1995) Plant Physiol. 109: 549-556)やオオムギやテンサイなどの耐塩性の高い中生植物(Hassidim, M. et al.(1990) 94: 1795-1801; Blumwald, E. et al.(1987) Plant Physiol. 85: 30-33; Garbarino, J. and DuPont, F.M. (1988) Plant Physiol. 86: 231-236; Garbarino, J. and DuPont, F.M. (1989) Plant Physiol. 89:1-4; Staal, M. et al.(1991) Physiol. Plant. 82: 179-184)において耐塩性と結びつけて現在まで調べられている。以上のことは、Na+/H+対向輸送体と植物の耐塩性が密接な関係にあることを示している。液胞膜のNa+/H+対向輸送体の性質についてはいくつか報告がある。その輸送体活性のNa+に対するKm値は約10 mMであり、哺乳類の細胞質膜のものと似ている(Blumwald, E. et al.(1987) Plant Physiol. 85: 30-33; Garbarino, J. and DuPont, F.M. (1988) Plant Physiol. 86: 231-236; Orlowski, J. (1993) J. Biol. Chem. 268: 16369-16377)。また、Na+輸送体の特異的阻害剤であるアミロライドやアミロライド誘導体は、それらの対向輸送体両方を競合的に阻害することが知られている(Blumwald, E. et al.(1987) Plant Physiol. 85: 30-33; Orlowski, J. (1993) J. Biol. Chem. 268: 16369-16377; Tse, C.M. et al.(1993) J. Biol. Chem. 268:11917-11924; Fukuda, A. et al.(1998) Plant Cell Physiol. 39: 196-201)。これらのことは、植物の液胞膜のNa+/H+対向輸送体の性質が哺乳類の細胞質膜のものと類似していることを示唆している。以上のように、植物のNa+/H+対向輸送体の活性については様々な報告があるが、その本体、つまり遺伝子やタンパク質については、今まで様々な試みがなされてきたが、その解析は遅れていた(Katz, A. et al.(1989) Biochim. Biophys. Acta 983: 9-14; Barkla, B. and Blumwald, E. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 11177-11181; Katz, A., Kleyman, T. R., and Pick, U. (1994) Biochemistry 33: 2389-2393)。
最近になり、アラビドプシスにおいて既知のNa+/H+対向輸送体のアミノ酸配列と相同性を有するタンパク質をコードすると予想される遺伝子がクローニングされたが、その機能については解明されていない(M.P. Apse et al., (1998) Final Programme and Book of Abstracts "11th International Workshop on Plant Membrane Biology", Springer; C.P. Darley et al., (1998) Final Programme and Book of Abstracts "11th International Workshop on Plant Membrane Biology", Springer)。
植物において単離されたNa+/H+対向輸送体遺伝子は、上記の双子葉植物であるアラビドプシスの例にとどまり、産業上有用な農作物であるイネやトウモロコシなどを含む単子葉植物については、いまだ遺伝子の単離は報告されていない。

産業上の利用分野


本発明は、植物由来の新規なNa+/H+対向輸送体、該輸送体によりコードされるDNA、並びにそれらの製造および用途に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】 下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
【請求項2】 単子葉植物由来のNa+/H+対向輸送体をコードする下記(a)または(b)に記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において20個以内のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAと42℃の通常の条件でハイブリダイゼーションを行なった後、高ストリンジェントな条件下で洗浄することにより単離されるDNA。
【請求項3】 単子葉植物がイネ科植物である、請求項2に記載のDNA。
【請求項4】 請求項1または2に記載のDNAを含むベクター。
【請求項5】 請求項1若しくは2に記載のDNAまたは請求項4に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
【請求項6】 植物細胞である、請求項5に記載の形質転換細胞。
【請求項7】 請求項1または2に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
【請求項8】 請求項5に記載の形質転換細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から発現させたタンパク質を回収する工程を含む、請求項7に記載のタンパク質の製造方法。
【請求項9】 請求項6に記載の形質転換細胞を含む形質転換植物体。
【請求項10】 単子葉植物である、請求項9に記載の形質転換植物体。
【請求項11】 イネ科植物である、請求項10に記載の形質転換植物体。
【請求項12】 イネである、請求項11に記載の形質転換植物体。
【請求項13】 請求項9から12のいずれかに記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
【請求項14】 請求項9から13のいずれかに記載の形質転換植物体の繁殖材料。
【請求項15】 請求項7に記載のタンパク質に結合する抗体。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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