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タバコのレトロトランスポゾンを利用した遺伝子破壊法

国内特許コード P100000988
掲載日 2010年9月30日
出願番号 特願2000-620076
登録番号 特許第4543161号
出願日 平成11年5月25日(1999.5.25)
登録日 平成22年7月9日(2010.7.9)
国際出願番号 JP1999002749
国際公開番号 WO2000071699
国際出願日 平成11年5月25日(1999.5.25)
国際公開日 平成12年11月30日(2000.11.30)
発明者
  • 廣近 洋彦
  • 岡本 裕行
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 タバコのレトロトランスポゾンを利用した遺伝子破壊法
発明の概要 本発明は、タバコレトロトランスポゾンを用いて植物における遺伝子を破壊する方法であって、該レトロトランスポゾンを該植物に導入する工程;および該レトロトランスポゾンが導入された植物を培養することにより再分化させ、形質転換植物を作出する工程を包含する、方法に関する。
従来技術、競合技術の概要


挿入因子による遺伝子破壊は、有用遺伝子の単離および機能解析において重要な手段となっている。モデル植物として研究の進められているシロイヌナズナにおいては、挿入因子として、T-DNAおよびトランスポゾンが用いられている。
T-DNAの場合、アグロバクテリアを用いてTiプラスミドを形質転換させると、Tiプラスミドの一部であるT-DNAが植物染色体に挿入され、遺伝子が破壊される。しかし、T-DNAによる遺伝子破壊では、変異体がT-DNAがうまく組み込まれなかったことにより実質的にタグされていない例が50~60%にのぼるという報告がある。
トランスボゾンの場合、形質転換の過程もしくはその後の転移の過程で遺伝子破壊が生じる。トランスポゾンは、動物、酵母、細菌および植物のゲノムに遍在することが知られる変異誘発遺伝子である。トランスポゾンは、その転移(trans position)機構により2つのクラスに分類されている。クラスIIに属するトランスポゾンは、複製することなくDNAの形態で転移する。クラスIに属するトランスポゾンは、レトロトランスポゾンとも呼ばれ、複製し、そしてRNA中間体を介して転移する。
クラスIIに属するトランスポゾンとして、トウモロコシ(Zea mays)のAc/Ds、Spm/dSpmおよびMu要素(Fedoroff、1989、Cell 56、181-191;Fedoroffら、1983、Cell 35、235-242;Schiefelbeinら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82、4783-4787)、キンギョソウ(Antirrhinum majus)のTam要素(Bonasら、1984、EMBO J、3、1015-1019)が知られている。クラスIIに属するトランスポゾンは、トランスポゾン・タッギングを利用する遺伝子単離に広く利用されている。この技術は、トランスポゾンがゲノム上で転移して、ある遺伝子中に挿入されると遺伝子の生理学的および形態学的変異が起こり、遺伝子が制御する表現型が変化することを利用する。この変化を検出することにより影響を受けた遺伝子を単離する(Bancroftら、1993、The Plant Cell、5、631-638;Colasantiら、1998、Cell、93、593-603;Grayら、1997、Cell、89、25-31;Keddieら、1998、The Plant Cell、10、877-887;Whithamら、1994、Cell、78、1101-1115)。しかし、DNA型のトランスポゾンによるタギングでは、トランスポゾンが切り出されてしまったためタグされていない変異体が報告されている(Bancroftら、1993、The Plant Cell、5、631-638)。これらのトランスポゾンはまた、主に染色体上の近傍の部位に転移する性質を有することが知られている(BancroftおよびDean、1993、Genetics、134、1221-1229;Kellerら、1993、Theor.Appl.Genet.、86、585-588)。すべての遺伝子を綱羅した破壊系統を作出するためには、これらのトランスポゾンとは異なり染色体上をランダムに転移するトランスポゾンの利用が望まれている。また、これらの因子の組み込みの標的部位にそれぞれ特徴があるため、これらの因子とは異なった因子による遺伝子破壊系の作出が望まれている。
クラスIトランスポゾンは、最初、ショウジョウバエおよび酵母で同定され、そして特徴付けられたが、最近の研究により植物ゲノム中に遍在し、そのかなりの部分を占めていることが明らかにされている(Bennetzen、1996、Trends Microbiolo.、4、347-353;Voytas、1996、Science、274、737-738)。レトロトランスポゾンの大部分は、非移動性の組み込みユニットであるようである。レトロトランスポゾンは、両端に同方向反復配列であるLTRをもち、その内側にウイルス様粒子を構成するgagタンパクと逆転写酵素polタンパクなどをコードする領域を有する。LTRプロモーターから転写されて生じたRNAはpolタンパクによって逆転写されてcDNAとなり、宿主染色体に挿入される。レトロトランスポゾンの使用は、転移がそれ自身のコードするタンパクによって行われ、また転移コピーが切り出されることはないため、遺伝子破壊の手法としては優れている。
最近の研究は、レトロトランスポゾンのいくつかが、創傷、病原体の攻撃および細胞培養などのストレス条件下で活性化されることを示している(Grandbastien、1998、Trends in Plant Science、3、181-187;Wessler、1996、Curr.Biol.6,959-961;Wesslerら、1995、Curr.Opin.Genet.Devel.5,814-821)。例えば、タバコではTnt1AおよびTto1(Pouteauら、1994、Plant J.、5、535-542;Takedaら、1988、Plant Mol.Biol.、36、365-376)、およびイネではTos17(Hirochikaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、7783-7788(1996))について、ストレス条件下における活性化が報告されている。
イネにおいては、イネレトロトランスポゾンTos17が、培養により活性化され、遺伝子内に転移する(Hirochikaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、7783-7788(1996))ことから、イネの大量遺伝子破壊の手段として利用されている。
ところが、シロイヌナズナでは、転移活性のあるレトロトランスポゾンはこれまでに単離されていない。Grandbastlenらにより単離されたタバコレトロトランスポゾンTnt1がシロイヌナズナに形質転換により導入される過程で転移することが報告されたが、遺伝子内に転移するかどうかは明らかになっていない(Lutasら、1995、EMBO J.、14、2364-2393)。タバコレトロトランスポゾンTto1もまた、シロイヌナズナに導入される過程で転移することが示された(HirochikaおよびKakutani、投稿準備中)。Tto1は、イネにおいて培養によって転移する(Hirochikaら、1996、Plant、Cell、8、725-734)ことから、幅広い宿主で転移能を持つことが示唆される。しかし、転移の頻度は系統により異なっていて、必ずしも高頻度の転移が再現よくみられたわけではなかった。発明の開示
シロイヌナズナにおいてもタバコレトロトランスポゾンTto1が転移して遺伝子破壊を生じるかどうかを検討した。Tto1を低コピーで有するシロイヌナズナを培養して再分化させ、Tto1の転写量およびTto1標的部位における隣接配列の系統的な分析を行ったところ、培養細胞でTto1が転移し、クローン細胞から再分化した形質転換個体が提供された。Tto1の隣接配列を増幅して配列決定し、相同性解析を行った結果、様々な遺伝子の内部にTto1が挿入された多数の例が認められた。
以上の結果は、Tto1が、活性なレトロトランスポゾンを持たないとされるシロイヌナズナにおいて、トランスポゾンタギングによる遺伝子単離の新たな手段として利用可能であることを示している。シロイヌナズナにおける、レトロトランスポゾンを用いた遺伝子破壊および遺伝子単離の可能性を示したのは本研究が初めてである。内在性ではなく異種のレトロトランスポゾンを用いても、トランスポゾンタギングによる遺伝子破壊および遺伝子単離が可能であることが、本願により明らかにされた。
本発明は、タバコレトロトランスポゾンを用いて植物における遺伝子を破壊する方法であって、当該レトロトランスポゾンを該植物に導入する工程;および当該レトロトランスポゾンが導入された植物を培養することにより再分化させ、形質転換植物を作出する工程を包含する、方法に関する。
本発明の1つの実施態様では、上記レトロトランスポゾンはTto1である。
本発明の1つの実施態様では、上記植物は、タバコ以外の植物である。好ましくは、上記植物は作物植物である。好ましくは、上記植物はシロイヌナズナである。
本発明の1つの実施態様では、上記レトロトランスポゾンが導入された植物は、当該レトロトランスポゾンを低コピー数で含有する。低コピー数とは、1~5コピーを意味し、好ましくは、1~3コピーであり、より好ましくは、1~2コピーであり、最も好ましくは1コピーである。
本発明の1つの実施態様では、上記方法は、上記形質転換植物から後代植物を得る工程、および該後代植物を組織培養して植物体に再分化させる工程をさらに包含する。

産業上の利用分野


本発明は、トランスポゾンタギングによる遺伝子破壊および遺伝子単離に関する。より詳細には、本発明は、タバコレトロトランスポゾンを使用する異種植物(例えば、シロイヌナズナ)の遺伝子破壊に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
タバコレトロトランスポゾンTto1を用いて植物における遺伝子を破壊する方法であって、
該レトロトランスポゾンTto1を該植物に導入する工程;
該レトロトランスポゾンTto1が導入された植物を培養することにより再分化させ、形質転換植物を作出する工程
該レトロトランスポゾンTto1を1コピー数で含有する植物を選抜する工程
該選抜された形質転換植物から後代植物を得る工程;および
該後代植物を組織培養して植物体に再分化させる工程
を包含する方法。

【請求項2】
前記植物がタバコ以外の植物である、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記植物が作物植物である、請求項2に記載の方法。

【請求項4】
前記植物がシロイヌナズナである、請求項2に記載の方法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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