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幼若ホルモン酸メチル基転移酵素遺伝子およびその利用法

国内特許コード P100001005
掲載日 2010年10月1日
出願番号 特願2004-567113
登録番号 特許第4521566号
出願日 平成15年1月20日(2003.1.20)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
国際出願番号 JP2003000415
国際公開番号 WO2004065604
国際出願日 平成15年1月20日(2003.1.20)
国際公開日 平成16年8月5日(2004.8.5)
発明者
  • 篠田 徹郎
  • 糸山 享
  • 浜村 徹三
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 幼若ホルモン酸メチル基転移酵素遺伝子およびその利用法
発明の概要

ディファレンシャル・ディスプレイ法により、カイコアラタ体由来のcDNAから幼若ホルモン酸メチル基転移酵素遺伝子をクローニングした。また、該遺伝子を組み込んだベクターDNAで形質転換した大腸菌で発現させた組換えタンパク質が、幼若ホルモン酸メチル基転移酵素活性を有することを見出した。さらに、アミノ酸配列の相同性に基づき、ショウジョウバエ、蚊、ハスモンヨトウ、オオタバコガ由来の幼若ホルモン酸メチル基転移酵素遺伝子を見出し、ショウジョウバエ、ハスモンヨトウ、オオタバコガ由来の幼若ホルモン酸メチル基転移酵素遺伝子がコードするタンパク質が幼若ホルモン酸メチル基転移酵素活性を有することを見いだした。

従来技術、競合技術の概要


幼若ホルモンは、セスキテルペン骨格を持つ特殊な構造をしたホルモンで、昆虫の脱皮・変態、生殖、休眠、胚発育のみならず、多型、行動、寿命など多くの生理現象の調節に関与する重要な昆虫ホルモンである(非特許文献1、2)。



したがって、昆虫体内の幼若ホルモンバランスを崩して昆虫の生存に必須な生理機能を撹乱することで、農林害虫や衛生害虫を防除することができると考えられる(非特許文献3、4)。これまでに、天然型幼若ホルモンより強い活性を示す合成幼若ホルモン活性物質が多数合成され、その一部は、安全性の高い害虫制御剤としてすでに実用化されている(非特許文献5、6)。



また昆虫体内の幼若ホルモン量を適切に制御することで蚕等の有用昆虫の生育や休眠を制御し、その機能を強化することに利用できる。例えば、合成幼若ホルモン活性物質であるメトプレンは、蚕の増繭剤として利用されている(非特許文献7)。



しかしながら、害虫防除への利用においては、幼若ホルモン活性物質は、昆虫体内の幼若ホルモン濃度の高い幼虫期には作用しないため、幼虫が加害ステージである農業害虫の多くに対しては、高い食害防止効果は期待できない。



より優れた防除手段として、幼若ホルモンの作用を遮断する、あるいは昆虫体内の幼若ホルモン濃度を下げることで、幼虫の摂食期間を短縮したり、早熟変態を促進することで、作物の被害を軽減する方法が考えられる。これまでに、抗幼若ホルモン物質としてプレコセンなど20種類以上の化合物が同定されているが、害虫防除に実用化されているものはない(非特許文献8)。また、遺伝子工学的な手法により、血中の幼若ホルモン濃度を人為的に低下させる試みもなされている。すなわち、血中に存在する幼若ホルモンを特異的に加水分解する幼若ホルモンエステラーゼの遺伝子を組み込んだ昆虫ウイルスを作成し、感染した昆虫体内で酵素活性を発現させ、虫体内の幼若ホルモンを分解しようというものである(非特許文献9)。しかし、この方法でも幼虫が早熟変態をするまでの効果は得られていない。



幼若ホルモンは昆虫特有の内分泌器官であるアラタ体で合成されて血中に分泌される。したがって、アラタ体での幼若ホルモンの合成を直接的に阻害できれば、昆虫体内の幼若ホルモンを低下させることが可能である。



幼若ホルモンの生合成の最終段階において、幼若ホルモン酸メチル基転移酵素の作用によって不活性な前駆体である幼若ホルモン酸へS-アデノシルメチオニンのメチル基が転移することによって、活性型の幼若ホルモンが生じる(非特許文献10)。この酵素活性が終齢幼虫になると低下する結果、幼若ホルモンの合成・分泌が停止し、血中の幼若ホルモンが消失し、変態が起こる。したがって、人為的にこの酵素活性を制御することで、昆虫体内の幼若ホルモン量を任意に改変し、害虫防除や有益昆虫の機能強化を行うことが可能と考えられる。



しかしながら、幼若ホルモン酸メチル基転移酵素は、ごく微細な組織であるアラタ体に微量しか存在しないため、同酵素に結合する化合物、同酵素の活性または発現を制御する化合物のスクリーニングに必要なタンパク質量を昆虫個体から調製するのはきわめて困難である。また、現在まで、該酵素のアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は明らかにされていない。



尚、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
〔非特許文献1〕Nijhout, H.F.:Insect hormones, Princeton University Press, 267pp, 1994
〔非特許文献2〕Herman, W.&Tatar, M.: Proc. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 268:2509, 2001
〔非特許文献3〕Cusson, M&Palli, S.R.: Can.Entomol. 132:263, 2000
〔非特許文献4〕深見浩:生物に学ぶ農薬の創製,ソフトサイエンス社、p.19-38,1986
〔非特許文献5〕江藤守総:生物に学ぶ農薬の創製,ソフトサイエンス社、p.1-18,1986
〔非特許文献6〕波多腰ら;住友化学、p.4-20,1997-I
〔非特許文献7〕赤井弘:生理活性物質のバイオアッセイ, 講談社、p.383-388,1984
〔非特許文献8〕深見浩:生物に学ぶ農薬の創製,ソフトサイエンス社、p.19-38,1986
〔非特許文献9〕Hammock, B.D. et al.:US patent, 5098706, 1992
〔非特許文献10〕Schooley, D.A.&Baker,F.C.:Comp.Insect Physiol.Biochem.Pharmacol.,Pergammon Press, Oxford, 7:363-389, 1985

産業上の利用分野


本発明は、幼若ホルモン酸メチル基転移酵素タンパク質および該タンパク質をコードするDNA、並びにそれらの利用法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】以下の(a)~(d)のいずれかに記載の幼若ホルモン酸メチル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号:2、4、6、8、または10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1、3、5、7、または9に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2、6、8、または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1、5、7、または9に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項2】請求項1に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
【請求項3】請求項1に記載のDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA。
【請求項4】請求項1または3に記載のDNAが挿入されたベクター。
【請求項5】請求項1に記載のDNAまたは該DNAが挿入されたベクターを有効成分として含有する、節足動物の脱皮・変態または寿命の制御剤。
【請求項6】節足動物が昆虫である、請求項5に記載の制御剤。
【請求項7】成虫に対する寿命短縮剤、または、幼虫および蛹に対する変態抑制剤である、請求項6に記載の制御剤。
【請求項8】害虫防除剤である、請求項6に記載の制御剤。
【請求項9】請求項1もしくは3に記載のDNAまたは請求項4に記載のベクターを保持する形質転換細胞。
【請求項10】請求項1もしくは3に記載のDNAまたは請求項4に記載のベクターで形質転換された個体。
【請求項11】昆虫個体である、請求項10に記載の個体。
【請求項12】以下の(a)~(d)のいずれかに記載の幼若ホルモン酸メチル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAによりコードされるタンパク質に結合する抗体。
(a)配列番号:2、6、8、または10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1、5、7、または9に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2、6、8、または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1、5、7、または9に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項13】モノクローナル抗体である、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】以下の(a)~(d)のいずれかに記載の幼若ホルモン酸メチル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAまたはその相補鎖に相補的な少なくとも15ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド。
(a)配列番号:2、6、8、または10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1、5、7、または9に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2、6、8、または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1、5、7、または9に記載の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項15】以下の(a)~(c)の工程を含む、請求項2に記載のタンパク質に結合する化合物のスクリーニング方法。
(a)該タンパク質に被験化合物を接触させる工程
(b)該タンパク質と被験化合物との結合を検出する工程
(c)該タンパク質に結合する化合物を選択する工程
【請求項16】以下の(a)~(c)の工程を含む、請求項2に記載のタンパク質の活性を制御する化合物のスクリーニング方法。
(a)該タンパク質に被験化合物を接触させる工程
(b)該タンパク質の活性を測定する工程
(c)被験化合物を投与していない場合と比較して、該タンパク質の活性を上昇または減少させる化合物を選択する工程
【請求項17】以下の(a)~(d)の工程を含む、請求項2に記載のタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを制御する化合物のスクリーニング方法。
(a)該タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合したDNAを有する細胞または細胞抽出液を提供する工程
(b)該細胞または該細胞抽出液に被験化合物を接触させる工程
(c)該細胞または該細胞抽出液における該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程
(d)被験化合物を投与していない場合と比較して、該レポーター遺伝子の発現レベルを上昇または減少させる化合物を選択する工程
【請求項18】以下の(a)~(c)の工程を含む、請求項2に記載のタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを制御する化合物のスクリーニング方法。
(a)昆虫個体または培養組織に被験化合物を接触させる工程
(b)該昆虫個体または該培養組織における請求項2に記載のタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを測定する工程
(c)被験化合物を投与していない場合と比較して、該遺伝子の発現レベルを上昇または減少させる化合物を選択する工程
産業区分
  • 微生物工業
  • 畜産
  • 有機化合物
  • 薬品
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中


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