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微生物発酵によるDHA含有リン脂質の製造方法 新技術説明会

国内特許コード P110001458
掲載日 2011年1月20日
出願番号 特願2009-517720
登録番号 特許第5371750号
出願日 平成20年6月3日(2008.6.3)
登録日 平成25年9月27日(2013.9.27)
国際出願番号 JP2008001394
国際公開番号 WO2008149542
国際出願日 平成20年6月3日(2008.6.3)
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権データ
  • 特願2007-148398 (2007.6.4) JP
発明者
  • 奥山 英登志
  • 折笠 善丈
  • 西田 孝伸
出願人
  • 国立大学法人北海道大学
  • 株式会社ロム
発明の名称 微生物発酵によるDHA含有リン脂質の製造方法 新技術説明会
発明の概要

微生物を用いた、ω3系不飽和脂肪酸特にDHAを構成脂質とするDHAリン脂質をより簡便に製造する方法を提供する。
本発明は、炭素源を含む培地でω3系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物を増殖させる工程、及び増殖させた前記微生物を、炭素源を含まない培地でさらに培養する工程を含む、ω3系不飽和脂肪酸を構成脂質とするリン脂質の製造方法。本発明の方法によれば、ω3系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物を用いて、ω3系不飽和脂肪酸を構成脂質とする高付加価値のリン脂質を大量に生産することができる。

従来技術、競合技術の概要


ω3系不飽和脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、血中脂質低下作用、脳視覚機能の改善などの生理効果を示すことから、機能性脂質と言われている。いずれもヒトに不可欠の栄養分であるが、食品からの摂取が不足しがちであるために、必要摂取量を補うためのEPAやDHAを含む健康食品素材あるいはサプリメントが広く市販されている。また、EPAについては、高純度のEPAエチルエステルが脂質低下剤などの医薬としても利用されている。さらに、EPAとDHAを成分とする健康食品が厚生労働省により特定健康用食品として2004年に認可されて以来、EPAやDHAを初めとするω3系不飽和脂肪酸の利用と市場は、より一層拡大するものと予想されている。



一方、脂肪酸そのものではなく、脂肪酸を構成脂質とするリン脂質についても、種々の有用な生理活性を有することが数多く報告されている。例えば、ホスファチジルセリン(PS)の脳機能改善効果(非特許文献1)、ホスファチジルコリン(PC)の動脈硬化症や神経機能障害の改善効果が、それぞれ報告されている。さらに最近は、健康補助食品への利用を目的として、PSやPCにとどまらず、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリン脂質全般が注目を集めている。



この様な背景の下、ω3系不飽和脂肪酸を構成脂質とするリン脂質、例えばDHAを構成脂質とするPCやPE(それぞれをDHA-PC、DHA-PEといい、以下、DHAを構成脂質とするリン脂質全体をDHAリン脂質という)の抗腫瘍性や抗酸化性などの生理機能が、培養細胞を使った系にとどまらず、動物生体を使った系でも明らかになってきている。



例えば、Kafrawyら(非特許文献2)によれば、DHA-PC、特にPC1分子中に2分子のDHAをもつもの(DHA/DHA-PC)が癌化した動物細胞(マウス白血病細胞)に選択的毒性を示すことを報告している。したがって、ω3系不飽和脂肪酸、特にDHAを構成脂質とするリン脂質に対する需要は今後さらに高まっていくと期待される。



ω3系不飽和脂肪酸を構成脂質とするリン脂質の代表的な例であるDHAリン脂質の主な供給源は、イカ(特にムラサキイカの皮)や魚油、あるいはこれらの魚油の給餌により得られる鶏卵(特許文献1)などである。ムラサキイカは、リン脂質を多く含む上、そのリン脂質の50%を占めるホスファチジルコリン(PC)の構成脂質の50%がDHAであり、脂質中のDHAリン脂質の含有比率は高いという特徴を有している。



しかし、DHAリン脂質の工業的な生産を考えた場合、ムラサキイカや魚油等の海産物をDHAリン脂質の供給源とすることは、漁獲高に依存した供給量の不安定性、季節や気候の変化を原因とする品質の不均一性、海洋汚染を原因とする安全性などの他に、魚油独自の臭気(いわゆる魚臭さ)による最終製品の品質や価値の低下、各種の構造類似の長鎖高度不飽和脂肪酸が魚油中に含まれることによる高い精製コスト等の多くの問題を抱えることになる。また鶏卵は、卵黄脂質の30%がリン脂質であり、リン脂質の含有比率は高いが、総脂質量は低く、また卵黄のエタノール抽出物中のDHA含量は12%程度に過ぎない。



上記の魚油や鶏卵の利用とは異なるω3系不飽和脂肪酸の供給源としては、ω3系不飽和脂肪酸生産能を有する微生物、特にDHA生産能を有する微生物が知られている。微生物を用いたDHAの製造方法は、アメリカ合衆国等では実用化されており、DHA含有脂質の原料や、高DHA含有飼料等が製品化されている。具体的には、例えば、トラウストキトリウム属、シゾキトリウム属の生育技術(特許文献2)、トロウストチトリアレ類から抽出されるω3系不飽和脂肪酸の利用技術(特許文献3)等が挙げられる。



日本国内においても、ラビリンチュラ類をDHAの供給源として用いる技術は種々開発されている。具体的には、例えば、ラビリンチュラ属の微生物であるS3-2株を利用する技術(特許文献4~特許文献6)、シゾキトリウム属の微生物 であるSR21株およびその利用技術(特許文献7~特許文献9)等が挙げられる。



しかし、上記の微生物を用いた方法で製造されるDHAは、いずれもリン脂質の構成脂質ではなく、単なる脂肪(トリグリセリド)の構成脂質としてのDHAであり、DHAリン脂質を構成するものではない。



本発明者らは、非光合成性の単細胞微生物であるラビリンチュラ類に属する新規微生物12B株を単離し、これがDHAリン脂質を製造することを見いだし、特許出願を行った(特許文献10)。しかしながら、この微生物は、微生物の全脂肪に対して40%を超えるDHAを蓄積するが、DHAリン脂質の含有量は、微生物の全脂肪に対して12~13%程度に過ぎない。



また、生物材料から調製されるDHAリン脂質のほとんどは、リン脂質分子中に1分子のDHAを持つだけであり、構成脂質としてのDHAの含有量が50%を超える、生物材料由来のリン脂質はほとんど報告されていない。従って、リン脂質中のDHA含量を高めることは、機能性食品の他に、医薬としての利用価値も高めることができる、重要な課題である。




【非特許文献1】酒井正士ら、「ホスファチジルセリンと脳機能」、2002年、オレオサイエンス、第2巻、第2号、第23-28頁

【非特許文献2】Kafrawy Oら、Cancer Lett.、1998年、第132巻(1-2)、第23-29頁

【特許文献1】特開昭59-39258号公報

【特許文献2】特表平8-202405号公報

【特許文献3】特表平8-509355号公報

【特許文献4】特開2001-275656号公報

【特許文献5】特開2004-298798号公報

【特許文献6】特開2003-000292号公報

【特許文献7】特開平9-000284号公報

【特許文献8】特開平10-072590号公報

【特許文献9】特開平10-310556号公報

【特許文献10】特開2006-230403号公報

産業上の利用分野


本発明は、高付加価値を有するリン脂質を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、ω3系不飽和脂肪酸の生産能を有する微生物を用いた、ω3系不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸(DHA)を構成脂質とするリン脂質の製造方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
グルコースを含む培地でラビリンチュラ12B株及びラビリンチュラ属微生物よりなる群から選ばれるラビリンチュラ類微生物増殖させる工程、及び増殖させた前記ラビリンチュラ類微生物を、グルコースを含まない培地でさらに培養する工程を含む、ドコサヘキサエン酸を構成脂質とするリン脂質の製造方法。

【請求項2】
強制通気を行いながら前記グルコースを含まない培地での培養を行う、請求項1に記載の製造方法。
産業区分
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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