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リグノセルロース系バイオマスの変換方法

国内特許コード P110001521
掲載日 2011年2月1日
出願番号 特願2009-220787
公開番号 特開2011-004730
登録番号 特許第5633839号
出願日 平成21年9月25日(2009.9.25)
公開日 平成23年1月13日(2011.1.13)
登録日 平成26年10月24日(2014.10.24)
優先権データ
  • 特願2009-123792 (2009.5.22) JP
発明者
  • 徳安 健
  • 朴 正一
  • 城間 力
  • ムハマド イムラン アルハック
出願人
  • 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 リグノセルロース系バイオマスの変換方法
発明の概要 【課題】 リグノセルロース系バイオマス原料(易分解性糖質を含有するリグノセルロース系バイオマス原料を含む)を酵素糖化する前処理として、固液分離や洗浄工程による糖質(特に遊離糖質、でん粉、キシラン等)の流出を伴わず、且つ、効率よく糖化を行うための前処理技術の開発を課題とする。
【解決手段】リグノセルロース系バイオマス原料である植物体の地上部を粉砕した後、当該原料、水酸化カルシウムおよび水を含むスラリーを調製してアルカリ処理を行い、その後二酸化炭素を通気すること及び/又は加圧することによって、中和しpHを5~7に低下させて調製することを特徴とする、酵素糖化反応の基質として用いるスラリーの製造方法、;前記スラリー製造方法により得られるスラリーを基質とする酵素糖化法、;前記酵素糖化法により得られる糖化物を基質とするエタノール発酵法、;を提供する。
【選択図】 なし
従来技術、競合技術の概要


バイオ燃料への世界的ニーズの高まりに対応して、糖質系バイオマス由来のバイオエタノール製造技術開発競争が世界的規模で繰り広げられている。特に、食料資源と競合しないリグノセルロース系バイオマスの利用技術開発が、欧米のみならず我が国においても最も重要なブレイクスルーとなりうると期待されている。リグノセルロース系バイオマスの糖化技術開発は、200年の歴史を有しているが、現在、再び活発化している。特に、酸糖化を中心に展開した糖化技術に代わり、現在は、セルラーゼを中心とした酵素糖化技術が高い期待を集めている。



また、リグノセルロース系バイオマス原料中の糖質は複雑な構造をとる細胞壁中に埋め込まれており、酵素糖化に先立ち、苛酷な条件による前処理によって糖質を分離する必要がある。バイオマス原料を糖化する際の前処理技術として、これまでに、希硫酸爆砕処理、水熱処理、苛性ソーダ処理、アンモニア水処理、水酸化カルシウム処理などが検討されている。



特に、水酸化カルシウム(酸化カルシウムは、水存在下で水酸化カルシウムとなることから、前処理試薬として事実上、同じ物質と見なされる。)は、水酸化ナトリウムやアンモニア水と比較しても安価な試薬であり、有害性も低いと認識されていることから、本試薬を用いたリグノセルロース系バイオマス原料に対する前処理の可能性が検討されてきた。水酸化カルシウムは、水溶液中での電離度は高いが、その溶解度が低いことから、木質系バイオマスに対する単独使用での前処理効果はさほど大きくない(非特許文献1参照)。なお、木質系バイオマスに対して水酸化カルシウム処理を行う際には、酸化剤の使用が有効であることが明らかとなっている。
その一方で、木化度の低い草本系バイオマスに対する水酸化カルシウム前処理の有効性については、複数の論文で報告されている(非特許文献2~4参照)。



一般に、酵素糖化の前処理として行う希アルカリ処理では、ヘミセルロースのアセチル基やフェルロイル基などのエステルやリグニン分子内のエステルが加水分解されることにより、酵素糖化性が向上するとともに、リグニンやシリカの一部が可溶化すると考えられている。その際に、ヘミセルロースの一部も遊離・可溶化するが、セルロースやヘミセルロースの大部分は固形分としてバイオマス中に残存し、後段の酵素糖化を効率的に行うことが可能となる。
しかしながら、このような希アルカリ処理工程は、弱酸性条件下で働くセルラーゼ等の酵素による糖化工程に先立ち、酸・アルカリ等の試薬や水溶性成分を細胞壁由来の固形分と分離するための固液分離工程や、洗浄・中和工程が必要となる。水熱処理でも、過分解物や遊離リグニン等を除去するための洗浄を行うことが望ましい。
また、水酸化カルシウム前処理工程では、バイオマス原料の破砕・粉砕物、水酸化カルシウムと水を主成分とする混合物を、室温または加熱状態で反応することにより、希アルカリ処理効果を発現させる。しかしながら、アルカリ中の陽イオン(Na、Ca2+、Mg2+など)は、前処理反応時にバイオマス(主にヘミセルロースのカルボキシル基とリグニンのフェノール基)と強く結合し、簡単な水洗浄では完全に除去できない。また、バイオマスから外れた陽イオンはアルカリ性を示すため、洗浄時には大量の水を必要とする(非特許文献5参照)。
このアルカリ前処理物の中和方法としては、水洗浄中和方法(非特許文献6参照)、塩酸中和後水洗浄法(非特許文献4参照)、酢酸中和後水洗浄法(非特許文献7参照)、クエン酸中和後水洗浄法(非特許文献8参照)及び上記の中和法を組み合わせる法(非特許文献2参照)などが検討されている。



しかしながら、ここで挙げられている中和方法では、固液分離工程や洗浄工程において、細胞壁由来固形分や可溶性糖質の流亡が起こり、糖質の回収率が低下する原因となる。
また、これらのうち特に一般的な方法として、塩酸、硫酸、水洗浄について、以下の具体的な欠点が挙げられる。
(1)塩酸:中和後に水溶性の塩化カルシウムが生じる。中和操作は簡単だが、塩化カルシウムの再利用は困難であり、酸のコストと洗浄工程の整備・運転コストがかかる。また、糖化工程に先立ちイオン濃度を低下させるため、固液分離操作、洗浄操作が必要となり、その際に大量の水を使用し、廃液排出と共に繊維性固形分や遊離糖質の流亡が起こる。中和過程で生じる塩化カルシウムとアルカリ前処理によって生じる可溶化されたリグニンと低分子化されたキシランは廃液処理を困難にする。その他、中和・洗浄後も糖化酵素反応を行うためには反応槽の更なるpH調節が必要であるため、試薬コストの増加および洗浄工程時の微生物による汚染の危険性が存在する。
(2)硫酸:中和後に不溶性の石膏が沈殿する。生成する石膏は、溶解性が極めて低く、酵素反応や微生物発酵時の塩阻害の原因となりにくい。中和操作は簡単だが、試薬は再利用困難であり石膏処理コストや硫酸のコストや洗浄工程の整備・運転コストがかかる。また、糖化時の固形分濃度を減じるため、粉末状の石膏と繊維性固形分の分離操作が必要となり、その際に大量の水使用が必要で廃液排出と共に繊維性固形分や遊離糖質の流亡が起こる。中和過程で生じる石膏は処理バイオマスの粒子サイズが細かい場合は石膏と前処理後バイオマスの分離が困難であり、塩酸中和時と同様にアルカリ前処理によって生じる可溶化されたリグニンと低分子化されたキシランは廃液処理が困難である。その他、中和・洗浄後も糖化酵素反応を行うためには反応槽の更なるpH調節が必要であるため、試薬コストの増加と洗浄工程時の微生物による汚染の危険性が存在する。
(3)水洗浄:水酸化カルシウムと繊維性固形分との相互作用等によりpH低下が鈍くなるため、洗浄工程は極めて非効率的なものとなり、大量の廃水が生じる。洗浄時に繊維性固形分や遊離糖質の流亡が起こる。アルカリ前処理によって生じる低分子化されたキシランと共に可溶性されたリグニンとシリカは水洗浄工程では再沈澱が行われず、廃液中に塩酸または硫酸中和に比べて多く排出され、廃液処理をさらに困難にする。その他、中和・洗浄後も糖化酵素反応を行うためには反応槽の更なるpH調節が必要であるため、試薬コストが増加と洗浄工程時の微生物による汚染の危険性が存在する。



このように、従来で挙げられている中和方法では、固液分離工程や洗浄工程が必要であり、特に、ショ糖やでん粉などの易分解性糖質を含む稲わらを原料として糖化を行う際には、セルロースの糖化性を向上するような化学的前処理を行った後に固液分離や洗浄・中和を行うことにより、ショ糖やでん粉の流亡が起こることが懸念される。
さらに、固液分離工程では、遠心分離機やスクリーン型分離装置等を用いることとなり、分離装置導入・稼働によるコスト増が問題となる。洗浄・中和工程では、連続洗浄装置を導入する必要が生じるほか、大量の水を使用することとなり、廃液処理コストが増大する。
そこで、前処理後の固液分離工程および洗浄・中和工程を改良し、細胞壁由来固形分や遊離糖質の流亡を防ぎ、効率的に糖化を行うための技術(原料コスト、試薬コスト、設備・運転コストを大幅に節約できる技術)の開発が求められていた。

産業上の利用分野


本発明は、リグノセルロース系バイオマス原料を酵素糖化する際の前処理技術に関し、詳しくは、リグノセルロース系バイオマス原料である植物体地上部を粉砕した後、当該原料、水酸化カルシウムおよび水を含むスラリーを調製してアルカリ処理を行い、その後二酸化炭素を通気すること及び/又は加圧することによって、中和し調製することを特徴とする、酵素糖化反応の基質として用いるスラリーの製造方法に関する。
さらに本発明は、前記製造方法より得られるスラリーを基質とした酵素糖化法、前記酵素糖化法によって得られる糖質を基質としたエタノール製造法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
リグノセルロース系バイオマス原料である植物体の地上部を粉砕した後、当該原料、水酸化カルシウムおよび水を含むスラリーを調製してアルカリ処理を行い、その後二酸化炭素を通気すること及び加圧することによって、中和しpHを5~7に低下させること、かつ、当該方法が固液分離も洗浄も含まないこと、を特徴とする、酵素糖化反応の基質として用いるスラリーの製造方法。

【請求項2】
植物体の地上部からなるリグノセルロース系バイオマス原料を裁断又は粉砕した後、水酸化カルシウムと、水とを混合し、アルカリを浸透させることによりスラリーを調製してアルカリ処理を行い、その後二酸化炭素を通気すること及び加圧することによって、中和しpHを5~7に低下させること、かつ、当該方法が固液分離も洗浄も含まないこと、を特徴とする、酵素糖化反応の基質として用いるスラリーの製造方法。

【請求項3】
前記アルカリ処理が、80~180℃で10分~3時間行うものである、請求項1又は2に記載のスラリーの製造方法。

【請求項4】
前記アルカリ処理が、0℃~50℃で3日以上行うものである、請求項1又は2に記載のスラリーの製造方法。

【請求項5】
前記中和前もしくは中和後に、スラリーの固形分を磨砕する工程を含む、請求項1~4のいずれかに記載のスラリーの製造方法。

【請求項6】
前記植物体の地上部が、稲、麦、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、エリアンサス、牧草、単子葉類の雑草のうちの1以上からのものである、請求項1~5のいずれかに記載のスラリーの製造方法。

【請求項7】
前記植物体の地上部が、非可食部分である、請求項1~6のいずれかに記載のスラリーの製造方法。

【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の製造方法によりスラリーを製造し、当該スラリーに、デンプン、β-(1→3), (1→4)-グルカン、セルロース、キシラン、および、これらの部分分解物、のうちの少なくとも1種類以上を糖化する酵素を添加した後、二酸化炭素を通気及び/又は加圧しながらpHの上昇が起こらないように酵素糖化反応を行うことを特徴とする、酵素糖化法。

【請求項9】
請求項8に記載の酵素糖化法により糖化物を含むスラリーを製造し、当該糖化物を含むスラリーに、エタノール発酵微生物を添加した後、二酸化炭素を通気及び/又は加圧しながらpHの上昇が起こらないようにエタノール発酵を行うことを特徴とする、エタノール製造法。

【請求項10】
請求項8に記載の酵素糖化反応において、前記糖化酵素に加えてさらにエタノール発酵微生物を添加し、酵素糖化反応とエタノール発酵とを並行複発酵で行うことを特徴とする、エタノール製造法。

【請求項11】
前記エタノール発酵微生物が酵母である、請求項9又は10に記載のエタノール製造法。

【請求項12】
請求項8に記載の酵素糖化反応を行って糖化物を得て、当該糖化物を回収し、残存物を膜濾過または遠心分離することによって固液分離して固形分を得て、得られた固形分を燃焼することによって、灰分を回収することを特徴とする、カルシウム塩を含む無機物の回収法。

【請求項13】
請求項9~11のいずれかに記載のエタノール発酵を行って、エタノールと残存物を得て、当該エタノールを回収し、残存物を膜濾過または遠心分離することによって固液分離して固形分を得て、得られた固形分を燃焼することによって、灰分を回収することを特徴とする、カルシウム塩を含む無機物の回収法。

【請求項14】
前記カルシウム塩を含む無機物が、リン酸塩を含むものである、請求項12又は13に記載のカルシウム塩を含む無機物の回収法。
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 登録


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