TOP > 国内特許検索 > ウシの発情同期化法およびそのためのキット

ウシの発情同期化法およびそのためのキット

国内特許コード P110001569
掲載日 2011年3月2日
出願番号 特願2009-170260
公開番号 特開2011-026206
登録番号 特許第5435422号
出願日 平成21年7月21日(2009.7.21)
公開日 平成23年2月10日(2011.2.10)
登録日 平成25年12月20日(2013.12.20)
発明者
  • 竹之内 直樹
  • 平尾 雄二
  • 志水 学
  • 伊賀 浩輔
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 ウシの発情同期化法およびそのためのキット
発明の概要

【課題】処置開始日にたいして発情同期日をより自由に選択できる発情同期化のための方法および手段を提供すること。
【解決手段】(i)ウシに、黄体退行薬および膣内留置型黄体ホルモン製剤を同時期に処置するステップ、(ii)ウシから膣内留置型黄体ホルモン製剤を除去するステップを含むことを特徴とするウシの発情同期化方法。
【選択図】図1

従来技術、競合技術の概要


農林水産業における獣医臨床および家畜繁殖分野の使命として、家畜の改良および増殖は国として推進すべき任務であり、その詳細は家畜改良増殖法に規定されている。家畜の改良増殖に関わる繁殖関連の技術の中で、人工授精や胚移植等は生産性や育種改良速度を飛躍的に向上させうる技術であり、不可欠な技術として普及定着している。ウシにおける人工授精および胚移植は、それぞれ発情日または発情後約7日目に実施する。そのため、発情日は繁殖を行うための最も重要な基準日であり、適正な繁殖管理のためには連日の牛群行動観察とその記録が推奨されている。しかしながら、近年、牛群の繁殖能力の変化を原因とする発情行動の不明瞭化や飼養頭数の多頭化に起因する発情の見逃し等が顕在化してきており、生産現場で人工授精や胚移植の適正な実施を阻害する重篤な問題となっている。



例えば黒毛和種は日本固有の優良な肉用品種であり、脂肪交雑に優れる形質は世界的にも注目されている。黒毛和種では年1産を目標とした子畜生産が推奨されており、そのためには分娩後の発情周期の把握と分娩後3ヵ月目までの受胎が重要となる。しかしながら、生産現場では発情周期の把握がなされていないことにより、しばしば分娩間隔の延長を認める個体が散見される。分娩後の空胎期間の延長は、人為的な繁殖管理失宜による発情の見逃しあるいは鈍性発情などの繁殖障害による発情の異常を原因とすることが多い。またウシの発情周期は21日間と長いことから、発情行動の見逃しは大きな経済的損失に繋がる。



また日本短角種は東北地域の特定品種であり、放牧を主体とした飼養形態や自然交配による繁殖形態などから、生産される牛肉は安全で安心なものとして近年注目を集めている。しかし、黒毛和種との比較ではその市場価格は1/2~2/5程度と低く、日本短角種の生産現場を活性化するために、その対応策が求められている。日本短角種は放牧適性や哺乳能力に優れるため、放牧飼養下で子畜は良好な発育を示すことが知られており、近年ではこの能力に注目して受胚牛としての活用が期待されている。胚移植では受胚牛以外の個体から採取した胚を利用できるため、受胚牛固有の能力と比べてより優秀な能力を有する子畜の増産が可能となることが利点である。そのため、黒毛和種やホルスタイン種では優良子畜や種雄牛の生産に積極的に活用されており、その経済効果は極めて高い。そのことから、胚移植を活用し日本短角種の繁殖牛群の一部で市場価値の高い黒毛和種子畜を生産することは日本短角種飼養農家の収益向上に貢献すると考えられる。さらに、生産した黒毛和種子畜を育成する上でも、舎飼いを主体とする黒毛和種の生産現場とは異なり、親子放牧での飼養が期待できることから、飼料コストの低減や管理の省力化などの利点も派生する。胚移植等の人為的な繁殖技術では、発情日は重要な基準日となる。しかし、日本短角種は自然交配による繁殖管理を主とするため、多くの生産現場では発情周期を把握する必要性が低く、このことは胚移植導入の大きな隘路となっている。この問題に対応する技術として、牛群の発情日を揃えるとともに明瞭な発情行動を人為的に誘起できる発情同期化の活用は有効と考える。



この問題に対応した技術として、後述するような、牛群の発情日を揃えるとともに明瞭な発情行動を誘起できる発情同期化が開発された。この技術により、発情観察のための労力が軽減でき、人工授精や胚移植の実施に際してもより集約的な繁殖管理が可能となっている。



発情同期化法としては、黄体退行薬または腟内留置型黄体ホルモン製剤を用いる手法が一般的であり、国内外で広く普及している。具体的には以下の3つの手法に大きく分けられるが、共通する機序は生体内で制御されている発情発現機構のうち、黄体退行を反映する急激な血中黄体ホルモンの低下を人為的に誘起することにある。



1つの手法は、黄体退行薬の単独投与法である(非特許文献1~3)。黄体退行薬は、プロスタグランジンF2α(PGF2α)の類縁物質であり、国内では多くの薬物が市販されている。黄体への直接作用により、黄体退行とそれに伴う急激な黄体ホルモンの低下を引き起こし、ウシでは薬物投与後3日目を中心として牛群の70%以上で発情が発現する。PGF2αに感受性を持たない時期に薬物を投与する場合、ならびに黄体退行途中で機能を回復する場合が少なからずあるために発情同期化効果は完全ではない。



またもう1つの手法は、腟内留置型黄体ホルモン製剤の単独処置法である。腟内留置型黄体ホルモン製剤として、CIDR(controlled intravaginal drug releasing device, InterAg, Australia)(特許文献1)およびPRID(progesterone releasing intravaginal device, CEVA Sante Anima1, France)(特許文献2)が国内で市販されている。これらは黄体ホルモンを含有する腟内留置型の器具であり、PRIDではさらに発情ホルモンも含有する。いずれも腟内に12~14日間留置する間に器具から持続的に黄体ホルモンが放出される。この黄体ホルモンの作用は下垂体を介した黄体へ間接的な作用である。器具の留置終了までに黄体は黄体ホルモンの合成機能を失うため、器具の抜去直後から急速な血中黄体ホルモンの低下を引き起こし、ウシでは器具抜去後2日目を中心として発情が発現する。発情同期化率は黄体退行薬の単独投与と同等以上である。しかしながら、器具抜去時に黄体機能が存続することを理由として発情同期化効果は完全ではない。



また別の手法は、腟内留置型黄体ホルモン製剤の処置終了日に黄体退行薬を投与する併用法である。これは、上述した黄体退行薬の単独投与および腟内留置型黄体ホルモン製剤の単独処置法での発情同期化率を改善するために考案された手法であり、腟内留置型黄体ホルモン製剤の抜去時あるいはその前日に黄体退行薬(すなわちPGF2α製剤)を投与する。腟内留置型黄体ホルモン製剤の抜去時に機能を存続する黄体を退行させることができるため、発情同期化率はほぼ100%を達成できる。なお、この方法では発情同期日は腟内留置型黄体ホルモン製剤の推奨投与法に準じ12~14日間となる。



上述した3つの手法では、いずれも薬物の処置開始日から発情同期日までの日数が限定される。そのため、薬物投与日あるいは発情同期日は慎重に決定する必要があり、また発情同期予定日前後に畜生の事情により発情観察を行い得なくなる状況では、発情同期化処置が無効となるばかりだけではなく、無駄な薬物代の支出や空胎期間の延長による経済的損失を招くことになる。



近年では飼養頭数の多頭化や畜主の高齢化等のため繁殖管理の労働力が低下しつつあり、今後も子畜の増産を進める上で発情同期化の重要度はさらに高まっていくと推測される。そこで、畜生の意志決定により、処置開始日にたいして発情同期日をより自由に選択できる発情同期化法の開発が重要である。

産業上の利用分野


本発明は、ウシの発情同期化のための方法およびその方法に使用するためのキットに関する。また本発明は、かかるウシの発情同期化を利用したウシの作出方法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
ウシの発情同期化方法において、
(i)ウシに、黄体退行薬および膣内留置型黄体ホルモン製剤を同時に処置するステップ、
(ii)ウシから膣内留置型黄体ホルモン製剤を、ステップ(i)の処置後3~14日に除去するステップ
を含むことを特徴とするウシの発情同期化方法。
【請求項2】
黄体退行薬がプロスタグランジンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ウシの作出方法において、
(i)ウシに、黄体退行薬および膣内留置型黄体ホルモン製剤を同時に処置するステップ、
(ii)ウシから膣内留置型黄体ホルモン製剤を、ステップ(i)の処置後3~14日に除去するステップ、
(iii)自然交配により、または人工授精もしくは胚移植により、ウシを妊娠させ、仔ウシを分娩させるステップ
を含むことを特徴とするウシの作出方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法で使用するための、黄体退行薬および膣内留置型黄体ホルモン製剤を含むキット。
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

JP2009170260thum.jpg
出願権利状態 登録


PAGE TOP

close
close
close
close
close
close
close