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ウイルスレセプター糖鎖認識特異性の判別方法 新技術説明会

国内特許コード P110001991
掲載日 2011年3月24日
出願番号 特願2007-533239
登録番号 特許第5130598号
出願日 平成18年8月29日(2006.8.29)
登録日 平成24年11月16日(2012.11.16)
国際出願番号 JP2006316928
国際公開番号 WO2007026669
国際出願日 平成18年8月29日(2006.8.29)
国際公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
優先権データ
  • 特願2005-255730 (2005.9.2) JP
  • 特願2006-050943 (2006.2.27) JP
発明者
  • 鈴木 康夫
  • 浅井 章良
  • 鈴木 隆
  • 左 一八
  • 村田 健臣
  • 碓氷 泰市
  • 武田 聡
  • 山田 浩平
  • 野口 利忠
出願人
  • 静岡県公立大学法人
  • 国立大学法人静岡大学
  • ヤマサ醤油株式会社
発明の名称 ウイルスレセプター糖鎖認識特異性の判別方法 新技術説明会
発明の概要

簡単な装置若しくは器具で容易にウイルスのレセプター糖鎖認識特異性を判別する方法を提供する。ウイルスのレセプター糖鎖認識特異性及びウイルス変異による感染宿主の変化の判別方法において、シアロ糖鎖含有ポリマーを表面に固定した担体に、前記ウイルスを接触させ、その結合度合いを測定することにより前記ウイルスのレセプター糖鎖認識特異性及びその変異による感染宿主の変化を判別でき、ウイルスのサーベーランス等に好適な方法である。

従来技術、競合技術の概要


インフルエンザは、通常の風邪のような軽い症状のものもあれば、スペイン風邪のような重篤な症状にいたる場合もある。また、最近、鳥インフルエンザが問題になっているように、インフルエンザは、人獣共通の感染症である。インフルエンザウイルスの宿主域は、多くの動物種に及ぶことが知られている。例えば、A型ウイルスは、ヒトの他に、カモ等の野生水鳥、七面鳥、ニワトリ、ウズラ等の家禽、ブタ、ウマ、ウシ、フェレット、クジラ、アザラシ等の動物を宿主とする。



インフルエンザウイルスの外皮は、HA(血赤球凝集素:ヘマグルチニン)およびNA(ノイラミニダーゼ)の2種の酵素タンパクの突起で被われている。HAは血球凝集性の抗原で、宿主細胞に吸着・侵入する際にその細胞表面にあるシアル酸を含むレセプター糖鎖と結合して、ウイルス粒子が細胞内に取り込まれるときに重要な役割を果たしている。



インフルエンザウイルスの抗原性は、HAとNAの組み合わせで決まり、A,B,Cの3型に大別される。A型には、さらに香港型など4種の亜型があることが知られている。A型では、従来より10年程度の周期で異なった亜型が登場したり、また同じ亜型でも年々少しずつ抗原性が変わっていく(抗原シフト)ことが知られている。このため抗原型に完全に適合したワクチンの生産が難しく、その予防効果が問題となっている。



一方、インフルエンザウイルスの型の分類は、上記のように抗原性による分類の他、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖への結合性の違いによる分類がある(非特許文献1)。この分類は、レセプター糖鎖末端のシアル酸の結合様式の相違に基づくものであり、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖の認識性、結合性若しくは親和性の高低の相違に基くものである。



例えば、高病原性A型トリインフルエンザウイルス(H5N1亜型、H9N1、H7N7など)は、「SAα2-3Galβ-(SA:シアル酸)」の結合様式を強く認識するが、「SAα2-6Galβ-」の結合様式への認識性、結合性若しくは親和性は低い。一方、ヒトA型およびB型のインフルエンザウイルスは、「SAα2-6Galβ-」の結合様式を強く認識するが、「SAα2-3Galβ-」の結合様式への認識性、結合性若しくは親和性が低い。



トリインフルエンザウイルスがヒトへ感染するか否かの可能性を評価判定するための最も効果的な方法は、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖への結合性を確認する方法である。すなわち、トリインフルエンザウイルスがヒトへ感染した場合であっても、その感染宿主の変異は遺伝子上の変異に反映されるとは限らない。しかし、レセプター糖鎖への結合性の変異は、感染するためには必須であることから、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖への認識特異性又はその変異を簡便に判別することができれば、インフルエンザウイルスの型の判別に加え、ウイルスの変異による感染宿主の変化や流行拡大の可能性をも予測することができる。



従来、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖への認識特異性を判別する方法としては、共鳴ミラー法を用いた方法がある(特許文献1)。この方法では、共鳴ミラー装置のキュベット内にインフルエンザウイルスに対するレセプター糖鎖を固定し、前記レセプター糖鎖にインフルエンザウイルス検体を反応させる。そして、前記レセプター糖鎖とインフルエンザウイルスとの結合により生じる共鳴角度変化を結合曲線に表し、レスポンス強度をモニタリングする。前記レスポンス強度により、インフルエンザウイルスのレセプター糖鎖の認識特異性が判別できるとされている。



しかしながら、この方法では、レセプター糖鎖を担体へ固定することが面倒である。すなわち、レセプター糖鎖として糖セラミド(シアリル(2-3)ネオラクトテトラオシルセラミド(トリ型)、シアリル(2-3)ラクトテトラオシルセラミド(トリ型)、シアリル(2-6)ネオラクトテトラオシルセラミド(ヒト型)、シアリル(2-6)ラクトテトラオシルセラミド(ヒト型)等)を使用し、これら糖セラミドとインフルエンザウイルスと結合しない糖脂質とをさらに混合し、この混合糖脂質をキュベット内の底面に固定化させるという極めて煩雑かつ複雑な方法で固定化レセプター糖鎖を調製している。さらに、共鳴ミラー装置という特殊で大型の装置を用いる必要がある。このため、大規模研究施設では使用できるが、例えば、患者が発生した現場、空港、養鶏場、駅等のフィールド、病院等の臨床現場で使用することは困難であった。



最近、毒性の強いトリインフルエンザウイルスが世界的に流行し、このトリインフルエンザウイルスがヒトからヒトへ感染するウイルス(新型インフルエンザウイルス)へと変異し、世界的な流行(パンデミック)を引き起こす可能性も指摘されている。このため、安価で、かつ簡易な器具で容易にインフルエンザウイルスのレセプター糖鎖への認識特異性を判別可能な方法の早急な開発が熱望されている。




【非特許文献1】「ウイルス感染における糖鎖認識プロセス」(鈴木康夫、「生化学」第76巻、第3号、pp.227-233,2004)

【特許文献1】特開2001-264333号公報

【特許文献2】特開2003-73397号公報

【特許文献3】特開平10-310610号公報

【特許文献4】特表2003-535965号公報

【特許文献5】特表平11-503525号公報

【特許文献6】特開2004-115616号公報

産業上の利用分野


本発明は、ウイルスのレセプター糖鎖認識特異性の判別方法、該方法に使用可能な新規なシアロ糖鎖含有ポリマー及び担体並びにそれらの効率的な製造法に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】インフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別する方法であって、
下記式(I)または下記式(III)で表されるγ-ポリグルタミン酸に結合させた2種類以上の異なるシアロ糖鎖含有ポリマーを、複数のウエルを有するプレートにおいて、前記ウエル毎、あるいは前記ウエルの列毎に異なる種類の前記シアロ糖鎖含有ポリマーを固定し、または、異なる種類の前記シアロ糖鎖含有ポリマーを2種類以上の担体のそれぞれの表面に固定して、前記シアロ糖鎖含有ポリマー毎に前記ウイルスサンプルを接触させ、それぞれの結合度合いを測定し、
それらの結果を比較してインフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別することを特徴とする、インフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別する方法。
【化学式1】
(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【化学式2】

(式(III)中、Zは水酸基又は式(IV)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(IV)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【請求項2】前記結合度合いの測定が、前記ウイルスに対する抗ウイルス抗体を用いた免疫学的測定法による測定である請求項記載のインフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別する方法。
【請求項3】2種類以上の前記シアロ糖鎖含有ポリマーを含む溶液を前記1つの担体に接触させ、または、異なる前記シアロ糖鎖含有ポリマーを含む複数の溶液を2種類以上の担体の何れかに接触させ、この状態で紫外線を照射した後、前記液を除去することにより、前記シアロ糖鎖含有ポリマーを前記担体に固定する請求項1または2に記載のインフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別する方法。
【請求項4】前記インフルエンザウイルスは、エーテル処理で不活性化されている請求項1乃至3の何れか一に記載のインフルエンザウイルス変異によるトリからヒトへの感染宿主の変化を判別する方法。
【請求項5】下記式(I)で表され、γ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマー。
【化学式1】

(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【請求項6】下記式(III)で表され、γ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマー。
【化学式2】
(式(III)中、Zは水酸基又は式(IV)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(IV)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【請求項7】γ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーの製造法であって、
(工程1)
糖転移酵素を用いて目的とするシアロ糖鎖を合成する工程
(工程2)
工程1で合成したシアロ糖鎖とγ-ポリグルタミン酸とを化学的に結合させる工程
(工程3)
工程2で合成したシアロ糖鎖含有ポリマーを単離精製し、目的とするγ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを取得する工程を含み、
前記γ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーは、下記式(I)または下記式(III)で表されるγ-ポリグルタミン酸に結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーであるγ-ポリグルタミン酸にシアロ糖鎖を結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーの製造法。
【化学式1】
(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【化学式2】

(式(III)中、Zは水酸基又は式(IV)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(IV)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【請求項8】請求項1記載又は2記載の判別方法に用いる担体であって、下記式(I)または下記式(III)で表されるシアロ糖鎖をγ-ポリグルタミン酸に結合させたシアロ糖鎖含有ポリマーを紫外線照射することで表面に固定した担体。
【化学式1】
(式(I)中、Zは水酸基又は式(II)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(II)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【化学式2】

(式(III)中、Zは水酸基又は式(IV)で表されるシアロ糖鎖結合部位であり、nは10以上の整数を示す。式(IV)中、Acはアセチル基、Xは水酸基又はアセチルアミノ基、Rは炭化水素を示す。)
【請求項9】前記担体が複数のウエルを有し、異なる種類のシアロ糖鎖含有ポリマーが複数固定されている請求項記載の担体。
【請求項10】請求項1又は2記載のウイルスのレセプター糖鎖認識特異性又はその変異を判別する方法に用いるキットであって、請求項8又は9記載の担体を含むキット。
産業区分
  • 治療衛生
  • 高分子化合物
  • 微生物工業
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) WO2007/026669
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