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マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)

国内特許コード P110002009
整理番号 S2008-0606-N0
掲載日 2011年3月24日
出願番号 特願2008-130019
公開番号 特開2009-273435
登録番号 特許第5257886号
出願日 平成20年5月16日(2008.5.16)
公開日 平成21年11月26日(2009.11.26)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発明者
  • 藤崎 幸蔵
  • バンズラッフ バツール
  • ダンディスレン ボルドバータル
出願人
  • 国立大学法人 鹿児島大学
発明の名称 マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)
発明の概要

【課題】マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用な新規ポリペプチド及びポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】前記ポリペプチドは、新規のLKRとSDHである。前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを含むベクターは、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。また、前記ポリペプチドに対する阻害剤又は前記ポリペプチドに対する抗体も、マダニ駆除又はマダニ媒介性感染症の治療若しくは予防に有用である。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


地球上に棲息する15,000種を越える吸血性節足動物の中で、マダニはわずか約900種(6%)の弱小グループであるが、ヒト以外の動物では第1位、ヒトでは蚊に次いで第2位に重要な感染症媒介節足動物である。経済的被害からもマダニとマダニ媒介性疾病による世界の損害額は、畜産領域だけでも毎年140億米ドル以上(非特許文献1)にのぼり、その対策は世界各国で畜産振興上の最も重要な課題のひとつとなっている。マダニ防除の中心は化学療法剤などの薬剤利用に深く依存している。DTTが開発された1950年以降、シナプス後膜作用型のニコチン系、ネオニコチノイド系、神経伝達物質分解酵素型の有機燐系、カーバメート系、クロルジメフォルム、神経繊維膜作用型の塩素系、ピレスロイド系などの化合物が殺ダニ剤としてマダニ防除に使用されてきた。しかし、マダニは、薬剤の連続使用によるいわゆる薬剤耐性をいずれの薬剤に対しても獲得し、殺ダニ効果が減少あるいは消失した薬剤も少なくない。さらに、薬剤の使用には常に人あるいは動物への副作用を考えなくてはならず、同時に、環境と食物連鎖の汚染など環境と食の安全性を脅かす薬物残留問題があり、消費者から敬遠される傾向にある。そのうえ、経済動物である家畜では、薬剤の使用には有効性や適用範囲に加えて、膨大な開発コストの面からも限界が生じつつある。



感染症媒介者(ベクター)としてのマダニは、マラリアベクターの蚊と比べて、ウイルス、リケッチア、細菌、原虫、寄生虫などほぼすべての種類の病原体の伝播に関与しうる、他に比肩しうるもののない多種多様な疾病を媒介しうる優れた能力を有する。ヒトではマラリアが世界的に猛威を振るっていることはよく知られているが、動物(家畜・愛玩動物)ではマラリアに類似した血液の感染症として、マダニが媒介するバベシアやタイレリアなどの原虫によるピロプラズマ症がある。本症は畜産・獣医学領域で最も被害の大きい寄生虫感染症であり、近年ではヒトでのバベシア症が世界各国で報告され、新興人獣共通感染症のひとつにあげられている。



感染症予防の最大の武器はワクチンであるが、寄生虫ワクチン(多大な資金と精力的なワクチン開発が行われているマラリアに対しても)の開発は困難を極めている。進化した生活環を有する寄生虫では、動物・ヒトの獲得防御免疫に関する主要な寄生虫由来の抗原や免疫誘導機構など、不明な点が多くあるためであるが、とりわけ重大なのは、寄生虫は高度に発達した免疫回避機構により宿主の免疫監視から逃れるシステムを発達させており、防御免疫の獲得が困難なことにある。このようなことからタイレリアやバベシアなどのピロプラズマ原虫についても例外ではなく、ピロプラズマ症の発症をもたらす宿主体内ステージに焦点をあてた研究開発からはワクチンが生まれていない。



一方、マダニの頻回寄生に対して宿主が抵抗性を獲得する現象を応用した獲得免疫によるマダニ防除法が以前から試みられている(非特許文献2)。また、宿主への接触が全くないマダニタンパク質がマダニ感染に対する防御抗原となることも明らかにされ、実際にワクチン抗原(Tick GARD)(非特許文献3)として一部のマダニとマダニ媒介性病原体[例えば1宿主性のマダニ(Rhipicephalus (Boophilus) microplus)とその媒介するウシバベシア原虫]に対して野外応用されているものの、これらの効果は限定的であり、他のワクチン抗原との併用による効果増大の必要性が指摘されるなど、多くのマダニとマダニ媒介性病原体に対するワクチンは依然として開発途上にあり、病原体側のマダニ媒介性病原体の防除対策もマダニと同様に薬剤に深く依存しているのが実情である。このように21世紀におけるマダニとマダニ媒介性病原体による人及び家畜生産の被害を既存の薬剤使用によって防ぐことは、非常に難しい状況にある。



LKRおよびSDHは、動植物の必須アミノ酸であるリジンがサッカロピンを経由してグルタミン酸塩、ピペコリン酸、アセチル補酵素Aに変換される異化経路において、最初の2ステップに関わる酵素である。すなわち、LKRがリジンとαケトグルタル酸を結合させてサッカロピンを産生し、続いてSDHがサッカロピンをαアミノアジピン酸セミアルデヒドとグルタミン酸に変換する。植物と哺乳類では、LKRならびにSDHを単一の遺伝子がコードすることが広く知られている。また、最近、植物では、このような2機能性LKR/SDHに加えて、単機能性のSDHとLKRを発現するmRNAの存在も明らかになっている(非特許文献4)。しかし、マダニや蚊などの吸血性節足動物において、リジン代謝に関わるLKRとSDHの全塩基配列の単離や特性解明に関しては、これまでまったく実証されるに至っていない。




【非特許文献1】「ベテリナリー・パラシトロジー(Veterinary Parasitology)」, (オランダ国),1997年, 71巻, 77-97頁

【非特許文献2】「ナショナルインスティチュート・オブ・アニマルヘルス・クオータリー(トウキョウ)(National Institute of Animal Health Quarterly、Tokyo)」,1978年,18巻,27-38頁

【非特許文献3】「プラシトロジー・トゥデー(Parasitology Today)」,(オランダ国),1999年,15巻,258-262頁

【非特許文献4】「アミノアシッド(Amino Acids)」,(オーストリア),2006年,30巻,121-125頁

産業上の利用分野


本発明は、マダニのリジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)とサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)、それをコードする核酸分子及びそれらの利用に関する。



より詳細には、本発明は、マダニの生存に不可欠な飢餓耐性、吸血、及び吸血によってマダニ体内に侵入する動物・ヒトの病原体に関わるタンパク質、それをコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用に関する。ここで、動物・ヒトの病原体とは、世界的に甚大な被害をもたらすピロプラズマ症の病原体であるタイレリア又はバベシア原虫をはじめとする人獣共通感染性の細菌・ウイルスを意味する。具体的には、本発明は、マダニの生活史の90~95%を占める未吸血期間、すなわち宿主探索に費やす飢餓期間、あるいは宿主動物からの血液成分の摂取(すなわち吸血)と消化にともなって、中腸上皮や卵巣などの病原体の体内移行経路にあたる多くの器官・組織で発現する、LKRとSDHをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを保持する組換え体細胞、組換えペプチドタンパク質、及び合成ペプチドに関する。本発明により、マダニの吸血・変態や脱皮・産卵の予防と阻止、ピロプラズマ症をはじめとする人及び動物の感染症の媒介、予防及び治療を目的とした化合物の合成、あるいはそれら病原体による感染症の治療薬の開発に応用することができる。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)~(8)より選択されるポリペプチド。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(3)配列番号2の第32~412位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(4)配列番号2の第32~412位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(5)配列番号2の第493~929位のアミノ酸からなる配列を含むポリペプチド;
(6)配列番号2の第493~929位のアミノ酸からなるポリペプチド;
(7)(1)~(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなり、リジンケトグルタル酸レダクターゼ(LKR)及び/又はサッカロピンデヒドロゲナーゼ(SDH)の活性を有するポリペプチド;
(8)(1)~(6)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、LKR及び/又はSDHの活性を有するポリペプチド。

【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。

【請求項3】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。

【請求項4】
請求項2に記載のポリヌクレオチドを含む形質転換体。

【請求項5】
請求項4に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1に記載のポリペプチドを製造する方法。

【請求項6】
請求項1に記載のポリペプチド、請求項2に記載のポリヌクレオチド、および請求項3に記載のベクターからなる群より選択される有効成分と薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。

【請求項7】
マダニに対するワクチンである、請求項6に記載の医薬組成物。

【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチドに対する抗体又はその機能的断片。

【請求項9】
請求項1に記載のポリペプチドと試験物質とを接触させる工程、並びに前記ポリペプチドのLKR及び/又はSDHの活性を分析する工程を含む、前記ポリペプチドのLKRおよび/又はSDHの活性を修飾する物質のスクリーニング方法。

【請求項10】
請求項6若しくは7に記載の医薬組成物を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ駆除方法。

【請求項11】
請求項6若しくは7に記載の医薬組成物を、家畜又は愛玩動物に、有効量で投与することを含む、マダニ媒介性感染症の治療又は予防方法。
産業区分
  • 微生物工業
  • 有機化合物
  • 薬品
  • 治療衛生
  • 試験、検査
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
参考情報 (研究プロジェクト等) 特許第5257886号
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