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セリシンナノファイバーおよびその製造方法、金属イオン吸着材、染色機能増強材、耐薬品増強材、ならびにセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーおよびその製造方法 新技術説明会 実績あり

国内特許コード P110002419
整理番号 N10039
掲載日 2011年4月18日
出願番号 特願2010-288973
公開番号 特開2012-136795
登録番号 特許第5761736号
出願日 平成22年12月24日(2010.12.24)
公開日 平成24年7月19日(2012.7.19)
登録日 平成27年6月19日(2015.6.19)
発明者
  • 塚田 益裕
  • 森川 英明
  • ジャン シアンファ
出願人
  • 国立大学法人信州大学
発明の名称 セリシンナノファイバーおよびその製造方法、金属イオン吸着材、染色機能増強材、耐薬品増強材、ならびにセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーおよびその製造方法 新技術説明会 実績あり
発明の概要 【課題】エレクトロスピニングにより有用な水不溶化可能なセリシンナノファイバー、セリシン・フィブロイン複合ナノファイバー、およびそれらの製造方法を提供すると共に、これらのナノファイバーの水不溶化技術、ならびに水不溶化ナノファイバーからなる染色増強材、金属イオン吸着材および耐薬品性増強材を提供すること。
【解決手段】シルクセリシンからなるセリシンナノファイバーであって、シルクセリシンが、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンである。得られた水溶解性ナノファイバーを水不溶化処理および化学加工処理し、この水不溶化ナノファイバーからなる染色増強材、金属イオン吸着材および耐薬品性増強材。シルクセリシンとシルクフィブロインとからなる複合ナノファイバー。
【選択図】図1
従来技術、競合技術の概要


生糸の本体は絹フィブロイン繊維(以下、シルクフィブロインまたは単にフィブロインともいう)であり、絹フィブロイン繊維は膠着物質のシルクセリシン(以下、シルクセリシンまたは単にセリシンという)で被覆されている。絹フィブロイン繊維である絹糸は衣料材料として古くから使用されてきたのに対し、膠着物質のセリシンは、生糸から絹糸を製造する過程、製糸工程、あるいは生糸の仕上げ過程において重要な役割を果たすものである。セリシンは、その殆どが、生糸が絹製品になるまでの最終段階では除去されてしまい、最終製品では絹フィブロイン繊維の絹糸が利用されているに過ぎない。このため、セリシンは、研究対象になり難く、副産物としてセリシンを多目的に利用する技術開発が重要であるにもかかわらず、その応用や利用の技術の開発は極めて遅れている。



セリシンは、膠質絹タンパク質であり、繭糸の表面を覆い、グリシン、アラニンの他、セリン、スレオニン、アスパラギン酸等の化学反応性に富む嵩高いアミノ酸から構成されている。繭糸から生糸、生糸から絹織物を製造する諸過程で、セリシンは絹糸の溶解性を制御し、高品質な絹糸を製造する上で重要な意味を持つ。また、接着機能タンパク質として極めて重要な役割を果たす。絹繊維を衣料素材として利用する場合、繭糸を覆うシルクセリシンの殆どは除去・廃棄されてしまうため、セリシンは貴重な未利用資源である。我が国の繭生産量は683トン、世界の主要な養蚕国の中国繭生産量は64万トン(平成16年度統計)であり、我が国だけでも134トン、中国では何と13万トンのセリシンが全く利用されないまま廃棄されている計算となる。こうした未利用資源を新たな素材(例えば、エレクトロスピニング技術を利用して製造するナノファイバー形状の素材等)として広範な産業分野で利活用することが強く望まれてきた。しかし、いまだにその有効な利活用法は開発されていない。



繭糸や生糸を熱水あるいはアルカリ水溶液で加熱処理すると、水溶解性のシルクセリシンは溶出し、その溶出液がシルクセリシン水溶液となる。これをポリエチレン膜の上に拡げて蒸発乾燥固化すると、乾燥固化条件によっても異なるが、粉末状態または脆い膜状のシルクセリシンが得られる。しかし、セリシンは水に対する溶解度が高いため、その使用用途が限定されるので、広い用途を目的とするためには、水不溶性のセリシンを開発することが必要である。



従来、フィブロイン繊維、フィブロイン膜、またはフィブロイン粉末を溶解して、エレクトロスピニングする際の溶媒としては、ヘキサフルオロアセトン1.5水和物 (Hexafluoroacetone(HFAc)1.5hydrate、例えば、和光純薬工業(株)製)、ヘキサフルオロイソプロパノール(1,1,1,3,3,3 Hexafluoro-2-propanol(HFIP)、例えば、和光純薬工業(株)製)等が使用されていた。すなわち、(1)絹フィブロイン繊維を溶解する際にはHFAcを用いる技術が知られ、(2)繭糸を精練してセリシンを除去した絹フィブロイン繊維を溶解する際にはHFIPを用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。



しかし、セリシン蚕の繭層の溶液を作製する場合、従来のエレクトロスピニングで使用されている上記溶媒(HFAc、HFIP)では、セリシン蚕の繭層の溶解量が十分でなく、また、溶解時にセリシン蚕の繭層の分子量を大幅に低下させるという問題があるため、これらの溶媒を使用することができない。しかし、セリシンの分子量を低下させることなくセリシン蚕の繭層を溶解させ、エレクトロスピニングに利用できるセリシン溶液とするための溶媒について、また、セリシン溶液を用い、所望の諸物性を備えたナノスケールのセリシンナノファイバーを製造することは、いまだ提案されておらず、そのようなセリシンナノファイバーを製造する技術の開発が強く望まれてきた。



上記した「セリシン蚕の繭層」という用語は、セリシン繭幼虫が作った繭層を意味するが、以下では、単に「セリシン繭層」とも称す。また、上記した「セリシン繭層の分子量の低下」とは、正確には、セリシン繭層を構成するセリシン分子の分子量が低下することを言うが、以下、単に「セリシン繭層の分子量の低下」または「セリシンの分子量の低下」とも称す。



本発明者らは、家蚕または野蚕由来の絹タンパク質水溶液を透析して絹タンパク質ドープを調製した後、この絹タンパク質ドープを用いてエレクトロスピニングにより絹タンパク質ナノファイバーを製造する方法および得られた絹タンパク質ナノファイバーを提案した(例えば、特許文献2参照)。この場合、絹タンパク質ドープ(水溶液)として絹セリシンドープ(水溶液)を用い、エレクトロスピニングして絹セリシンナノファイバーを製造し、所望によりルコールのみにて水不溶化を行ったことを提案した。



セリシンを有機溶媒に溶かした溶液を用い、エレクトロスピニングして製造できるセリシンナノファイバーは、そのままでは水に極めて溶解し易いため、応用範囲は限られてしまうという問題があるので、新しい応用を拓くには、水溶解性セリシンナノファイバーを水不溶性に変える必要があるが、こうした目的に合致した効率的な水不溶化処理方法はいまだ知られていない。また、セリシンの分子量を低下させることなく、効率よく溶解できれば、セリシンにカイコ由来のフィブロインを複合した新素材が製造できるはずであるが、そのような溶媒および新素材についてもいまだ知られていない。



また、本発明者らは、商品化したセリシンパウダーを85℃の加熱水溶液に溶解してなるセリシン水溶液をエレクトロスピニングすることでセリシンナノファイバーを製造することを提案した(特開2010-270426号)。セリシンパウダーを使用するには、加熱した水溶液にセリシンパウダーを溶解する。セリシン濃度を40wt%~60wt%の濃度範囲に設定してエレクトロスピニングすると、平均繊維径とその標準偏差が微少なセリシンナノファイバーが製造できることが知られている。しかし、セリシン繭層を溶解させる溶媒、溶解条件、セリシン濃度、エレクトロスピニング条件によっては、製造されるセリシンナノファイバー中にビーズ状の形態が存在する場合がある。



セリシン繭層として、セリシンを大量に生産する新蚕品種「セリシンホープ」が知られており(例えば、特許文献3参照)、このセリシンホープのセリシン繭層を用いてハイドロゲル、セリシン多孔質体を製造する技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。これによるとセリシンホープのセリシン繭層を臭化リチウム水溶液で溶解させてなる溶液に1MのTris-HC緩衝液(pH9)を加えた後、弱アルカリ性に調整する。透析チューブに入れて純水で透析を繰りかえし、濾過を行い、セリシン水溶液を調製する。このセリシン水溶液にエタノールを添加して超音波処理することでセリシンハイドロゲルができる。また、このセリシン水溶液を-25℃で凍結させて水分を除去することでセリシン多孔質体が製造できる。しかしながら、セリシンホープ繭層を用いて新素材を製造する技術はこの技術以外には知られていない。

産業上の利用分野


本発明は、セリシンナノファイバーおよびその製造方法、金属イオン吸着材、染色機能増強材、耐薬品増強材、ならびにセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーおよびその製造方法に関し、特にセリシンを多量に吐糸するセリシン蚕品種由来のセリシンを用いるセリシンナノファイバーおよびこれを水不溶化したセリシンナノファイバーならびにそれらの製造方法に関すると共に、水不溶化したセリシンナノファイバーからなる金属イオン吸着材、耐薬品性増強材および染色性増強材に関する。本発明はまた、セリシン・フィブロイン複合ナノファイバーおよびその製造方法にも関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
シルクセリシンからなるセリシンナノファイバーであって、該シルクセリシンが、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンからなり、該シルクセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解したセリシン溶液から得られたセリシンナノファイバーであることを特徴とするセリシンナノファイバー。

【請求項2】
前記シルクセリシンが、セリシン分子内にエポキシ化合物による処理でエポキシ化合物が導入されてなるセリシンか、二塩基酸無水物による処理で二塩基酸無水物がセリシンの塩基性アミノ酸側鎖と結合し、カルボキシル基が導入されてなるセリシンか、またはアルデヒド化合物による処理でセリシン分子間が架橋されてなるセリシンであることを特徴とする請求項1に記載のセリシンナノファイバー。

【請求項3】
裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンからなるシルクセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解してなるセリシン溶液を用い、エレクトロスピニングしてなることを特徴とするセリシンナノファイバーの製造方法。

【請求項4】
前記エレクトロスピニングした後、得られたセリシンナノファイバーを水不溶化処理してなることを特徴とする請求項3に記載のセリシンナノファイバーの製造方法。

【請求項5】
前記水不溶化処理が、アルコールと間接的に接触させるかまたはアルデヒド化合物を作用させる第1工程と、エポキシ化合物または二塩基酸無水物を作用させる第2工程とからなることを特徴とする請求項に記載のセリシンナノファイバーの製造方法。

【請求項6】
シルクセリシンの分子内に二塩基酸無水物による処理でカルボキシル基が導入されてなる水不溶性のセリシンナノファイバーからなることを特徴とする金属イオン吸着材。

【請求項7】
前記セリシンナノファイバーを構成するシルクセリシンが、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンであることを特徴とする請求項に記載の金属イオン吸着材。

【請求項8】
シルクセリシンの分子内にエポキシ化合物による処理でエポキシ化合物が導入されてなるかまたは二塩基酸無水物による処理でカルボキシル基が導入されてなる水不溶性のセリシンナノファイバーであって、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンからなる該シルクセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解したセリシン溶液から得られたセリシンナノファイバーからなることを特徴とする染色機能増強材。

【請求項9】
シルクセリシンの分子内にエポキシ化合物による処理でエポキシ化合物が導入されてなる水不溶性のセリシンナノファイバーであって、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンからなる該シルクセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解したセリシン溶液から得られたセリシンナノファイバーからなることを特徴とする耐薬品性増強材。

【請求項10】
裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層由来のセリシン、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンからなるシルクセリシンとシルクフィブロインとの複合体からなり、該複合体をトリフルオロ酢酸で溶解した溶液から得られたセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーであることを特徴とするセリシン・フィブロイン複合ナノファイバー。

【請求項11】
シルクセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解してなるセリシン溶液と、シルクフィブロインをトリフルオロ酢酸で溶解してなるフィブロインスポンジとからなる複合溶液を用い、エレクトロスピニングしてなることを特徴とするセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項12】
前記複合溶液が、裸蛹(遺伝子記号Nd)、セリシン蚕(遺伝子記号Nd-s)もしくはセリシンホープの繭層、またはこれらカイコの幼虫体内から取り出した絹糸腺内の液状セリシンもしくはこの液状セリシンを凝固させたセリシンをトリフルオロ酢酸で溶解してなるセリシン溶液と、シルクフィブロインをトリフルオロ酢酸で溶解してなるフィブロインスポンジとからなる複合溶液であることを特徴とする請求項11に記載のセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項13】
前記エレクトロスピニングした後、得られたセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーを水不溶化処理してなることを特徴とする請求項11または12に記載のセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーの製造方法。

【請求項14】
前記水不溶化処理が、アルコールと間接的に接触させるまたはアルデヒド化合物を作用させる第1工程と、エポキシ化合物または二塩基酸無水物を作用させる第2工程とからなることを特徴とする請求項13に記載のセリシン・フィブロイン複合ナノファイバーの製造方法。
産業区分
  • 布製品
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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