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扁平上皮癌組織の放射線感受性マーカー

国内特許コード P110002457
掲載日 2011年4月22日
出願番号 特願2011-027348
公開番号 特開2012-165666
登録番号 特許第5828446号
出願日 平成23年2月10日(2011.2.10)
公開日 平成24年9月6日(2012.9.6)
登録日 平成27年10月30日(2015.10.30)
発明者
  • 本山 悟
  • 吉野 敬
  • 小川 純一
  • 杉山 俊博
出願人
  • 国立大学法人秋田大学
発明の名称 扁平上皮癌組織の放射線感受性マーカー
発明の概要 【課題】新規の信頼性の高い扁平上皮癌細胞の放射線感受性のマーカーを提供すること、即ち、扁平上皮癌組織の放射線感受性を検査するための方法、並びに、当該方法を実施するために用いられる試薬及びキットを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、網羅的解析により、扁平上皮癌細胞の放射線感受性を高めるマーカーとして新たにBAG1 (BAG-1) を同定した。本件発明の検査方法、試薬、又はキットを使用することにより、個々の患者が放射線化学療法を選択すべきか否かの判断が容易になり、患者のQOLの向上を図ることができる。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要


癌の放射線療法の近年の進歩により、患者は第一に選択すべき処置として、根治的な放射線化学療法を選択できるようなった。しかし、癌がある程度の放射線感受性 (放射線照射により癌細胞が死ぬこと) を示すことは間違いないが、個々の腫瘍の感受性には大きなばらつきがある。即ち、放射線療法は一部の患者には効果的であるが、他の患者には効果が無いか又は有害作用を及ぼす。後者の患者にとっては、放射線治療は貴重な時間の浪費であり、また、治療効果のある外科的処置を受ける機会を失わせるものであったかもしれない。従って、信頼性の高い癌細胞の放射線感受性のマーカーの同定が強く望まれてきた。



今日までに、変異型p53を発現するヒト乳癌培養細胞株 (T47D) にインスリン様増殖因子結合タンパク質3 (IGFBP-3) のcDNAをトランスフェクションすると、当該細胞株の放射線感受性が増加することが報告されている (非特許文献1) 。



特許文献1においては、脳癌患者の放射線感受性 (放射線療法で効果があること:患者の処置後の生存率などから判断する。厳密には、癌細胞の放射線感受性とは全く異なる概念であるが、文脈上明らかなので、以後特に区別しない場合がある。) のマーカーとして、60種の細胞株の網羅的解析で相関が検出された他の190個のマーカーと共にIGFBP3が列挙されている (Table 12, Figure 9) 。しかし、IGFBP3が単独で癌患者の放射線感受性マーカー又は癌細胞の放射線感受性マーカーとして利用できるか否かの検証はされていない。



特許文献2においては、神経膠芽腫患者の化学療法又は放射線療法後の予後不良のマーカーとして、網羅的解析で相関が検出された他の38個のマーカーと共にIGFBP3が列挙されている (Table 4) 。この知見は非特許文献1、特許文献1、及び本発明者らの結果と矛盾するように思われるが、その原因は明らかでない。



また、ヒト食道扁平上皮癌由来細胞株 (TE-5及びTE-9) にREG-Iα及びREG-Iβをトランスフェクションにより発現させると、化学療法感受性及び放射線感受性が増加することが報告されている (非特許文献2) 。



BAG1 (BCL2-associated athanogene) 遺伝子は、BCL-2タンパク質に相互作用する抗アポトーシスタンパク質をコードする遺伝子として同定された (Cell. 1995 Jan 27; 80(2): 279-84.) 。BAG1タンパク質の発現とある種の癌患者の放射線感受性又はある種の癌細胞の放射線感受性の関係について、これまでに幾つかの報告が発表されている。



非特許文献3では、乳腺腫瘍摘出術を受けた後さらに放射線療法を受けた初期の乳癌女性患者のうち、腫瘍生検のBAG1発現が上方制御されている患者では無遠隔転移生存率及び全生存率が高まることが報告されている。しかし、122人の乳癌患者の全てが放射線療法を受ける前に乳腺腫瘍摘出術を受けているので、観察された無遠隔転移生存率及び全生存率の上昇が癌細胞の放射線感受性の増加によるものであるかは明らかではなかった。



その後の研究により (非特許文献4) 、BAG-1の過剰発現により放射線照射によるMCF7乳癌細胞のアポトーシスが抑制されることが示された。非特許文献5及び非特許文献6は、BAG-1タンパク質の核内発現により、放射線照射による結腸直腸腺腫由来S/RG/C2株化細胞のアポトーシスが抑制されることを示した。これらの結果は、少なくとも乳癌や結腸直腸癌などの腺癌においては、BAG-1発現は癌細胞の放射線感受性を低下させることを強く示しており、非特許文献3で観察された無遠隔転移生存率及び全生存率の上昇は癌細胞の放射線感受性の増加によるものではないと結論付けることができる。



ヒトパピローマウイルスの感染によりp53が抑制されており、かつ、放射線抵抗性を示すヒトケラチノサイト細胞株HK18-IRにおいては、NFκBと共にBAG-1遺伝子が活性化されていることが示された (非特許文献7) 。ここで、HK18-IR細胞株はHK18細胞株から放射線抵抗性を指標にして選択されたものである。HK18株化細胞は、ヌードマウスの皮下に注射すると扁平上皮癌を生じることが報告されている (Virology. 1993 Oct; 196(2): 855-60.) 。



非特許文献7の結果は一見すると本発明者らの結果と矛盾するようにも思われるが、HK18-IR細胞株はHK18株化細胞に電離放射線を照射することにより樹立されていることに注意すべきである。電離放射線はNFκBの発現を誘導することが知られており (J Clin Invest. 1991 Aug; 88(2): 691-5.) 、NFκBがIAP、Bcl-XL、Bcl-2などの抗アポトーシスタンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導することも広く知られている (http://www.genome.jp/kegg-bin/show_pathway?hsa04210) 。実際、HK18-IR株化細胞におけるBAG-1遺伝子の活性化は、HK18株化細胞と比較して活性化されているということであり (Table 3) 、これは放射線照射それ自体により誘導された可能性が高い。



また、HK18-IR (及びHK18) 株化細胞はヒトパピローマウイルスの感染によりp53が抑制されていることに注意すべきである。電離放射線によって形成される染色体DNAの二重鎖切断が、野生型p53を活性化させ、標的遺伝子の発現等を介してアポトーシスを引き起こすことは広く知られている (The Biology of Cancer, Robert A. Weinberg, June 2006, Garland Science, pp.307-356) 。また、ヒト癌組織におけるp53の状態は、「不活性化されている」、「変異されている」、又は、「野生型である」のいずれでもあり得て、更に、同一癌組織の中でも不均一な可能性がある。従って、放射線誘導アポトーシスのマスター遺伝子p53が抑制された細胞株における放射線感受性についての実験結果は、臨床応用のための限定的な示唆を与えるにとどまる。

産業上の利用分野


本願発明は扁平上皮癌組織の放射線感受性を検査するための方法、並びに、当該方法を実施するために用いられる試薬及びキットに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含む、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性を検査するための方法:
当該被験者の食道扁平上皮癌組織から取得した生体試料におけるBAG1遺伝子の発現量を測定する工程;及び、当該発現量を当該被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性と関連付ける工程;
ここで、当該発現量が準と比較して増加している場合に当該ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性は増加していると判断される。

【請求項2】
配列番号:1に記載された核酸配列又はその相補配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドからなるプライマーを含むヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用試薬

【請求項3】
配列番号:1に記載された核酸配列又はその相補配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドからなるハイブリダイゼーションプローブを含むヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用試薬

【請求項4】
配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを認識する抗体を含有する、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用試薬。

【請求項5】
配列番号:1に記載された核酸配列又はその相補配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチド配列を含む1又は複数のポリヌクレオチド、及び、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織から取得した生体試料におけるBAG1遺伝子の発現量が基準と比較して増加している場合に当該被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性は増加していることを教示する使用説明書を含む、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用キット。

【請求項6】
配列番号:1に記載された核酸配列又はその相補配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む1又は複数のポリヌクレオチド、及び、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織から取得した生体試料におけるBAG1遺伝子の発現量が基準と比較して増加している場合に当該被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性は増加していることを教示する使用説明書を含む、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用キット。

【請求項7】
配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを認識する1又は複数の抗体、及び、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織から取得した生体試料におけるBAG1遺伝子の発現量が基準と比較して増加している場合に当該被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性は増加していることを教示する使用説明書を含む、ヒト被験者の食道扁平上皮癌組織の放射線感受性検査用キット。
産業区分
  • 微生物工業
  • 試験、検査
  • 有機化合物
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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出願権利状態 登録
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