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バイオディーゼル製造用触媒とその製造方法並びにバイオディーゼルの製造方法 新技術説明会

国内特許コード P110002689
整理番号 13223
掲載日 2011年5月31日
出願番号 特願2008-334433
公開番号 特開2010-155195
登録番号 特許第5167110号
出願日 平成20年12月26日(2008.12.26)
公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発明者
  • 植木 悠二
  • 玉田 正男
出願人
  • 独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明の名称 バイオディーゼル製造用触媒とその製造方法並びにバイオディーゼルの製造方法 新技術説明会
発明の概要

【課題】短時間で多量のバイオディーゼルを効率よく低コストで製造することができるバイオディーゼル製造用触媒とその製造方法並びにバイオディーゼルの製造方法を提供する。
【解決手段】油脂類とアルコール類とのエステル交換反応によりバイオディーゼルを製造するための繊維状の触媒であって、高分子繊維基材にグラフト重合によりグラフト鎖が導入され、前記グラフト鎖は、アミノ基及び第4級アンモニウム基から選択される1種または2種以上の官能基、及び水酸化物イオンを有することとする。
【選択図】なし

従来技術、競合技術の概要


油脂類は、他のバイオマス資源と比較して発熱量が高く、さらにその多くは常温で液体である。これらの特徴は自動車燃料として有望であるが、このままでは動粘度(>30mm/s (40℃))や引火点(>300℃)が高く、また、セタン価が40前後と低いため利用することができない。一方、油脂類とアルコールとのエステル交換反応により合成される脂肪酸エステルは、動粘度(3~5mm/s(40℃))や引火点(160℃程度)が低く、また、セタン価が50~60程度と軽油の性状に比較的近く、軽油代替燃料として注目されている。この脂肪酸エステルはバイオディーゼル燃料(以下、単にバイオディーゼルともいう)と呼ばれ、従来の石油系ディーゼル燃料(軽油)に比べ、次のような特徴がある。



1)バイオマス資源由来であるため、バイオディーゼル燃料使用により発生する二酸化炭素は、地球環境中の二酸化炭素の増減に影響を与えない(カーボンニュートラル)。



2)原料となる植物を使用国で生産可能であり、石油資渡への依存度を軽減することが可能である。



3)軽油と比較し、排ガス成分中の不燃炭化水素を93%、一酸化炭素を50%、浮遊粒子状物質を30%減少させることができる。



4)硫黄分を含まないため、排気ガス中の硫黄酸化物(SOx)がほぼゼロである。



5)軽油と比較し、引火点が高く、また、燃焼中に酸素を含み完全燃焼を促進するため、黒煙の排出量を軽油の3分の1~10分の1に低減することができる。



6)バイオディーゼル燃料は、どんなディーゼルエンジンにも改良不要でそのまま使うことが可能であり、また、燃費は軽油と同等である。



7)生分解性が良く安全に取り扱いができる。



上記のように、石油系ディーゼル燃料よりも優れた特徴を多数有するバイオディーゼル燃料を積極的に利用しようとする動きは、近年徐々に活性化している。特に、欧米ではバイオディーゼル燃料の利用が一般化しつつあり、軽油との混合燃料などは広く普及している。



油脂類からバイオディーゼルを工業的に作製する方法は幾つか開発されており、現在は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの均一触媒を使用したアルカリ触媒法が主流である。しかし、このアルカリ触媒法では、比較的穏やかな温度。圧力条件で反応を進行させることができるものの、精製段階でバイオディーゼル中に溶解したアルカリ触媒を分離除去するための工程が必要である、原料油脂中の遊離脂肪酸とアルカリ触媒が反応して石鹸を生成する、触媒の再利用が困難である、原料油脂中の水が触媒機能を低下させるなどの問題を抱えており、製造コストの上昇や環境負荷が大きくなるといった要因を多数含んでいる。近年では、煩雑な触媒分離工程や副生成物が発生しないバイオディーゼル製造方法として、酸触媒法、リパーゼ酵素法、超臨界メタノール法、金属酸化物法、固体触媒法などの新たな方法が研究されている(非特許文献1)。しかし、これらの方法では、高温・高圧が必要である、触媒の再生が困難である、触媒が高価である、触媒活性が低い、反応速度が遅い、アルコール添加量の制御が不可欠であるなどの問題があり、工業化には不向きとされている。



バイオディーゼル製造方法として、固体塩基性触媒の利用も試みられており、こうした固体塩基性触媒としてアミノ基を有する陰イオン交換樹脂が提案されている(特許文献1)。この陰イオン交換樹脂を利用した方法では、触媒が反応系に溶解することがないため、触媒の分離工程を簡略化することができるが、反応系中のトリグリセリド濃度が0.1~3重量%程度と大過剰量のアルコール存在下でエステル交換反応を行うため、触媒活性が著しく低く、また、バイオディーゼルの生産性に乏しいなどの問題があり、実用的ではなかった。この特許文献1の改良技術として、米本らにより多孔性陰イオン交換樹脂を触媒としたバイオディーゼル製造方法が提案された(特許文献2、非特許文献2)。この多孔性陰イオン交換樹脂を用いた方法では、特許文献1に明記されている反応系中のトリグリセリド濃度が0.1~3重量%の希薄溶液であることが望ましいとされた事実とは対照的に、トリグリセリド濃度は、38.9~95.0重量%(油脂類とアルコールのモル比=1/30~1/1)の高濃度溶液であることが望ましいとされ、また、ヒドロキシル基が反応溶液中に遊離しないため鹸化反応が生じず、副生成物の生成やそれに伴う触媒活性の低減などを抑えることができた。しかしながら、多孔性陰イオン交換樹脂を触媒とした場合、樹脂の構造上、細孔内部に反応部位があるため、細孔内への試料の拡散過程が律速となる。そのため、反応速度は遅く、米本らの提案する方法でもエステル交換反応終了には、3時間以上の時間を要し、バイオディーゼル製造の工業化、並びに、バイオディーゼルの大量生産には、触媒のさらなる改良が急務である。



一方、本発明者は、反応速度が速く、高速処理が可能なイオン交換体として、グラフト重合体を報告している(特許文献3)。このグラフト重合体は、放射線を利用した高分子加工技術である放射線グラフト重合法により、高分子基材表面上にポリマー鎖(グラフト鎖)を直接導入することにより作製される。また、放射線グラフト重合法では放射線の高いエネルギーを利用しているため、合成面での制約は少なく、繊維、織布、不織布、平膜、フィルムなど種々の形状のグラフト重合体を容易に作製することが可能である。特に、比表面積が大きく接触効率の高い繊維状高分子を基材とするグラフト重合体は金属吸着速度が従来の粒子状樹脂と比較して10~100倍程度速く、また、取り扱いも簡便である(非特許文献3)。このような優れた特徴を有するグラフト重合体は、河川水や海水などの環境水中に含まれる微量金属元素の回収・除去に使用される。



本発明者は、この技術をさらに発展させ、前記グラフト重合体のグラフト鎖にアミノ基や第4級アンモニウム基を導入した重合体が、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応によって得られるバイオディーゼルの製造に極めて優れた触媒能を示すことを見出した。従来、バイオディーゼルの製造のために使用される触媒としては、粒子状樹脂を担体としてこれにアミノ基や第4級アンモニウム基を導入したものが一般的であるが、本発明者は前記グラフト重合体について鋭意研究した結果、グラフト重合体を触媒に用いることにより油脂類とアルコール類とのエステル交換反応の反応率が向上することを知見し、本発明に至ったものである。なお、本発明者が先に報告したグラフト重合体の技術は金属吸着剤に関する技術であり、バイオディーゼル製造とは技術分野が全く異なることから、当業者は前記グラフト重合体の技術を用いて本発明を想到することができない。



バイオディーゼルは、非極性液体である油脂と極性液体であるアルコールとのエステル交換反応により生成されるが、両反応物は反応系内では通常混合されずに二相に分離している。そのため、エステル交換反応は液体と液体との接触界面でのみ行われ、その結果、反応の速度は低く、効率的にバイオディーゼルを製造するのには不向きである。このようなバイオディーゼル製造時の反応速度に関する問題を解決するために、新たなイオン交換体の開発・利用とは別に、油脂とアルコールとの接触界面を増大させて反応効率を上昇させる方法として、微細な液滴を作製するための効率的な攪拌方法や攪拌容器の開発、及び、補助溶剤や生成したバイオディーゼルを用いた均一相でのエステル交換反応(特許文献4-6)などの新技術が研究・開発されている。しかしながら、新たな攪拌方法や攪拌容器の開発においては、微細な液滴の作製には高度な技術を要し、また、従来の装置が使用不可能であるため技術面、コスト面に問題がある。一方、補助溶剤を用いた均一相でのエステル交換反応では、反応系が均一相となるため精緻な攪拌操作などは必要なく、攪拌速度が遅い条件下でも十分高い反応速度を得ることができるものの、反応終了後には生成物から補助溶剤を分離除去しなければならず、新たに補助溶剤分離装置が必要になるため、コストアップに繋がる。

【特許文献1】特公平6-006718号公報

【特許文献2】特開2006-104316号公報

【特許文献3】特開2005-344047号公報

【特許文献4】カナダ特許2,131,654号公報

【特許文献5】特表2003-507495号公報

【特許文献6】特表2006-524267号公報

【非特許文献1】坂志朗、南英治、福田秀樹、バイオディーゼルのすべて、アイピーシー、82-134,2006.

【非特許文献2】N.Shibasaki-Kitakawa, H.Honda, H.Kuribayashi, T.Toda, T.Fukumura, T.YoNEMOTO, Biodiesel production using anionic ion-exchange resin as heterogeneous catalyst, Bioresour. Technol., 98, 416-421, 2007.

【非特許文献3】S. Aoki, K. Saito, A. Jyo, A. Katakai, T. Sugo, Phosphoric Acid Fiber for Extremely Rapid Elimination of Heavy Metal Ions from Water, Anal. Sci., 17 Suppl., i205-208, 2001.

産業上の利用分野


本発明は、バイオディーゼル製造用触媒とその製造方法並びにバイオディーゼルの製造方法に関するものである。

特許請求の範囲 【請求項1】
油脂類とアルコール類とのエステル交換反応によりバイオディーゼルを製造するための繊維状の触媒であって、
高分子繊維基材にグラフト重合によりグラフト鎖が導入され、前記グラフト鎖は、アミノ基及び第4級アンモニウム基から選択される1種または2種以上の官能基、及び水酸化物イオンを有することを特徴とするバイオディーゼル製造用触媒。

【請求項2】
高分子繊維基材は、糸状、または繊維の集合体である織布、不織布もしくは中空糸膜であることを特徴とする請求項1に記載のバイオディーゼル製造用触媒。

【請求項3】
高分子繊維基材の平均繊維径が、1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオディーゼル製造用触媒。

【請求項4】
請求項1から3のいずれかのバイオディーゼル製造用の触媒を製造する方法であって、
高分子繊維基材を活性する工程と、活性化した高分子繊維基材を、反応性モノマーを含む溶液に接触させて前記反応性モノマーを前記高分子繊維基材にグラフト重合させる工程と、グラフト重合した高分子繊維基材のグラフト鎖にアミノ基及び第4級アンモニウム基から選択される1種または2種以上の機能性官能基を導入する工程と、グラフト重合した高分子繊維基材をアルカリ処理する工程と、を有することを特徴とするバイオディーゼル製造用触媒の製造方法。

【請求項5】
請求項1から3のいずれかのバイオディーゼル製造用の触媒を製造する方法であって、
高分子繊維基材を活性する工程と、活性化した高分子繊維基材を、アミノ基及び第4級アンモニウム基から選択される1種または2種以上の機能性官能基を有する反応性モノマーを含む溶液に接触させて前記反応性モノマーを前記高分子繊維基材にグラフト重合させる工程と、グラフト重合した高分子繊維基材をアルカリ処理する工程と、を有することを特徴とするバイオディーゼル製造用触媒の製造方法。

【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載のバイオディーゼル製造用触媒に、油脂類とアルコール類を接触させ、油脂類とアルコール類とのエステル交換反応によりバイオディーゼルを製造することを特徴とするバイオディーゼルの製造方法。

【請求項7】
油脂類が、天然油脂、合成油脂、モノグリセリド、ジグリセリド、合成トリグリセリド、これらの変性物、または、これらを含む廃品油脂類であることを特徴とする請求項6に記載のバイオディーゼルの製造方法。

【請求項8】
アルコール類は、炭素数1~18の直鎖状または分岐鎖状アルコールから選択される1種または2種以上の混合アルコールを含むことを特徴とする請求項6または7に記載のバイオディーゼルの製造方法。

【請求項9】
反応温度が、10℃~100℃の範囲であることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のバイオディーゼルの製造方法。
産業区分
  • その他無機化学
  • 有機化合物
  • 液体燃料・油脂
国際特許分類(IPC)
Fターム
出願権利状態 権利存続中
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