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小麦ふすま、大麦糠、米糠からのアンジオテンシンI変換酵素阻害剤

国内特許コード P110002724
掲載日 2011年6月6日
出願番号 特願2010-264688
公開番号 特開2011-102300
登録番号 特許第4686792号
出願日 平成22年11月29日(2010.11.29)
公開日 平成23年5月26日(2011.5.26)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
優先権データ
  • 特願2007-196206 (2007.7.27) JP
発明者
  • 野方 洋一
出願人
  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明の名称 小麦ふすま、大麦糠、米糠からのアンジオテンシンI変換酵素阻害剤
発明の概要


【課題】 本発明は、小麦ふすま、大麦糠、米糠から、プロテアーゼやアミラーゼを添加することなく、しかも人体に有害な物質を添加することなく、しかも経済的、且つ効率よく、アンジオテンシンI変換酵素の阻害活性、並びに、血圧降下機能を有する有効成分を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、少なくとも小麦ふすまを含む小麦種子粉末、少なくとも大麦糠を含む大麦種子粉末、及び少なくとも米糠を含む米種子粉末よりなる群から選ばれた少なくも1種の粉末原料を、;水又は緩衝液に添加混合し、添加混合後の当該水又は緩衝液のpHを3.05~3.95とし、30~45℃の温度で、少なくとも4時間以上内在性プロテアーゼの作用により貯蔵タンパク質を分解反応させ、;得られた反応物を有効成分として含有してなることを特徴とする、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤、並びに、前記アンジオテンシンI変換酵素阻害剤を含有してなる血圧降下作用を有する医薬を提供する。
【選択図】 図1

従来技術、競合技術の概要


食品加工廃棄物の処理は、食品産業の抱える大きな問題である。廃棄物のうち有用なものの再利用を求めるために、「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)」が制定された(2000年6月公布、2001年5月施行)。
これに応じて、各食品メーカーは、食品廃棄物からメタンガス、液肥、化粧品、食品添加剤、機能性食品等、商品性のある素材の生産に着手している。
小麦ふすまや米糠は、一次加工の副産物であり、ふすまは年間およそ130万トン、米糠は80~90万トンもの生産量がある。
これらは家畜飼料、米油、キノコの苗床等の利用に留まり、多くは廃棄されることから、有効な利用法の開発が求められている。
最近、ホールグレイン(全粒穀物)の価値が見直され、従来は廃棄の対象であったふすまや糠の部分を含む全粒穀物が食材として注目されるようになった。その背景には胚芽や種皮に含まれる機能性因子の摂取による生活習慣病の予防効果への期待がある。



生活習慣病の代表的なものの一つとしては、高血圧症が挙げられる。高血圧症は脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、腎硬化症など様々な合併症を引き起こすことが知られている。
血圧の調節において、重要な役割を果たしている酵素の一つはアンジオテンシンI変換酵素(ACE)である。血圧の調節系は、昇圧に関するレニン・アンジオテンシン系と降圧に関するカリクレイン・キニン系とが重要な役割を果たしている。昇圧に関するレニン・アンジオテンシン系では、肝臓から分泌されるアンジオテンシノーゲンが腎臓で生成されるレニンによって、アンジオテンシンIとなり、更に「アンジオテンシンI変換酵素」により、アンジオテンシンIIに変換される。アンジオテンシンIIは、血管を収縮させ、血圧を上昇させる。降圧に関するカリクレイン・キニン系では、カリクレインがキニノーゲンに作用して生成されるブラジキニンが、血管を弛緩させて血圧を下降させる。「アンジオテンシンI変換酵素」は、ブラジキニンを分解する活性も有する。
従って、「アンジオテンシンI変換酵素」の酵素活性を抑制もしくは阻害することによって血圧の上昇を抑制し、さらには血圧を降下させることが可能となる。



アンジオテンシンI変換酵素の阻害活性を有する物質としては、特定の配列を有するポリペプチドがアンジオテンシンI変換酵素の阻害活性を示すことが知られており、食用タンパク質にプロテアーゼを添加し、分解物の中から該酵素の阻害活性の強いポリペプチドを分離、精製できることが知られている。
アンジオテンシンI変換酵素の阻害活性を有するポリペプチドを分離精製することのできる食用タンパク質としては、魚肉であるイワシ(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)、カツオ(例えば、特許文献2および非特許文献2,3参照)およびツナ(例えば、非特許文献4参照)、乳タンパク質であるカゼイン(例えば、特許文献3および非特許文献5参照)およびラクトグロブリン(例えば、特許文献4および非特許文献6参照)、さらに穀類である、トウモロコシタンパク質(例えば、非特許文献7参照)、ソバ全粒粉(例えば、非特許文献8参照)、小麦胚芽(例えば、非特許文献9参照)、大豆タンパク質(例えば、非特許文献10参照)を挙げることができる。
上記食用タンパク質から分離精製されたペプチドのうち、ラクトペプチド、カゼインペプチド、イワシペプチド、カツオ節ペプチドは、特定保健用食品に登録され、健康食品として販売されている。



しかし、上記のようにプロテアーゼを添加する従来の方法では、食用タンパク質を分解させるために十分な濃度である、1%(w/v)以上のプロテアーゼの添加を必要とする。また、デンプンを多く含む穀類を原材料とする場合では、反応効率を増加させるためにアミラーゼの添加(約1%(w/v))も必要になる。
これらの酵素剤は、いずれも極めて高価であるため、大量製造や商品化の上での大きな障害になっている。
また、魚肉から製造する場合、臭気成分、色素成分、タンパク質など夾雑成分が多量に存在するため、精製効率が悪く、また、これら夾雑物の除去に大量の精製材料を必要とし、劣化も早いため、製造コストも悪い。なお、前記特定保健用食品で市販されているイワシペプチド(バリルチロシン(Val-Tyr))の濃度は、約1mg/gタンパク質であり、高純度とは言いがたい精製度である。さらに、日本近海において、マイワシは殆ど漁獲されず、カタクチイワシ、ウルメイワシも漁獲が減少し、値段が高騰している。世界的にも水産資源の消費が増加しつつあり、遠洋のカツオ、ツナなど水産資源は高騰しつつある。
さらに、上記の方法のいずれにおいても、アンジオテンシンI変換酵素の阻害活性が顕著に高いポリペプチド複数種類を有するものを製造することはできない。



なお、ポリペプチドの人工合成によって機能性ポリペプチドを合成することも可能であるが(例えば、非特許文献11参照)、合成工程自体のコストに加えて、合成工程で用いる薬品を人が摂取できる程度まで除去精製する必要があるため、前記の方法以上に製造量およびコストの点で困難であるのが現状である。

産業上の利用分野


本発明は、小麦ふすま、大麦糠、米糠からの新規血圧降下ペプチドとその製造方法に関し、詳しくは血圧上昇に関与するアンジオテンシンI変換酵素の阻害活性を有すると共に、血圧降下機能を有する、新規ポリペプチドとその製造方法とに関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも小麦ふすまを含む小麦種子粉末、少なくとも大麦糠を含む大麦種子粉末、及び少なくとも米糠を含む米種子粉末よりなる群から選ばれた少なくも1種の粉末原料を、;水又は緩衝液に添加混合し、添加混合後の当該水又は緩衝液のpHを3.05~3.95とし、30~45℃の温度で、少なくとも4時間以上内在性プロテアーゼの作用により貯蔵タンパク質を分解反応させ、;得られた反応物を有効成分として含有してなることを特徴とする、アンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項2】
前記小麦種子粉末が澱粉貯蔵部を含まない小麦ふすま粉末であり、且つ、前記大麦種子粉末が澱粉貯蔵部を含まない大麦糠粉末であり、且つ、前記米種子粉末が澱粉貯蔵部を含まない米糠粉末である、請求項1に記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項3】
前記添加混合前に、ヘキサンを用いて前記粉末原料を脱脂処理する、請求項1又は2に記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項4】
前記粉末原料として、予め水又は緩衝液からなる洗浄液に添加混合し、当該添加混合後の洗浄液のpHを3.0~7.0とし、0~28℃の温度で5~30分間浸漬した後に上清を除去したものを用いる、請求項1~3のいずれかに記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項5】
前記反応後、得られた反応液を、ODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィにより精製処理する、請求項1~4のいずれかに記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項6】
請求項5に記載のODSカラムを用いた逆相クロマトグラフィによる精製処理において、前記反応液をODSカラムに通液し吸着させた後、10~25%エタノールもしくは10~25%アセトニトリルで溶出し回収する、請求項5に記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤。

【請求項7】
請求項1~6に記載のアンジオテンシンI変換酵素阻害剤を含有してなることを特徴とする、血圧降下作用を有する医薬。
産業区分
  • 有機化合物
  • 食品
  • 薬品
  • 微生物工業
国際特許分類(IPC)
Fターム
画像

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JP2010264688thum.jpg
出願権利状態 権利存続中


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