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神経細胞特異的な逆行性輸送ベクター

国内特許コード P110002764
整理番号 A301P13
掲載日 2011年6月8日
出願番号 特願2010-263148
公開番号 特開2012-110290
登録番号 特許第5216072号
出願日 平成22年11月26日(2010.11.26)
公開日 平成24年6月14日(2012.6.14)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発明者
  • 小林 和人
出願人
  • 国立研究開発法人科学技術振興機構
発明の名称 神経細胞特異的な逆行性輸送ベクター
発明の概要 【課題】動物の脳内において高頻度な逆行性輸送能を保持し、且つ、より高い力価を持つレンチウィルスベクター系を提供すること。
【解決手段】(1)HIV-1のgag 及びpol遺伝子を含むパッケージングプラスミド;
(2)HIV-1のアクセサリー遺伝子を含むパッケージングプラスミド;
(3)目的遺伝子を含むトランスファープラスミド;及び
(4)エンベロープ遺伝子として、狂犬病ウィルスの糖タンパク質(RV-G)の細胞外ドメインのN末端領域及び水泡性口内炎ウィルスの糖タンパク質 (VSV-G)の細胞外ドメインのC末端領域から成る融合細胞外ドメイン、RV-G又はVSV-Gの膜貫通ドメイン、並びに、VSV-Gの細胞内ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする遺伝子を含むエンベローププラスミド、を含む逆行輸送性ウィルスベクター調製用キット。
【選択図】図2
従来技術、競合技術の概要


非増殖(非複製)型組換え体レンチウィルスベクターは、目的遺伝子を中枢神経系(CNS)における非分裂細胞に輸送して長期間に亘る発現を維持する系等のさまざまな疾患に対する遺伝子治療用ベクターとして多くの研究に利用されている(非特許文献1~4)。特に、HIV-1 (human immunodeficiency virus type 1) に由来する霊長類のレンチウィルスベクターは遺伝子治療用のベクターとして最も実績のあるものである(非特許文献5~8)。しかしながら、レンチウィルスベクターは染色体に組み込まれるため、発がんのリスクのあることが知られている。特に、血液系疾患の遺伝子治療において白血病の発症する例が報告されている。神経疾患の遺伝子治療において、発がんのリスクを抑制し、より安全性の高いベクター系を開発するためには、遺伝子導入を神経細胞へ選択的にすることが望まれている。



一方、ある種の脳神経疾患に対する遺伝子治療のためには、神経終末部位より感染し、軸索を逆行性に輸送され、かかる感染部位より離れた場所に位置する標的部位にある細胞体に目的とする遺伝子を導入することのできるウィルスベクターが有益である(図1)。



これまでに、エンベロープ糖タンパク質(エンベロープ遺伝子タンパク質)として、水泡性口内炎ウィルス(vesicular stomatitis virus:VSV)の糖タンパク質 (VSV-G)を利用(シュードタイプ化:pseudotyping)した組換え体HIV-1ウィルスを用いて、カニクイサル脳内における逆行性輸送システムが開発されてきたが、このベクターの逆行性輸送は効率的なものではなかった(非特許文献9)。この文献に記載された方法では、免疫染色により確認された結果、サルの線条体に注入された組換え体HIV-1ウィルスにより逆行性に感染された中枢神経系の細胞はごく僅かであった。



一方で、狂犬病ウィルス(rabies virus: RV)は、シナプス終末より感染し、軸索を逆行性に輸送される活性を持つことが知られている。実際に、RV-Gによってウマ貧血ウィルスに基づく非霊長類レンチウィルスベクターの逆行性輸送能が亢進されることが報告されている(非特許文献10、11及び特許文献1)。



更に、RV-Gでシュードタイプ化したHIV-1レンチウィルスが報告されているが(非特許文献3)、この報告では実際にこのウィルスベクターを使用した動物実験(インビボ)はなされていない。又、狂犬病の原因となる神経向性ウィルスである、モコラリッサウィルス(Mokola lyssavirus)の糖蛋白質又はVSV-Gでシュードタイプ化したHIV-1ベクターのCNSにおける遺伝子移入が研究されている。モコラリッサウィルスの糖蛋白質又はVSV-Gでシュードタイプ化したHIV-1ベクターをラットの鼻孔に注射した結果、嗅神経系までの逆行性輸送に関して、これらのベクターは互いに同程度であった(非特許文献12)。又、この文献には線条体経由でウィルスベクターを投与した例は記載されていない。



これまでに本発明者等は、狂犬病ウィルスの糖タンパク質遺伝子(RV-G)でHIV-1レンチウィルスをシュードタイプ化したベクター(RV-G/HIV-1ベクター)を作製することよって、脳内のさまざま領域において高頻度な逆行性遺伝子導入を可能とすることを明らかにした(特許文献2、Hum. Gene Ther., 2007) 。更に、RV-Gの細胞内ドメインを水泡性口内炎ウィルス糖タンパク質(VSV-G)のもので置換した融合糖タンパク質(FuG-B)を作製した。これを用いて、高い効率の逆行性輸送能を保持し、且つ、より高い力価(機能的力価)を持つレンチウィルスベクター系を構築し、逆行性遺伝子導入の頻度を顕著に高めることに成功した(Hum. Gene Ther., 2010)。

産業上の利用分野


本発明は、神経細胞特異的な逆行性輸送ベクター(Neuron-specific retrograde transport vector: NeuRet)系、即ち、特に脳内において高度の逆行性輸送能を有し、生産効率が高く、特に、神経細胞への選択的な遺伝子導入を可能とするウィルスベクター系、より具体的には、狂犬病ウィルスの糖タンパク質(RV-G)の細胞外ドメインのN末端領域及び水泡性口内炎ウィルスの糖タンパク質 (VSV-G)の細胞外ドメインのC末端領域から成る融合細胞外ドメイン、RV-G又はVSV-Gの膜貫通ドメイン、並びにVSV-Gの細胞内ドメインを含む融合ポリペプチドによって、シュードタイプ化されたレンチウィルスベクター系、該ウィルスベクター系を使用する遺伝子導入方法及び遺伝子治療方法等に関する。

特許請求の範囲 【請求項1】
(1)HIV-1のgag 及びpol遺伝子を含むパッケージングプラスミド;
(2)HIV-1のアクセサリー遺伝子を含むパッケージングプラスミド;
(3)目的遺伝子を含むトランスファープラスミド;及び
(4)狂犬病ウィルスの糖タンパク質(RV-G)の細胞外ドメインのN末端領域及び水泡性口内炎ウィルスの糖タンパク質 (VSV-G)の細胞外ドメインのC末端領域から成る融合細胞外ドメイン、RV-G又はVSV-Gの膜貫通ドメイン、並びに、VSV-Gの細胞内ドメインを含む融合ポリペプチドコードする遺伝子であって、配列番号2に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列から成るエンベロープ遺伝子を含むエンベローププラスミド、を含む逆行輸送性ウィルスベクター調製用キット。

【請求項2】
パッケージングプラスミド(1)がpCAGkGP1.1Rであり、パッケージングプラスミド(2)がpCAG4-RTR2であり、且つ、トランスファープラスミドがpCL20c-MSCV-X(ここで、「X」は目的遺伝子を示す)であることを特徴とする、請求項1記載のウィルスベクター調製用キット。

【請求項3】
エンベローププラスミドにおいて、エンベロープ遺伝子がサイトメガロウィルスエンハンサー及びトリβアクチンプロモーターの制御下で発現する、請求項1又は2記載のウィルスベクター調製用キット。

【請求項4】
融合ポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列が配列番号1に示されたものである、請求項3記載のウィルスベクター調製用キット。

【請求項5】
目的遺伝子がヒトの遺伝子である、請求項1~4のいずれか一項に記載のウィルスベクター調製用キット。

【請求項6】
目的遺伝子が脳神経疾患治療用の遺伝子である、請求項5に記載のウィルスベクター調製用キット。

【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウィルスベクター調製用キット、及び、宿主細胞を含む、プロデューサー細胞作製用キット。

【請求項8】
宿主細胞がHEK293T細胞である、請求項7記載のキット。

【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウィルスベクター調製用キットに含まれる、パッケージングプラスミド、トランスファープラスミド、及び、エンベローププラスミドを感染細胞にコトランスフェクションさせることから成る、プロデューサー細胞の作製方法。

【請求項10】
感染細胞がHEK293T細胞である、請求項9記載の作製方法。

【請求項11】
リン酸カルシウム法を用いてトランスフェクションする、請求項9又は10記載の作製方法。

【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法で得られたプロデューサー細胞。

【請求項13】
請求項12記載のプロデューサー細胞を培養し、培養上清からウィルス粒子を回収することからなる、ウィルスベクターの製造方法。

【請求項14】
請求項13記載の方法によって製造された、神経細胞への選択的な逆行性輸送能を有するウィルスベクター。

【請求項15】
請求項14記載のウィルスベクターをヒト以外の動物の神経終末部に感染させ、該ウィルスベクターが該神経の軸索を逆行性に輸送されることにより脳内の標的領域にある該神経の神経細胞体に選択的に導入し、目的とする遺伝子を該神経細胞体内で発現させることから成る、遺伝子導入方法。

【請求項16】
神経終末部が線条体にあり、脳内の標的領域が線条体に投射する脳中枢領域である、請求項15記載の遺伝子導入方法。

【請求項17】
線条体に投射する脳中枢領域が一次運動皮質、一次体性感覚皮質、視床束傍核、及び/又は、黒質緻密部である、請求項16記載の方法。

【請求項18】
腹側線条体(側坐核)に投射する脳中枢領域が梨状皮質、鉤状回、扁桃体基底外側核、室傍核前部、視床背内側核、及び/又は、外側視床下部である、請求項16記載の方法。

【請求項19】
動物が哺乳類である、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。

【請求項20】
哺乳類が霊長類である、請求項19記載の方法。

【請求項21】
請求項14記載のウィルスベクターを活性成分として含有する、遺伝子治療剤。

【請求項22】
請求項15~20のいずれか一項に記載の方法で導入された目的遺伝子が標的領域における細胞の染色体に組み込まれ発現することを含む、脳疾患の遺伝子治療方法。

【請求項23】
請求項21記載の遺伝子治療剤をヒト以外の動物に投与することを含む、請求項22記載の治療方法。

【請求項24】
脳疾患がパーキンソン病である、請求項22又は23記載の治療方法。

【請求項25】
狂犬病ウィルスの糖タンパク質(RV-G)の細胞外ドメインのN末端領域及び水泡性口内炎ウィルスの糖タンパク質 (VSV-G)の細胞外ドメインのC末端領域から成る融合細胞外ドメイン、RV-G又はVSV-Gの膜貫通ドメイン、並びに、VSV-Gの細胞内ドメインを含む融合ポリペプチドであって配列番号2に示されたアミノ酸配列から成る、レンチウィルスベクターのシュードタイプ化用のエンベロープ。

【請求項26】
レンチウィルスベクターがHIV-1レンチウィルスである、請求項25記載のエンベロープ。

【請求項27】
請求項25又は26記載の融合ポリペプチドから成るエンベロープをコードする遺伝子。

【請求項28】
請求項27記載の遺伝子を含むエンベローププラスミド。
国際特許分類(IPC)
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出願権利状態 登録
参考情報 (研究プロジェクト等) CREST 脳の機能発達と学習メカニズムの解明 領域
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